みそっかすちびっ子転生王女は死にたくない!

沢野 りお

文字の大きさ
164 / 226
運命の鐘を鳴らしましょう

三国会談が始まりました

しおりを挟む
アンティーブ国最大の港町、アラス。
その町を見下ろす高台に建てられている貴族の別荘のひとつ、宰相様のご自慢の別荘で大陸の歴史を動かす会談が行われる。
ゴクリ・・・緊張するわー。

クリストフさんの依頼でレルカン商会マルセルさんに協力してもらい、こっそりミュールズ国王太子、ミシェル殿下に密書を届けた。
この日、この時間、この場所での会談への参加を促すものだ。
勿論、ヴィクトル兄様とアンティーブ国王陛下の連名で。

いい返事がもらえたみたいで、晴れてこの日を迎えることができたのだけれど・・・。
アンティーブ国側からは、王弟クリストフさんと騎士団長さん・・・あの人族のマッチョイケオジが騎士団長様でした・・・といつもの司会進行の小人さん。
トゥーロン王国側からは、ヴィクトル兄様とベルナール様。
ベルナール様は、アンティーブ国王陛下たちからの勧めで、トゥーロン王国リシュリュー辺境伯からのお付き獣人たちを一度解雇した。
元々は、アンティーブ国第一王女だった「ジャンヌ様命」の取り巻きたちらしい。
「ジャンヌ様命」で、亜人は全て奴隷にする国に一緒に入国するレベルにちょっと引くけど・・・。
結局、彼らはベルナール様を主として第一にしていた訳でもなく、未だに「ジャンヌ様命」のままなんだよね。
だから、ジャンヌ様に王座を譲らなかったアンティーブ国やジャンヌ様を奪ったリシュリュー辺境伯に対して醜悪な想いを抱えていて、幼いベルナール様を自分たちの都合のいいように洗脳していったんだよ。
そりゃ、歪むよね?性格が。
彼らは、騎士団長がズルズルと騎士団の練兵場に連れて行き、しばらくは帰ってこないそうだ。
うん、心身ともに生まれ直すつもりで、揉まれておいで。

そして・・・なぜか、私たちシルヴィー一家のゆかいな仲間たち・・・も参加です。

「なんでよっ!」

ガタッと音を立てて椅子から立ち上がった私を、目を丸くして驚いて見つめるヴァネッサ姉さん。
ヴァネッサさんは一応・・・アラスの冒険者ギルドのギルマスだし、ギルド代表で参加とのこと。

「ど、どうしたんだい?」

「なんで、ただの冒険者である私たちが、こんな大事な会談に参加することになってんのよ!おかしいでしょうが!」

ダンッとテーブルを両手で叩くが、実際はペチッと可愛い音がしただけで、とっても手が痛いです。
ヴァネッサ姉さんはクリストフさんと、ヴィクトル兄様はベルナール様と顔を見合わせた後、シンクロした動きで首を傾げてみせた。
うがーっ!

「私たちは一般人です!しかもトゥーロン王国の民でもなければミュールズ国の民でもないし、アンティーブ国に住むかどうかはまだ検討中!」

なのに、なんで三国会談なんて厄介なものに巻き込まれているのさ。

「・・・今更だろう?お嬢。しかもこのメンツだぜ?アルベールがいなかったら纏まらないと思う」

段々とリュシアンの言葉が尻すぼみになるのは、アルベールが満面な笑顔で圧をかけているからだ。
馬鹿め!アルベールだって参加したくないに決まっているだろうが!

「・・・まあ、俺らに交渉事は無理だなぁ」

ガシガシと乱暴に頭を掻くクリストフさん。
確かに・・・騎士団長様はマトモな人っぽいけど、交渉事が得意な腹黒さは不足しているような・・・。
ヴァネッサ姉さんは論外だし、ヴィクトル兄様は・・・ミュールズ国の王子とは知らない仲じゃないけど、いいように利用されていそう。
ヴィクトル兄様ってば、あんな国で育ったのに純粋培養気味なんだよねぇ。
ベルナール様は、この中ではソコソコの腹黒さと思っていたけど、最近その認識を改めている。
まさかのチョロイン要員だとは思っていなかった。
マルセルさんが居てくれても、商人とは価値観が違うもんなー。
私は、隣に座るアルベールの頭の天辺から足爪先までを無遠慮に見る。
うん・・・アルベールしかいないね。
三国を相手にしても、全く引かずに腹黒と陰険を前面に出して有利に事を進めるあくどさは、アルベールしかいないよね。
私は、大人しくストンと椅子に座り直した。

・・・でもさ、じゃあアルベールだけが参加すれば・・・いいんじゃないの?







私は、こっそり頬を摩っている。
不穏なことを考えていたのがアルベールにバレて、頬を抓られたのだ。
「ほおう、私一人で参加させて、ヴィーは逃げるつもりなんですか?」と真顔で囁かれて、ムニッと両頬を抓られた。

そのまま、逃走できずに会談の場所に移動して、しっかりとトゥーロン王国側のヴィクトル兄様の隣に座らされている。
隣にはアルベールがいて、後ろにはリュシアンとセヴランが立っている。
ルネとリオネルは、部屋の隅に椅子を用意してもらって寛いでいます。
難しい話は分かりませんと、うるうる黒い瞳で見上げるルネは可愛い・・・茶菓子を大量に要求するリオネルには呆れる。

全員が座って暫くすると、私たちが入ってきた扉とは別の扉がゆっくりと開き、使用人の先導で一人の青年が入ってくる。

ミュールズ国王太子、ミシェル殿下、その人だ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

転生したら幼女でした!? 神様~、聞いてないよ~!

饕餮
ファンタジー
  書籍化決定!   2024/08/中旬ごろの出荷となります!   Web版と書籍版では一部の設定を追加しました! 今井 優希(いまい ゆき)、享年三十五歳。暴走車から母子をかばって轢かれ、あえなく死亡。 救った母親は数年後に人類にとってとても役立つ発明をし、その子がさらにそれを発展させる、人類にとって宝になる人物たちだった。彼らを助けた功績で生き返らせるか異世界に転生させてくれるという女神。 一旦このまま成仏したいと願うものの女神から誘いを受け、その女神が管理する異世界へ転生することに。 そして女神からその世界で生き残るための魔法をもらい、その世界に降り立つ。 だが。 「ようじらなんて、きいてにゃいでしゅよーーー!」 森の中に虚しく響く優希の声に、誰も答える者はいない。 ステラと名前を変え、女神から遣わされた魔物であるティーガー(虎)に気に入られて護られ、冒険者に気に入られ、辿り着いた村の人々に見守られながらもいろいろとやらかす話である。 ★主人公は口が悪いです。 ★不定期更新です。 ★ツギクル、カクヨムでも投稿を始めました。

私の家族はハイスペックです! 落ちこぼれ転生末姫ですが溺愛されつつ世界救っちゃいます!

りーさん
ファンタジー
 ある日、突然生まれ変わっていた。理由はわからないけど、私は末っ子のお姫さまになったらしい。 でも、このお姫さま、なんか放置気味!?と思っていたら、お兄さんやお姉さん、お父さんやお母さんのスペックが高すぎるのが原因みたい。 こうなったら、こうなったでがんばる!放置されてるんなら、なにしてもいいよね! のんびりマイペースをモットーに、私は好きに生きようと思ったんだけど、実は私は、重要な使命で転生していて、それを遂行するために神器までもらってしまいました!でも、私は私で楽しく暮らしたいと思います!

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅

あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり? 異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました! 完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。

神による異世界転生〜転生した私の異世界ライフ〜

シュガーコクーン
ファンタジー
 女神のうっかりで死んでしまったOLが一人。そのOLは、女神によって幼女に戻って異世界転生させてもらうことに。  その幼女の新たな名前はリティア。リティアの繰り広げる異世界ファンタジーが今始まる!  「こんな話をいれて欲しい!」そんな要望も是非下さい!出来る限り書きたいと思います。  素人のつたない作品ですが、よければリティアの異世界ライフをお楽しみ下さい╰(*´︶`*)╯ 旧題「神による異世界転生〜転生幼女の異世界ライフ〜」  現在、小説家になろうでこの作品のリメイクを連載しています!そちらも是非覗いてみてください。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。