みそっかすちびっ子転生王女は死にたくない!

沢野 りお

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幸せになりましょう

仲間が増えました

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突然の私の問いかけに、彼、シャルル・ノアイユ公爵はポカンとした顔を向ける。

「・・・え?」

「前公爵たちが死んでアンタが公爵位を継いだのは知っているわ。私が聞きたいのは、このままでノアイユ公爵として生きていくのか?ってこと。別に国を出て行ってもいいのよ?」

ざわざわと動揺するエルフたちに、え?ええ?と考えがまとまらないシャルル様。

「ヴィクトル兄様が王位を継いだら貴族たちも整理するわ。馬鹿な考えを持って役にも立たない貴族はいなくなってもらって、共に国を立て直そうという意欲のある人を取り立てるつもりなの。アンタみたいにいつまでも自分を哀れんでいる役立たずは必要ないの」

ピシャリと言ってやる。
エルフたちから戸惑いから殺意へと変わる気配が感じられたが、そんなのは無視します。

「国を出るって・・・どこに行けば・・・」

「知らないわそんなの。自分で考えなさいよ。あと、アンタがこの国から出て行くなら、ここにいる元奴隷のエルフをどうするか、ちゃんと世話してから行きなさいよね。アンタが主人なんだから」

「私は主人じゃない!彼らは奴隷じゃないんだっ!・・・私の・・・家族だ・・・」

最後は恥ずかしいのかボソボソと小声で呟いていたけど、しっかり私には聞こえました。
エルフの皆さんも耳はいい種族ですので、バッチリ聞こえたみたいです。

シャルル様は最初の尊大な態度はどこにやら、迷子の子供のような頼りなさですよ。
ふうーっと、わざと大きなため息を吐いて、シャルル様の目の前に立って、屈んで目線を合わせる。

「じゃあ、その家族のためにも考えなさい。どうすればいいのか。この国はこれから大きく動くわ。いいことばかりじゃなくて困ったことも悪いことも起きるでしょう。そのときにあなたは家族のみんなとどうするつもり?助けてもらうばかりでいいの?」

涙が溜まった目をパチリパチリと瞬きすると、ポロンと一粒の涙が零れた。

「あなたには、彼らを守る力がある。嫌いな奴が持っていた力で、憎い奴らが使っていた力でも、全ては使う人次第よ」

ガシッと私はシャルル様の両肩を掴んだ。
実際、彼らがトゥーロン王国から出て行っても、私たちは領地を信用できる誰かに預ければいい。
リシュリュー辺境伯家から目ぼしい人を推薦してもらってもいいし、なんなら前辺境伯のモルガン様やベルナール様もいる。
でも・・・できたら彼がいいのよねぇ・・・、うふふ。

「なんか、お嬢が悪いことを企んでいるぞ?」

「ええ。可愛い顔で笑ってますねぇ」

ちょっとリュシアン、聞こえているわよ!

「守る力・・・」

シャルル様は自分の両手を見つめている。

「覚悟が決まったらその力の使い方を教えてあげるわ。リシュリュー辺境伯軍の陣営まで来てちょーだい。しばらくはそこに留まっているから」

ポンポンとシャルル様の肩を叩くと、よいしょと屈んでいた姿勢を直してアルベールたちの元へ。
私はアルベールとリュシアンを連れて屋敷を出ようとしたのだけれど、ずっと黙っていたベルナール様がシャルル様に近づき何やらこしょこしょと話していた。
ん?なんだろう?
ま、いいか。

屋敷の門まで、私たちにいろいろとノアイユ公爵のことを教えてくれた年嵩なエルフと、元第二妃の奴隷のややワイルド系なエルフが付いてきてくれた。

「・・・シャルル様がもしこの国を出て行こうというなら、お供しようと思っています」

「・・・俺はあんたたちがどうこの国に落とし前つけるか見てから決める」

「そう。もしシャルル様がこの国に残ってノアイユ公爵として生きると決めたならどうするの?」

エルフたちは互いの顔を見合わせたあと、ニッコリと笑って「共に残ります」と答えた。

「・・・シャルル様に伝えて。もし、エルフとして生きたいなら、私シルヴィー・トゥーロンがその願いを叶えます、と」

アルベールとリュシアンがギョッとした顔で私を見ている気がするが、スルーしよう。
だって、あの痛々しい耳は見ていたくないもの。
エルフの二人は私の言いたいことがわからないようで、首を傾げていたが「伝えます」と受けてくれた。

「本人には言わなかったけど、トゥーロン王国の王が代わっても貴族たちが人族のままでは、周辺国から信用はされないと思うの。だからベルナール様が獣人の代表として、そしてシャルル様がエルフの代表としてトゥーロン王国の貴族位を受けてくれればと考えたのよ」

ああー、と納得するエルフ二人と、うちの馬鹿犬一匹。
ギロッと私が睨むと、リュシアンはすうーっと顔を背けた。
リュシアンは、またまた私たちの行動を理解してなかったみたいですね!アルベール、教育的指導をお願いします!

私たちは、パッカラパッカラと馬車に乗ってリシュリュー辺境伯陣営へと戻った。
ベルナール様は思案顔でずっと眉間にシワを寄せて黙っていますが、リュシアンは例のワイルド系エルフについて思うことがあるみたい。

「どうしたのよ」

「いや。確か第二妃と第三王女様はエルフの元奴隷の反撃にあって死んじまったんだよな?もしかしてそれはアイツがしたことかなぁって」

血の気の多そうなエルフだったもんね、彼。

「そうかもしれませんが、他のエルフでも充分可能性はありますよ。言ったでしょ?我々はプライドが高いって。奴隷契約から解放された後なら魔法で攻撃もできますし」

エルフの女性でも復讐はできますよ、とアルベール。

「はあーっ、本当に差別とか奴隷とか・・・この国はロクでもないわねぇ」

でも、私は前世で知っている。
正確には前世ではないらしいけど、面倒だから日本で生きていたことは「前世」ってことにするわ。
どうやっても、差別ってなくならないのよねぇ・・・。
亜人差別を撤廃して奴隷制度を他国と同様に犯罪奴隷と借金奴隷だけにしても、きっと差別や人身売買といった犯罪はなくならないだろう。
種族差別が下火になっても、性差別や貧困、美醜、細かくいえば背の高さや飼っている動物、食べている物までも人と比べて差別してマウントを取り合う。
その度に、対策を考えて「教育」していかないといけない。

「・・・たいへんよねぇぇぇ」

正直、そんなつまらない争いに首を突っ込みたくはない。
それでも、そのことで大切な人が悲しむなら、私は立ち向かうだろう・・・きっと。


そんな小さな決意をした、夜。
リシュリュー辺境伯たちと集っていた天幕に、二人のエルフに付き添われてシャルル様が訪ねてきた。
緊張した顔には、無かった生気が満ちて少しばかりの成長が見られたのだった。

・・・て、私のほうが子供なんですけど?中身はアラサーですが・・・。




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