裕子

丸介

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誰しもの日常

桜を思い出す木曜日の午後

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仲のいい友達と桜見、そして一杯。
酔いが気持ち良くまわりだし、桜を見るといつも思い出す事がある。


中学になってからすぐの事。
3人の中3男子にからかわれて、
ちょっかいを出されて友達2人で怯えていた。
その様子を見ている人たちもいて、後ろから制する声がして、
私たちを無事下校させてくれた人がいた。
その人は中2で一つ上の先輩たちに、ひとりで止めに来てくれたのだ。
それは、女の子の前で、かっこつけたかったのか、それとも正義のヒーローの
つもりで、みんなからチヤホヤされたかったのか、それはわからない。
しかし彼はその後、痛い目にあわされた事だけは確かだ。
感謝よりも私たちのせいで、という罪悪感が残った。


助けてくれた先輩を私たちはたまに、校庭で見つけた。
「いるよ、あそこ」
友達は先輩を見つけると、救世主を見るような眼差しを向けていた。
先輩を見る友達の姿は本当に、救世主に何かを捧げる様だった。

印象として何だか少し、おとなしくなったという感じがした。
もしかしたらあの事が原因なのかと考えた。

私たちは先輩を陰から見守る、ちょっとヤバい生徒になりつつあった。
桜の木がふたりのお気に入りの場所だった。
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