スライムイーター ~捕食者を喰らう者~

謎の人

文字の大きさ
12 / 78
2話 捕食者を喰らう者

結成! 新米パーティー

しおりを挟む
 
 
「で、どうしてこうなるんでしょうねえ……」


 翌早朝。
 街の中央広場にて、私は天を仰ぎました。

 本日の空は良く晴れていて、湿っぽい風がどこか気持ちが良く、流れる雲を追ってどこまでも駆けだしていきたい気持ちでいっぱいです。

 今日の私は、色が地味目のワンピースに防水性に富んだズボンを身に着け、腰にウエストバッグ。
 背中にギルドより贈呈されたお掃除兵器クリーナーを背負い、冒険準備満タンの装いです。

 場所は、街の広場の噴水の前。
 ギルド直々に依頼された地下水道の調査のため、ここから水路へ降りていきます。

 そして、派遣された調査隊は私一人きりではありませんでした。


「どうしてまた? いつものようにソロで良いでしょう?」


 前日のこと。
 私はリオンさんに喰ってかかりました。

 リオンさんは、こちらのご機嫌を伺うような困り笑顔で、


「今回はある意味アルルさんからの持ち込み案件だから、つまりね?」
「私が調べて報告したのでは報告書の信頼に欠ける、と? 期待の新人としての威厳はいずこへ?」
「それはそれというか」


 ごまかし切れないと悟ったのか、リンネさんは強引に打って出ます。


「聞いて、アルルさん。これは君の安全のためでもあるの!」


 曰く、


「そもそも地下水道全域の調査を一人でやるわけにはいかないし、増えているというスライムも可能な限り掃討してもらいたい。そうなるとこれは、討伐依頼を兼ねているということになるの。二つ名を冠するアルルさんにとってスライム退治はお手の物かも知れないけれど、しかし油断は禁物と言うか、そのぅ……」
「……半分くらい世辞がはいっていやしませんか?」
「……えっと、うふふ?」


 笑ってごまかそうとする程度の信頼しか勝ち取れていないようでした。


「二つ名って、ここまで価値のない称号だったとは……」


 証書を丸めて投げ捨ててやりたくなります。 


「ごめんなさい。ただ、心配しているのは本当なんだよ?」
「むむう……」

 
 そんな風に返されては無下に断るわけもいかず。
 最終的には折れて、パーティーを組むことを承諾したのでした。

 リオンさんの言うことももっともでして。
 何より、これまで散々アドバイスして助けてもらっておいて、今更わがまま言うわけにもいきますまい。


「だからといって、何もこのメンバーでなくても良いのに……」


 殊勝な気持ちでいられたのは、中央広場に集められたパーティーメンバーを見るまででした。


「めんどくせえ……」


 剣士の少年が欠伸し、


「こら、そういうこと言わない」


 耳長の娘が窘め、


「でも地下水道なんて、なんか嫌だ、私……」


 尻尾を持つ少女が愚痴を言い、


「……」


 眼鏡の魔術師が無言でこちらを睨んでくる、
 といった有様で……。

 あろうことか、クランさんご一行でした。
 三者三様(四人いますが)仏頂面並べて大層ご機嫌斜めです。

 報酬の低い調査依頼、まだ新人だからと押し付けられたに違いありません。

 加えて、今回のパーティーリーダーが私というのも彼らの神経を逆撫でしているのでしょう。

 何せまだ見習いですからね、私。
 リオンさん、正式な登録するの完全に忘れてますよね……。
 
 
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

少し冷めた村人少年の冒険記 2

mizuno sei
ファンタジー
 地球からの転生者である主人公トーマは、「はずれギフト」と言われた「ナビゲーションシステム」を持って新しい人生を歩み始めた。  不幸だった前世の記憶から、少し冷めた目で世の中を見つめ、誰にも邪魔されない力を身に着けて第二の人生を楽しもうと考えている。  旅の中でいろいろな人と出会い、成長していく少年の物語。

処理中です...