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走る2
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時は既に夕刻前。
1月の鉛色の空が、渋谷駅前に立ち並ぶファッションビルの頭上に広がっている。
「すいませんっ、あ、ごめんなさいっ。」
駅前の人混みの中を走り抜けるのは難しく、人と人との間をすり抜けるのも一苦労だ。
スピードを落とし、ようやく改札口にまで辿り着いた。
(えっと、横浜、「みなとみらい駅」までは‥。)
手元のスマフォで乗り換えを調べる。
(直通電車で40分弱!思っていたより近い。)
エリーちゃんの速度には敵わないけど、これならユーリを転移前に掴まえる事が出来るかもっ。
夕方の帰宅ラッシュなのか、横浜方面へ抜ける下りの電車は結構混んでいた。
途中の駅で学生の集団が乗り込んできて、車内は、よりギュウギュウになっていく。
私も日本で生まれていたら、こうして学生をしていたのだろうか?
蓮くんみたいに受験して、みんなと同じ制服を着て電車に乗って‥。
意味の無い妄想が頭をよぎる。
(私には、これは耐えられなかったかもしれない‥。)
父ランドールが番人の真似事をして根を上げたように、私には、皆と同じことをするという事が想像するだけで無理だった。
やっぱり親子だ‥。
幸い、魔導具師に協調性は求められなかったが、普通に貴族の娘に産まれて、母ニコルの元で私が育ったとしたら、問題児として扱われていたのかも知れない。
人生って、よく出来てるな‥。
ここに来て、自分が『神の蒔きし種』として産まれた事に感謝するとは思わなかった。
リチャードに育ててもらった事が、私にとっての幸運だったのだ。
「ふぁーっ。」
こんな緊張感のある事態なのに、何故か欠伸が出る。
車内の酸素が薄くて、酸欠だろうか?
日吉駅を過ぎたから、あと半分くらい。
ユーリまで、もうちょっとだ。
◇◇◇
「みなとみらい駅」に着いた時にはもう、夕方だった。
海が近いせいか、目の前を覆うように立ちはだかる灰色の雲が、日没の光を受けて薄く輝いている。淡く光るその雲の色は、まさに今探しているユーリの色だ。
(空を覆う銀色の雲‥。何だか重っ苦しいな。)
ここなら、ユーリが居そうな気がする。
よしっ!
父と決めた通り、ここからはダッシュだ。
私は軽く足首を伸ばしてストレッチすると、目の前に見える大きなホテルに向かって走り始めた。
◇
「はぁ、はぁっ‥。」
少し運動不足になっていたのだろうか?思ったよりも息が上がる。
シードだと表明してからは、外での活動を控えていたからそのせいだ。
目立つ外観のホテルの前に立ち、キョロキョロと銀髪の長身を探す。
(居ないっ‥、か。)
メインエントランスを抜けて、ラウンジも覗いてみるが、居ない‥。
上の階にある客室も気になるけれど、まさかそこまで立ち入れない。
もしかしたら、泊まっている可能性もあるので、後でまた、ここには立ち寄ってみよう。
次は「遊園地」だ。
私はホテルを背に、走り出した。
◇
海から吹き付ける風が、予想以上に強くて冷たい。
目の前には観覧車が見えていて、そこに向かって海上を渡る橋がかかっている。
橋の歩道を駆け抜ける私に横風が吹きつけて、オレンジ色の長めの前髪が、視界を遮る。
(少しでも見えてれば、ユーリとすれ違っても分かるよね‥。)
橋を渡り切った私は、遊園地の敷地へと続く通路に向かう。
その先は、景品が飾られたゲームコーナーだ。
数人がボールをゴールに投げ入れて遊んでいるが、人は余り居ない。
平日ということもあり、園内にいる人自体が多くは無いのだろう。
ーーこれなら、ユーリが居たら見つけ易い!
確か、奥にあるガラス張りの建物の中に、観覧車やジェットコースターの乗り場があったはず。
私が建物を目指して歩いていくと、少し離れた観覧車の下のほうで、見上げるように立つ、長身の人物が見えた。
髪の毛をひとつに結んでいるのか、輝くような銀色の長髪はそれ程目立たない。
「見つけたっ!」
私は、ユーリ目がけて駆け出した。
1月の鉛色の空が、渋谷駅前に立ち並ぶファッションビルの頭上に広がっている。
「すいませんっ、あ、ごめんなさいっ。」
駅前の人混みの中を走り抜けるのは難しく、人と人との間をすり抜けるのも一苦労だ。
スピードを落とし、ようやく改札口にまで辿り着いた。
(えっと、横浜、「みなとみらい駅」までは‥。)
手元のスマフォで乗り換えを調べる。
(直通電車で40分弱!思っていたより近い。)
エリーちゃんの速度には敵わないけど、これならユーリを転移前に掴まえる事が出来るかもっ。
夕方の帰宅ラッシュなのか、横浜方面へ抜ける下りの電車は結構混んでいた。
途中の駅で学生の集団が乗り込んできて、車内は、よりギュウギュウになっていく。
私も日本で生まれていたら、こうして学生をしていたのだろうか?
蓮くんみたいに受験して、みんなと同じ制服を着て電車に乗って‥。
意味の無い妄想が頭をよぎる。
(私には、これは耐えられなかったかもしれない‥。)
父ランドールが番人の真似事をして根を上げたように、私には、皆と同じことをするという事が想像するだけで無理だった。
やっぱり親子だ‥。
幸い、魔導具師に協調性は求められなかったが、普通に貴族の娘に産まれて、母ニコルの元で私が育ったとしたら、問題児として扱われていたのかも知れない。
人生って、よく出来てるな‥。
ここに来て、自分が『神の蒔きし種』として産まれた事に感謝するとは思わなかった。
リチャードに育ててもらった事が、私にとっての幸運だったのだ。
「ふぁーっ。」
こんな緊張感のある事態なのに、何故か欠伸が出る。
車内の酸素が薄くて、酸欠だろうか?
日吉駅を過ぎたから、あと半分くらい。
ユーリまで、もうちょっとだ。
◇◇◇
「みなとみらい駅」に着いた時にはもう、夕方だった。
海が近いせいか、目の前を覆うように立ちはだかる灰色の雲が、日没の光を受けて薄く輝いている。淡く光るその雲の色は、まさに今探しているユーリの色だ。
(空を覆う銀色の雲‥。何だか重っ苦しいな。)
ここなら、ユーリが居そうな気がする。
よしっ!
父と決めた通り、ここからはダッシュだ。
私は軽く足首を伸ばしてストレッチすると、目の前に見える大きなホテルに向かって走り始めた。
◇
「はぁ、はぁっ‥。」
少し運動不足になっていたのだろうか?思ったよりも息が上がる。
シードだと表明してからは、外での活動を控えていたからそのせいだ。
目立つ外観のホテルの前に立ち、キョロキョロと銀髪の長身を探す。
(居ないっ‥、か。)
メインエントランスを抜けて、ラウンジも覗いてみるが、居ない‥。
上の階にある客室も気になるけれど、まさかそこまで立ち入れない。
もしかしたら、泊まっている可能性もあるので、後でまた、ここには立ち寄ってみよう。
次は「遊園地」だ。
私はホテルを背に、走り出した。
◇
海から吹き付ける風が、予想以上に強くて冷たい。
目の前には観覧車が見えていて、そこに向かって海上を渡る橋がかかっている。
橋の歩道を駆け抜ける私に横風が吹きつけて、オレンジ色の長めの前髪が、視界を遮る。
(少しでも見えてれば、ユーリとすれ違っても分かるよね‥。)
橋を渡り切った私は、遊園地の敷地へと続く通路に向かう。
その先は、景品が飾られたゲームコーナーだ。
数人がボールをゴールに投げ入れて遊んでいるが、人は余り居ない。
平日ということもあり、園内にいる人自体が多くは無いのだろう。
ーーこれなら、ユーリが居たら見つけ易い!
確か、奥にあるガラス張りの建物の中に、観覧車やジェットコースターの乗り場があったはず。
私が建物を目指して歩いていくと、少し離れた観覧車の下のほうで、見上げるように立つ、長身の人物が見えた。
髪の毛をひとつに結んでいるのか、輝くような銀色の長髪はそれ程目立たない。
「見つけたっ!」
私は、ユーリ目がけて駆け出した。
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