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なかな

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ユーリの記憶を取り戻せ!3

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「えーっとね。例えるなら日本でいう携帯電話だね。
 スマートフォンみたいな便利機能がないのは残念なんだけど、今の所は異世界間でも音声がクリアなのが僕の自慢ポイント。
 異世界間の転移は出来ないから、初めは無理かなぁって思ってたんだけど、召喚獣は使えるじゃない?
 もしかしたら、間に何か挟めばいけるのかぁって発想で考えて、出来たちゃったのがコレ。」

 シリルがジャケットの胸元を捲ると、内側に隠したポケットから手の平サイズの鈍く光るものが現れた。
 平たい形をしていて、確かにスマフォっぽい。

「これをね、カイゼル殿下に1つ渡して機能を調べていたんだ。問題なく使えているから、これで連絡すれば直ぐに伝わるよ。」

「シリルっ!凄いっ!偉いっ!今度、設計図見せて欲しいっ!」

「シリルくんっ!凄い!偉いじゃないか!僕には設計図を見せてくれるよね!」

 私とリチャードで、内容が丸かぶりのトークをシリルにぶつけている。
 育ての親って、こんなに似てしまうんだな。

「こ、こうなるから言いたくなかったんだよ‥。ま、仕方がないから、この通信具の改良に協力してくれるならね、見せてあげても良いよ。」

「やったー、ありがとう!」

「ひゃっはぁー、ありがとうっっ!」


「‥‥。そうそう、早くカイゼル殿下に連絡しなきゃね。」



 ◇◇◇



「‥‥。殿下?今話せる?」

「×××。」

「あ、もうそっちの話は済んだんだ。あのね、こっちはこっちで大変な事になっちゃって。」

「×××。」

「そうそう、やっぱり3兄弟が動いて、こっちにまで来たんだよ。カイゼル殿下が国に戻った後に。」

「×××。」

「あ、そうなんだ。3人がイシュタニアに居ない事には気が付いてたんだ。でさ、前に言ってた魔導具を、あの殿下共はユーリに使っちゃったんだよ。本当にやっちゃたんだ。」

「×××!」

「分かったから落ち着いて!あぁ、もうっ、何してるの?雑音入りすぎて聞こえない。ちょっと静かに座っててよ。」

「×××。」

「そうそう、着いたら罪人として捕えてね。国王様にも宜しく。じゃっ。」



 ◇◇◇


 シリルは独り言のように通信具に語りかけた後、「任務完了っ!」と言って、私たちの方を振り返った。

「とりあえず、今できる事はやったからね。後は、国王様がこの状況を悪用しなければ大丈夫かな。」

 国王様が悪用?
 カイゼル殿下は、確かに国王様と対立関係だ。
 ハナから見方をしてくれる相手ではなかった。

「それじゃ、もし国王様が変わらずに王位を望んでいて、カイゼル殿下と敵対する道を選ぶなら。」

「そうだね、ミツリちゃんの推察どおり、殿下共が犯した罪は隠蔽され、ユーリは国王側に付かされる。」

「それは最悪なシナリオだね。」

 リチャードが、私の言いたい事を代弁してくれた。

「これで、僕がユーリからミツリちゃんの記憶を消した理由もよく分かったでしょ?もしユーリがミツリちゃんの記憶を持ったままだったら、すっごく苦しむと思うよ、ユーリは。」

 私が知らない所でシリルは1人、先を読んで考えていた。
 
 もしシリルにユーリの記憶から私が消えると、事前に教えられていたら、私は了承できただろうか?
 シリルは私に残酷な決断はさせず、自分1人、悪者になる道を選んだ。

「シリルっ、何にも知らなくて‥、頼りにならなくてごめんなさいっ!」

「もー、ミツリちゃん泣かないでよ。僕らの仲じゃない?ユーリ亡き今、僕の助手兼パートナーになるのはどう?大歓迎だよ。」

「ユーリは、死んで、ない。」

 シリルが大袈裟にふざけて本心を隠す事くらい、もう知っている。
 そう、彼の本心は彼だけのものだ。

「そうだね、ユーリは死んでないどころか元気。それが現実さ。」

「そうかぁ、悲しかったのは私だけで、ユーリは覚えてもいないのか‥。それなら、まぁ、いいか。」

「本当に良いの?」

「うん。私とユーリの立場が逆だったら、嫌だけどね。」

 今は少しでも、自分の為になるように考えよう。
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