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石を見つけましょう

会うのは避けました

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アルベールが、アラスの町で仕入れてきた話のもうひとつ。
珍しい客人の話ね。

その人たちは連合国から船で入国。
なんでもない富裕層のフリをしていたが、ヴァネッサ姉さんが見るに貴族、それもかなり高位の貴族の子息たちに見えたと。
主人らしき男とは別に、剣を腰に佩いた若い男が特に気になったとのこと。
主人に付いているその男に、さらに獣人の若い男が従っているように見えたからだ。
そして、その主人の男は高級宿に宿泊すると、アラスの町を治める領主や滞在している貴族たち、商会の会頭など要人たちと次々と接見。

もうひとりの男は冒険者ギルドで冒険者登録をして、依頼を受ける毎日。
それとなくアルベールがヴァネッサ姉さんにその男たちの容貌や特徴を確認したところ、ある人物が予想できた。

「ベルナール様がアンティーブ国に・・・」

「ええ。従者が名前を呼んでいましたし、容貌もそっくりです。もうひとりの気になる男はリシュリュー辺境伯のところでは見かけませんでしたけど」

ベルナール様は、トゥーロン王国を脱出するときに手助けしてくれたリシュリュー辺境伯の秘匿されていた長男だ。
その昔、獣人奴隷騎士の女性とリシュリュー前辺境伯子息との間にできた子供。
亜人差別が激しく、亜人は強制的に奴隷にされる国で、その子供は獣人の特徴を持って生まれた。
そのベルナール様が、獣人が治めているアンティーブ国に来ている。

「・・・要人と接見しまくっているって、とうとうトゥーロン王国に反旗を?」

「どうでしょうねぇ。実際亜人奴隷を解放し差別撤廃するには、うってつけの旗頭なんですけど、なぜそんな御仁が国を出られたのか」

うむ、確かに。
これからイザックたち解放運動の人たちが動き出すなら、ベルナール様みたいな人はインパクトがあるし、リシュリュー辺境伯の子息って立場は貴族たちへの牽制にもなるもんね。

なんでそんな重要人物がアンティーブ国にいるのかな?
やっぱりトゥーロン王国にクーデターでも起こすのに、アンティーブ国に助力をお願いに来たのでは?

「その線も消せないですが・・・彼らは既にアラスの町を去り、ボーヌの町を抜けて王都を目指すようです」

「げえっ」

いや、別にベルナール様にお会いするのはいいけど、なんとなく避けたいなぁ、なんて。
私たちも同じルートで王都を目指してたら、バッタリ会っちゃうじゃない!

「今はお会いするのは避けたいですよ。例えミュールズ国とトゥーロン王国が貴方を探していても、貴方の顔をしっかりと見た者はいないんです。顔を隠していましたからね」

そういや、私は前髪もっさり少女でしたな。
母親譲りの金眼を隠していたからだけど。

「ベルナール様にお会いしたら、貴方の正体も素顔もバレますし」

それは避けたい!
よし、避けよう!別ルートで王都へ行こう!
あれ?王都も行くのは止めた方がいい感じ?

「いいえ。王都は人が多いので大丈夫でしょう。それで遭遇してしまうのは、もう運命の悪戯か必然ですよ。諦めましょう」

・・・うーん、その運命の悪戯が起きそうな嫌な予感がビシバシするけど、今は目を瞑ろう。

「あっ!ラウル様とボーヌの町のチハロ国のお店に行って、ソバのこと教えてもらおうと思ったのに!」

ソバをどうやって育てて粉に挽いて、ついでにソバにするのか教えてもらおうと思ってたのに!
そばつゆに必要な調味料も揃えようと思ったのに!

「それはラウル様にお願いしましょう。一緒にラウル様のところに行って私からも謝りますから」

「うん・・・」

残念だけど、しょうがない。
どんな人に襲われても私は自分の身を守るならできるが、周りの人をも守り切れる自信はない。
だから危ないことは避けて通らないとね!

その後、アルベールが作ってくれたホットミルクに蜂蜜を垂らして、ゆっくりと飲みながら今後の予定を立てた。






まず、ラウル様にソバの話をする。
アルベールはラウル様からも情報を得て、例の怪し気な一行と会わないで王都に行くルートを模索。
ルネとリュシアンは騎士隊で訓練と、ルネは乗馬の練習。
リオネルも馬には乗れないけど、いざとなったら虎の姿で走ればいい。
とっても早いから。
リュシアンとセヴランは冒険者ギルドの依頼をこなしながら、冒険者同士での情報交換で王都までの町、村のリサーチ。
あとセヴランは、魔獣馬であるカヌレとブリュレとの騎乗訓練。
普通の馬は乗れるけど、精神的にカヌレとブリュレには乗りたくない・・・て気持ちはわかるけど、スクランブルに備えて頑張れ!

私?
私は変わらず作り置きの料理を用意したり、みんなのご飯を作ったり、牧場に行ってお手伝いして乳製品をゲットしたりですが、なにか?

そんなこんなで日々が恐ろしいスピードで過ぎ去っていき、とうとうガストンさんから連絡が!

武器ができたぞーっ!

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