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悪を倒しましょう

秘密の作戦でした

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さて、個人的な報復を終えて私の気分も上昇したところで、次の作戦に移りましょうか。

川の反対側、アンティーブ国側に待機していた通信兵さんを予め決めていた合図でこちらに呼び寄せて。
どうしてだか、物見の塔の屋上で見張りをしていたはずのヴィクトル兄様とベルナール様が下に降りてきているんだけど?

「俺たちが派手に地下で暴れたせいか、塔が激しく揺れて壁に大きなヒビが入ったらしいぜ」

それで危ないからと飛竜と共に下に避難していたとか。

今は、クリストフさん、アルベール、ヴィクトル兄様、通信兵さんとで、ここで没収したビースト製造の証拠品と証拠映像を映した魔道具の確認をしているみたい。
通信兵さんは、その証拠品を持ってミュールズ国の王城で待っているミシェル殿下の元へ。

手にした証拠映像を映した魔道具の水晶は、「真実を映す」魔法が施されいるので偽造はできないとされている。
ギルド連盟ご自慢の逸品だ。
・・・ヴァネッサ姉さんが鼻高々に見せてくれたときに、私だったら改ざんできそーと思ったことは内緒だ。
そこには、例のビースト製造のために連れて来られたそれぞれの分野のエキスパートである人族の証言も映っている。

なんか、魔獣研究で高名な人がカミーユさんを見てあわあわして拝んでいたけど・・・カミーユさんって魔獣研究の第一人者って本当だったのね。
リオネルを追っかけている変質者にしか見えてなかったわ。
もう一つ、予備の証拠品はクリストフさんが管理することに。

保護した獣人とミュールズ国王に人質を取られていた研究者の皆さんは、そのクリストフさんとアンティーブ国の騎士たちと一緒に船に乗って川を渡り、アンティーブ国へと連れて行くことに。
そして、ここで捕縛した悪人どもは、ミシェル殿下が手配したミュールズ国の騎士が来るまで、ヴァネッサ姉さんとAランクの冒険者パーティーで見張り。
アンティーブ国が介入していることは秘密なので、中立の立場である冒険者ギルドのメンバーがビースト研究所に残ることにしたらしい。

ヴィクトル兄様は、飛竜に乗ってトゥーロン王国へと戻り、亜人奴隷解放軍を率いているリシュリュー辺境伯の軍と合流。

私たちは、諸々のことに巻き込まれないようにアンティーブ国へと戻り、王都ではなく縁のあるゴダール男爵領地で身を隠していることに。
アラスの町に近いから、ヴァネッサ姉さんも安心だって言ってたし。

主要人物たちの今後の行動確認も終わったらしく、クリストフさんは騎士たちに命じて亜人たちを船へと連れて行く。
ヴァネッサ姉さんは、冒険者パーティーから二人ほどミュールズ国側の門扉へと走らせ、見張りに立たせる。

「ねえねえ、リュシアン。私・・・ちょっと疲れちゃった。馬車で休んでてもいい?」

「ん?そうだな。後はやることもないし、いいぞ。カヌレとブリュレは馬車に繋いでおいたし・・・、飛竜とのロープも・・・終わっているみたいだな」

アンティーブ国の騎士たちがテキパキと仕事をこなし、馬車はしっかりと飛竜とロープで固定されていて、カヌレとブリュレも大人しくスタンバイしている。
あの子たちは随分、魔獣相手に暴れていたから、スッキリしたのかな?

私はアルベールが戻ってこないうちに、そそくさと馬車へと走って行く。
そのまま馬車の中には入らずに、まずはカヌレとブリュレに賄賂の焼き菓子を一つ二つと口に押し込める。

「「ガフガフ。モグモグ」」

二頭の馬の円らな瞳をしっかりと見て、コクンと頷く私。
カヌレとブリュレも「まかせてください」とばかりに、ウンウンと頷く。
よし!

私は、上を仰ぎ見て飛竜の首をポンポンと叩いた。
大きな飛竜の頭がゆっくりと降りてきて、私と目線を合わしてくれる。
そっと差し出す、ホールケーキ。

「ムシャア」

ひ・・・ひと口ですか?
よろしくお願いしますと頭をペコリと下げる。

さて、ここからは自分に隠蔽魔法をかけて、少し離れた所にいるもう一頭の飛竜へと移動する。
焦らずゆっくりと足を運び、こちらの飛竜の首をポンポン。
ぬうっと、私の視界いっぱいに飛竜の顔。
こちらにも、ホールケーキを差し出す。

「・・・よろしくね」

「モシャア」

こちらもひと口でホールケーキを完食です。
ススーッと飛竜の左の翼へと移動すると、賢い飛竜は私のために翼を傾けてくれた。
ぶ恰好な体勢で翼をよじ登る私。
うんしょ、うんしょ。
そして翼の付け根の少し窪んだところに体をすっぽりと隠す。

こちらの飛竜に乗る予定のヴィクトル兄様とベルナール様の声が聞こえてきた。
ドキドキとしながらひたすら静かに時間が過ぎるのを待つ。
チラチラと飛竜の背中を確認するけど、ベルナール様とヴィクトル兄様は乗り込んだが、まだ一人足りない。
そのうちにもう一頭の飛竜に乗るアルベールたちの話し声が聞こえてきた。

「・・・ヴィーが馬車で休んでいるんですか?」

「ああ。やっぱり疲れたって」

馬車には、もともと私の隠蔽魔法がかけられているから、そちらに私の気配がなくてもアルベールたちは不思議に思わない。
思わないけど・・・さすがに馬車の中を確認されたら、私がいないことがバレる。
ううーん、早く早く!
私の焦りも空しく、リュシアンが余計なことを言い出した。

「ちょっと心配だから、飛ぶ前にお嬢の様子を見てくるわ」

「そうですね。お願いします」

タタタッと走る足音。
うー、ヤバイ!
ガチャッと開けられる馬車の扉。

「ヴィクトル様、準備できました!出発できます」

「そうか、ユーグ。ご苦労だった」

来た来た来たーっ!ユーグ君、早く早く。
バタン!

「おい!アルベール!お嬢がいない!」

「どういうことです!」

途端に放出される私を探すためのアルベールの探知魔力。
ヤバイ、見つかる!
私は自身にかけた隠蔽魔法を解き、ガバッと起き上がって叫ぶ。

「ユーグ君!早く乗って!出発よ!」

ペチンペチンと飛竜の背中を叩くと、その合図で飛竜がフワッと飛び上がる。
まだ片足を飛竜の翼にかけた状態だったユーグ君は、私の大声に条件反射で飛竜の背に飛び乗る。

「ああーっ!お嬢、何やってんだよ!」

「ヴィー!降りなさいっ!」

私は高度を上げる飛竜の背中から、少し顔を出して二人に叫ぶ。

「おおーい!ちゃんと追っかけてきてねー!」

このまま、トゥーロン王国へ殴り込みに行きますよー!
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