革命の夜は二度来ない

白藤結

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二章(10)

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 重苦しい沈黙が二人の間に漂った。気まずくて、アデライドは少しだけ彼のシャツを掴む力を緩める。

(尋ねなければよかったかしら……?)

 そんなことを思っていると、「お、見えてきた」とエリクの声。彼の視線の先を追えば――

「わあっ!」

 広範囲に広がる浜辺があった。白い砂浜には何人かの人々がおり、海を眺めている。
 その海の先ではちょうど夕日が水平線に沈みかけており、海はほんのり赤色に染まっていた。
 思わず感嘆の息をつくと、頭上からくすりと笑い声。

「綺麗だろ? ……だからちょっと落ち着け」
「落ち着いてるわ!」
「落ち着いてないだろ! ほら、危ないからあんま動くなって」
「ううー……」

 ムッと顔を顰めながら、とりあえず言われた通り動かないようにする。でも早く駆け出したくてどうしてもソワソワするのだ。我慢できない。
 するとエリクが呆れたようにため息をつき、「ちょっと早めるから落ちるなよ」と言う。

「え? ……ってひゃあ!?」

 馬の速度が急に上がり、アデライドはエリクに抱きついた。若干の浮遊感が定期的に襲ってきて、ぎゅっと彼のシャツを掴む。
 それを感じ取ったのだろう、エリクも腹部に回した手にぐっと力を入れてきた。

 落ちないようじっとえていると、しばらくして速度が徐々にゆっくりになっていく。
 やがて完全に止まった。アデライドはほっと胸をなで下ろしてエリクから離れる。
 すると彼は軽々とした動きで馬から飛び降りた。そのまま近くの柵に手綱をくくりつける。

「はい。降りれるか?」

 その言葉とともに手を差し伸べられる。

「え、ええ、たぶん……」

 頷き、アデライドは一人で馬から降りてみた。しかしエリクのように軽々とではなく、ずり落ちるような形だった。
 するとエリクがぷっと笑う。

「ちょっとエリク!」
「ごめんごめん。ほら、行くぞ」

 軽い謝罪を口にする彼に手を引かれ、アデライドは人生で初めて砂浜の上に立った。

「わっ! ……結構歩きづらいのね」

 ヒールがずぶずぶと砂の中にめり込む。おかげでバランスを崩してしまい、慌ててエリクの腕を掴んだ。
 彼はくすりと笑う。

「あ~、確かにその靴だとそうかもな。あんまり行っても特に変わらないし、ここらへんにするか?」
「……そうする」

 本当はもっと向こうまで行きたかったけれど我慢し、アデライドは渋々頷いた。
 ざざん、ざざん、と穏やかな波の音が耳に届く。
 アデライドはそっと口を開いた。
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