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運命の鐘を鳴らしましょう

私の名前を高らかに宣言しました

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クリストフさんは、腰に佩いた剣を鞘からは抜かないまま、トントンとシャロント伯爵家の者と呼んだ獣人の肩をそれで叩いた。

「どうした?折角、トゥーロン王国なんてまで姉上の後を追って行き、まんまと洗脳した王族の子をその手にしたのに、お粗末な結果じゃねえか!」

獣人従者の胸倉をグッと掴み上げ、ギリギリと締め上げていく、クリストフさん。

「てめえ、ベルナールを使って、何をするつもりだった?」

「・・・べ、べつに・・・私は何も・・・。す、全てはシャロント伯爵の命令で・・・」

そのまま締上げていると、首が締まってしまうと思うんですけど?
私がハラハラした気持ちでいると、クリストフさんはその男の人をペイッと床に投げ捨てた。

「だったら、アンティーブ国に戻ってきたときに、シャロント伯爵の元へ走りゃよかったじゃねえかっよ!」

に力を入れて、ダンッと倒れた男の手を踏みつける。

「した・・・、したさ!アラスの町に着いてすぐに手紙を出した!・・・だけど・・・シャロント伯爵は・・・」

「何も言ってこなかったし、迎えも来なかった・・・だろう?」

ニヤーッと人の悪い笑顔を見せるクリストフさん。

「そりゃそうだ。今のシャロント伯爵家の者は、お前の知っているシャロント伯爵家の者じゃねぇよ。当時の伯爵が一番大嫌いだった・・・腹違いの弟が継いだんだからな!」

ぐりぐりと踵で、獣人従者の手の甲を踏み潰すクリストフさん。

「そ・・・そんな!」

「本当だ。シャロント伯爵は、お前が姉上を連れ戻すのが待てずに、直接・・・狙ってきたのだ」

陛下が、地の底から低い声を出して言った。

「私の命ではなく、王妃の腹の中にいた子供の命をな!」

ビリビリと広間に陛下の怒声が響く。

「・・・狙っているのがわかったから、罠を張り、一族全てを捕らえ・・・シャロント伯爵家の者たちは全員、犯罪奴隷に身を堕とし鉱山送りにしてやった。今頃は生きているかどうか・・・」

「そ・・・それじゃ、私は・・・」

一気に顔を青褪めさせる彼の首に、ガチャンと首輪を嵌める。
そして、周りの騎士たちも獣人従者たちに、ガチャンとガチャンと首輪を嵌めていく。

「当然、同じ所に送ってやるよ。覚悟しろ!」

連れて行け!とクリストフさんが命じると、彼らはベルナール様たちが出て行った扉とは別の扉へと、やや乱暴に連行されて行った。
クリストフさんはその場に残り、顔を天に向け目を瞑った。

「シャロント伯爵の件、ようやく終わったな」

「全くだ。まさかこんな大捕り物が最後に残っているとは思わなかったよ。現シャロント伯爵が、やつらからの手紙を正直に差し出してくれたおかげだな」

「ああ。今のシャロント伯爵は、幼少の頃から正妻たちにいじめられ苦労してきた人だからな。分不相応な権力は望まないだろう」

「それと、ベルナールがあいつらの言いなりになって変な奴等の所へ身を寄せるのではなく、国一番の良識派と言ってもいい、ヴィエンヌ候にコンタクトを取ったのが幸いしたな」

事件が終わったので、陛下とクリストフさん兄弟が和やかに会話をしております。
なんか、ベルナール様の不穏なセリフから始まったけど、いい感じにオチがついたみたいだから、私たちはそろそろお暇しましょうかね。

ぴょんと、座っていた椅子から飛び降りる。

「おいおい、お嬢」

「終わったんでしょ?帰るわよ」

スタスタと歩き出した私に、クリストフさんの焦った声が。

「おい!お嬢ちゃんどこに行くんだ!」

クルッと振り返る。

「・・・いや、もう、用事は済んだかな・・・て」

てへっ。
おっと、クリストフさんの眉間に皺が・・・。
玉座に座った陛下は、ちょっと可笑しそうに笑ったのを誤魔化す空咳をした後、どっしりと椅子に座り直し真剣な顔をした。

「トゥーロン王国第1王子、ヴィクトル・トゥーロン。前へ」

名を呼ばれたヴィクトル兄様は静かに立ち上がり、しっかりとした足取りで前に進み、陛下の前で片膝を付き頭を垂れた。
後ろには、例の犬?獣人従者の彼が付き添い・・・ながらもちょいちょいリュシアンを盗み見ているんだけど・・・、ヴィクトル兄様のやや後ろで同じように片膝を付いた。
彼は、どんだけリュシアンが気になっているんだが・・・。

「トゥーロン王国第4王女、シルヴィー・トゥーロン。前へ」

同じように呼ばれたけど、私は無視する。
堂々と無視する意思表示に、両足を踏ん張って立って、両手を腰に当てて、つるぺたな胸を張る。

「・・・お嬢ちゃん?」

無視です。

「シルヴィー・トゥーロン?」

陛下の不思議そうな呼びかけにも、無視。

「お嬢、呼ばれてんぞ」

ほら、行くぞとリュシアンが立って、手を差し伸べてくれるけど、無視。
むしろ、パチンとリュシアンの手を叩く。

「その名前は捨てた名前よ!私の名前はヴィー・シルヴィー。の冒険者よ!」

デデーンと効果音が付きそうなぐらいの態度で言い放つと、アルベールが満面な笑顔で拍手をしてくれました。
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