みそっかすちびっ子転生王女は死にたくない!

沢野 りお

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出発前夜に異変が起きました

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さて、思ったよりも、ここゴダール男爵領地に長居することになってしまったけれど、とうとう出発する日が近づいてきたわ。

ナタンたちの悪行のせいで荒れていたリュイエの町も芋料理とフルーツスイーツのお陰で、徐々に賑わいを取り戻してきているし。
男爵家に襲い掛かった悲劇の全てを防げたわけではないけれども、なんとか唯一の後継者エミール君を保護してお母さんのブリジット様の元に帰すことができたし。
通りすがりのしがない冒険者パーティーのいち旅人として、やり過ぎるほどに尽力したわ!

次の旅の目的地として、それぞれに相応しい武器の素材を採取のため鉱山へ・・・ま、ダンジョンだけど、ディナールへと進むことに決まったし。
そのための準備として、作り置きのご飯もたっぷり!

いや・・・ルネが嬉々としてデッカイ蛇を捧げてきたときには、ビビッたけれども!
あれなの?飼い猫が思わず狩りの成果として鼠や虫を飼い主に持ってきて自慢げに見せる、あれなの?
いやいやいや、蛇とか無理だから!
蛇に慄いてガクブルしている私をせせら笑ったリュシアンには、罰として肉無し夕食をお見舞いしてやったけど、その被害はリオネルたちにも被ってしまったけれども、蛇は嫌!
でも、アルベールが捌いてくれたお肉を使って唐揚げは旨かった・・・。
蛇・・・美味しいのね。

「お嬢?まだなんか作るのか?」

リュシアンが、ボリボリと服の裾を捲ってお腹を掻きながら声を掛けてくる。

「ううん。明日ローズさんたちに配るお礼の品の整理をしているの」

明日、みんなに一時のお別れの挨拶をするときに焼き菓子を配ろうと思って、ラッピング作業をしているのだ。

「・・・器用だなぁ」

紙袋の上をリボンで縛っただけだよ?
明日はローズさんたち町のお店を回り、ガストンさんたち鍛冶師さんたちの工房を回り、拡張して整地した芋畑で働く人たちや、牧場、果樹園で働く人たちを回り、男爵邸でお別れの晩餐。
明後日の早朝に出発の予定だ。

「小麦粉で作ったお菓子は喜ばれるからね」

ブリジット様もお好きですし?
もっとこのゴダール男爵領が豊かになったら、小麦を使ったお菓子も食べられるかな?
リュシアンが私の頭をポンポンとして、ニカッと笑う。

「おう。もっと冒険者たちも来るだろうから賑やかになって、ここのガキも腹いっぱい食えるようになるだろうよ」

そうね、そうなったらいいわよね!








昨日、夜なべして用意したお菓子を配り終え、男爵邸でお上品に晩餐を戴き、夜も大分更けた頃に馬車を止めている空き地に戻ってきました。

リオネルは既にお眠でリュシアンに担がれていて、セヴランとお手々を繋いだルネも頭がカクンカクンと上下に大きく揺れている。

「ヴィーは大丈夫ですか?」

「うーん、眠いけど、カヌレとブリュレにおやつをあげてくるわ」

だって、あの子たちってば、自分たちも美味しい物を食べに男爵邸に行きたいって、ずーっと駄々を捏ねていたのよ?
あなたたちを連れて行ったら、男爵邸の馬たちが怯えるでしょ!
なので、おやつで釣って黙らせていたのだ。
昨日作ったお菓子がまだあるから。
眠い目をこすりながら、カヌレとブリュレの餌箱に新しい飼葉を入れ、水魔法でお水を出して補充する。

「「ヒヒン」」

はいはい、ちょっと待ってねー。
ゴソゴソと魔法鞄の中に手を突っ込んで、バラバラと飼葉の上に様々な焼き菓子を落とし入れる。

ガツガツ!
・・・君たち、私たちが男爵邸に行く前にちゃんとご飯をあげたよね?
凄い食いつきなんだけど?
今度、アルベールたちに、魔獣馬の食事の適正量について聞いておこう。

「じゃあ、明日は早いからもう寝るね。おやすみー」

ヒラヒラとカヌレたちに手を振って別れ、馬車の中に入ろうとした私の前に、ちょこちょこと小さいサイズの彼らが一列に綺麗に並んだ。

「へ?」

首を傾げて彼ら・・・私が作ったはずの高性能ゴーレムたちを見つめる。

「・・・・・・」

「・・・・・・」

暫し、見つめ合った後、ゴーレムは一斉に頭を深く下げた。

「ど、どうしたの?」

長い間、頭を下げていた9体のゴーレムは、これまた一斉に頭を上げ・・・上げて空を見上げる。
そして・・・。

「え?」

ハラハラと頭の上部からゴーレムたちは崩れ落ちて行く。
私が作ったゴーレムは、その体を土塊と戻っていく。

「え?ええっ?」

それだけではない、その小さな体からポワポワと光が溢れて、空へ天へと舞い上がっていく・・・。

「何?何が起きているの?」

私が戻らないことを不審に思ったのか、馬車からアルベールたち大人組が出てくると、やっぱり崩れていくゴーレムの体とそこから発する光の玉に目を大きく見開いている。

ゴーレムたちから溢れ出た光は集まっては離れてを繰り返し、私の両手の大きさぐらいの光の玉に形を変えていく。
それぞれ9つの光の玉に・・・。

それらは、ふわふわと私たちの周りを漂ったかと思うと、ふわっと頬に触れた後、バラバラに飛んでいく。
その方角は、芋畑の方向に3つ、果樹園の方向に5つ、そして・・・男爵邸に向かって1つ。
そのまま呆然とゴーレムから生まれた光の玉を見送ってると、ポンと肩をアルベールに叩かれた。

「ヴィー、戻りましょう。話は馬車の中で」

「ああ・・・うん」

私は、促されるままに馬車へと入って行く。
でも顔はずっと、あの子たちが飛んで行った方へ向けられていた。


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