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お寺の少年3
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「あのさ、悪い事言わないから早く成仏しなよ。若くして亡くなるのは辛かったと思うけど、人んちの中ウロウロして泥棒みたいに探るの、良く無いよ」
私は玄関ホールの隣にある居間に連れてこられ、さっきから寝癖の付いた黒髪短髪に眠そうな目の少年に叱られている。
どうやら、私の事を彷徨ってる幽霊だとでも思ってるらしい。
「俺はまだお経上げられないし、父さん呼んでくるから。俺が戻るまでに覚悟決めておきなよ」
「ちょっ、待ったぁー!」
慌てて、立ち上がろうとした少年の伸びたTシャツの袖をつかむ。
ビョーンッと生地が引っ張られて、襟首の開きから少年の肩が出る。
「な、お前なにすんだよ!」
肌が見えた事が恥ずかしいのか、頬を赤くして少年が叫んだ。
寝起きのボサボサ頭にルーズな服を着ているので、子供っぽい感じではあるけれど、うっすら生えたヒゲや意外に筋肉質な腕からして、私と近い歳だろうと思う。
「ちょい待ち。大人を呼ぶ前に話しを聞いて」
「は?ってお前、霊体じゃないの?俺に触れられるとか、やばっ。お前何なん!?」
少年が私に驚き怯えだした。
ようやく立場逆転、私が攻めに転じられると鼻息荒く話しかけようとした時、
「ピンポーンッ」
玄関の呼び鈴が鳴った。
「はーい!今出ますっ!」
あまりに普通に少年が呼び鈴に答える。
さっき私が呼び鈴を押した時に少年は出てこなかったのに、今は目の前の不審者(私)を放って置いても玄関へ出るようだ。
「お前、ちょっと待っとけよ!」
何故か偉そうな態度で言ってくる少年に、少しイラッとする。
(流れ的に私の方が優位じゃなかった?)
少年が玄関の方へと消えると、私は言われた通りに待つものかと、逃げ道を探す。
「ユーリ、聞こえる?家の中に人が居て見つかっちゃった」
通信用の魔導具を使い、ヒソヒソとユーリに話しかける。
「・・・」
「私の姿を見えちゃう子がいてさ。捕まっちゃったんだよね。東側の窓から逃げるから、近くで待機してて」
「それは黒髪の少年か?」
「そうそう、黒髪で伸び伸びのTシャツ着た‥。って何で知ってるの?」
「そのまま、そこに居ろ」
ユーリにまで待っていろと言われてしまったら動くに動けない。
さっきまで少年に正座で座る様に言われていたので、足も痺れてジンジンしているし、地味に辛い状態だ。
「遅くなって悪かった」
何故か居間にユーリがフワッと入って来た。
脇には力無く、意識の無い黒髪の少年を引きずる様に抱えている。
「ユーリッ!いくら何でも駄目だよ!この国の人を傷つけたら、いくらイシュタニアの王族でも大問題だ!」
「馬鹿を言うな、眠ってもらっただけだ。ワザとそんな事言っているな?」
私の戯言に反応してくれるユーリは優しい。
フーっ、とため息を吐いたユーリは「夢でもみていたことにしてもらおう」と言って、少年を抱えたまま、2階へと続く階段に向かう。
「平日のこの時間にこんな寝巻き姿でいるとは、十中八九、風邪でも引いて寝てたんだろう。体温が少し高い」
そう言って少年の部屋を探すユーリの後に続く。
「ここだな。」そう言ってユーリが入った部屋は、野球のグローブや大会のトロフィーなどが置かれた部屋だった。
畳の床に敷かれた布団へ少年を置いて、掛け布団をかける。
「熱が出ていたんならちょうど良い。何もしなくても目覚めたら勝手に夢だと思ってくれるだろう」
ユーリがそう言って、少年の額に触れる。
「熱は高そうだな。休んでいる所を邪魔してしまい悪かったな」
寝ている少年に話しかけるようにユーリが言う。
「熱が出てると隠形魔術を見破れるとかあるの?この子、私のこと見えちゃったんだよね」
「熱は関係ないだろう。おそらくこの子の能力だ。周りの情報を視覚化する能力が高いのだろうな。イシュタニアには居ないタイプだ」
この国の人々は魔力を使わずに暮らしているが、個人レベルでは変わった能力者もいるということだな。魔術がバレてしまう事があるなんて気を付けねば。
「今日はこれで終了だ。ミツリ発案の転移魔術で『がらんどう』へ戻るぞ』
結局、自分の魔力消費が激しくても私の意見を採用してくれるユーリの優しさに、心がむず痒くなる。
無愛想なユーリでも意外とお客様に好かれているのは、やはり彼の人柄ゆえだろうか?
ユーリが私の目の前でサッと手を振り払い隠形魔術を解いた後、指輪へ刻んである『がらんどう』への転移魔法陣を発動する。
「靴を忘れたが、仕方あるまい」
「え?取ってきたら?侵入の証拠になっちゃうよ」
「もう遅い、陣が起動してる」
「俺が、隠しといてやるよ」
「??!」
「スッゲー面白い話聞けちゃった‥。俺、こんなんで、色々見えてて普通じゃ無いから、待ってたんだよ、こういうワクワクする展開。マジで今日風邪引いて寝てて良かった。また来るか?!」
転移の光がユーリと私を包む。
ユーリの目が驚きで見開いた後、フワッと緩み微笑んだ。
「お前が来い。今日の事は誰にも言わないと、約束は出来るな?」
ユーリがひらりと『がらんどう』のショップカードを落とす。
「これは契約だ。誰にも言わず黙って靴を持ってここにきたら、君の疑問が晴れるまで話をしよう」
「ユーリ?!」
こんな滅茶苦茶なユーリは見たことがない。
今回だって不法侵入を犯しているのに、丁寧にショップカードまで渡して身バレ必須だ。
「大丈夫。彼は来るよ」
私にヒソッとそう言うと、ユーリは余裕そうに微笑んだ。
少年の畳敷きの部屋に描かれた魔法陣は、私たち2人を光の中に包んだ後、静かに消えた。
私は玄関ホールの隣にある居間に連れてこられ、さっきから寝癖の付いた黒髪短髪に眠そうな目の少年に叱られている。
どうやら、私の事を彷徨ってる幽霊だとでも思ってるらしい。
「俺はまだお経上げられないし、父さん呼んでくるから。俺が戻るまでに覚悟決めておきなよ」
「ちょっ、待ったぁー!」
慌てて、立ち上がろうとした少年の伸びたTシャツの袖をつかむ。
ビョーンッと生地が引っ張られて、襟首の開きから少年の肩が出る。
「な、お前なにすんだよ!」
肌が見えた事が恥ずかしいのか、頬を赤くして少年が叫んだ。
寝起きのボサボサ頭にルーズな服を着ているので、子供っぽい感じではあるけれど、うっすら生えたヒゲや意外に筋肉質な腕からして、私と近い歳だろうと思う。
「ちょい待ち。大人を呼ぶ前に話しを聞いて」
「は?ってお前、霊体じゃないの?俺に触れられるとか、やばっ。お前何なん!?」
少年が私に驚き怯えだした。
ようやく立場逆転、私が攻めに転じられると鼻息荒く話しかけようとした時、
「ピンポーンッ」
玄関の呼び鈴が鳴った。
「はーい!今出ますっ!」
あまりに普通に少年が呼び鈴に答える。
さっき私が呼び鈴を押した時に少年は出てこなかったのに、今は目の前の不審者(私)を放って置いても玄関へ出るようだ。
「お前、ちょっと待っとけよ!」
何故か偉そうな態度で言ってくる少年に、少しイラッとする。
(流れ的に私の方が優位じゃなかった?)
少年が玄関の方へと消えると、私は言われた通りに待つものかと、逃げ道を探す。
「ユーリ、聞こえる?家の中に人が居て見つかっちゃった」
通信用の魔導具を使い、ヒソヒソとユーリに話しかける。
「・・・」
「私の姿を見えちゃう子がいてさ。捕まっちゃったんだよね。東側の窓から逃げるから、近くで待機してて」
「それは黒髪の少年か?」
「そうそう、黒髪で伸び伸びのTシャツ着た‥。って何で知ってるの?」
「そのまま、そこに居ろ」
ユーリにまで待っていろと言われてしまったら動くに動けない。
さっきまで少年に正座で座る様に言われていたので、足も痺れてジンジンしているし、地味に辛い状態だ。
「遅くなって悪かった」
何故か居間にユーリがフワッと入って来た。
脇には力無く、意識の無い黒髪の少年を引きずる様に抱えている。
「ユーリッ!いくら何でも駄目だよ!この国の人を傷つけたら、いくらイシュタニアの王族でも大問題だ!」
「馬鹿を言うな、眠ってもらっただけだ。ワザとそんな事言っているな?」
私の戯言に反応してくれるユーリは優しい。
フーっ、とため息を吐いたユーリは「夢でもみていたことにしてもらおう」と言って、少年を抱えたまま、2階へと続く階段に向かう。
「平日のこの時間にこんな寝巻き姿でいるとは、十中八九、風邪でも引いて寝てたんだろう。体温が少し高い」
そう言って少年の部屋を探すユーリの後に続く。
「ここだな。」そう言ってユーリが入った部屋は、野球のグローブや大会のトロフィーなどが置かれた部屋だった。
畳の床に敷かれた布団へ少年を置いて、掛け布団をかける。
「熱が出ていたんならちょうど良い。何もしなくても目覚めたら勝手に夢だと思ってくれるだろう」
ユーリがそう言って、少年の額に触れる。
「熱は高そうだな。休んでいる所を邪魔してしまい悪かったな」
寝ている少年に話しかけるようにユーリが言う。
「熱が出てると隠形魔術を見破れるとかあるの?この子、私のこと見えちゃったんだよね」
「熱は関係ないだろう。おそらくこの子の能力だ。周りの情報を視覚化する能力が高いのだろうな。イシュタニアには居ないタイプだ」
この国の人々は魔力を使わずに暮らしているが、個人レベルでは変わった能力者もいるということだな。魔術がバレてしまう事があるなんて気を付けねば。
「今日はこれで終了だ。ミツリ発案の転移魔術で『がらんどう』へ戻るぞ』
結局、自分の魔力消費が激しくても私の意見を採用してくれるユーリの優しさに、心がむず痒くなる。
無愛想なユーリでも意外とお客様に好かれているのは、やはり彼の人柄ゆえだろうか?
ユーリが私の目の前でサッと手を振り払い隠形魔術を解いた後、指輪へ刻んである『がらんどう』への転移魔法陣を発動する。
「靴を忘れたが、仕方あるまい」
「え?取ってきたら?侵入の証拠になっちゃうよ」
「もう遅い、陣が起動してる」
「俺が、隠しといてやるよ」
「??!」
「スッゲー面白い話聞けちゃった‥。俺、こんなんで、色々見えてて普通じゃ無いから、待ってたんだよ、こういうワクワクする展開。マジで今日風邪引いて寝てて良かった。また来るか?!」
転移の光がユーリと私を包む。
ユーリの目が驚きで見開いた後、フワッと緩み微笑んだ。
「お前が来い。今日の事は誰にも言わないと、約束は出来るな?」
ユーリがひらりと『がらんどう』のショップカードを落とす。
「これは契約だ。誰にも言わず黙って靴を持ってここにきたら、君の疑問が晴れるまで話をしよう」
「ユーリ?!」
こんな滅茶苦茶なユーリは見たことがない。
今回だって不法侵入を犯しているのに、丁寧にショップカードまで渡して身バレ必須だ。
「大丈夫。彼は来るよ」
私にヒソッとそう言うと、ユーリは余裕そうに微笑んだ。
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