みそっかすちびっ子転生王女は死にたくない!

沢野 りお

文字の大きさ
153 / 226
運命の鐘を鳴らしましょう

愛があふれた人でした

しおりを挟む
なんだか、ベルナール様のお母様って剛毅な方だったんですねぇ・・・と私たちは他人事なのでそんな感想で終わるが、当の息子であるベルナール様は信じられないのか、口をパッカーンと・・・。

「コホン。お姉様は、幼少の頃より帝王学より騎士に混じって剣を振るうことに熱心でして。今後のアンティーブ国のことを考えて内政に適した者数名を婚約者候補に選んだのですが、それを厭い・・・出奔されたのです」

シーン・・・。
なんか、何とも言えない空気に広間が包まれたわ。
そのとき、壁に控えていた侍女らしき年配の女性がそそっと前に出た。

「あのう・・・よろしいですか?」

右手を控えめに上げて陛下に発言の許可を求めると、陛下は重々しく頷かれた。

「私は、国王陛下の姉姫であるジャンヌ様の乳母でございます」

ペコリとベルナール様にお辞儀をして、また2歩、3歩と彼に近づいていく。

「実は、陛下にもお話しておりませんでしたが・・・私はジャンヌ様から、国を出た後に何度かお手紙を頂戴しておりました」

「なにっ!」

クリストフさんが目を大きく開いて驚く。

「・・・黙っていて申し訳ございません。罰は後ほど如何様にもお受けいたします。ただ・・・ジャンヌ様が内密にと」

そして語ったジャンヌ様の伴侶探しの道中記は・・・本当にお姫様なの?と疑う内容だった。
父王が用意した婚約者候補から、ひとり王配となる相手を選ぶように言われたジャンヌ様は、思い悩むこともなく即決で国を出ることを決めたそうだ。
それこそ、「そうだ!国を出よう」みたいなノリで。

「・・・朝、ジャンヌ様のお部屋に行きますと壁一面に、国を出て伴侶を探してくる。私より弱い者と結婚したくない。必ず世界中を探して自分より強い伴侶を得る!と書きなぐられていました」

しかも、その前日の深夜に当時の宰相の家に忍び込み、半ば脅迫して王位継承権を放棄する書類を作らせ、嬉々としてサインしたそうだ。
宰相が号泣しながら、父王に土下座していた姿が忘れられないと言う。
しかも騎士団からは、早朝にジャンヌ様が幼少の頃に卵から孵して調教していた、ペットのワイバーンに乗ってどこかへ行ってしまったとの報告もあり、慌てて捜索隊を出したが、とうとう行方はわからなかったという。

「・・・心配は心配でしたが、ジャンヌ様はそのう・・・少しばかり貴族子女とは違う活発なお姫様でしたので、そっちの心配はしませんでしたが・・・」

じゃあ、なんの心配をしたんだろう?
まさか、他国で暴れすぎて外交問題を心配したとか?
あはははは・・・ありえそう。

「冒険者ギルドから手紙が届くようになったのは、父王様がジャンヌ様を諦め陛下を王太子にされた頃でした。その内容はほとんど武勇伝ばかりで、伴侶を探しているようには思えませんでしたが・・・」

どこでどれぐらい強い魔獣を倒したかとか、どんな難しいダンジョンを攻略したとかの内容がほとんどで、たまに愚痴のようにAランク冒険者と剣を交えたが瞬殺だったとか書かれていたそうだ。
そして、とうとう・・・。

「ミュールズ国でも強い方に巡り会えず。獣人ともエルフ族ともドワーフ族、巨人族と色々な種族の方とも手合わせしたが無駄だったと。帝国まで足を伸ばすしかないかと恐ろしいことが書かれていた手紙の結びに・・・」

ミュールズ国の噂でトゥーロン王国のリシュリュー辺境伯は強いらしいと聞き、興味が湧いたと。
その後、最後の手紙に・・・。

「ど・・・奴隷商人に頼んでリシュリュー辺境伯まで連れて行ってもらうことにしたと・・・。私はそんな悪名高い国に獣人であるジャンヌ様が向かわれるなんて、恐ろしくて恐ろしくて・・・すぐにお止めする手紙を書きました」

けれど、冒険者ギルド経由で出された手紙は、ジャンヌ様に届くことがなかった。
トゥーロン王国は亜人に対する非道さで各ギルドは撤退しており、他国とのギルドとの連携は取れていない。
だから、手紙のやりとりはできないのだ。
乳母の語りが彼女の啜り泣きで静かに終わった後、ベルナール様は俯き立ち尽くしていた。

やや、後ろに控えていた獣人従者たちの落ち着きのなさが、嘘がバレて動揺しいてるようにも見える。
陛下やクリストフさんたち王族の方たちは、沈痛な表情で何とも言えない感情を噛み殺しているようだった。

「・・・ベルナール様と、仰いましたか?」

コクリと小さく頷く。

「ジャンヌ様は、ベルナール様が仰っられたように美しく強い女性でした。そしてとても優しく・・・優しい姫だったのです。姫様はご自分のため無責任に国を出て、伴侶を探しに行かれたのではありません。ただ、この乳母の願いのために、そのために国まで出られたのです」

決意を込めた強い瞳でベルナール様を見つめた乳母は、そっとその手を小さな自分の両手で包んだ。

「姫様は、私の姫様の子供も私が抱き上げて育てたいという望みを叶えるために、伴侶を探しに行かれたのです!本当はそんなに急いで結婚をするつもりなどなかったのに」

乳母の両目からは、涙が溢れ止まらない。
彼女が言うには、もともとジャンヌ様は自分に王となる資質が無いことを自覚しており、時期を見て弟に譲るつもりだったこと。
自分には武力しかないから、いずれはアンティーブ国の騎士団に所属するつもりだったこと。

「・・・結婚を急ぐ必要などなかったのに、そのとき私は少し体を壊しておりまして・・・職を辞することになったのです。だから、ジャンヌ様は・・・」

涙声で引き攣りながらも、彼女は老いた体を折り曲げてベルナール様に謝り続ける。
ベルナール様はどうしたらいいのかわからない風に自由な左手を上に下に動かしていたが、その後、ぎこちなく母の乳母だった彼女の震える背中を摩りだした。

「ベルナール様・・・」

「・・・・・・」

彼の怒りでピンと立っていた耳と尻尾は、力無く垂れている。

「ベルナール様。お願いがございます。どうか・・・どうか・・・、ジャンヌ様の代わりとまでは申しません。どうか・・・抱きしめさせてください・・・」

乳母はそう言うと、ベルナール様の返事を待たずに、ぎゅっと彼を抱きしめた。

「ジャンヌ様・・・。ジャンヌ様・・・」

「・・・・・・っ」

ベルナール様は、自分の体に巻き付いた腕を振り払うこともできず、居た堪れないように身動きをしていたが、やがて静かに力を抜いた。

そして、乳母が控えていた場所に一緒に立っていた従者などの使用人が一斉にベルナール様たちへと近づき、次々とベルナール様に声を掛けながら頭を撫でたり背中を撫でたりと・・・愛でているんですけど?
みんな目を真っ赤にして、鼻を啜りながら「私はジャンヌ様の執事で・・・」とか、「私はメイドでした」とか自己紹介をしてますが・・・ジャンヌ様は使用人たちに大人気だったのですね?
お母様の知り合いに囲まれて、ちょっと困惑気味のベルナール様。

「・・・もう、よかろう。ベルナール殿とは場所を移して、存分に姉上の話をするがいい。この場を離れることを許す」

玉座に肘を付いて呆れながらも、微笑ましくこの光景を見守っていた陛下の言葉に、使用人たちは綺麗な礼を見せた後、ベルナール様を連れて奥の扉から出て行ってしまった。
しかも・・・妹姫様と王妃様まで、嬉しそうに退場してしまいましたが?

「おっと、お前たちはそっちじゃないぜ」

クリストフさんは、いつのまにか騎士たちを連れて、ベルナール様の従者たちをぐるりと囲んでいました。

「・・・ほお、懐かしい顔が混じっていたな・・・。お前は姉上の婚約者候補だったシャロント伯爵家の者じゃねぇか。なんで姉上の御子のベルナール殿と一緒にいるんだ?・・・お前、奴に何を吹き込みやがった」

ギロリと従者のひとりを睨みつけるその眼差しに含まれる殺気は、こちらまで縮み上がるほどの苛烈さだった。

あの人・・・終わったな。
なーむー。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。

小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。 「マリアが熱を出したらしい」 駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。 「また裏切られた……」 いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。 「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」 離婚する気持ちが固まっていく。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

転生したら幼女でした!? 神様~、聞いてないよ~!

饕餮
ファンタジー
  書籍化決定!   2024/08/中旬ごろの出荷となります!   Web版と書籍版では一部の設定を追加しました! 今井 優希(いまい ゆき)、享年三十五歳。暴走車から母子をかばって轢かれ、あえなく死亡。 救った母親は数年後に人類にとってとても役立つ発明をし、その子がさらにそれを発展させる、人類にとって宝になる人物たちだった。彼らを助けた功績で生き返らせるか異世界に転生させてくれるという女神。 一旦このまま成仏したいと願うものの女神から誘いを受け、その女神が管理する異世界へ転生することに。 そして女神からその世界で生き残るための魔法をもらい、その世界に降り立つ。 だが。 「ようじらなんて、きいてにゃいでしゅよーーー!」 森の中に虚しく響く優希の声に、誰も答える者はいない。 ステラと名前を変え、女神から遣わされた魔物であるティーガー(虎)に気に入られて護られ、冒険者に気に入られ、辿り着いた村の人々に見守られながらもいろいろとやらかす話である。 ★主人公は口が悪いです。 ★不定期更新です。 ★ツギクル、カクヨムでも投稿を始めました。

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

わたくしがお父様に疎まれている?いいえ、目に入れても痛くない程溺愛されております。

織り子
ファンタジー
王国貴族院の卒業記念パーティーの場で、大公家の令嬢ルクレツィア・アーヴェントは王太子エドワードから突然の婚約破棄を告げられる。 父であるアーヴェント大公に疎まれている―― 噂を知った王太子は、彼女を公衆の面前で侮辱する。

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新 プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

私の家族はハイスペックです! 落ちこぼれ転生末姫ですが溺愛されつつ世界救っちゃいます!

りーさん
ファンタジー
 ある日、突然生まれ変わっていた。理由はわからないけど、私は末っ子のお姫さまになったらしい。 でも、このお姫さま、なんか放置気味!?と思っていたら、お兄さんやお姉さん、お父さんやお母さんのスペックが高すぎるのが原因みたい。 こうなったら、こうなったでがんばる!放置されてるんなら、なにしてもいいよね! のんびりマイペースをモットーに、私は好きに生きようと思ったんだけど、実は私は、重要な使命で転生していて、それを遂行するために神器までもらってしまいました!でも、私は私で楽しく暮らしたいと思います!

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。