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一章(12)
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はにかみながらそう言えば、エリクもニヤリと笑みを浮かべた。「それならこうだ!」と言って頭をぐりぐりと撫でてくる。
「ちょっと、崩れちゃうじゃない!」
「大丈夫大丈夫、髪型が崩れてもアデラは可愛いから」
途端。
ボッと火がついたかのように頬が熱を持った。ドクドクと心臓がやかましくて、どうしてか彼と視線を合わせられなくて、ぷいっとそっぽを向く。
「あ、ありがとう」
絞り出すように喉を震わせれば、「い、いや……」とエリクの声が聞こえた。
しかしその声はかすれていて、気まずそうで。
ちらりと横目で窺うとエリクは頬をわずかに紅潮させており、照れているようだった。
そのことに余計気恥ずかしくなってきて、アデライドはそっと目を伏せる。
少し、気まずかった。落ち着かなくてもぞもぞと体を動かす。
だけどそれはさほど嫌なものではなくて、むしろどこか心地よいもので。
と、そのとき。
「――あ、そうそう! アデラは俺がすごいって言うけど、そんなことないから。俺よりも兄さんのほうが優秀だし、父さんにだって期待されているし……俺なんてまだまだで……」
沈黙を突き破るかのようにエリクが口を開いたのだが、徐々に声がか細くなっていき、やがて完全に聞こえなくなる。先ほどまでとは違い、重苦しい静寂が二人の間に落ちた。
「…………ごめん、こんな話して……」
ぽつりとエリクは言う。
アデライドは「大丈夫よ」と言い、しっかりと正面を向いた。多くの人が楽しそうに行き交う様子を目に映しながら口を開く。
「――エリクは自分のことを優秀じゃないと思っているみたいだけど、わたしはあなたのこと優秀だと思うわ。尊敬する」
「でも、兄さんのほうが――」
「わたしはあなたのお兄さまのことを知らないからなんとも言えないけど、確かにあなたよりも優秀なのかもしれないわね」
視界の端でエリクがうつむいた。
だけど、それでも。
「けど、それはあなたが優秀であることを否定するものではないわ。だからあなたは胸を張っていいと思う」
そう言ってエリクのほうを向けば、彼は一瞬きょとんとしたあと、嬉しそうに破顔して。
「ありがとう、アデラ」
その笑顔を見た途端、胸の奥がこそばゆくなった。
アデライドは少し視線を逸らすと「どういたしまして」と言う。
頬がやけに熱くて、なんだか変な気分だった。
そのとき勢いよくエリクが立ち上がる。その勢いに目をぱちくりさせていれば、彼はこちらに手を差し伸べてきた。
「ほら、行こう。次のところに案内するから」
「え、ええ。わかったわ」
彼の手を取り、アデライドは立ち上がる。
少し、そう少しだけ、先ほどまでよりも触れられたところが熱いような気がした。
「ちょっと、崩れちゃうじゃない!」
「大丈夫大丈夫、髪型が崩れてもアデラは可愛いから」
途端。
ボッと火がついたかのように頬が熱を持った。ドクドクと心臓がやかましくて、どうしてか彼と視線を合わせられなくて、ぷいっとそっぽを向く。
「あ、ありがとう」
絞り出すように喉を震わせれば、「い、いや……」とエリクの声が聞こえた。
しかしその声はかすれていて、気まずそうで。
ちらりと横目で窺うとエリクは頬をわずかに紅潮させており、照れているようだった。
そのことに余計気恥ずかしくなってきて、アデライドはそっと目を伏せる。
少し、気まずかった。落ち着かなくてもぞもぞと体を動かす。
だけどそれはさほど嫌なものではなくて、むしろどこか心地よいもので。
と、そのとき。
「――あ、そうそう! アデラは俺がすごいって言うけど、そんなことないから。俺よりも兄さんのほうが優秀だし、父さんにだって期待されているし……俺なんてまだまだで……」
沈黙を突き破るかのようにエリクが口を開いたのだが、徐々に声がか細くなっていき、やがて完全に聞こえなくなる。先ほどまでとは違い、重苦しい静寂が二人の間に落ちた。
「…………ごめん、こんな話して……」
ぽつりとエリクは言う。
アデライドは「大丈夫よ」と言い、しっかりと正面を向いた。多くの人が楽しそうに行き交う様子を目に映しながら口を開く。
「――エリクは自分のことを優秀じゃないと思っているみたいだけど、わたしはあなたのこと優秀だと思うわ。尊敬する」
「でも、兄さんのほうが――」
「わたしはあなたのお兄さまのことを知らないからなんとも言えないけど、確かにあなたよりも優秀なのかもしれないわね」
視界の端でエリクがうつむいた。
だけど、それでも。
「けど、それはあなたが優秀であることを否定するものではないわ。だからあなたは胸を張っていいと思う」
そう言ってエリクのほうを向けば、彼は一瞬きょとんとしたあと、嬉しそうに破顔して。
「ありがとう、アデラ」
その笑顔を見た途端、胸の奥がこそばゆくなった。
アデライドは少し視線を逸らすと「どういたしまして」と言う。
頬がやけに熱くて、なんだか変な気分だった。
そのとき勢いよくエリクが立ち上がる。その勢いに目をぱちくりさせていれば、彼はこちらに手を差し伸べてきた。
「ほら、行こう。次のところに案内するから」
「え、ええ。わかったわ」
彼の手を取り、アデライドは立ち上がる。
少し、そう少しだけ、先ほどまでよりも触れられたところが熱いような気がした。
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