ぼくの夢をくれた理学療法士と超能力な患者さんたち

莉桜咲

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ぼくの夢は何だろう?

25.書道教室

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 「こんにちは、大夢ひろむくん。今日はよろしくね。」
おばあちゃん先生だ。ぼくは正座ができないから、テーブルとイスを用意してくれたよ。今日はお母さんはいないんだ。朔也さくやがいるからいいよって言ったんだ。
「もし、書いてみたくなったら、道具を貸してあげるから、書いてみようね。」
おっとりとした先生がにっと笑った。
「はい。お願いします。」
早速、ぼくは見学を始めた。朔也が毛筆の準備をしている。他には、低学年くらいの女の子が2人。中学生のお姉さんが1人。低学年の子が集中して書いててすごいな。朔也が書き始めた。毎月、課題を書いて出して、上手いと位が上がるんだって。先生に聞いたんだけど、朔也は元馬県の小6で5本の指に入っているんだって。すごいね。朔也も書き始めた。左にお手本(広がる夢って書いてある)があって、朔也が筆に墨汁ぼくじゅうを付けて、「広」を書き始めた。おおーすごい。はらいってそう書くのか。「夢」なんて毛筆で書けるのか?おおー、止めもはらいもうまいものだ。ぼくが学校の授業で書いたとき、途中でかすれてしまいけど、朔也は全然かすれない。夢まで書けて、1枚書き終わった。うまいな。さすが朔也だ。その時、男の子が教室に入って来た。
「先生こんにちは、よろしくお願いします。」
男の子が挨拶あいさつしている。
「はい、泰雅たいがくん、こんにちは。今日も頑張りましょう。」
そして、席に座って、ぼくを見た。
「あれ?きみ、SC元馬ジュニアのエースストライカーじゃない?」
え?
「ぼく、4年生までサッカーやってて、SC元馬のセレクション受けたことあるんだ。それで、君のこと見覚えがあるなって。サッカーしなくていいの?」
「…」
ぼくは黙ってしまった。何とも言えない気持ちになった。ぼくだって、サッカーの練習をしたいよ。
「大夢は、ぼくが誘って教室の見学に来てもらったんだ。ぼくが無理やり連れてきたんだ。」
朔也が、黙ったぼくの代わりに答えてくれた。
「そうなのか。もうサッカーやめちゃったのかと思ったよ。」
「ほらほら、しゃべってないで、課題やりなさい。」
先生に注意された。さっきまでは、朔也が書いているところを楽しく見ていられたけど、今は違う。サッカー、ぼくだってやりたいよ。やめたくなんかないよ。泣きそうになった。ぼくはその後、先生と朔也にひざが痛くなったから帰るって言って帰ってきたんだ。松葉杖持ってきていたし、ぼくの家から歩いて10分の教室だから、一人でも帰れた。

 「ただいま。」
「あれ、大夢、一人で帰ってきたの?見学、もう終わったの?」
お母さんがおどろいてる。
「うん、もういいかなって。」
「何かあったの?」
お母さんが心配してる。
「ううん、やっぱりぼくに書道は合わなかったんだよ。」
「そう?じゃあおやつ食べよっか。」
お母さんがホットケーキを焼いている間に、ぼくはソファーで寝てしまった。

 「おばあちゃん、ぼくSC元馬のジュニアに入れたんだ。」
セレクションを受けた小1の時、合格したことを、おばあちゃんに伝えたんだ。
「すごいねぇ。強いチームに入れるなんて、ひろくんはすごいね。」
合格できるか不安だったけど、入れたよ。
「ぼく頑張って練習するよ。サッカー選手になるんだ。」
「頑張ってねぇ。ひろくんなら、なれるよ。」
おばあちゃんがにっこり笑った。

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