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運命の鐘を鳴らしましょう

ビーストの正体がわかってもダメでした

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さて、魔法障壁とか魔法の盾とか言ってみても、その形は術者の魔力や技術によってまちまちだ。
私が作った防御の魔道具のような均一の魔力を展開できる防御壁とは違い、急所のみ盾の形で防いだり、前面に壁のように展開したりするのがポピュラーだそう。
エルフ族で魔力も多く技術も高いアルベールは、魔法障壁を張るとしたら、前面壁型。
しかも同時に前面と側面と後方と4面展開できる。
でも、長時間は使えない。
高ランク冒険者でも複数の小さい魔法の盾を展開できれば凄い人らしい。

んで、私は個人で魔法障壁を張ろうと思ったら、自分の体をすっぽりと囲むドーム型に展開することができる。
しかも、やろうと思えば自分ひとりだけでなく複数人、試したことはないが2~30人ぐらいの集団をすっぽりと囲むぐらいは片手間にできる、と思う。

チートな私の作った防御の魔道具も、対象者の体に薄く防御壁を纏わせているので、死角はない。
そんな魔道具は一般に流通していないので、私たちパーティーだけで使う。

さてさて、問題のビーストが展開している魔法障壁だが、かなり大きめな魔法の盾を前面、側面、後方に配置しており、急所にはやや小さめな魔法の盾で守っている。
だから、探そうと思えば僅かな隙間を狙っていくことができる・・・けどね。
奴に接近してよぉぉぉぉく魔力の流れ?を見ないと、その隙間は見えない。

でも私にはわかる!
魔力を眼に集中させて「魔眼」という魔法を作ってみた!
なんか禍々しいネーミングだが、仕方ない。
だって「鑑定」系のスキルを使うと、合わさった魔獣とかの情報がグルグル表示されて、うぇっぷと酔ってしまうのだ。
その「魔眼」を使って見極めた首と頭、眉間、鼻を守る魔法障壁の隙間をリュシアンに指示。
だって、あのビーストの熊の頭が、奴が激しく動く度にふがふがと上下に動く気がしたの。
よぉぉぉく見ると、顎の辺りに違和感があって、まるで熊の頭の被り物を被っているような・・・。
そして、リュシアンが大剣の先で熊の顎を上に振り上げてみると、バサッと熊の頭が後ろに取れた・・・。

「・・・やっぱり」

熊の頭が外れて現れたビーストの顔は・・・。

「あれはエルフ族ですかね?」

エルフ族のアルベールが言うなら、それで正解ね。
短い金髪から覗く長い耳。
色白で端正というか美しい顔面。

「ビーストって獣人限定かと思ってたわ」

「帝国ではそうですよ。あちらは魔法で合成するとのことですから・・・」

「ああ!そうですね。帝国では高出力の魔法で合成していますが、あのビーストは文字通り合体ですから本体との魔力障害が起きないんですね!」

魔獣生物学の学者としては興味深いビーストかもしれないけど、今の状況を正しく把握して黙っててくんないかなぁ。
カミーユさんは2、3歩前に進んでビーストを観察し始める。

「おい、カミーユ危ねぇぞ?お嬢、どうすんだよ。あいつの綺麗な顔を晒してどうにかなんのか?」

大剣を肩に担いでひと仕事終えたリュシアンが戻ってきた。
いやいや、ビーストの正体がエルフ族だったことに、クリストフさんたちも王都ギルドの冒険者たちもどよめいているのに・・・。

「どうにもなんないわよ。強いて言うなら相手の魔力はまだまだ余裕があるから、魔力切れは望めないし、攻撃魔法を繰り出してくるのも時間の問題・・・って、きた!」

ビーストのいる方向から火炎玉が連射される。
初級の「ファイアーボール」だけど、厄介な。
私がズズいと前に出て、防御の魔道具にさらに魔力を注入すると、バァーンと魔力障壁が全面に展開された。
ファイアーボールが障壁にぶち当たり、ジュウジュウと消えていく。

「魔法攻撃に切り替えてきましたか」

うーん、厄介ね。

「お嬢、前みたいに氷漬けにはできないのか?」

「魔法障壁に魔力を吸い取られてすぐに解放されちゃう。物理攻撃も防ぐし・・・あー!どうすればいいのよっ!」

ちょっとヒステリーを起こしてみました。
とにかくリュシアンとカミーユさんは近接戦闘派なので成す術なしだし、アルベールの弓攻撃も無理。
こうして考えている間にも、ビーストは四方八方にファイアーボールを撃ち込んでいます。

「・・・あーあ、王都が燃えちゃうね」

カミーユさんの感想がのんびりしていて、気が抜ける。

「・・・ウォーターボール」

超巨大な水の塊を天上に作り出し、詠唱とともに万歳していた両手をぶんっと下ろす。
同時に水の塊も地上に落ちて・・・弾けて辺り一面を水浸しにしてしまう。
私?被害はないよ?だって魔法障壁があるもーん。

しかし、あれをどうやったら拘束できるんだろう?










・・・ビーストを直接見たことはない。
長い冒険者生活でSランクにまで登りつめた俺でも、帝国にわざわざ行ってまで闘いたいとは思わなかった。

しかも目の前で暴れているビーストは、帝国のビーストではなく、モグリのビーストだ。
獣人同士を掛け合わせたビーストではなく、魔獣と合体させた醜いビーストは、さらに獣人が元になっていたのではなくエルフ族だった。

「おい、クリストフ。どうすんだよ、あれ」

「あー、あれな・・・。どうしようかな・・・」

魔法障壁が張れるビーストに内心、首を捻っていたら、元になったのがエルフ族なら納得だ。
魔力が少ない獣人とは正反対、魔力も多く魔法が堪能な種族だからな。
しかし・・・物理攻撃も効かないし魔法攻撃も無駄、しかも使った魔力は吸収される。
合体しているのが熊とオーガ。

どうすりゃいいんだよ、これ。
王都ギルドからやってきた冒険者たちは揃いも揃って使えなさそうな奴らばかりで、案の定止められていた魔法攻撃をバカスカ撃ち込みやがって、ほぼ魔力切れだな、あいつら。
王宮から騎士団や魔法師団が来る気配はないし。

「うーん・・・どうしようかな・・・マジで」

たかだかギルドのギルマスに、どうこうできる問題じゃないと思うんだけどな・・・。
困った俺は、くるっとビーストに背を向けて連れて来た冒険者たちと目を合わせ・・・ん?

「おい・・・。そこの・・・おい、兄ちゃん待て!おい、誰か、あいつを捕まえろ!」

嘘だろ?
好奇心から逃げないで見物している集団の中、見目がいい青年の姿に目を止めた。
その青年の頭には、獣人の耳が見えた気がした。
その耳が・・・。

「・・・獅子族?」

いや、俺が知らない王族なんているのか?

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