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なかな

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御苑の戦い(ユーリ視点)

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「ここだな。」

 隠形魔術で姿を消しながら、ビルの上を渡ってここまで辿り着いた。
 御苑を囲む柵も飛び越え、苑内へと入り込む。

 新宿の高層ビルに囲まれた、静かな緑地。

 夜になり、閉園した今となっては、都会の喧騒から切り離された異世界のようだ。

 街道から聞こえる車のクラクションの音が、時折り風音に混じり、辛うじてここが街中なのだと認識させる。

 冬のキンとした冷たい空気が、足先から全身へと伝わってくる。

 早くミツリくんを連れ帰って、暖かい部屋で休ませないと‥。

 私は、こんなに世話焼きな人間だっただろうか?


 意識を研ぎ澄まし探った先に、小さく明かりが灯っている。
僅かだか、人の声もする。

 居たっ!

 その数十メートル先にいる人物に近づこうと、足を進めた時だった。

 見えていた小さな明かりが、私を目掛けて飛んできた。
 ランドールが、光球を投げてきたに違いない。

 私は瞬時に魔力で氷の礫を作り、光球に当て力を霧散させた。

 ランドールは、おそらく私に攻撃を仕掛ける気だ。

 それから数秒後、先程とは比較にならない威力の光球が、連続で私に向かって放たれた。

 それらをまた、同じように空中で打ち取り、周りの木々が傷つかないように霧散させる。だが、これではキリが無い。

 どうしたら、奴を話し合いに持ち込める?
 私が奴に攻撃して、近くにいるミツリくんに当たるような事でもあれば、後悔してもしきれない。

 私は、開けた場所へ移動するため、ランドールを誘うように、高い跳躍をした。


 ◆


 案の定、高く跳んだ私を狙って、ランドールが炎の塊を投げつけてきた。

 運よく属性的には私が有利だ。
 得意の水魔術を広範囲に広げれば、炎は勢いを失い消失する。

「くそっ!」

 ランドールの悔しそうな声が聞こえる。
 悔しがり、存分に焦れば良い。
 私はその間に勝機を見る。

 ランドールを開けた場所に誘い出すことはできたが、近くにいる筈のミツリ君の姿が無い。

「ランドール!ミツリくんはどこだ?」

「誰が、教えるかーっ!」

 やはり、安全な場所に隠しているのだろう。

「これ以上の攻撃は不毛だ!話し合おう!」

「出来るかーっ、連れて行かれるのが分かっていて、話し合うほど馬鹿じゃねぇ!」

 ランドールは決して折れないつもりだろう。
 勝負が付くまで終わりは見えない。

 まさか、あの最強魔術師と戦う日が来るとは思わなかった。



 ◇◇◇




 地響きがする。

 足元の枯れた芝の大地が盛り上がり、その勢いで体が空中に投げ出された。

 そうか、ランドールは火が得意なだけで他の魔術も操れるのか、やっかいだな。

 足場を作るため、瞬時に太い氷柱を作り出し歪んだ地面に深く突き刺す。
風魔術で上部をならし、そこに着地する。

「へぇーっ、流石は王族1番の使い手だな。機転も効くのか。」

「ランドール、この土地を破壊するな。イシュタニアの法で裁くぞ。」

「ハハッ、そんな氷柱突き刺しといて良く言うな!喧嘩両成敗って言うだろ?!」

「私は喧嘩をしているつもりは無いっ!」

「はっ!そうかよ。俺はあんたに喧嘩を売ったつもりだ。ミツリはやらんっ。」

「ミツリはイシュタニアにとって大事な人物だっ!聞き分けろ!」

「それなら尚更やれねぇなぁっ!」

 話にならない。
 多くの人間がこの魔術師を遠巻きにしていたのがよく分かる。

 この御仁には確固とした信念がある。

 例えそれが、多くの人と異なっていても貫き通す心の強さが、そして、それを叶える物理的な力さえも併せ持つ。

「やはり、敵には回したくない相手だな。」

「何だよ、諦める気か?!俺はミツリの自由を諦めないっ。ミツリの邪魔をする奴は、攻撃対象だっ!」

 ランドールが炎の輪を放つ。

 私を取り囲むように落ちてきた輪は、火力を強めながら中心へと集まってくる。

「ハッハッ、逃げれねぇだろっ!上に逃げても焼かれて焦げるぞっ!早く降参しろ、この人攫いっ!」

「‥‥人攫いは、お前だーーっ!!」

 私は、奥に見えた池の水中に召喚陣を描いた。

「来いっ、水竜っ!結界張ってやるから大いに暴れろっ!殺さなければっ、何をしても良いっ!」

 大きな池では無いが、私の水竜だから上手く出て来てくれるだろう。

 私がやるべき事は、ランドール以外の全てに結界を張り、この場所への被害を最小限に食い止めるだけ‥。

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