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なかな

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ユーリの記憶を取り戻せ!7

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「記憶を失う前の私は、一体、何を考えてミツリくんと一緒に住んでいたんだ?正直理解できん。」

 今のユーリはとても真面で、融通の効かないユーリの基本型という感じだ。

「日本で魔導具師として暮らすのなら、護衛もいない中でどうやって危険からミツリくんを守れば良いんだ?私がずっと付いている訳にもいかないだろう。」

「ユーリとしてはどうしたいんだ?今まで通りでは駄目だと聞こえるが。」

 カイゼル殿下が、ユーリの考えの聞き取りをしている。
 これからの私に関する未来は、ユーリ次第と言っても良いだろう。

「イシュタニアに戻り、シードと公表まではしなくとも、ミツリくんを安全な場所に住まわせたい。こんな、どこから襲われても仕方がないような街中ではなく、せめて王宮内の限られた者しか入れない場所で暮らして欲しい。」

 やっぱりな。
 ガチガチな安定思考のユーリだ。
 結局、私は王宮内で暮らす他無いらしい。

「だが、私以外の人と会うのはもちろん大丈夫だ。その『神力封じの腕輪』をすれば、安全な場所ならどこに行っても良いだろう。そこまで不便な暮らしを強いるつもりはないし、『身代わりの魔導具』が完成すれば、それこそ護衛を付けて王宮外に出ることも出来るようにする。」

「ユーリ、わたしは魔導具師なの!仕事が出来る場所に居させて欲しい。」

「それは‥王宮内でなら、出来る範囲でやってくれて構わない。ただ、危険な魔導具を扱うのだけは、避けてもらおう。」

 はぁーっ、つまらん、つまらない。
 今から、やってらんない雰囲気がプンプンしている。
 私の我儘なのだろうが、これがシードとして生きると言うことなのか‥。

「ミツリ、ファイト!」

 気落ちしている私を見かねて、リチャードが声を掛けてくれる。
 リチャードには、このどうしようもない気持ち、分かるものね。

「それでは、今夜は仕方がないのでここに泊まり、明日は荷物をまとめてミツリくんとイシュタニアに戻るとする。魔導具や魔石など、貴重な物の運搬は、国から人を呼んで厳戒態勢で行おう。カイゼル、手配を手伝ってもらえるだろうか?」

 カイゼル殿下が微妙な顔付きで「任せろっ。」と言う。

 カイゼル殿下は、私が結局イシュタニアに引き戻されることに、罪悪感を抱いているのだろう。

 やっぱりというか、そうなるか、という結末。
 自らシードだと名乗り出たのだから、仕方なく、受け止めるしかないのだろうか?

 また、ため息を吐きそうになったその時、ベランダ側の窓から違和感を感じた。

 何気なく見ていると、閉ざされたカーテンが揺ら揺らと動いている。

 風に吹かれて捲れたカーテンの隙間から、中央に大穴の空いた窓ガラスが見えた。

「ミツリは行かせない‥。」

 大穴の向こうから、声が聞こえる。
 低い、響くような男の人の声だ。

 窓ガラスの大穴から風が入り込み、カーテンをハタハタと揺らす。

 その向こうにある人影は、外の暗闇に紛れ、はためくカーテンの隙間からも見る事は出来ない。

「私は、番人に連れて行かせるために、魔石を集めた訳ではない。」

 再び聞こえた低く響くその声は、もちろん、そのカーテンの奥にいる人物の物だ。

 魔石を集めたって‥。

 頭の中で、ある1人の人物を探し当てる。
 会いたくても会えなかった、あの人物‥。

「えーっ?!ランドール?!来るなら教えてよーっ。そんな、窓ガラス溶かさなくても言ってくれたら開けたのに‥。寒いからほらっ、中に入ったら?」

 リチャードが旧知の友への気やすさで声をかけるが、今がそんな状況で無いことを皆は気がついていた。そう、リチャード以外は。

「ミツリは、渡さない。」

 そう聞こえた瞬間、突風が窓ガラスの大穴から吹き込み、カーテンが大きく捲れあがった。
 気がつくと私の体は反転し、お腹に硬いものが食い込んでいる。
(これは、前にユーリにやられた事がある‥。)

 私は久しぶりに会えた父の顔を見ることも無く、その肩に担ぎ上げられていた。

 感動の再会なんてものは無く、私を担いだ父は疾風のように、窓ガラスの大穴から、屋外へと飛び出した。
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