革命の夜は二度来ない

白藤結

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二章(6)

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 どこかもぞもぞしたくなるような奇妙な沈黙が二人の間に落ちる。そのことに若干の居心地の悪さを感じて、アデライドは勇気を振り絞って口を開いた。

「つ、次の店に行きましょ! まだ行きたいところはあるのだから」
「……っ、あ、ああ」

 ぎこちないながらも返事が来てほっとしつつ、アデライドは髪飾りを元の棚に戻すと店を出た。
 カランカランという可愛らしいベルの音は、自分の心臓の音でほとんど聞こえなかった。



 外に出て、とりあえず目についた店に入る。
 そこは書店だった。少しお高めだからだろう、人は少なく静寂が横たわっていて、ここだけ世界から切り離されたかのよう。

「わあ……」

 雰囲気を邪魔しないよう静かに歓声を上げ、アデライドは中へと入った。

「ここは首都で一番大きい書店なんだ」

 背後からボソリと聞こえた声に、ビクリと肩を跳ねさせて振り返る。
 そこにはすでにいつも通りに戻ったエリクがいて。

「そ、そうなのね」

 平静を装ってそう返事をしつつ、アデライドはぎっしりと詰まった本棚を眺めていく。

 どうやら多種多様な種類を揃えているらしく、専門書もあれば小説もあった。あまり難しいものは苦手なため、自然と小説のコーナーへと引き寄せられていく。
 冒険小説の棚の前に立ち、アデライドはずらりと並ぶ背表紙を眺めていた。冒険小説はそれなりに好きだ。予想のつかない展開にワクワクするし、見たことのない景色に思いを馳せるのは楽しい。

 けれど、やはり一番好きなのは――

 ちらりと横目で窺うのは恋愛小説のコーナーだった。甘酸っぱい恋の話は好きだし、イチャイチャするカップルは微笑ましくて、読んでいるだけで楽しくなる。
 けれど、それを今後ろにいるエリクに知られるのは、なんとなく恥ずかしかった。具体的に述べることはできないけれど、どうしてか無性に知られたくなくて。

(でも読みたい! この国にしかない本もあるだろうし……!)

 このブランクール共和国は島国だ。それに革命が行われて王政から民主制に変わったという過去も持つ。そのおかげで他国からの心象はあまりよくなく、制限されることもあるため売り上げも伸びない。そのためこの国の小説などが翻訳されて各国に渡ることは少ないのだという。いつだったかフィリップがそう教えてくれた。

 だから読みたいけれど、抵抗感もあって。

 ちらちらとそちらを見ながらも冒険小説の棚から動かないでいると、背後にいたエリクの動く気配がした。どうしたのだろう? と視線で彼を追えば、彼は恋愛小説の棚に近づいていき――

「アデラはこういうのが好きなのか?」

 途端、羞恥心で顔が熱くなった。きゅっとドレスの裾を握りしめてうつむく。

「ま、まあ……そうね」

 嘘をつきたくなくて正直にそう言えば、彼は「そっか」と口にする。

「――……アデラは可愛いよな、本当」

 かすかに聞こえた呟き。
 それを耳にした途端、まるで火がついたかのように全身が熱くなった。
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