21 / 67
一章(17)
しおりを挟む
「じゃあ待っててくれ。今くらいの時間になるかもしれないが……」
「大丈夫よ。明日はもうちょっと長くいられると思うから」
今日のことで移動の大変さは身に染みたため、明日は馬車を頼むつもりだった。それならば移動時間も短縮されて、もう少し長くいられるはずである。
エリクは「ならよかった」と言い、笑みを深めた。
「場所は……この店にしよう。どうせ明日もこの店に来るんだろ?」
「まあ失礼ね。それだとわたしが食いしん坊みたいじゃない! ……確かにそうだけど」
アデライドの言葉に、エリクはぷっと吹き出した。「もう!」と声を荒らげつつも、彼と明日も会えるかもしれないということでさほど気にはならない。
むしろこんなやり取りでさえも楽しくて。
――けれどそんな時間は長く続かない。エリクはきっとあまり遅くなるのを喜ばないから、会話が途切れたらアデライドは別れを告げなければならない。
そんなのは嫌で。
場を繋げるため、アデライドは深く考えることなく口を開く。
「そういえば、エリクって何歳なの?」
唐突な質問だからか、不思議そうな表情を浮かべながらもエリクは口を開く。
「ん? ……十六だけど」
「まあ、わたしの一つ年上なのね。それなのに仕事をしているなんてすごいわ」
するとエリクは不思議そうな表情を浮かべる。
「別に、俺くらいの年齢だと働いているのが普通だけど……」
「へえ、そうなのね。……仕事はなにをやってるの?」
するとエリクはあからさまに視線をさまよわせた。気まずそうな表情に、訊いてはいけなかったのでは、という不安が胸の内に生まれる。
答えたくなければ言わなくてもいい。そう告げようと口を開きかけたまさにそのとき、エリクが声を発した。
「えっと……軍人をやってる」
「あら、軍人さんだったのね。すごいわ!」
するとエリクは気恥ずかしげに、だけどどこか罪悪感を感じているかのように視線をさまよわせる。
「まあ、まだただの下っ端で、地位なんてものはないけど……」
「それでもすごいわ。……軍に入ったのは、革命軍に憧れて?」
革命広場にいたときエリクが「男なら誰だって革命軍に憧れるものだ」と語っていたのを思い出し、尋ねれば、彼は若干頬を赤らめた。
「大丈夫よ。明日はもうちょっと長くいられると思うから」
今日のことで移動の大変さは身に染みたため、明日は馬車を頼むつもりだった。それならば移動時間も短縮されて、もう少し長くいられるはずである。
エリクは「ならよかった」と言い、笑みを深めた。
「場所は……この店にしよう。どうせ明日もこの店に来るんだろ?」
「まあ失礼ね。それだとわたしが食いしん坊みたいじゃない! ……確かにそうだけど」
アデライドの言葉に、エリクはぷっと吹き出した。「もう!」と声を荒らげつつも、彼と明日も会えるかもしれないということでさほど気にはならない。
むしろこんなやり取りでさえも楽しくて。
――けれどそんな時間は長く続かない。エリクはきっとあまり遅くなるのを喜ばないから、会話が途切れたらアデライドは別れを告げなければならない。
そんなのは嫌で。
場を繋げるため、アデライドは深く考えることなく口を開く。
「そういえば、エリクって何歳なの?」
唐突な質問だからか、不思議そうな表情を浮かべながらもエリクは口を開く。
「ん? ……十六だけど」
「まあ、わたしの一つ年上なのね。それなのに仕事をしているなんてすごいわ」
するとエリクは不思議そうな表情を浮かべる。
「別に、俺くらいの年齢だと働いているのが普通だけど……」
「へえ、そうなのね。……仕事はなにをやってるの?」
するとエリクはあからさまに視線をさまよわせた。気まずそうな表情に、訊いてはいけなかったのでは、という不安が胸の内に生まれる。
答えたくなければ言わなくてもいい。そう告げようと口を開きかけたまさにそのとき、エリクが声を発した。
「えっと……軍人をやってる」
「あら、軍人さんだったのね。すごいわ!」
するとエリクは気恥ずかしげに、だけどどこか罪悪感を感じているかのように視線をさまよわせる。
「まあ、まだただの下っ端で、地位なんてものはないけど……」
「それでもすごいわ。……軍に入ったのは、革命軍に憧れて?」
革命広場にいたときエリクが「男なら誰だって革命軍に憧れるものだ」と語っていたのを思い出し、尋ねれば、彼は若干頬を赤らめた。
0
あなたにおすすめの小説
やさしい・悪役令嬢
きぬがやあきら
恋愛
「そのようなところに立っていると、ずぶ濡れになりますわよ」
と、親切に忠告してあげただけだった。
それなのに、ずぶ濡れになったマリアナに”嫌がらせを指示した張本人はオデットだ”と、誤解を受ける。
友人もなく、気の毒な転入生を気にかけただけなのに。
あろうことか、オデットの婚約者ルシアンにまで言いつけられる始末だ。
美貌に、教養、権力、果ては将来の王太子妃の座まで持ち、何不自由なく育った箱入り娘のオデットと、庶民上がりのたくましい子爵令嬢マリアナの、静かな戦いの火蓋が切って落とされた。
そう言うと思ってた
mios
恋愛
公爵令息のアランは馬鹿ではない。ちゃんとわかっていた。自分が夢中になっているアナスタシアが自分をそれほど好きでないことも、自分の婚約者であるカリナが自分を愛していることも。
※いつものように視点がバラバラします。
二度目の子育て~我が子を可愛がったら溺愛されました
三園 七詩
恋愛
私は一人娘の優里亜の母親だった。
優里亜は幼い頃から体が弱く病院でほとんどの時間を過ごしていた。
優里亜は本が好きでよく私にも本の話をしてくれた。
そんな優里亜の病状が悪化して幼くして亡くなってしまう。
絶望に打ちひしがれている時事件に巻き込まれ私も命を落とした。
そして気がつくと娘の優里亜が大好きだった本の世界に入り込んでいた。
10年間の結婚生活を忘れました ~ドーラとレクス~
緑谷めい
恋愛
ドーラは金で買われたも同然の妻だった――
レクスとの結婚が決まった際「ドーラ、すまない。本当にすまない。不甲斐ない父を許せとは言わん。だが、我が家を助けると思ってゼーマン伯爵家に嫁いでくれ。頼む。この通りだ」と自分に頭を下げた実父の姿を見て、ドーラは自分の人生を諦めた。齢17歳にしてだ。
※ 全10話完結予定
次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢
さら
恋愛
名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。
しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。
王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。
戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。
一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。
転生皇女はフライパンで生き延びる
渡里あずま
恋愛
平民の母から生まれた皇女・クララベル。
使用人として生きてきた彼女だったが、蛮族との戦に勝利した辺境伯・ウィラードに下賜されることになった。
……だが、クララベルは五歳の時に思い出していた。
自分は家族に恵まれずに死んだ日本人で、ここはウィラードを主人公にした小説の世界だと。
そして自分は、父である皇帝の差し金でウィラードの弱みを握る為に殺され、小説冒頭で死体として登場するのだと。
「大丈夫。何回も、シミュレーションしてきたわ……絶対に、生き残る。そして本当に、辺境伯に嫁ぐわよ!」
※※※
死にかけて、辛い前世と殺されることを思い出した主人公が、生き延びて幸せになろうとする話。
※重複投稿作品※
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる