未完成のメソッド

紫苑色のシオン

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僕の独り言から始まる最後の一年間

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 さて、いきなりで非常に申し訳ないのだが、一年が経った。沙月さんが起こしたあの援交写真事件から一年が経った。あれからはさして特に綴る様な事件や出来事はなく、沙月さんは卒業し、隣県の大学に進学した。僕は普通に三年生に進級し、これから受験に向けて努力あるのみ、という次第になった。目指すは沙月さんの進学した大学だ。というのが何の変哲もない日常の中で報告するべき事柄だろう。

 つまり、この段階で報告しないということは、僕はまだ沙月さんと付き合ったりという恋仲になったわけではない。援交写真事件の幕引きの日に沙月さんに本気の告白をされ、それに対し僕は保留という形を取った。非常に卑怯なやり方だろう。僕もそう思う。
 でも言い訳をさせてもらうと、僕は別に大した人間ではない。顔立ちは確かに童顔よりかもしれないけど、普通の顔立ちだし、頭も特別良いわけではないし、運動に至っては苦手な方だ。それに対し、沙月さんは美人だし、勉強も本気でやれば学年トップを取れるほどだし、運動の方はしている所を見たことがないので不明。三戦零勝二敗一分という何とも男としては無残な状況なわけだ。せめて何か一つだけでも沙月さんに誇れるもの、ないし沙月さんに追いつけるものがあれば僕だって沙月さんとお付き合いしたいと考えているわけで。

 ところで、さっきから違和感があるかもしれないね。沙月さん、という呼び方について。これは単純に沙月さんがもう部長ではなくなったからだ。
 沙月さん曰く。

「私達はそれなりに親密な関係だと言えると考えます。なので姓でなく名で呼んでください。さぁ」

 との事。しかも最初は呼び捨てを強要された。必死に抵抗する僕を見て、さん付けで妥協してくれたのだ。
 ちなみに今の新聞部部長は当然ながら僕になった。僕以外の三年生がいないのだから当然とも言える。あの沙月さんの跡を上手く継げるか不安でしかなかったけど、やってみたら意外と何とかなっていく。世の中って凄い。

 あ、でも報告すべき様な事はもう一つぐらいあったよ。今沙月さんは僕の家庭教師をしてくれている。週三日、僕の家に来て勉強を教えてくれる。非常にありがたい話なのだが、何だか母と仲良くなっていくのを見ると、外堀を埋められている気分になってきて複雑だ。
 沙月さんは相変わらず地味な装いをして目立たない様にしているらしい。らしいというのは大学での沙月さんを僕は知らないからだ。しかし、家庭教師として僕の家に来てくれる時は非常に今時の大学生っぽい装いをしてくる。
 沙月さん曰く。

「好きな人には可愛く見られたいのよ」

 だそうで。何とも健気で可愛らしい。抱きしめたくなる。しないけども。
 というか、主婦の母はほぼいつも家にいるから沙月さんと会う機会が多く、仲良くなるのも分かるのだが、なぜ出張などで家を空けることが多い父とも仲良くなっているんだ。その内我が家に住みだすのではないだろうか。我が家が乗っ取られる。

 新聞部は例年通り、ネームバリューに騙された一年生が入部してきた。さて、何人残ることやら。まぁ、沙月さんのいない新聞部は僕としてもそんなに執心するような部活でもない。卒業するまでに残っていてくれたらそれで構わない。やけに一人僕に懐いてくる一年生が入ってきたけど、沙月さんに知られたら危ない。その子が山に埋められるかもしれない。僕は沙月さん一筋ですよ。なら付き合えという話か。いやまだ無理。

 さて、これで本当に報告は以上かな。
 これから一年間、穏やかに、健やかに、穏便に済ませますように…。
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