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夏の章 焦がれる花火1
「このカーディガン……は、柄が派手すぎるかな。やっぱこっちのワンピの方が流行りだし……でも白雪さん、流行りとかどうでもよさそうだしなぁ」
土曜日の朝。部屋のベッドの上に大量の服を並べた私は、ひたすら頭を悩ませ続けていた。
クローゼットから服を取り出しては当ててみて、鏡を見る。なんとなく違うかなって思って、また違う服を当ててみる。
ずっとその繰り返し。全然これって服が決まらない。
でも、ここで妥協はしたくない!
だって。
だって今日は——。
白雪さんと、初のデートなんだもん!
夏の章 焦がれる花火
きっかけは昨日の放課後。白雪さんと並んで歩いてた帰り道の、ふとした会話だった。
私が白雪さんに、「明日の休みは何か予定あるんですか?」って聞いたの。
そうしたら——。
「明日は、動物園に行こうかと思ってるんだ」
「動物園?」
質問に返ってきた答えは、意外なものだった。
前に「休みの日は何して過ごしてるんですか?」って聞いたら、家で本を読んでいるか、図書館巡りすることが多いって言ってたから。
「……なんか意外だなぁ。何見にいくんですか?」
「特にこれという目当てがあるわけじゃなく、動物全般を見たいんだ。最近、興味深い生物書を読んだせいか、実物を目にしたくなってね」
「そうなんだ。……動物園かぁ。しばらく行ってないかも」
何気なくこぼして、そこでハッとした。
あれ?これってチャンスじゃない!?って。
「あっ、あの、白雪さん!それって、ひとりで行くんですか?」
「ん?ああ、そうだよ」
「じゃ、じゃあ!私も一緒に行ってもいいですか!?」
今でしょ!って、私の脳内で林先生が叫んだ。昨日テレビで見たせいか、めちゃくちゃリアルに浮かんじゃった。
「その……私、長いこと動物園行ってないから、久しぶりに行ってみたいな~と思って……もちろん、白雪さんの邪魔になるなら無理にとは言わないんですけど!」
思い切って言ってみたものの、踏み込みすぎたかもって思って、慌ててそれっぽい理由を付け足す。
白雪さんって、距離感難しいんだよ。どう見てもベタベタされるの好きなタイプじゃないし。
……でもそんなこと言ってたら、初デートなんて夢のまた夢だし。
だから、今しかない!って思ったの。久しぶりに行きたいかも~なんて言えば、ワンチャン可能性あるのではって……。
「構わないよ。一緒に行こうか」
「えっ!?」
グジグジ考えてたら、あっさりオッケーが返ってきて思わず驚いちゃった!
あまりの衝撃に足を止めて、隣を歩く白雪さんを見つめる。急に立ち止まった私に白雪さんは不思議そうな顔をして、一緒に足を止める。
傾いた首に、湿気にも負けない、うねり知らずなストレートヘアが揺れる。
……あぁ、やっぱり今日も素敵。
うっとりと白雪さんに見惚れる。
六月になって衣替えがあって、私たちのセーラー服は夏服に変わった。スカートは軽めの生地になっただけだけど、上の制服は厚い紺の生地から、薄くて白い生地のものになった。
その白いセーラーが、白雪さんにすっごく似合ってるの!爽やかで、眩しいくらい太陽の光を反射してて……ううん、むしろ白雪さんが太陽って感じ!
「桜井さん?」
呼びかけられて、惚けた私はハッとする。
いけない。大事な会話の途中なのに。
「えっと……まさか、『いいよ』って言ってもらえるなんて思ってなくて……」
「一緒に行ってもいいかって聞いたのは、君なのに?」
あわあわする私を、白雪さんがくすっと笑う。うぅ……なんかいつもこのパターンで笑われてる気がする。
「だって白雪さん、ひとりで行動したいタイプかなーって思ってたから。邪魔じゃないかなぁって思って……」
「そんなこと考えていたのかい?」
今度は白雪さんの方が意外そうな顔をする。そして、すぐに穏やかな笑みに変わる。
「一人で行動する方が確かに気が楽だけど……嫌ならこうして一緒に過ごすこともしないし、ましてや、付き合うなんて言わないよ」
優しく諭すような声色に、ドキッと胸が跳ね上がる。
私と居るの、嫌じゃないんだ!……ていうか、付き合ってるって、ちゃんと思っててくれたんだ!!
選ばれてるって実感がして、一気に胸の奥がぶわってあったかくなる。でも、なんだか照れくさくもあって……。
うぅ……私、にやけすぎてないかな!?
「白雪さん……あの、そう言ってもらえると私、すごく嬉しいです!」
「ならよかった。動物園、一緒に行くんだよね?」
「行きますッ!死んでも行きます!!」
「ふふっ。死んだら行けないよ?生きて、ちゃんと待ち合わせをしようか」
バカな私の答えにも、楽しそうに笑って返してくれる。その返し方が白雪さんらしくて、他の子とのノリとは全然違うなって思う。
——白雪さんとおしゃべりするのって、ホントに楽しい。
何を話しても聞いても、全部新鮮。みんなの言う「おかしい」は、私にとっては「楽しい」でしかない。
初めて会った時からなんとなく感じてたけど、私、白雪さんのペース?考え方とか話し方?そういうのが好きなんだなって思う。
たしかに人とはちょっと違うけど、そういうのも含めて白雪さんで、むしろそんな白雪さんだからこそ好きなんだって……『好き』を自覚した今なら思う。
もっともっと話したい。
この初デートはきっと、そんな私の密かな野望を叶えてくれるはず!
そう意気込んだ私は、白雪さんと一緒に動物園に行く約束をして——今、この朝のドタバタに至ってる。
土曜日の朝。部屋のベッドの上に大量の服を並べた私は、ひたすら頭を悩ませ続けていた。
クローゼットから服を取り出しては当ててみて、鏡を見る。なんとなく違うかなって思って、また違う服を当ててみる。
ずっとその繰り返し。全然これって服が決まらない。
でも、ここで妥協はしたくない!
だって。
だって今日は——。
白雪さんと、初のデートなんだもん!
夏の章 焦がれる花火
きっかけは昨日の放課後。白雪さんと並んで歩いてた帰り道の、ふとした会話だった。
私が白雪さんに、「明日の休みは何か予定あるんですか?」って聞いたの。
そうしたら——。
「明日は、動物園に行こうかと思ってるんだ」
「動物園?」
質問に返ってきた答えは、意外なものだった。
前に「休みの日は何して過ごしてるんですか?」って聞いたら、家で本を読んでいるか、図書館巡りすることが多いって言ってたから。
「……なんか意外だなぁ。何見にいくんですか?」
「特にこれという目当てがあるわけじゃなく、動物全般を見たいんだ。最近、興味深い生物書を読んだせいか、実物を目にしたくなってね」
「そうなんだ。……動物園かぁ。しばらく行ってないかも」
何気なくこぼして、そこでハッとした。
あれ?これってチャンスじゃない!?って。
「あっ、あの、白雪さん!それって、ひとりで行くんですか?」
「ん?ああ、そうだよ」
「じゃ、じゃあ!私も一緒に行ってもいいですか!?」
今でしょ!って、私の脳内で林先生が叫んだ。昨日テレビで見たせいか、めちゃくちゃリアルに浮かんじゃった。
「その……私、長いこと動物園行ってないから、久しぶりに行ってみたいな~と思って……もちろん、白雪さんの邪魔になるなら無理にとは言わないんですけど!」
思い切って言ってみたものの、踏み込みすぎたかもって思って、慌ててそれっぽい理由を付け足す。
白雪さんって、距離感難しいんだよ。どう見てもベタベタされるの好きなタイプじゃないし。
……でもそんなこと言ってたら、初デートなんて夢のまた夢だし。
だから、今しかない!って思ったの。久しぶりに行きたいかも~なんて言えば、ワンチャン可能性あるのではって……。
「構わないよ。一緒に行こうか」
「えっ!?」
グジグジ考えてたら、あっさりオッケーが返ってきて思わず驚いちゃった!
あまりの衝撃に足を止めて、隣を歩く白雪さんを見つめる。急に立ち止まった私に白雪さんは不思議そうな顔をして、一緒に足を止める。
傾いた首に、湿気にも負けない、うねり知らずなストレートヘアが揺れる。
……あぁ、やっぱり今日も素敵。
うっとりと白雪さんに見惚れる。
六月になって衣替えがあって、私たちのセーラー服は夏服に変わった。スカートは軽めの生地になっただけだけど、上の制服は厚い紺の生地から、薄くて白い生地のものになった。
その白いセーラーが、白雪さんにすっごく似合ってるの!爽やかで、眩しいくらい太陽の光を反射してて……ううん、むしろ白雪さんが太陽って感じ!
「桜井さん?」
呼びかけられて、惚けた私はハッとする。
いけない。大事な会話の途中なのに。
「えっと……まさか、『いいよ』って言ってもらえるなんて思ってなくて……」
「一緒に行ってもいいかって聞いたのは、君なのに?」
あわあわする私を、白雪さんがくすっと笑う。うぅ……なんかいつもこのパターンで笑われてる気がする。
「だって白雪さん、ひとりで行動したいタイプかなーって思ってたから。邪魔じゃないかなぁって思って……」
「そんなこと考えていたのかい?」
今度は白雪さんの方が意外そうな顔をする。そして、すぐに穏やかな笑みに変わる。
「一人で行動する方が確かに気が楽だけど……嫌ならこうして一緒に過ごすこともしないし、ましてや、付き合うなんて言わないよ」
優しく諭すような声色に、ドキッと胸が跳ね上がる。
私と居るの、嫌じゃないんだ!……ていうか、付き合ってるって、ちゃんと思っててくれたんだ!!
選ばれてるって実感がして、一気に胸の奥がぶわってあったかくなる。でも、なんだか照れくさくもあって……。
うぅ……私、にやけすぎてないかな!?
「白雪さん……あの、そう言ってもらえると私、すごく嬉しいです!」
「ならよかった。動物園、一緒に行くんだよね?」
「行きますッ!死んでも行きます!!」
「ふふっ。死んだら行けないよ?生きて、ちゃんと待ち合わせをしようか」
バカな私の答えにも、楽しそうに笑って返してくれる。その返し方が白雪さんらしくて、他の子とのノリとは全然違うなって思う。
——白雪さんとおしゃべりするのって、ホントに楽しい。
何を話しても聞いても、全部新鮮。みんなの言う「おかしい」は、私にとっては「楽しい」でしかない。
初めて会った時からなんとなく感じてたけど、私、白雪さんのペース?考え方とか話し方?そういうのが好きなんだなって思う。
たしかに人とはちょっと違うけど、そういうのも含めて白雪さんで、むしろそんな白雪さんだからこそ好きなんだって……『好き』を自覚した今なら思う。
もっともっと話したい。
この初デートはきっと、そんな私の密かな野望を叶えてくれるはず!
そう意気込んだ私は、白雪さんと一緒に動物園に行く約束をして——今、この朝のドタバタに至ってる。
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