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第43話 萌のスケボー万歳!!

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アイドル甲子園の日程と調整を行いながら、東京・矢々木公演で【スケボー・万歳!!】の収録が開始された。
晴天で風がそよぐ絶好のスケボー日和である。

萌は八郎が用意した【ムーラン・ルージュ】のロゴが入ったピンクのTシャツと白のハーフパンツでスポーティさが目立つ。


「3・2・1っ! スタートっ!」
三橋が開始の合図を送る。

「【スケボー・万歳!!】、今から始まりまっせっ! 銅メダリストの平泉萌さんが華麗なテクニックと、スケボーの基本をしっかりと見せてくれますっ!」
ナビゲーターの山上信二が画面中央に映る。

「それでは、お迎えしましょう。平泉萌さんですっ!うっわぁっ、本物やぁ~。可愛いですねぇ~。テンション アゲアゲで行ってみましょーっ!」
マイクが萌へと向けられる。

「平泉萌でーす。気分は、最&高(サイアンドコウ)っ!」
スケボを抱える姿も様になっている。


「では、今日はブッシュやりまーす」
模範演技の為、広い場所へと移動する萌、その後を撮影スタッフ達も追う。

※ ブッシュ スケボーに乗って移動する時に使う基本的な動きの事 ※

萌はスケボーを跨ぎ、右足をボードに乗せ、キックした左足を乗せる。

カタッカタッ・・・

風を体に受け軽やかにボードを進める。
後を追うカメラを待ちながら、ポイントごとに丁寧な説明をしていく萌。
信二も萌のスケボーテクニックに思わず見とれてしまっていた。

そして・・・

「ブラボーっ♬ この番組はニッコーマン醤油の提供でお送りしました!じゃあ、次回もぉ~っ!」
信二と並んだ萌がアップされる。

「レッツっ! チャレンジっ!!」
萌と信二が右手だけのガッツポーズをとった所で、撮影終了である。


一部始終を見ていた三橋はこの番組が大成功する予感を確信へと変え、唇の両端を上げてニッと笑っていた。
(あの娘、メダリストなのに変に気取らず自然体なのがいい・・・。これは思わぬ掘り出し物だったな・・・)
この三橋の予感は第一回の放送から的中した。

何と、いきなり30%超の視聴率を記録し、合間の5分番組として異例な再放送まで行われたのである。

アイドル甲子園に続き、ヒット番組を企画した三橋はこれによりエグゼクティブ・プロデューサーに昇格した事もここで触れておこう。

三橋本人の才能や実力もあったのだが、この成功の連続が御守や謎の開運グッズのお蔭だと頑なに信じて疑わない三橋は、ひそかに謎のピラミッドのレプリカまで購入していた。

だが、三橋の持ち出したこの企画が後に【ムーラン・ルージュ】に大きな影を落とす事になろうとは誰も気付いてすらいない・・・



「コイツ・・・」
孫がテレビを見て顔を顰めている。

「どーしたのぉ? 孫? へぇ、スケボーねぇ、やってみたいとかぁ?」
「東京代表ノ一人ダガ・・・、人気ガ出ルト邪魔ダナ・・・。セルゲイッ!」
「何デスカ? ボス?」
「早メニ潰セ・・・」
「分リマシタ」
「ちょっと待ったぁっ!」
孫とセルゲイのやり取りに割って入ったのはヤミである。

「何ダ、ヤミ?」
「セルゲイは、あっちの方で忙しくなるしぃ・・・。それにぃ・・・」
「ソレニ・・・?」
「こっちはセルゲイが関わったらいきなり大事件って事になるんじゃないかなぁ」
「ハッキリ言エッ!」
ヤミが面白そうに笑う。

「不幸な事故・・・。なんてどうかなぁって・・・」
「事故ダト?」
「目障りなのが見えなくなったらいいだけなんでしょ?」
「マァナ・・・。ソレデ?」
「うってつけなのがいるじゃない」
「ドルゴ・・・」
セルゲイの眉が歪んだ。

「セルゲイとは相性悪いもんね~」
「・・・、ボスッ!」
「セルゲイッ、オ前ハ自分ノ仕事ヲ片付ケロッ!」
「了解デス・・・」
「ドルゴハ、何処ニイル?」
「日時とターゲットさえ伝えたら、ちゃんと仕事してくれるんじゃないかなぁ」
「ドルゴ14・・・」
「じゃあ、ボクが連絡しちゃうよ」
「任セル・・・。奴ノ方ハ?」
「マンゴーちゃん?? 禁断症状が凄いけど、まだ耐えてるかな・・・。まぁ、もう少しだろうけどねぇ」
「急ゲッ!」
「ハイハイ、了解ですよ~」

萬度の動きが暗闇の中で加速し始めていた。



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