革命の夜は二度来ない

白藤結

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二章(15)

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「す、すみません!」

 エリクは慌てて謝罪をする。こんな少女にぶつかってしまったなんて他家の者に知られたら、「これだから元貴族は」と嫌味を言われてしまうだろう。それは避けたいから、できるだけ丁寧な対応をしなければ。

 それにしても、かなり整った顔立ちをした少女だ。かなり質のよいドレスを纏っていることからも、もしかしたら他国の貴族なのかもしれない。たとえ貴族ではなくとも、それなりに裕福な家柄だろう。
 それこそ他国の高級官僚と懇意にしている商人の娘、とか。

(あ、だったら結構やばいんじゃ……)

 さあっと血の気が下がる。もしそうだった場合、下手したら家に、ひいては国に迷惑がかかる。それだけは絶対に避けなければならない。
 どういう対応を取ればいいのか悩んでいると、「こちらこそごめんなさい」と謝罪をされる。

「ちゃんと前を見てなかったわ」
「い、いや、俺も走ってたから……」

 そのときふと、どうしてこの道を進んでいたのかを思い出した。

 そう、馬車だ。あの馬車はいったいどこへ行ってしまったのだろう?

 慌ててエリクは周囲を見回す。しかし視界に映るのは人、人、人、人。馬車なんて影も形も見えない。

(まじか……)

 どうしよう。どうすればいい? 目の前の少女を無視するなんてことはできないし、馬車だって追いかけないわけにはいかない。しかし二つ同時に成すことはできないから、どちらかを切り捨てなければならなくて……。
 脳内が大混乱に陥った、そのとき。

「引き止めてしまってごめんなさい。特に怪我もしてなさそうだし、もう行ってもらって大丈夫よ」

 そんな声がして、エリクはハッとそちらを向いた。ぶつかった少女は尻もちをついた体勢のまま、にこりと笑みを浮かべていて。

(俺は軍人だ。軍の役目は、国を、国民を守ること。だったらこの子を見捨てるわけにはいかない)

 そう決意し、あの怪しげな馬車に後ろ髪をひかれつつも、エリクは少女を見やった。そして彼女の言葉に返事をするため、小さく首を横に振る。

「いえ、本当に怪我がないのか確認させてください」

 すると今度は少女が驚く番だった。しきりに目をぱちくりさせている。
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