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私、こんなにツッコミ体質だったっけ、なんて疑問に思うほど。
「ねえ、千鶴。好きだよ、この世で一番大好きな存在で、愛おしい存在。千鶴、愛してる。俺の愛を、受け入れて?」
「急に、言われても……困ります。私は、あなたのことを何も知らないから」
「……それは、そうだけど。でも、これから知っていけばいいし、それで俺のことを好きになってくれたら嬉しい、かな」
【セリフ指定あり→「もしも私が好きにならなかったら、あなたはどうするんですか?」→(監禁フラグがバリサン~)】
【セリフ指定あり→「あなたは、私を愛してくれるんですか? 誰にも、愛されなかった私を」→(溺愛フラグ、溺愛過ぎて溺死するかもね)】
【セリフ指定なし→(話が破綻するし、死んじゃうからやめて)】
選択肢、急に三つも出てこないでくれないかな!?
そもそもいきなり告白とかびっくりしすぎて頭がパンクしそうなんですが!?
選択肢が一つ目に出してきた言葉をちょうど言おうとしたとき、それが現れて。私は一瞬口を閉じた。顔はもうチベットスナギツネの顔だろう。スン、って冷めたから、今。
「あなたは、私を、愛してくれるんですか? 誰にも愛されなかった私を、見捨てられて、生まれてこなければよかったと誰もが口をそろえて言う、そんないらない存在を、愛してくれるんですか?」
監禁フラグバリサンって言い方が古い、と思ったが、そのフラグは嫌だし、死ぬのも嫌だ。話が破綻する、の意味が分からないけど、とりあえず、真ん中を選ぶしかなかった。
だけど、セリフ指定だけで、言葉は収まらなかった。過去にみんなが言った言葉が、口から出ていく。みんな可哀そうって言う次の言葉は、生まれてこなかった方がよかったのにね、だ。虐待されていると分かっていての発言だと、幼い私でも簡単にわかる。
悔しくて仕方がなかった。私だって好きでそんな言葉を言われるような生活をしているわけではない。それに、欲を言うのなら、今世でだって愛されたかった。
「誰がそんなことを言って千鶴を苦しめたのか、わからないけど。俺は、千鶴をこれから先ずっと、愛していくって、今この場で誓えるよ。それだけ俺の心の中は千鶴への思いでいっぱいだし、俺のことを救ってくれた千鶴に何年、片思いしてると思ってる? ざっと八年は軽く片思いだ、君に」
「なん、で、なんで……そんなこと、いうんですか……」
「俺は、休み方を何一つ知らなかった。ちょっとした息抜きの仕方だって、知らなかったよ。でも千鶴が休んでいいって言ってくれた。自分だけは自分の味方でいる、その言葉で、俺は耐えられたんだ、今まで」
「あんなの、ただの子どもの言葉じゃないですか! どうして、どうしてそんなに、大事に持ってるんですか! なんで……なんで、たった一回会っただけの子どもの言葉を、信じたんですか……っ、理解できません、私にはっ!」
誰か一人でもいい、私の側にいてほしかった。私の言葉に耳を傾けてほしかった、私を、助けてほしかった。
伸ばしていた手を、誰かに掴んでほしかった。そして、救い上げてほしかった、この愛のない世界から。
「これから、その言葉を信じた俺を、知っていけばいい。もしかしたら、答えが見つかるかもしれないだろう?」
「わ、たし、は……」
「千鶴はさ、臆病だね。愛されることを、怖がってる」
核心を突く、その言葉。何も言えなかった。愛された記憶があるなら、乗り切れる、そう思っていた過去の自分は砕け散り、代わりに生まれたのは何にも心を動かされない、人形のような自分。愛も何も信じられなくなった、孤独な自分。
母親にいらないと言われたあの日の淋しさを、私は今も忘れていない。胸が締め付けられるような痛みを、今でも覚えている。
「ねえ、千鶴。好きだよ、この世で一番大好きな存在で、愛おしい存在。千鶴、愛してる。俺の愛を、受け入れて?」
「急に、言われても……困ります。私は、あなたのことを何も知らないから」
「……それは、そうだけど。でも、これから知っていけばいいし、それで俺のことを好きになってくれたら嬉しい、かな」
【セリフ指定あり→「もしも私が好きにならなかったら、あなたはどうするんですか?」→(監禁フラグがバリサン~)】
【セリフ指定あり→「あなたは、私を愛してくれるんですか? 誰にも、愛されなかった私を」→(溺愛フラグ、溺愛過ぎて溺死するかもね)】
【セリフ指定なし→(話が破綻するし、死んじゃうからやめて)】
選択肢、急に三つも出てこないでくれないかな!?
そもそもいきなり告白とかびっくりしすぎて頭がパンクしそうなんですが!?
選択肢が一つ目に出してきた言葉をちょうど言おうとしたとき、それが現れて。私は一瞬口を閉じた。顔はもうチベットスナギツネの顔だろう。スン、って冷めたから、今。
「あなたは、私を、愛してくれるんですか? 誰にも愛されなかった私を、見捨てられて、生まれてこなければよかったと誰もが口をそろえて言う、そんないらない存在を、愛してくれるんですか?」
監禁フラグバリサンって言い方が古い、と思ったが、そのフラグは嫌だし、死ぬのも嫌だ。話が破綻する、の意味が分からないけど、とりあえず、真ん中を選ぶしかなかった。
だけど、セリフ指定だけで、言葉は収まらなかった。過去にみんなが言った言葉が、口から出ていく。みんな可哀そうって言う次の言葉は、生まれてこなかった方がよかったのにね、だ。虐待されていると分かっていての発言だと、幼い私でも簡単にわかる。
悔しくて仕方がなかった。私だって好きでそんな言葉を言われるような生活をしているわけではない。それに、欲を言うのなら、今世でだって愛されたかった。
「誰がそんなことを言って千鶴を苦しめたのか、わからないけど。俺は、千鶴をこれから先ずっと、愛していくって、今この場で誓えるよ。それだけ俺の心の中は千鶴への思いでいっぱいだし、俺のことを救ってくれた千鶴に何年、片思いしてると思ってる? ざっと八年は軽く片思いだ、君に」
「なん、で、なんで……そんなこと、いうんですか……」
「俺は、休み方を何一つ知らなかった。ちょっとした息抜きの仕方だって、知らなかったよ。でも千鶴が休んでいいって言ってくれた。自分だけは自分の味方でいる、その言葉で、俺は耐えられたんだ、今まで」
「あんなの、ただの子どもの言葉じゃないですか! どうして、どうしてそんなに、大事に持ってるんですか! なんで……なんで、たった一回会っただけの子どもの言葉を、信じたんですか……っ、理解できません、私にはっ!」
誰か一人でもいい、私の側にいてほしかった。私の言葉に耳を傾けてほしかった、私を、助けてほしかった。
伸ばしていた手を、誰かに掴んでほしかった。そして、救い上げてほしかった、この愛のない世界から。
「これから、その言葉を信じた俺を、知っていけばいい。もしかしたら、答えが見つかるかもしれないだろう?」
「わ、たし、は……」
「千鶴はさ、臆病だね。愛されることを、怖がってる」
核心を突く、その言葉。何も言えなかった。愛された記憶があるなら、乗り切れる、そう思っていた過去の自分は砕け散り、代わりに生まれたのは何にも心を動かされない、人形のような自分。愛も何も信じられなくなった、孤独な自分。
母親にいらないと言われたあの日の淋しさを、私は今も忘れていない。胸が締め付けられるような痛みを、今でも覚えている。
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