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運命の鐘を鳴らしましょう

レイモン氏と密談しました

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ミュールズ国への潜入メンバーが決まった!

アンティーブ国側はクリストフさんを大将に、王都騎士団の精鋭数名と、ヴァネッサ姉さんと弟分のA級冒険者パーティー。
ミュールズ国は、騎士や兵士を王都から迎撃に動かさないことと、なるべく研究所のある領地から兵を移動させることをミシェル殿下は約束してくれた。
勿論、王太后の実家の私兵まで動かすのは無理だけど、国から派兵させている部隊は、適当な理由を付けてミシェル殿下派の領地へ移動させる。
国王の子飼いの奴らはいるだろうけれど、いざとなったときの守りは手薄になったと言える。
トゥーロン王国側はヴィクトル兄様とベルナール様と飛竜騎士団から数名参加。
そして、一般冒険者パーティーの私たち。

これって、成功報酬の話とか、今からしてもいいのかな?
無料タダ働きじゃないよね?
そんな疑問をアルベールとセヴランにぶつけてたら、セヴランの両目がお金のマークになっていた。
うん、頑張って毟り取ってきてくれ。

さて、飛竜騎士団が作戦に加わったのは、ビースト研究所破壊の報せを一刻も早く関係各所に伝達するため。

まず、ミュールズ国王都のミシェル殿下。
ビースト研究所にて禁断のビーストを製造していたと国王を断罪し、ついでにトゥーロン王国の陰で今まで行ってきた亜人奴隷売買の悪事を暴き、前国王を捕縛。
数年かけて作り上げてきた味方を総動員して、他の悪徳貴族や商人、奴隷商たちを吊るし上げる・・・予定。
今まで溜めていた鬱憤を晴らせると、やる気になっていたミシェル殿下。
気になっているのは、自分が送り出した弟のアデル王子が、トゥーロン王国で亜人奴隷解放軍に参加し、本人からの連絡が途絶え密かに付けていた影からの報告が無いこと。

「ヴィクトル。君も大変だと思うけど、アデルに会ったらよろしくな」

ポンポンと友達のような気安さで、ヴィクトル兄様の肩を叩いていた。

そのヴィクトル兄様は、ビースト研究所を破壊したあと、飛竜に乗ってトゥーロン王国王都まで高速移動し、王宮に巣食っているザンマルタン侯爵一派を掃討する。
ユベールとエロイーズについては、その場で切り捨てる派のベルナール様と、捕まえて裁判にかけ塔に幽閉を主張するヴィクトル兄様で揉めていたらしいけど、レイモン氏がヴィクトル兄様の意見に賛同したので収拾がついた。
私の命の安全を第一にするアルベールたちは、「ってしまえ」と思ったらしいけど、レイモン氏が教えてくれたトゥーロン王国の法律では、王族の処刑というのはほぼ不可能なんだって。
間違った法ではあるが、だからと言って無碍にしてはならない・・・て難しい顔で言ってたわ。
ここで、ザンマルタン侯爵と共にユベールとエロイーズも処刑してしまうと、ヴィクトル兄様のイメージも悪くなるかもしれない。
これから、茨の道を歩くヴィクトル兄様に余計な心労は増やしたくないもん。

「でも、ビースト研究所を攻撃し終わった後、私たちはどうするの?」

はて?ミュールズ国には用が無いし、トゥーロン王国に入国して王都を目指すのも旅程にかなり日数が必要だ。
王都に着いた頃には、山場を越えてしまっていて、私たちがトゥーロン王国に来た意味が無いかもしれない。
じゃあ、やることは終わりましたね!とアンティーブ国に戻るのも・・・なんだかなぁ。

「リシュリュー辺境伯領地に行って、王都までの貴族から亜人奴隷を解放する手伝いでもするか?」

「うーん」

レイモン氏の話では、リシュリュー辺境伯領地では王都に攻め入る予定で軍の編成も終わっている。
なんなら、領民に亜人差別撤廃を掲げ元亜人奴隷と共に進軍することも、通知する準備ができているとのこと。
それに合わして、王都のイザックたち亜人奴隷解放軍も各地で蜂起の準備を進めていて、号令さえあればトゥーロン王国の主要都市全てで一気に動き出すことができる。
号令はリシュリュー辺境伯がするのだが、その目安がトゥーロン王国の第1王子ヴィクトル殿下の帰国だ。
死んだと思われ哀しみに沈んでいた民も、ヴィクトル兄様を主と定めていた貴族も喜び、亜人奴隷解放軍の動きに賛同してくれる者が現れるだろうと見ている。

ただ、亜人差別が人々の気持ちの中からすぐに撤廃ができる訳ではない。
あちこちで小規模な内乱が起きるだろう。
レイモン氏はリシュリュー辺境伯領地に残り、その対応をする責任者なんだって。
つまり、私たちがそれを手伝うってことよね・・・。

「ううん。亜人差別に拘る頭の固い奴らの対処に獣人と一緒にいる私が鎮圧に赴いたら、事態が悪化するわ」

本当なら、アンティーブ国に戻るのが正しい選択だと思う。
ルネとリオネルはまだ子供だし、トゥーロン王国内の争いって言っても戦争には違いない。
リュシアンやセヴランだって、自分たちを奴隷の身分に貶めた国の未来なんて関係ないだろうし・・・。
アルベールに至っては、とにかく私を遠ざけたいでしょうしねぇ・・・。

私は帰り支度をしているレイモン氏へ、トコトコ一人歩いて近づいていく。
レイモン氏は、残りの飛竜を連れてリシュリュー辺境伯領へ帰るのだ。
ちなみに、国交のないアンティーブ国に来るのに飛竜に乗って来るのは憚られたので、海上に停泊している船に降りて、小船でアラスの街に入ったとか。
その海上の船は連合国の船で、私たちも通ってきたエルフ族が多い国の船よ。
でも帰りは、飛竜に乗ってそのまま帰るので、大きい飛竜が砂浜で思い思いに寛いでいる。

「・・・レイモンさん」

「どうしました?」

「あのね・・・」

私はレイモン氏の耳に口を寄せて、こしょこしょ。
これはギリギリまで内緒。

だって、バレたらアルベールに反対されるもん!
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