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初級ダンジョン 探索編
コメはお預け
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『精米』
玄米の糠を削り取る。
このとき、胚芽も剥がれ落ちる。
『玄米』
稲の実「籾」から籾殻を除去したもの。
「う、うーん。つまりこの穀物の名前は稲で、ここから精米するとカズが欲しがっていたコメになるんだね」
ぼくは『異世界レシピ』に表示された説明文を読み上げる。
この稲から茶色い所を除いて、糠という部分を剥がすと白い粒になるらしい。
「そうじゃ、坊主」
カズが袋の中で稲の実に埋もれて喜んでいるけど、問題はどうやって籾殻を取り除いて糠を削るかだよ。
「いつものようにレオに頼めば?」
ビアンカさんが手の中で数粒の籾を興味深そうにコロコロしている。
そうだけど……ショーガをすりおろすのも、野菜の皮を剥いてキレイに切るのも、卵の浄化もレオに頼んでいるけど、今回はどうだろう?
試しに籾を数粒手に取り、レオに差し出してみる。
「レオ、やってみてくれる?」
水色スライムのレオは、ぼくの手の中の籾を見て左右に体を揺らしたあと、パクリと体に取り込んだ。
むぐむぐ、もごもご。
ぺっ、と吐き出された籾は白い粒……ではなくて粉砕された何か。
「あー、ダメか」
レオがちょっぴり落ち込んで、プルンとした雫型の頭をしょんもりと下げている。
ぼくはレオの頭をよしよしと撫でて、粉砕された粒を見つめた。
「力加減なのかな?」
「レオも初めて見るものだから、扱いがわからなかったんだろう」
オスカーさんが粉砕された粒を指で触って確かめている。
「麦と同じやり方ではダメなのだろうか?」
え? 麦ですか?
「たしか、大麦の外皮を剥く加工方法があったと思う」
「あたし、聞いたことないわ」
「俺も」
「……なんか、大麦栽培の農家に聞いたことがあるような?」
さすが、冒険者としてあちこちの国を渡り歩いていたハルトムートさんは、その方法に心当たりがあるようだ。
「また実家を頼ることになるが、うちと取引のある商会に行き頼んでみよう」
「はい。お願いします」
ペコリと頭を下げると、オスカーさんは笑って「私も食べてみたいんだよ」と言ってくれた。
まあ、念願のコメを前にお預けになったカズは、ショックでボトリと袋の外に落ちてしまったけど、ちょっとぐらい我慢してよね。
コメを食べるのは精米ができてからとなったので、今日はボア肉を焼きトマトとガーリックのソースで食べます。
ポテトフライもたくさん添えました。
ああ、サラダも食べてくださいね。
ディータさんが不思議そうに見ているその根菜は、素揚げしたものです。
ハルトムートさん、お酒のペースが早いと思います。
「ぷはっ! 仕事の後の酒はうめぇな! んで、次はどうすんだ?」
「次? 次ってなによ」
「決まってんじゃねぇか。初級ダンジョンを今日めでたく踏破したんだ。次は中級ダンジョンに挑戦するのか?」
ハルトムートさんの言葉にビアンカさんたちの手がピタリと止まる。
「……中級ダンジョン……」
ムムムと難しい顔をするオスカーさんに、ぼくは嫌な予感がしました。
まさか、まさかですよね?
ぼくがダンジョンに行くのは初級ダンジョンまで、でしたよね?
いやいや、ハズレドロップアイテムを手に入れるためには中級ダンジョンに挑戦したい気持ちもあるけど……ぼくが行かなくてもいいわけだし。
そう、そのためにハルトムートさんがギルドに入ったんだし……ぼくの役目は終わりですよね?
な、なんでみんなしてぼくの顔をじーっと見るんですか!
「クルト……そのぅ、中級ダンジョンだけどな」
「そんな、最上階まで付き合えなんて言わないわ!」
「中間ぐらいまでなら……」
ひっ、やっぱり!
「い、行きませんよ! 怖いですよ! ぼくの魔法なんてショボいですよ? しかもまだ目を瞑っちゃうときあるし」
連れて行くなら、レオにしてくださいーっ。
「あー、クルトなぁ。俺、考えたんだけどクルトって全属性の魔法を使えるんじゃないか?」
酔っ払いハルトムートさんが何かおかしなことを言い始めましたよ?
「そんなわけないでしょう。ぼくのスキルは『器用貧乏』ですよ?」
「そう、だけど。『器用貧乏』スキルが生活魔法限定なら、クルトが水魔法が使えるのはなんでなんだろうなぁ」
モグモグと大きなお口でボア肉を噛み千切って咀嚼するハルトムートさんの探るような厳しい視線に、ひゃぁっと背中が冷たくなりました。
「そ、それは『異世界レシピ』スキルの効果で『器用貧乏』スキルの能力じゃないから……あっ」
ハルトムートさんの迫力にあわあわしながら言い訳紛いに説明していると、シュンと半透明の画面が目の前に現れました。
「んん?」
「どうした? クルト」
どうしたも何も、なんですか? これ。
その半透明の画面には、『異世界レシピ』からのメッセージが書かれていた。
――おめでとうございます! スキルのレベルがアップしました――
新しい機能 「家庭の医学」
レベルアップ特典 体に異常のある人を特定します。
該当者 ハルトムート
部位 足
ええーっ!!
玄米の糠を削り取る。
このとき、胚芽も剥がれ落ちる。
『玄米』
稲の実「籾」から籾殻を除去したもの。
「う、うーん。つまりこの穀物の名前は稲で、ここから精米するとカズが欲しがっていたコメになるんだね」
ぼくは『異世界レシピ』に表示された説明文を読み上げる。
この稲から茶色い所を除いて、糠という部分を剥がすと白い粒になるらしい。
「そうじゃ、坊主」
カズが袋の中で稲の実に埋もれて喜んでいるけど、問題はどうやって籾殻を取り除いて糠を削るかだよ。
「いつものようにレオに頼めば?」
ビアンカさんが手の中で数粒の籾を興味深そうにコロコロしている。
そうだけど……ショーガをすりおろすのも、野菜の皮を剥いてキレイに切るのも、卵の浄化もレオに頼んでいるけど、今回はどうだろう?
試しに籾を数粒手に取り、レオに差し出してみる。
「レオ、やってみてくれる?」
水色スライムのレオは、ぼくの手の中の籾を見て左右に体を揺らしたあと、パクリと体に取り込んだ。
むぐむぐ、もごもご。
ぺっ、と吐き出された籾は白い粒……ではなくて粉砕された何か。
「あー、ダメか」
レオがちょっぴり落ち込んで、プルンとした雫型の頭をしょんもりと下げている。
ぼくはレオの頭をよしよしと撫でて、粉砕された粒を見つめた。
「力加減なのかな?」
「レオも初めて見るものだから、扱いがわからなかったんだろう」
オスカーさんが粉砕された粒を指で触って確かめている。
「麦と同じやり方ではダメなのだろうか?」
え? 麦ですか?
「たしか、大麦の外皮を剥く加工方法があったと思う」
「あたし、聞いたことないわ」
「俺も」
「……なんか、大麦栽培の農家に聞いたことがあるような?」
さすが、冒険者としてあちこちの国を渡り歩いていたハルトムートさんは、その方法に心当たりがあるようだ。
「また実家を頼ることになるが、うちと取引のある商会に行き頼んでみよう」
「はい。お願いします」
ペコリと頭を下げると、オスカーさんは笑って「私も食べてみたいんだよ」と言ってくれた。
まあ、念願のコメを前にお預けになったカズは、ショックでボトリと袋の外に落ちてしまったけど、ちょっとぐらい我慢してよね。
コメを食べるのは精米ができてからとなったので、今日はボア肉を焼きトマトとガーリックのソースで食べます。
ポテトフライもたくさん添えました。
ああ、サラダも食べてくださいね。
ディータさんが不思議そうに見ているその根菜は、素揚げしたものです。
ハルトムートさん、お酒のペースが早いと思います。
「ぷはっ! 仕事の後の酒はうめぇな! んで、次はどうすんだ?」
「次? 次ってなによ」
「決まってんじゃねぇか。初級ダンジョンを今日めでたく踏破したんだ。次は中級ダンジョンに挑戦するのか?」
ハルトムートさんの言葉にビアンカさんたちの手がピタリと止まる。
「……中級ダンジョン……」
ムムムと難しい顔をするオスカーさんに、ぼくは嫌な予感がしました。
まさか、まさかですよね?
ぼくがダンジョンに行くのは初級ダンジョンまで、でしたよね?
いやいや、ハズレドロップアイテムを手に入れるためには中級ダンジョンに挑戦したい気持ちもあるけど……ぼくが行かなくてもいいわけだし。
そう、そのためにハルトムートさんがギルドに入ったんだし……ぼくの役目は終わりですよね?
な、なんでみんなしてぼくの顔をじーっと見るんですか!
「クルト……そのぅ、中級ダンジョンだけどな」
「そんな、最上階まで付き合えなんて言わないわ!」
「中間ぐらいまでなら……」
ひっ、やっぱり!
「い、行きませんよ! 怖いですよ! ぼくの魔法なんてショボいですよ? しかもまだ目を瞑っちゃうときあるし」
連れて行くなら、レオにしてくださいーっ。
「あー、クルトなぁ。俺、考えたんだけどクルトって全属性の魔法を使えるんじゃないか?」
酔っ払いハルトムートさんが何かおかしなことを言い始めましたよ?
「そんなわけないでしょう。ぼくのスキルは『器用貧乏』ですよ?」
「そう、だけど。『器用貧乏』スキルが生活魔法限定なら、クルトが水魔法が使えるのはなんでなんだろうなぁ」
モグモグと大きなお口でボア肉を噛み千切って咀嚼するハルトムートさんの探るような厳しい視線に、ひゃぁっと背中が冷たくなりました。
「そ、それは『異世界レシピ』スキルの効果で『器用貧乏』スキルの能力じゃないから……あっ」
ハルトムートさんの迫力にあわあわしながら言い訳紛いに説明していると、シュンと半透明の画面が目の前に現れました。
「んん?」
「どうした? クルト」
どうしたも何も、なんですか? これ。
その半透明の画面には、『異世界レシピ』からのメッセージが書かれていた。
――おめでとうございます! スキルのレベルがアップしました――
新しい機能 「家庭の医学」
レベルアップ特典 体に異常のある人を特定します。
該当者 ハルトムート
部位 足
ええーっ!!
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