みそっかすちびっ子転生王女は死にたくない!

沢野 りお

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幸せになりましょう

王になる理由でした

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次の王は、第四王女シルヴィー・トゥーロン。
このバカげた提案に誰も異を唱えないし、笑い飛ばすこともない。
え? マジで?

「なんで、そんなとんでもないことに? ヴィクトル兄様がいるじゃないの」

恨めし気にレイモン氏をギロリと睨むと、レイモン氏は肩を竦めた。

「私は最適な答えだと思っていますよ。もちろん、ヴィクトル殿下もね」

そんな、まさかである。
ヴィクトル兄様は、トゥーロン王国の将来を憂えて異母弟のユベールを牽制し王太子を目指した。
王となったら亜人差別を撤廃、亜人奴隷の解放を実行するために、王都の冒険者ギルドマスターロドリスさんやリシュリュー辺境伯家と協力し、水面下で活動。
おまけに、王城の敷地の端の端に追いやられていた、みそっかす王女にまで心を配る完璧王子だよ?
しかも、王位簒奪を狙うザンマルタン家の暴行から逃れ、他国に渡り、この度見事に悪を倒し表舞台にカムバックしたというのに。
なんで、こんなちびっ子に王冠を奪われなきゃいかんのだっ!

「シルヴィー。俺も納得しているんだよ。むしろ、こんな重役をシルヴィーに押し付けることになって心苦しい」

ヴィクトル兄様! いい人すぎる! ちょっと王様業に向いてないかも・・・て不安になったのは内緒。

「でもでも、ヴィクトル兄様が王様にならないと・・・そのう・・・えっとお・・・」

私にはトゥーロン王家の血が一滴も流れていないのです! てカミングアウトしてオッケーな場面なのかな?
どうしようと思って、後ろに立つアルベールへと顔を向けた私が見たのは、慈愛の微笑みを浮かべている珍しいアルベールの姿と、驚愕に顎が外れるんじゃ? という顔をしたリュシアンだった。

「もしかして・・・知ってた? アルベール」

「ええ。レイモンたちに相談されて、私は賛成しました」

「なんで? 私が王様になったら冒険できなくなるよ? 他の国に行ったりダンジョン攻略したりとかできないよ?」

ついでに、気軽に厨房に行って異世界料理を作りまくって食べまくることもできないのよ?

「ヴィー。貴方が王冠を被りその座に即くのは、十年間です」

「へ?」

レイモン氏を見ると彼もコクリと頷き、ヴィクトル兄様もうんうんと頷いてみせた。

「十年間。シルヴィー殿下にお願いしたいのは、その期間玉座を守っていただきたい」

十年の間にヴィクトル兄様を立派な王様にするために鍛え上げるそうだ。
トゥーロン王国としての帝王教育はされていたが、鎖国状態の国の帝王教育、傀儡国としての帝王教育は百害あって一利なしと判断された。
ミシェル陛下とアンティーブ国の協力で、ヴィクトル兄様には改めて教育がなされる。
その間は、私の摂政としての役割もあるけど。

「王様やりながら勉強するのではダメなの? 私なんて教育もマトモに受けてませんが?」

この世界、この国での教育なんて、受けてないですよ。
強いて言えば、逃亡中のリシュリュー辺境伯でのオルタンス様から受けた淑女教育だな。

「・・・一番の目的は、民の目を逸らすことです。ヴィクトル殿下が今回の旗頭としてザンマルタン家の粛清と亜人奴隷の解放を成されましたが、トゥーロン王家の一人として憎まれることは避けられません」

ザンマルタン家に苦しめられた人たちや解放された亜人奴隷たちは、今回の戦で先頭に立ったヴィクトル兄様に対しては好意的だと思う。
でも、今までミュールズ国の言いなりになって亜人奴隷を帝国に売り飛ばしていた王家の一員として、嫌悪されることも否めない。
でも、王女の私も同じ条件なのでは?

「いいえ。シルヴィー殿下は王都の民すらもその存在を知られず、王城の外れで使用人たちにいびられて過ごしていた幼い少女・・・と同情を誘う噂をばら撒きます」

なんつー宣伝戦略プロバガンダ
つまり、ヴィクトル兄様をそのまま王座に即けるよりも、国民や外国の同情を誘うため、王女としては不遇だった私を利用するのね?
そりゃ、母親は父親とミュールズ国滞在中に、トゥーロン王国に無理やり連れて来られて愛妾にされるし。
産まれたら産まれたで、王位継承権のない王女だし、王様は愛妾の母親にも興味が無くなって、王城の外れの屋敷に母子で捨て置かれ。
母親が亡くなってからは、意地悪な使用人に虐められながらなんとか七歳まで育った、みそっかすな王女。
確かに死ななかったけど、ひもじい思いもしたし満足に身だしなみも整えられなかった最低な生活だわ。

「王族の誰からも、臣下からも、民からも忘れられた王女が、奴隷と手を取り合って国外に脱出!」

そのあと、アンティーブ国に渡り、アンティーブ国王弟に助力を願い、ミュールズ国の野望を砕き、兄であるヴィクトル殿下と共にザンマルタン家を潰した。
まだ、八歳の少女が亜人たちと一緒に、トゥーロン王国のために命をかけて戦った。

「・・・え?」

私、トゥーロン王国のためになんて、これっぽちも思ってませんけど?
今回のザンマルタン家をぶっ飛ばせ! は、ヴィクトル兄様のことが心配で助太刀しましたが? トゥーロン王国のために行動したことないよ?

「いいのですよ。嘘でもなんでも。民たちはそんな健気な王女に王冠を被せたいと思うでしょうし、他国はそんな女王に無碍な要求はしにくいでしょう?」

「・・・私を使つもりね?」

ギロッと再びレイモン氏を睨んだけど、彼はニッコリ笑ったあとスウーッと表情を消した。

「わかています。貴方にこんなことを頼むのが、どれだけ厚顔無恥なことなのか。でもね、トゥーロン王国のために私はどんな策を練っても貴方に玉座に座ってもらいます」

「私たちに勝てるつもり?」

モルガン様たちが強いのはわかっているけど、私のチート能力を舐めんじゃないわよっ。

「ヴィー」

アルベールが私の肩をやんわりと掴む。

「アルベール?」

なんで、止めるの?

「十年間。その間だけ女王としてこの国に留まりなさい。貴方はまだ幼い。できるなら、もう少し・・・子供のままでいなさい」

「子供って・・・」

いや、女王様って子供の遊びじゃないよ?

「正直、シルヴィー殿下だけでなく、貴方の仲間にも協力して欲しいのです。ノアイユ公爵とベルナールの教育は私だけでは厳しい。アルベールにも携わってほしい」

レイモン氏は、リュシアンにはモルガン様と一緒に騎士団の育成に関わって欲しい。
商業ギルドからの要望としては、セヴランがトゥーロン王国との窓口になること。
オルタンス様からも私の淑女教育の続きと、ルネのメイド教育の延長が希望されていた。

「・・・あと、リオネルですが、今回同行しているカミーユ先生をこちらに引き込みたい」

カミーユさんって、やっぱり高名な魔獣博士らしく、低ランクしか生息していないピエーニュの森の調査とダンジョンの発見を依頼したい。

「彼の依頼を受ける条件が・・・」

チラリとリオネルを盗み見るレイモン氏。

「そりゃ、この国がこれから立て直すことを考えたら大変だと思うわよ? ヴィクトル兄様のことを助けたい気持ちはあるわよ? でも私なんかが女王って・・・」

女王になるのを渋るのは、私が子供なのも理由だけど、前国王の血なんて一滴も入ってませんけど?
それに、いくらリュシアンたち亜人と協力して悪い奴らをやっつけて国を取り戻したとしても、人族に見える私じゃ周りからのバッシングは強いのではなかろうか。

「ヴィー。気にしなくてもいいですよ。こうすればいいのです」

アルベールが私の胸に飾られた針金ブローチを外してしまう。

「あっ!」

それを外すと・・・瞳の色が茶色から元の金色になってしまうのですが?

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