77 / 226
人助けをしましょう
気絶しましたが出発しました
しおりを挟む馬車の中、眠りの国へ旅立ったルネとリオネル以外の私たちは、アルベールの淹れたお茶を無言で飲んでいた。
空気が・・・重い・・・。
「ふうっ」
アルベールがカチャリとカップをソーサーに戻し、ひと息吐く。
「実は、ヴィーに話すのを、どうしようかと迷っていたのですが・・・」
「なに?」
濃い目に入れた紅茶にたっぷりミルクを注いだミルクティーを、フーフーしながら口に運ぶ私。
「先日、アラスの町でギルド会議があったのは知ってますよね?」
私たちは、コクリと頷いた。
先日、アルベールはアラスの冒険者ギルドのギルドマスターのヴァネッサさんとリュイエの町の冒険者ギルドのギルドマスターのヤンさんに誘われて、ギルド会議に参加した。
ナタンたちが持っていた怪しげな魔道具と、ビーストについての調査報告が主だったが、アルベールはそこにトゥーロン王国やミュールズ国の情報を仕入れるのと、私たちの追手がアンティーブ国に入国していないか調べるためでもあった。
「そのとき得た情報については、もう皆さんに報告しましたが・・・。他にもですね・・・」
なんと、例のゴブリンの巣の後始末のときの話らしい。
私がこれ以上荒らされないように巣のあった洞窟を封印してその場を去った後、アラスの町でギルド職員と冒険者たちで後始末と遺体・遺品の回収に訪れたそうだ。
「その冒険者たちの中に、仲間を探しているパーティーがいましてね」
なんでもそろそろ冒険者のランクも上がってきたので、アンティーブ国を出て外国に武者修行に行こうと考えたとある冒険者パーティーは、しばらく故郷に戻ることができなくなるからと出発前に各々里帰りをしたそうだ。
外国行の船が出るアラスの町を集合場所として。
なのに、約束の日を過ぎてもひとり、仲間が戻って来ない。
じりじりする思いを抱えて、アラスの町で待っていたパーティーの耳に入ってきたのは、アラスの町とリュイエの町の間の小さな森に規格外のゴブリンの巣ができていて、かなりの被害が出ていたこと。
もしや!とギルドの依頼を受けて、討伐済のゴブリンの巣まで来た彼らが見たものは・・・。
「ヴィーが洞窟を封印したあと、門に自ら埋まったゴーレムがいたじゃないですか?あの子がね、ポンッとそこから出てきて、彼らの前でさっきのように土の体を崩して・・・光の玉に姿を変えたそうですよ」
「へ?」
あの、守役のゴーレムはまるで待ち人が来たとばかりに動き出し、その身を光に変えて彼らを洞窟の奥へ、遺体を収容したあの小部屋と案内したそうだ。
そして、すうーっとその光がある女性の遺体の中へと。
「それって・・・、まさか?」
「ええ。ずっと待っていた仲間の冒険者だそうです。つまり、ヴィーが作ったゴーレムの中には、あのゴブリンたちの犠牲になった方の」
た、魂的な何かが入っていたとか?
え?なに、それ?
私、知らないよ?
いくらチート能力万歳の私でも、そんなネクロマンサーな力は無いと思いたいし、ノーサンキューですが?
「そういえば、確か畑を手伝っている町民にも、娘さんや奥さんが犠牲になった家族がいたような?」
「え?」
「果樹園で働いている中にもいたよな?恋人が犠牲になった奴とか?」
「ええ?」
「もしかして・・・男爵邸にずっと侍っていたゴーレムって・・・エミール君を拐った・・・あの子じゃ・・・」
「ぃええええっ?」
嘘でしょ?
今さら?
今さら、そんな種明かしされても、されてもおぉぉぉぉっ!
私の脳裏に様々な在りし日の光景が・・・。
たしか、芋畑のゴーレムは、まるでプールで泳ぐ人のように畑の土の中で動いていたっけ。
「ああ、魔力を土に込めていたのでは?微量の魔力であれば、土の栄養になりますからね」
果樹園では、木にスルスル登り剪定したり受粉したりしていたような?
「ああ、剪定のやり方や受粉の仕方のいいお手本になってたよな。あいつら素人だったし」
男爵邸では、エミール君の眠るベビーベッドに入り込み、寝かしつけるようにポンポンと背中や胸を優しく叩いていたと聞く・・・。
「エミール君のこと・・・ずっと見守っていてあげたんですね・・・」
じゃあ、やっぱり・・・あのゴーレムから溢れ出た光は、そのぅ・・・魂?
「ゆ・・・幽霊?」
ふうううっ。
バタンキューと、そのまま後ろに倒れました、私。
ダメ!ダメなのよ・・・私。
その手の話は、絶対にダメなのーっ!!
翌朝。
まだ朝靄にけぶる中、ガラガラと音を立てて私たちはひっそりとリュイエの町を去りました。
町はまだ眠りに支配されていて、見送るのは9つの淡い光の玉だけだったという・・・。
騒がしくも愛おしい賑やかなひとつの冒険者パーティーが去ってから、しばらくしたリュイエの町。
ようやく自警団も形になって、男爵邸の騎士団との連携も様になり、門番を置けるようになったゴダール男爵領に、アラスの町の方からガラガラとけたたましく音を立てて馬車が猛スピードで向かってくる。
「なんだ?」
門番のふたりは顔を見合わせて、自警団の詰め所へ知らせにひとりを行かせて、残ったひとりは通せんぼをするように門前で仁王立ちしてみせた。
「おおーい!おおーい!」
土煙でよく見えなかったが、馬車は一台だけではなかった。
いつの日か、ちびっこが町のゴロツキ共を護送したり、屋台を運んだりした、大きな荷台を馬車に連結していた。
「おおーい!たいへんだー!」
馬車に並走する馬に乗った男が、手を振りながら何かを叫んでいる。
門番はこちらも口元に両手を当てて、大きな声で返す。
「おーい!何があったー?」
ガラガラ。
馬車はあっという間に門まで辿り着く。
その頃には自警団の詰め所からもワラワラと人が集ってきていて、野次馬も「なんだなんだ?」と寄ってきた。
「おい、何があった?」
優秀な自警団は、早速男爵邸の騎士団にも連絡してくれていて、騎士のひとりが門番に声を掛ける。
「さあ?何かを持ってきたようですが?」
例の荷台を指差すと、怪訝な表情で騎士は剣の柄に手をかけて、荷台へと足を進める。
「はあはあ。そちらの方はチハロ国の船団に保護された方たちです。乗っていた船が難破したらしく、海に漂流されていたとか・・・」
「ま、まさか!」
騎士たちがザァッと荷台へと走り出す。
果たしてそこには・・・。
「おいっ!ローズさんを呼んで来いっ!ブリジット様もだ!ああ・・・と、ガストンさんも呼んで来い!早くっ!」
騎士が覗き込んだ荷台の中には、草臥れた服を着たやつれた男たちが座り込んでいる。
このゴダール男爵の男爵、ラウル様と、その従者でローズの息子、ゴダール男爵騎士団団長でローズの夫。
ガストンの弟子でハーフドワーフの技師、その他にもラウル・ゴダール男爵と一緒に事故に遭った者たちが全員、その荷台に乗せられていた。
リュイエの町に歓喜の声が響き渡るのは、もうすぐ。
321
あなたにおすすめの小説
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。
小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。
「マリアが熱を出したらしい」
駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。
「また裏切られた……」
いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。
「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」
離婚する気持ちが固まっていく。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
転生したら幼女でした!? 神様~、聞いてないよ~!
饕餮
ファンタジー
書籍化決定!
2024/08/中旬ごろの出荷となります!
Web版と書籍版では一部の設定を追加しました!
今井 優希(いまい ゆき)、享年三十五歳。暴走車から母子をかばって轢かれ、あえなく死亡。
救った母親は数年後に人類にとってとても役立つ発明をし、その子がさらにそれを発展させる、人類にとって宝になる人物たちだった。彼らを助けた功績で生き返らせるか異世界に転生させてくれるという女神。
一旦このまま成仏したいと願うものの女神から誘いを受け、その女神が管理する異世界へ転生することに。
そして女神からその世界で生き残るための魔法をもらい、その世界に降り立つ。
だが。
「ようじらなんて、きいてにゃいでしゅよーーー!」
森の中に虚しく響く優希の声に、誰も答える者はいない。
ステラと名前を変え、女神から遣わされた魔物であるティーガー(虎)に気に入られて護られ、冒険者に気に入られ、辿り着いた村の人々に見守られながらもいろいろとやらかす話である。
★主人公は口が悪いです。
★不定期更新です。
★ツギクル、カクヨムでも投稿を始めました。
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
わたくしがお父様に疎まれている?いいえ、目に入れても痛くない程溺愛されております。
織り子
ファンタジー
王国貴族院の卒業記念パーティーの場で、大公家の令嬢ルクレツィア・アーヴェントは王太子エドワードから突然の婚約破棄を告げられる。
父であるアーヴェント大公に疎まれている――
噂を知った王太子は、彼女を公衆の面前で侮辱する。
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。
石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。
実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。
そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。
血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。
この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。
扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。