魔導具なら買い取ります!古道具屋『がらんどう』

なかな

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「シリル」現る

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「だーかーらー、ミツリさんっ。俺も手伝いますって!俺も何かの役に立てるかもしれないしっ」

「受験生は大人しく家で勉強してなさいよ。蓮くんの勉強時間奪ったら、せっかく塾に行かせてる親御さんに申し訳ないでしょ‥」

 
 母ニコルに頼んで、ゆるふわ金髪ことシリルに会う機会を設けてもらった私達は、対策会議をしている。

 「作戦会議」ではなく、「対策会議」

 シリルの行動に先手を打ち、少なくとも話し合いに持ち込めるよう、手順を探っている。

 勉強の息抜きに『がらんどう』現れた蓮くんだが、自分もシリルに会うと言って譲らない。

「シリルって奴を引き留める為に、お茶菓子持ってきますっ。芋羊羹とか」

「蓮くん、それは私が食べたいから、今度買ってきて!お代は出すから」

「はいっ、了解です!ユーリさんは?」

「私は甘い物が得意ではないから、のり団子があればそれを」

「はいっ、了解っす!」

 蓮くんがいると楽しいけど、話が脱線して全然進まない‥。

「何か、興味が湧きそうな物を見せるのはどうかな?魔術回路の設計図、たたき台なら出してみるよ」

「そうだな。それを見た時の反応で、奴がどれだけ魔導具について造詣が深いのかも知れる。ミツリ、お願いできるか?」

「了解!」

 私は頷いてメモを取る。

『がらんどう』の商談用ソファーに座る私の隣で、蓮くんが何か言いたそうにウズウズしている。

「あの、ちょっと良いっすか?」

 意を決したように、ローテーブルを挟んで向こう側に座るユーリに向かい、蓮くんが話しかける。

「そもそも、何でシリルって奴と会うんですか?」

「・・・」

 どこから?いや、どこまで話せばよいのだろうか?
 全てを知ってしまったら、それこそ蓮くんに普通の中3受験生の道を歩ませ られなくなってしまいそうだ。

「そうだな。シリルが実は、ミツリの遠縁だったと分かったんだ。ミツリが新しい魔導具をつくる上で、協力者として最適なのが彼なんだよ」

 おーっ!
 心の中でユーリに拍手を送る。
 シンプルかつ嘘の無い、蓮くんへ伝える言葉として最適だっ。

「へーっ、そうだったんすか!」

 蓮くんは驚いた表情をしているが、言葉通りに受け止めてくれたようだ。


「シリルが私達の話に面白みを感じなければ、話の途中でも得意の魔術で消えてしまうのだろうな。そして、次の話し合いの機会は、おそらくない」

 ユーリが、珍しくため息混じりで話す。

 掴みどころが無いタイプの上に、本当に捕まえる事が出来ない人物なんて、厄介にも程がある。

「シリルは、消えるって言いましたよね。それって見えなくなるって事ですか?」

 蓮くんはやはり、シリルに興味があるらしい。

「まぁ、おそらく影に潜んでいるのだろう。後は、暗闇や影を辺り歩き、少しの隙間でもあれば密室でも出ていけてしまうと、そういう術のはずだ」

「あ、俺、思い付きました!シリルって奴が逃げたら、見つける係やりますっ!」

 蓮くんが、挙手して立ち上がった。

 見つける係って‥。

 ユーリも唖然とした表情をして蓮くんを見つめている。

 確かに蓮くんの視覚化する能力なら、シリルが逃げ出したとしても、場所の特定が出来るかも知れない。

 逃げたふりして立ち聞きでもしていよう物なら、それも見破れる。

「そうだな‥。さすがは蓮くんだ。無理はしないでもらいたいが、お願い出来るか?」

「もちろんですっ!俺、頑張ります!」

 蓮くんの熱意は有難いが、シリルに逃げられるような事にはならないで欲しいと、私もユーリもそう願っていた。
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