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秋の章 揺れる秋桜2
放課後の帰り道。いつものように白雪さんと下校していると、すぐにお別れの駅はやってきた。
帰宅する生徒や社会人であふれてる、夕暮れの駅。大きなガラス窓には西日が反射してて、私と白雪さんは、眩しい茜色に染められてる。
——まるで、一日の終わりだって言われてるみたいに。
「それじゃあまた明日」
「……白雪さんっ!あの、もう少しだけ……お話しませんか?」
何事もなく別れを切り出す白雪さんが、あまりにも寂しくて。私は白雪さんの都合なんて考えず、勢いのまま引き留めた。
「……それは構わないけど。どこか行きたいところでもあるのかい?」
「えっと、最近この辺にジェラート屋さんが出来たらしくて。美味しいって評判だから、白雪さんと食べたいなって思って」
とっさに理由を作って誘えば、白雪さんは「じゃあ行ってみようか」と乗ってくれた。
……ホントは、どこだっていいんだ。白雪さんと、まだ一緒にいられるなら。
ふたりでジェラート屋に行って、白雪さんは迷うことなく抹茶を選んだ。私は何にするかすごく悩んだけど、最終的にミルクにした。
どれも美味しそうだったけど……このミルクの白さが、白雪さんの肌や名前を表しているみたいだって思ったから。
……ちょっと、考えが行き過ぎてるなって思うんだけど。それくらい私の心の中は、白雪さんでいっぱいなんだ。
店内はさすがに混んでて無理だったから、テイクアウトにして近所の公園で食べることにした。
カレンダー的には秋だけど、まだまだ気温は暑い。残暑に汗が滲む中、銀杏の木陰のベンチに座ってジェラートを一口食べたら、なんだかまだ夏が続いているような気がした。
夏の名残を乗せた、秋の始まりの風が、私たちの間をすり抜ける。
生ぬるさが髪や肌を撫でて、半端な季節は、色を変え始めた木々の葉を揺らしてく。
——ちらりと、隣の白雪さんを盗み見る。
冬服への移行期間に入って、白雪さんは一足早く冬服に戻ってしまった。
涼しそうな顔で抹茶ジェラートを食べてるけど……長袖、暑くないのかな。
そう思いながらもふと、まだ夏服な私と違う格好にさえすれ違いを感じて、なんだか切なくなる。
「……そういえば白雪さん、もうすぐ誕生日ですよね。誕生日は、なにか予定あるんですか?」
話を振れば、銀杏の木を見上げていた白雪さんの視線が私に移る。スプーンを持つ手が、そっと止まる。
「特に予定はないよ。毎年好きな料理が用意されて、ケーキを食べるくらいだね。羽澄くんの家はもっと盛大なのかな」
「ウチは家族みんなで外食に行くんです。誕生日は好きなお店指定オッケーって制度で……あ、これ!今年の私の誕生日の写真です!」
スマホを取り出して、誕生日の写真を見せる。家族みんなで慣れないオシャレをして、ケーキが乗ったプレートを囲みながら撮ったやつ。
「私が高校入学直前だったから、そのお祝いも兼ねて、ちょっとお高めのフレンチを食べに行ったんです。でもみんな慣れてなくて、どのフォーク使うのとか、この料理よくわかんないけど美味しいねとか、そわそわしながら感想言い合ってました」
思い出し笑いをしながら語れば、白雪さんが興味深そうに写真を見つめる。そして、あったかそうに瞳を細める。
「羽澄くんの家は、仲が良さそうだね」
「弟は最近生意気ですけどね。でも、仲は良い方かもしれないです。白雪さんはご家族と写真撮ったりしないんですか?」
「あまりそういったことはしないね。……あぁ、でも、去年の誕生日は撮ったかな。確か……」
言いながら、白雪さんが古めのスマホを私に見せてくる。
探す指が、カメラロールの画面を遡って——その中の一枚に、私の視線が凍りついた。
「…………白雪さん……この男の子……誰ですか……?」
そこには、白雪さんの家の庭らしき場所で映った、学ランの男子がいた。
すごく綺麗な顔をした、凛々しい瞳が印象的な、短髪の男の子。
それを目にした私は、とっさに思った。
——もしかして……『彼氏』なのかなって。
急に、心臓が冷たく鳴り始める。
汗がすっと引いて、頬が強張って、ジェラートを持った指が震えてくる。
——考えたことなかった。
白雪さんに好きな人がいるかもとか、昔付き合ってた人がいるかもとか。
だって、白雪さんはずっと、孤高の人だと思ってたから。
私は、『私だけ』が、特別だと思ってたんだ。
震え声の私に、白雪さんがゆっくりと瞬いた。
そして男の子の写真を開いたかと思うと、凍りついた私の瞳を優しく覗いて——
「これは、中学の頃の私だよ」
そう、答えた。
「………………は?」
思いもよらない答えに驚いて、白雪さんを見つめ返す。ぽかんとする私の顔が面白かったのか、白雪さんはくっ、と小さな笑いを噛み締めてる。
「中学に入ってから、男子や大人の性的な視線が酷く気になるようになってね。思春期に入りたてで精神的に不安定だったせいもあって、何とか軽減出来ないかと色々考えたんだ」
「……それで、男子の格好……してたんですか?」
「男の格好をしていれば、女としてみられないと思ったんだ。我ながら安直な考えだったけど、それなりに効果はあったよ」
——そんなことある!?
……って思ったけど、白雪さんほど綺麗な人なら、そういうストレスって半端なかったんだろうな。
女子校にいる今だって注目を浴びてるわけだし、男の人がいればなおさらだよね。
……にしても、男の子の格好をするって選択が、あまりにも白雪さんらしすぎるけど。
「そうだったんですね……。でも、こんなにカッコよかったら、今度は女子にモテませんでした?」
「うん。女子からはよくアプローチされたね。全て断ったけど、想定していたより数が多くて、却って面倒を招いたかなとも思っていたよ」
あっけらかんと言う白雪さんの、「全て断った」って言葉にすごく安心して、思わずほっと息をついちゃう。
——よかった。白雪さん、告白全部断ったんだ。
そう思ったら、今の自分がやっぱり特別に思えてきて、バカみたいにすぐ嬉しくなっちゃう。私だけが特別って言われたわけでもないのに、それでもドキドキして、にまにましちゃって。
そんな風に浮かれてたら、白雪さんがふと、微笑みながら言った。
「……もしかして、気にしたのかな。私の恋人か何かじゃないかと」
「えっ!?いッ、いや!そんなことないです!全然ないですっ!!ただちょっと気になったっていうか!白雪さんの交友関係ってどんな感じなのかなーって思っただけっていうか!!」
「……ふふっ。そうか。じゃあ、そういうことにしておこうか」
「そっ、それより!白雪さんの中学時代ってどんな感じだったんですか!?」
「私の中学時代かい?そうだね、あの頃は——」
必死に話題を変えて誤魔化して——いや、誤魔化せてたのかな……?
とにかくそれからは、白雪さんの中学時代の話をいっぱい聞いた。
私の知らない白雪さんを知れるのは、すごく嬉しい。
白雪さんの思い出を分けてもらってるみたいで、どんな小さな過去の話も、私にとっては宝物みたいだった。
そうして帰る時間が近づいた頃。
突然、私のスマホがポヨンと音を立てて、メッセージを受信した。
「あれ?お母さんからだ。……えっ」
開いたメッセージを見て、一瞬、視線が止まる。
「どうかしたのかい?」
「……北海道に住むおばあちゃんが、入院するって」
突然の悪い知らせに、慌てて病状はどうなのかと送り返す。するとすぐに返事のメッセージが届く。
『ただの胆石だから大丈夫よ。ただ週末に手術になるから、金曜日から北海道に行って、念のため付いてようかってお父さんと話してたの。和馬は学校休んで行くって言うから連れてくけど、羽澄はどうする?』
——金曜日。
その日は、白雪さんの誕生日だ。
「お祖母様の容体は大丈夫かい?」
「……はい。命に関わるものじゃないみたいなんで、心配はいらないみたいです」
「そうか。それはよかった」
安心したように頬を緩めた白雪さんを、じっと見つめる。
そしてごくりと息を飲み込んで——思い切って、固まっていた口を開いた。
「……白雪さん。あの、誕生日の日……ウチで、一緒にお祝いしませんか?次の日休みだから、その、もしよければ……泊まりで、とか」
白雪さんの誕生日に、家族が家を空ける。
そのシチュエーションは、「家でふたりきりになれるよ」って、まるで神様が図ってくれたみたいで——。
どうしても、白雪さんを誘わずにはいられなかった。
「……お祝い?羽澄くんの家に、泊まりで?」
「あの!両親と弟が、金曜日からおばあちゃんの入院のために北海道に行くそうなんです。それで家が空いて、私ひとりになるから……白雪さんが来てくれたら、心強いなっていうのもあって!」
わたわたと理由を付け足したら、白雪さんがジェラートを一口食べながら、少し考えるように目を伏せた。
……断られるかな。初めて家に誘ったのに、いきなり泊まりだなんて、やっぱりおかしいと思われてるかな……。
そんな風に不安になってたら、白雪さんは目線を上げて、私に小さく微笑んでくれた。
「……そういう事情なら、お邪魔しようかな」
「ほ、ホントですか!?来てくれるんですか!?」
「うん。お邪魔じゃなければね。盛大に祝ってもらう必要はないけど、羽澄くんと誕生日を過ごすっていうのは、なかなか面白そうだしね」
「邪魔だなんてそんなことないです!むしろ嬉しいし助かります!!」
「そうか。私としても、前に羽澄くんがお茶を淹れてくれると言っていたの、密かに楽しみにしていたんだ。だから誕生日のお祝いは、羽澄くんの淹れたお茶をもらおうかな」
あの話覚えててくれたんだ……!しかも、楽しみにしてたって……!
どうしよう、すごく嬉しい!!白雪さんがウチに泊まってくれて、誕生日っていう特別な日を私と一緒に過ごしてくれて……!!
——もう、頭の中は完全にお花畑だった。
脳内はお祭り騒ぎになって、どんなお祝いしようとか、何かプレゼント用意しなきゃとか、手料理とか作っちゃおうかなとか、もう騒ぎまくってた。
そんなのがたぶん、何も隠せてなくて。
浮かれてぺらぺらと喋る私は——白雪さんのどこか複雑な笑顔に、気づけないままだった。
帰宅する生徒や社会人であふれてる、夕暮れの駅。大きなガラス窓には西日が反射してて、私と白雪さんは、眩しい茜色に染められてる。
——まるで、一日の終わりだって言われてるみたいに。
「それじゃあまた明日」
「……白雪さんっ!あの、もう少しだけ……お話しませんか?」
何事もなく別れを切り出す白雪さんが、あまりにも寂しくて。私は白雪さんの都合なんて考えず、勢いのまま引き留めた。
「……それは構わないけど。どこか行きたいところでもあるのかい?」
「えっと、最近この辺にジェラート屋さんが出来たらしくて。美味しいって評判だから、白雪さんと食べたいなって思って」
とっさに理由を作って誘えば、白雪さんは「じゃあ行ってみようか」と乗ってくれた。
……ホントは、どこだっていいんだ。白雪さんと、まだ一緒にいられるなら。
ふたりでジェラート屋に行って、白雪さんは迷うことなく抹茶を選んだ。私は何にするかすごく悩んだけど、最終的にミルクにした。
どれも美味しそうだったけど……このミルクの白さが、白雪さんの肌や名前を表しているみたいだって思ったから。
……ちょっと、考えが行き過ぎてるなって思うんだけど。それくらい私の心の中は、白雪さんでいっぱいなんだ。
店内はさすがに混んでて無理だったから、テイクアウトにして近所の公園で食べることにした。
カレンダー的には秋だけど、まだまだ気温は暑い。残暑に汗が滲む中、銀杏の木陰のベンチに座ってジェラートを一口食べたら、なんだかまだ夏が続いているような気がした。
夏の名残を乗せた、秋の始まりの風が、私たちの間をすり抜ける。
生ぬるさが髪や肌を撫でて、半端な季節は、色を変え始めた木々の葉を揺らしてく。
——ちらりと、隣の白雪さんを盗み見る。
冬服への移行期間に入って、白雪さんは一足早く冬服に戻ってしまった。
涼しそうな顔で抹茶ジェラートを食べてるけど……長袖、暑くないのかな。
そう思いながらもふと、まだ夏服な私と違う格好にさえすれ違いを感じて、なんだか切なくなる。
「……そういえば白雪さん、もうすぐ誕生日ですよね。誕生日は、なにか予定あるんですか?」
話を振れば、銀杏の木を見上げていた白雪さんの視線が私に移る。スプーンを持つ手が、そっと止まる。
「特に予定はないよ。毎年好きな料理が用意されて、ケーキを食べるくらいだね。羽澄くんの家はもっと盛大なのかな」
「ウチは家族みんなで外食に行くんです。誕生日は好きなお店指定オッケーって制度で……あ、これ!今年の私の誕生日の写真です!」
スマホを取り出して、誕生日の写真を見せる。家族みんなで慣れないオシャレをして、ケーキが乗ったプレートを囲みながら撮ったやつ。
「私が高校入学直前だったから、そのお祝いも兼ねて、ちょっとお高めのフレンチを食べに行ったんです。でもみんな慣れてなくて、どのフォーク使うのとか、この料理よくわかんないけど美味しいねとか、そわそわしながら感想言い合ってました」
思い出し笑いをしながら語れば、白雪さんが興味深そうに写真を見つめる。そして、あったかそうに瞳を細める。
「羽澄くんの家は、仲が良さそうだね」
「弟は最近生意気ですけどね。でも、仲は良い方かもしれないです。白雪さんはご家族と写真撮ったりしないんですか?」
「あまりそういったことはしないね。……あぁ、でも、去年の誕生日は撮ったかな。確か……」
言いながら、白雪さんが古めのスマホを私に見せてくる。
探す指が、カメラロールの画面を遡って——その中の一枚に、私の視線が凍りついた。
「…………白雪さん……この男の子……誰ですか……?」
そこには、白雪さんの家の庭らしき場所で映った、学ランの男子がいた。
すごく綺麗な顔をした、凛々しい瞳が印象的な、短髪の男の子。
それを目にした私は、とっさに思った。
——もしかして……『彼氏』なのかなって。
急に、心臓が冷たく鳴り始める。
汗がすっと引いて、頬が強張って、ジェラートを持った指が震えてくる。
——考えたことなかった。
白雪さんに好きな人がいるかもとか、昔付き合ってた人がいるかもとか。
だって、白雪さんはずっと、孤高の人だと思ってたから。
私は、『私だけ』が、特別だと思ってたんだ。
震え声の私に、白雪さんがゆっくりと瞬いた。
そして男の子の写真を開いたかと思うと、凍りついた私の瞳を優しく覗いて——
「これは、中学の頃の私だよ」
そう、答えた。
「………………は?」
思いもよらない答えに驚いて、白雪さんを見つめ返す。ぽかんとする私の顔が面白かったのか、白雪さんはくっ、と小さな笑いを噛み締めてる。
「中学に入ってから、男子や大人の性的な視線が酷く気になるようになってね。思春期に入りたてで精神的に不安定だったせいもあって、何とか軽減出来ないかと色々考えたんだ」
「……それで、男子の格好……してたんですか?」
「男の格好をしていれば、女としてみられないと思ったんだ。我ながら安直な考えだったけど、それなりに効果はあったよ」
——そんなことある!?
……って思ったけど、白雪さんほど綺麗な人なら、そういうストレスって半端なかったんだろうな。
女子校にいる今だって注目を浴びてるわけだし、男の人がいればなおさらだよね。
……にしても、男の子の格好をするって選択が、あまりにも白雪さんらしすぎるけど。
「そうだったんですね……。でも、こんなにカッコよかったら、今度は女子にモテませんでした?」
「うん。女子からはよくアプローチされたね。全て断ったけど、想定していたより数が多くて、却って面倒を招いたかなとも思っていたよ」
あっけらかんと言う白雪さんの、「全て断った」って言葉にすごく安心して、思わずほっと息をついちゃう。
——よかった。白雪さん、告白全部断ったんだ。
そう思ったら、今の自分がやっぱり特別に思えてきて、バカみたいにすぐ嬉しくなっちゃう。私だけが特別って言われたわけでもないのに、それでもドキドキして、にまにましちゃって。
そんな風に浮かれてたら、白雪さんがふと、微笑みながら言った。
「……もしかして、気にしたのかな。私の恋人か何かじゃないかと」
「えっ!?いッ、いや!そんなことないです!全然ないですっ!!ただちょっと気になったっていうか!白雪さんの交友関係ってどんな感じなのかなーって思っただけっていうか!!」
「……ふふっ。そうか。じゃあ、そういうことにしておこうか」
「そっ、それより!白雪さんの中学時代ってどんな感じだったんですか!?」
「私の中学時代かい?そうだね、あの頃は——」
必死に話題を変えて誤魔化して——いや、誤魔化せてたのかな……?
とにかくそれからは、白雪さんの中学時代の話をいっぱい聞いた。
私の知らない白雪さんを知れるのは、すごく嬉しい。
白雪さんの思い出を分けてもらってるみたいで、どんな小さな過去の話も、私にとっては宝物みたいだった。
そうして帰る時間が近づいた頃。
突然、私のスマホがポヨンと音を立てて、メッセージを受信した。
「あれ?お母さんからだ。……えっ」
開いたメッセージを見て、一瞬、視線が止まる。
「どうかしたのかい?」
「……北海道に住むおばあちゃんが、入院するって」
突然の悪い知らせに、慌てて病状はどうなのかと送り返す。するとすぐに返事のメッセージが届く。
『ただの胆石だから大丈夫よ。ただ週末に手術になるから、金曜日から北海道に行って、念のため付いてようかってお父さんと話してたの。和馬は学校休んで行くって言うから連れてくけど、羽澄はどうする?』
——金曜日。
その日は、白雪さんの誕生日だ。
「お祖母様の容体は大丈夫かい?」
「……はい。命に関わるものじゃないみたいなんで、心配はいらないみたいです」
「そうか。それはよかった」
安心したように頬を緩めた白雪さんを、じっと見つめる。
そしてごくりと息を飲み込んで——思い切って、固まっていた口を開いた。
「……白雪さん。あの、誕生日の日……ウチで、一緒にお祝いしませんか?次の日休みだから、その、もしよければ……泊まりで、とか」
白雪さんの誕生日に、家族が家を空ける。
そのシチュエーションは、「家でふたりきりになれるよ」って、まるで神様が図ってくれたみたいで——。
どうしても、白雪さんを誘わずにはいられなかった。
「……お祝い?羽澄くんの家に、泊まりで?」
「あの!両親と弟が、金曜日からおばあちゃんの入院のために北海道に行くそうなんです。それで家が空いて、私ひとりになるから……白雪さんが来てくれたら、心強いなっていうのもあって!」
わたわたと理由を付け足したら、白雪さんがジェラートを一口食べながら、少し考えるように目を伏せた。
……断られるかな。初めて家に誘ったのに、いきなり泊まりだなんて、やっぱりおかしいと思われてるかな……。
そんな風に不安になってたら、白雪さんは目線を上げて、私に小さく微笑んでくれた。
「……そういう事情なら、お邪魔しようかな」
「ほ、ホントですか!?来てくれるんですか!?」
「うん。お邪魔じゃなければね。盛大に祝ってもらう必要はないけど、羽澄くんと誕生日を過ごすっていうのは、なかなか面白そうだしね」
「邪魔だなんてそんなことないです!むしろ嬉しいし助かります!!」
「そうか。私としても、前に羽澄くんがお茶を淹れてくれると言っていたの、密かに楽しみにしていたんだ。だから誕生日のお祝いは、羽澄くんの淹れたお茶をもらおうかな」
あの話覚えててくれたんだ……!しかも、楽しみにしてたって……!
どうしよう、すごく嬉しい!!白雪さんがウチに泊まってくれて、誕生日っていう特別な日を私と一緒に過ごしてくれて……!!
——もう、頭の中は完全にお花畑だった。
脳内はお祭り騒ぎになって、どんなお祝いしようとか、何かプレゼント用意しなきゃとか、手料理とか作っちゃおうかなとか、もう騒ぎまくってた。
そんなのがたぶん、何も隠せてなくて。
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