みそっかすちびっ子転生王女は死にたくない!

沢野 りお

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リュシアンが魔獣狩り講習をしました

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パカラッ、パカラッと軽快に馬を走らせること暫し。
森の雰囲気からここら辺でいいかと、カヌレの手綱を操ってゆっくりとその足を止める。

「ここ?」

「ああ。ここら辺の魔獣は旨そうな肉になるし、皮とか爪は加工し易いからギルドの連中も喜ぶだろう」

どれぐらい狩るか?
こいつらの肉だったらお嬢が何を作ってくれるか想像して、一番のライバルであるリオネルがどれぐらい食うか計算していると、俺の服の裾をルネがギュッと握る。

「ん?どうした?」

「・・・強い?」

・・・強い・・・かなぁ?
俺は余裕だし、たぶんパーティー最弱のセヴランでも余裕で仕留められる。
しかも動きが早いわけでもないから、ルネにとってはネズミを狩るより簡単かもしれん。

「それじゃ・・・ダメ」

いやいや、俺たちは旅の間の食料確保とギルドからの依頼のとにかくなんでもいいから素材になる物を狩りに来ただけで、特訓しにきたわけでは・・・。

おい、泣くなよ。

「うーん。この奥にはボア系の魔獣がいる気配がするから、もう少し俊敏になるが・・・」

でもボア系の魔獣って素早いけど猪突猛進だから、避けようと思えば容易に避けられる。

「もっと強いの」

「ああ?なんだってそんな追い込みすんだよ?あれか?あの獣人もどきに負けたからか?」

その瞬間、ボゴッと腹を思いっきり殴られた。

「カハッ」

「負けてないもん!」

いや・・・おま・・・腹・・・。

「ルネ、負けてないもん!」

「わかった・・・。悪かった悪かった!んな・・・泣くなよ」

「泣いてない!」

と言いつつ、グシグシと袖で両目を擦る。
あーあ、そんなに擦ったら赤くなるじゃんか。

「強いのと戦ってもすぐに強くならないぞ?お前が負け・・・。お前が攻め切れなかったのは相性が悪かったからだし」

「相性?」

そうだよ。
ルネとリオネルは正直、まだ子供なのに末が恐ろしい成長の仕方をしている。
楽しそうに鍛えているアルベールの爺のせいでもあるが、ふたりが強くなることを求めているからだ。

そして子供だからか残酷なことにも気が付かないという側面もある。
セヴランなんて、いい歳してから戦闘術を学んでいるから、いちいちビビッて鬱陶しい。
でも相手の命を奪うんだから、躊躇するのが当たり前なんだ。
それが魔獣でも・・・、ましてや人ならば。

そこんとこが欠落してんだよなぁ、ルネもリオネルも。
リオネルなんて予め注意しておかないと、大量虐殺しそうな勢いだし。

俺は眉を寄せているルネに、ひとつひとつ丁寧に実戦付きで彼女の弱点を教えていった。
夢中で教えていたら、時間は然程過ぎていないのに、森の奥まで来ていてお嬢から預かった魔法鞄に入りきらないほどの倒した魔獣の山ができていた。

「もっと!もっとやりたい!」

あー、とりあえず今日はここまでな。
えー、と不服そうな顔をするルネに、今度は対人戦闘でリュイエの町に新しくできた自警団の訓練に付き合ってやれと。

「やだ、弱いもん」

ぷうっと両頬を膨らませる美少女猫。

「あー、手加減する技術も強くなるには必要だぞ?力の配分ってのがあってな。特に今度行くダンジョン踏破には必要な能力で・・・」

ふんふんと俺の適当な説明に聞き入るルネ。

いや、ごめん。
俺もそろそろリュイエの町に帰って、風呂に入って、お嬢の作る飯が食いたいんだわ。

なんとか納得したルネの顔は行きと違って明るい顔で、両手で魔法鞄に入りきらなかった鹿型魔獣と蛇型魔獣を引き摺りながら帰途に着いた。

ちなみに蛇型魔獣を両手に持ってうやうやしくお嬢に差し出したルネは、お嬢の悲鳴にショックを受けてフリーズすることになる。

ああ・・・お嬢。
その蛇は、肉がアッサリしていて旨いんだよ。
俺らが大好きな唐揚げにいいと思って狩ってきたんだけど・・・そんなに嫌か?
わかった!俺と爺で捌くから!
解体はいつものように俺たちでするから。

でもこいつの眼玉とか鱗とか・・・わりと高額で取引される素材なんだけど?
お嬢の作る魔道具のグレードも上がると思うんだけど?
え?嫌?
おいおい、マジか。

え?そんなに蛇を押し付けるならメシ作らない?
いやいや、高級素材の魔獣を狩ってきて喜ばれるならまだしも、そんなに嫌がられるとは・・・。
すまなかった!
謝るから、すぐに蛇を隠すから、だから頼む!
メシを作ってください!




その日の夕食は野菜スープとオムレツで・・・ひと欠片の肉も出されることはなかった。
そのメニューに不満を溜めたリオネルに、俺はめちゃくちゃ攻撃されたけど、俺のせいじゃねぇだろ!

そして、お嬢に悲鳴付きで拒否られたルネは、またもやドドーンと落ち込んで暗ーい顔でモソモソとメシを食っている。

ギルド会議から帰ってきたアルベールがひとり、「どうしたんですか?」と首を捻っていた。


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