花言葉に想いをのせて

皇 晴樹

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花言葉に想いをのせて

薔薇と桃の花

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***

それから一年が経った。

4月。出逢いの季節。

『カランカラン』

「いらっしゃいませ…」

「お久しぶりです」

「え!?」

「今日は花を買いに来ました。薔薇を一本、プレゼント用でお願いします」

「は、はい」

どうして彼がここにいるの?

聞きたいことはたくさんあるけど、今は仕事中だから我慢。

「お待たせしました」

「ありがとうございます。今日は何時に終わりますか?」

「16時には終わりますが…」

「そうなんですね。では、お仕事が終わったら月見野公園に来てください」

「わかりました」


☆☆☆

言われた通りに月見野公園に行くと、彼はベンチに座っていた。

「どうしたんですか?」

「突然すみません。どうしても貴女と話がしたくて……あ、今更ですが、僕は藤宮 幸樹ふじみや ゆきです」

「私は、華村 果梨はなむら かりんです」

藤宮さんの隣に静かに座った。


「……僕は貴女にずっと伝えたかったことがあるんです。あの写真と花言葉から気づいてはいると思うのですが…」

私の前にさっきの薔薇をスッと差し出して、私の目をまっすぐ見つめた。

そして、ゆっくりと口を開いた。

「僕はずっと、貴女のことが好きでした。付き合ってください!」

一本の薔薇の花言葉は……

「一目惚れ」

「え?」  

「花言葉です。当たってますか?」

「はい。僕は貴女に一目惚れをして恋に落ちました。それからいろいろと花のことを調べて、花言葉を覚えました。貴女に振り向いて欲しくて…」

彼のやり方は遠回りだったかもしれないけど、全部ちゃんと私に届いている。


「昨年異動になってしまって、貴女に直接別れを言えず、ワスレナグサの花言葉に頼ってしまいました。またここに戻ってくることができたら言おうと心に決めていたんです。薔薇の力も借りたけど、1番は自分の言葉で…」

「……あなたの想いは十分伝わっています。とても嬉しいです」

今度は私の番。
彼に桃の花を差し出した。

「私の返事は、桃の花の花言葉です」

「……“私はあなたの虜”」

「はい」

「つまり…」

「よろしくお願いします」

そう言って微笑むと、ぎゅっと抱きしめられた。

「今、すごく幸せです!」

「私もです」

ふわりと桃の花の甘い香りがする。

その香りに包まれながら、

甘くやさしい口づけをした。
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