みそっかすちびっ子転生王女は死にたくない!

沢野 りお

文字の大きさ
51 / 226
人助けをしましょう

敵がいました

しおりを挟む

ガストンさんたちドワーフたちが力任せにブチ抜いた裏手の出入り口から、こそーっと忍びこみ早足で目的の部屋まで進む。

右や左、あちこちでナタンの仲間たちとの戦闘が激しく交わされているが、助太刀することなくただひたすらにゴーレムの案内で隠し部屋の上の部屋を目指す。

チラリチラリと視線だけ動かして戦況を確認するが、うん・・・リオネルが楽しそうに縦横無尽に動いて、敵を翻弄し一撃で沈めていっている。
・・・大丈夫そうだな。
むしろ、リオネルだけでもここを制圧できそう。

「ヴィー、ここです」

アルベールが示した部屋に、ゴーレムが部屋の扉と同一するように溶け込み、すり抜けていく。
アルベールと私は暫し待って、カチリと鍵が開いた音を確認して、部屋の扉をそっと開けた。
扉の把手にぶらーんとぶら下がったゴーレムがいる。
この子が扉をすり抜けて部屋の中に侵入し、中から扉の鍵を開けてくれたのだ。

「この子がいたら・・・盗み放題だわ」

ちょっと、欲に目が眩んだ私の不穏な発言に、ゴーレムは把手からぴょんと飛び降りて、びゃーっと部屋の端まで逃げていった。

「・・・ヴィー。あなたって子は・・・」

「はっ!違うちがう!冗談、ジョーダンよ!」

やや本心が混ざってたけど。
アルベールは私に疑いの眼を向けたまま、部屋の中央で縄梯子を肩から下ろして、コンコンと床を叩く。

「絨毯が邪魔ね」

ゴーレムたちは絨毯越しでもすり抜けられるらしいけど、穴を開けて梯子を垂らすには、このお高そうな絨毯は厚さもあって邪魔だと思う。

ピクッと眉を不快気に上げたアルベールは、剣をスラリと抜いて、シュバシュバババ!と絨毯を早い剣捌きで斬った。
パチパチパチパチ!
私も思わず拍手してしまう、その剣術の素晴らしさ!
絨毯は丸く切り取られて、最後はアルベールの剣先に持ち上げられて、ペイッと軽々と部屋の隅へと投げられた。

「さあ、ゴーレムたち。ここに穴を開けてください」

ピシッと直立不動になったゴーレムは、右手で敬礼するとタタタと丸い円周に沿うように走り出した。
隠し部屋からは、先に侵入したゴーレム2体が、同じように天井に穴を開けようと行動しているはず。
そのゴーレムの働きに、知らず私も両手を力いっぱい握っていた。




「ルネ!」

リュシアンの呼びかけに、私は無言でコクリと頷いてみせる。
奥の部屋に凄く強い気配がする。
たぶん、悪い奴の中でも一番強い奴がいると思う。

「あの部屋にこいつらの親玉がいると思うが、厄介な奴もいそうだ。俺が突入する」

・・・リュシアンに獲物を取られる・・・ずるい。

「ルネ・・・。お前の実力じゃ無理だ。俺が戦っている間に、ナタンを捕まえていてくれよ」

リュシアンが足を止めて、眉をちょっと下げて困った顔でこちらを見る。

やだ!戦いたい!
戦って、強くなって、戦って、もっともっと強くなって、ヴィー様に褒められたい!

フルフルと首を左右に振ってみると、リュシアンは苦い顔になった。

「あぁーっ、じゃあ、ルネは離れに行ってブリジット様たちを保護してきてくれよ。セヴランだけじゃ不安だし、赤子のこともあるだろう?」

・・・いや。
ブルブルと強めに首を振る。
うげぇっと顔を歪めたリュシアンは、ピカーン!と閃いたとばかりに目を大きく見開いて、

「お前は赤ちゃんを守るのを、お嬢に頼まれていただろう?いいのか?お嬢・・・悲しむだろうな・・・。ルネが自分のお願いを無視して、危ないことをしてたらなぁー」

うぐっ。
確かに、ヴィー様はエミールを守って世話をするように言っていた。

「・・・わかった。離れに行く」

クルッとリュシアンに背中を向けて、タッと駆け出した。

強そうだったのに。
戦いたかった・・・。

いつのまにか、リオネルが強くなっていた。
ヨワヨワのセヴランも、鞭の扱いが上手になっていた。
リュシアンとアルベールは強い。
ヴィー様はもっと強い。

・・・一番、弱い、かも。
いやだ!やだ!強くなりたい!
そのためには、いっぱい戦って、戦って、戦うしかないのに・・・。

ここの邸にいた奴等は、あんまり強くなかった。
せっかく、強い奴がいたのに・・・。

本邸を出て、離れに向かう途中に、嫌な気配がした。
ピタリと足を止めて、キョロキョロ。

「あ・・・」

あっちに、なんかいる。
強いかもしれない。
もしかしたら、リュシアンが戦う奴よりも、強いかもしれない。
クッと口角を上げて、その危ない気配のした方へ足を向ける。
獲物見つけた!逃がさない!






ギイィィィ。

「ひぃーっ!なんで貴族のお屋敷の扉が軋んだ音を立てるんですかぁぁぁ」

セヴランはいい大人なのに、エリク君の腕に両手で縋って、ゴダール男爵邸の離れに侵入した。

「大丈夫ですよ。もう先におばさんたちが入っているはずだし」

「そうですよね。そうですよね」

怖いのを隠そうともせずに、ブルブルと全身を震わせて、恐ろし気に周りをキョロキョロと見回して、ゆっくりとセヴランはあまり広くない離れの邸の中へと進んでいく。
正直、エリク君は、さっさっか歩いて進みたい。

「あっちの階段を上がって右側の部屋が一番広い部屋です。たぶんあそこにいると思います」

「・・・ここで待ってたらダメですかね?」

コテンと可愛く首を傾げてみせたが、エリクの鼻にシワが寄るのを見て、セヴランはシクシクと泣きながら階段を昇っていく。

階段を一段一段昇っていくのに比例して、右側の部屋から女性の声が大きくなる。
セヴランはちょっとホッとして、息を大きく吐いた。

ああー、無事にブリジット様たちを保護できそうだな・・・。

しかし、そんなセヴランをあざ笑うように、入ってきた玄関にドカドカと無粋な足音が。
クルリと背後を見ると・・・。

「よう、兄ちゃん。そこで何をしてんだ?」

刃毀れしている大剣を肩に担いだ人相の悪い男が、ニヤニヤとした笑いを浮かべて立っていた。

「ぎゃああああぁぁっ!」

セヴランの悲鳴が離れの邸に響き渡る。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。

小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。 「マリアが熱を出したらしい」 駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。 「また裏切られた……」 いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。 「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」 離婚する気持ちが固まっていく。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

転生したら幼女でした!? 神様~、聞いてないよ~!

饕餮
ファンタジー
  書籍化決定!   2024/08/中旬ごろの出荷となります!   Web版と書籍版では一部の設定を追加しました! 今井 優希(いまい ゆき)、享年三十五歳。暴走車から母子をかばって轢かれ、あえなく死亡。 救った母親は数年後に人類にとってとても役立つ発明をし、その子がさらにそれを発展させる、人類にとって宝になる人物たちだった。彼らを助けた功績で生き返らせるか異世界に転生させてくれるという女神。 一旦このまま成仏したいと願うものの女神から誘いを受け、その女神が管理する異世界へ転生することに。 そして女神からその世界で生き残るための魔法をもらい、その世界に降り立つ。 だが。 「ようじらなんて、きいてにゃいでしゅよーーー!」 森の中に虚しく響く優希の声に、誰も答える者はいない。 ステラと名前を変え、女神から遣わされた魔物であるティーガー(虎)に気に入られて護られ、冒険者に気に入られ、辿り着いた村の人々に見守られながらもいろいろとやらかす話である。 ★主人公は口が悪いです。 ★不定期更新です。 ★ツギクル、カクヨムでも投稿を始めました。

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたくしがお父様に疎まれている?いいえ、目に入れても痛くない程溺愛されております。

織り子
ファンタジー
王国貴族院の卒業記念パーティーの場で、大公家の令嬢ルクレツィア・アーヴェントは王太子エドワードから突然の婚約破棄を告げられる。 父であるアーヴェント大公に疎まれている―― 噂を知った王太子は、彼女を公衆の面前で侮辱する。

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新 プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。