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安住の地を求める勇者とぬいぐるみ
勇者仲間 ⑧
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橘家は各々のレベルの確認をしたあと、数回のバトルを終えてダンジョンを出ることにした。
日帰りアタックなので、あまり下層には行かず安全第一で帰ります! 本当は小次郎のレベル上げのためにダンジョンボスに挑戦したほうがいいのはわかっているけど、そうなると日帰りは無理なので。自分たちでダンジョン内で野営など絶対にイヤなので! 弱いくせにダンジョンで遊びたいと我儘を言う姉を引きずって脱出します。
聖剣を使いたかった小次郎もちょっと残念そうな顔をしてるけど、橘家がもう少し強くなるまで待っていてほしい。いや、私は強くなりたくないけど、編みぐるみ隊が揃えば、たぶん小次郎のフォローはできると思うから。
こうして、ほんの少しレベルがアップした私は無事にダンジョンを出て街まで帰り着くことができました。無傷で! ひゃっほう!
……解せないわ。
冒険者ギルドの受付嬢の責める視線に耐えられず、薬草採取だけじゃなくダンジョンに挑戦したのに……、ちゃんと倒した魔物のドロップ品も買い取りに提出したのに……、受付嬢の視線が和らぐことはなかった。
「初心者用ダンジョンに、日帰りでアタックしたのが気に入らなかったのかもよ」
兄がバンバンと無遠慮に私の背中を叩いて励ましてくれるが、ただ痛いだけなのでやめてください。橘家は立派な冒険初心者なんだから、日帰りでダンジョンアタックするのが普通でしょ? しかも、倒した魔物の数はかなり多くて、ドロップ品の魔石だって惜しみなく買い取りに回したのにぃ。
「所詮、弱々魔物のドロップ品だもの~、評価は低いままよねぇ」
「あのね、お姉ちゃん?」
あなたはどっちの味方なの!
「まあまあ、屋台で買い物して宿に帰ろうぜ。俺は早く汗を流したいよ」
『クリーン』で身ぎれいにできても、やっぱり一日の終わりにはお風呂に入りたい私たち日本人。無事にダンジョンから帰れたご褒美を買って宿に戻ろう。私は早くゆっくりと休みたいよ……トホホ。
屋台で適当に夕食を買い込み、宿に帰ってまずはお風呂。身支度を整え、ダンジョンでできた擦り傷、切り傷を姉に治してもらい、さあご飯だっ!
「いただきまぁす」
パチンと両手を合わせてから、フォークを手にする私と姉と小次郎を恨みがましく見る兄。なによ、なんか文句あるの?
「……あるだろう、お兄ちゃんだって疲れているのに、甘いモン食いたいとか言いやがって。おかげで厨房の端でコソコソとケーキを焼くハメになったんだぞ」
口を尖らせて文句を言うが、兄だって甘いものが食べたかったに違いない。いそいそと小麦粉と砂糖、卵やドライフルーツを買い込んでいたじゃない。
あ~んと屋台で買った肉串にかぶりつくと、兄がまたまたため息を吐く。だから、なによ?
「カラーシープの毛糸って……高いんだなぁ」
「だから言ったでしょ? 普通の毛糸よりも三倍は高いし、色によっては染色費用が違うからバカ高いって」
一番安かったのが茶色の毛糸だったから、兄の相棒の編みぐるみは茶色のフクロウなのだ。でもかわいく編めていたでしょ?
「別に、一番安い茶色で編みぐるみを作ってもいいのよ? フォレスだってダンジョンで大活躍だったじゃない?」
流石、フクロウ型編みぐるみ。私たちの頭上を飛び回り、罠回避や魔物の探索と斥候ばりの活躍をしたかと思えば、スライム、ネズミ型魔物、ウサギ型魔物までその鋭い嘴と爪で攻撃し、犬型魔物にも背後から音もなく近づいて首に一撃! 立派な戦力として役に立ったのだ。当然、倒したドロップ品も手に入れられたし、兄は魔力で繋がっているからフォレスが倒した魔物の経験値もバッチリと共有できていた。
「俺はいいけど……」
兄がチラリと投げた視線の先には、不服そうな姉の姿が。小次郎も人差し指を互いにツンツンとして何か言いたそうにしている。
「お姉ちゃん、なに?」
「だって……かわいいのがいいわ。それがダメなら、魔王が纏う漆黒! 高貴で怪しい紫! あざといピンクゴールドとか、血が滴る真紅とか……」
「マンガの読みすぎ」
なんだ、その痛々しい色の名前は? 修飾語は? 普通に黒と紫とピンクと赤でいーじゃん。
「赤とかピンクゴールドとか、めっちゃ高いんだけど……」
紫なんて見たことないし……、青系の毛糸は高いんだよねぇ。まあ……青い生き物って想像つかないからいいけど。
「小次郎には、トラとかライオンとかがいいかな? 黄色と黒の二色使いかライオンは茶色よりも薄い色よね」
茶色でライオンを作ってもいいが、私の中の何かがそれをヨシとしないのだ。あと強い生き物だと……。
「菊華ちゃん? 別に想像上の生き物でもいいのよ? ブランはフェンリルなんだし。四神とかだと白虎とか青龍とか。ケルベロスとかも強そうだし、いっそのこと人型とかもいいかも! 大天使ミカエル様とか堕天使にて魔王のルシファー様とか……」
「ごめん、なに言ってんのかわからない」
姉のオタク語りは段々と早口になるので、理解が追い付かないのよ。とにかく、レベルが上がりにくい姉と小次郎のためにも新しい編みぐるみを作るぞーっ! オーッ!
でもいまは、食後のデザートとして、兄が作ってくれたドライフルーツ入りのパウンドケーキをいただきます。
日帰りアタックなので、あまり下層には行かず安全第一で帰ります! 本当は小次郎のレベル上げのためにダンジョンボスに挑戦したほうがいいのはわかっているけど、そうなると日帰りは無理なので。自分たちでダンジョン内で野営など絶対にイヤなので! 弱いくせにダンジョンで遊びたいと我儘を言う姉を引きずって脱出します。
聖剣を使いたかった小次郎もちょっと残念そうな顔をしてるけど、橘家がもう少し強くなるまで待っていてほしい。いや、私は強くなりたくないけど、編みぐるみ隊が揃えば、たぶん小次郎のフォローはできると思うから。
こうして、ほんの少しレベルがアップした私は無事にダンジョンを出て街まで帰り着くことができました。無傷で! ひゃっほう!
……解せないわ。
冒険者ギルドの受付嬢の責める視線に耐えられず、薬草採取だけじゃなくダンジョンに挑戦したのに……、ちゃんと倒した魔物のドロップ品も買い取りに提出したのに……、受付嬢の視線が和らぐことはなかった。
「初心者用ダンジョンに、日帰りでアタックしたのが気に入らなかったのかもよ」
兄がバンバンと無遠慮に私の背中を叩いて励ましてくれるが、ただ痛いだけなのでやめてください。橘家は立派な冒険初心者なんだから、日帰りでダンジョンアタックするのが普通でしょ? しかも、倒した魔物の数はかなり多くて、ドロップ品の魔石だって惜しみなく買い取りに回したのにぃ。
「所詮、弱々魔物のドロップ品だもの~、評価は低いままよねぇ」
「あのね、お姉ちゃん?」
あなたはどっちの味方なの!
「まあまあ、屋台で買い物して宿に帰ろうぜ。俺は早く汗を流したいよ」
『クリーン』で身ぎれいにできても、やっぱり一日の終わりにはお風呂に入りたい私たち日本人。無事にダンジョンから帰れたご褒美を買って宿に戻ろう。私は早くゆっくりと休みたいよ……トホホ。
屋台で適当に夕食を買い込み、宿に帰ってまずはお風呂。身支度を整え、ダンジョンでできた擦り傷、切り傷を姉に治してもらい、さあご飯だっ!
「いただきまぁす」
パチンと両手を合わせてから、フォークを手にする私と姉と小次郎を恨みがましく見る兄。なによ、なんか文句あるの?
「……あるだろう、お兄ちゃんだって疲れているのに、甘いモン食いたいとか言いやがって。おかげで厨房の端でコソコソとケーキを焼くハメになったんだぞ」
口を尖らせて文句を言うが、兄だって甘いものが食べたかったに違いない。いそいそと小麦粉と砂糖、卵やドライフルーツを買い込んでいたじゃない。
あ~んと屋台で買った肉串にかぶりつくと、兄がまたまたため息を吐く。だから、なによ?
「カラーシープの毛糸って……高いんだなぁ」
「だから言ったでしょ? 普通の毛糸よりも三倍は高いし、色によっては染色費用が違うからバカ高いって」
一番安かったのが茶色の毛糸だったから、兄の相棒の編みぐるみは茶色のフクロウなのだ。でもかわいく編めていたでしょ?
「別に、一番安い茶色で編みぐるみを作ってもいいのよ? フォレスだってダンジョンで大活躍だったじゃない?」
流石、フクロウ型編みぐるみ。私たちの頭上を飛び回り、罠回避や魔物の探索と斥候ばりの活躍をしたかと思えば、スライム、ネズミ型魔物、ウサギ型魔物までその鋭い嘴と爪で攻撃し、犬型魔物にも背後から音もなく近づいて首に一撃! 立派な戦力として役に立ったのだ。当然、倒したドロップ品も手に入れられたし、兄は魔力で繋がっているからフォレスが倒した魔物の経験値もバッチリと共有できていた。
「俺はいいけど……」
兄がチラリと投げた視線の先には、不服そうな姉の姿が。小次郎も人差し指を互いにツンツンとして何か言いたそうにしている。
「お姉ちゃん、なに?」
「だって……かわいいのがいいわ。それがダメなら、魔王が纏う漆黒! 高貴で怪しい紫! あざといピンクゴールドとか、血が滴る真紅とか……」
「マンガの読みすぎ」
なんだ、その痛々しい色の名前は? 修飾語は? 普通に黒と紫とピンクと赤でいーじゃん。
「赤とかピンクゴールドとか、めっちゃ高いんだけど……」
紫なんて見たことないし……、青系の毛糸は高いんだよねぇ。まあ……青い生き物って想像つかないからいいけど。
「小次郎には、トラとかライオンとかがいいかな? 黄色と黒の二色使いかライオンは茶色よりも薄い色よね」
茶色でライオンを作ってもいいが、私の中の何かがそれをヨシとしないのだ。あと強い生き物だと……。
「菊華ちゃん? 別に想像上の生き物でもいいのよ? ブランはフェンリルなんだし。四神とかだと白虎とか青龍とか。ケルベロスとかも強そうだし、いっそのこと人型とかもいいかも! 大天使ミカエル様とか堕天使にて魔王のルシファー様とか……」
「ごめん、なに言ってんのかわからない」
姉のオタク語りは段々と早口になるので、理解が追い付かないのよ。とにかく、レベルが上がりにくい姉と小次郎のためにも新しい編みぐるみを作るぞーっ! オーッ!
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