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第128話 大団円

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【ベティのケチャップ】――

今日はリニューアルオープン初日である。
店の入り口には『貸し切り』の札がかけられており、店内では新しくママとなった范が濃いメイクをして色香を漂わせている。
従業員のサヤカ・ジュンコ・ミチル・ヒカルは各々がテーブルに付いていた。

「本日、【ベティのケチャップ】をリニューアルオープンさせる事が出来たのも、ここにお集まり頂きました皆さんのお蔭です。今日から、私がマンゴローブママの跡を継がせて頂きます」
范が挨拶し拍手が巻き起こる。
今日、ここに招かれているのはアキ達、テルマエ学園のメンバーと竜馬達である。


「さぁ、今日はママの奢りよぉ」
「ジャンジャン飲んじゃってねぇ」
「皆、二十歳を過ぎたんだからお酒もOKよぉ~」
サヤカ達が次々とグラスを注いで回る。

竜馬・隼人・武蔵・早乙女がカウンター席に座り、マンゴループの写真を見ている。
各々のグラスにビールを注ぎ、マンゴローブの写真の前にもビールを注いだグラスを置く范。

「マンゴローブママ・・・」
竜馬が呟き、武蔵も・・・
「どうか・・・、安らかに」

「矢板警部・・・」
言葉に詰まる隼人の肩を軽く叩く早乙女。
「飛鳥井も宜しく・・・。との事だ」

そんな様子を黙って見ている范。
(ママ・・・。サヤカさん達とお店は守って行きます。見守って下さい・・・)
僅かだが、范の顔に微笑みが浮かんだ。


振り返ると、テルマエ学園のメンバーが卒業式以来の再会を楽しんでいる。
そして、ゲスト参加していたのは・・・

「え~っ! ミッシェルって年上やったんかぁ~? 全然、分からんかったでぇ、わい」
途中帰国したミッシェルだが、范がここに招待していたようだ。
「でも、年上になんて見えないから大丈夫ですよ」
八郎と二郎は、ちゃっかりとミッシェルの両脇をキープしている。

「I'm sorry! 訳あって誤魔化してたネ」
照れくさそうに笑うミッシェル。

「でも、アキとカトリーナが学園に残るなんて意外だったなぁ・・・」
渡が話し出す。

「それより、渡が副社長なんてねぇ。八郎は店出すし、二郎は店長かぁ、マジすごくね?」
感心顔の穂波である。

「そう言う穂波さんだって、【剣鳳会】の姐さんなんて、何かかっこいい・・・。映画みたいじゃない」
そう言う七瀬に優奈が・・・

「七瀬だって【堀塚音楽スクール】でしよ。女優の卵かあ・・・」

「優奈さんだって、【ル・パルファン】で評判の美人ホステスだしっ!」
車椅子を使わずに歩けるようになった萌。

「あっ! そう言えばテレビ観たよ。秋田でロケしたんでしょ」
汐音が嬉しそうに語る。

「汐音ちゃんも、【松永流】に入門するなんて。どういう風の吹き回しなの?」
涼香が興味津々な表情である。

「涼香モ、もうすぐデビューネ。今の内にサイン貰おうカナ」
流石、カトリーナである。
情報が早い・・・

「あっ、そうだっ!」
突然、アキが大声を上げる。

皆が何事かとアキを見つめる。

「そう言えば、圭ちゃん、婚約したんだよねっ!」

「ふっふっふっ・・・。よくぞ聞いてくれました。じゃーんっ! ほら、コレ見て~っ!」
圭が左手を高く掲げる。
その薬指にはプラチナのリングが光っている。

おぉぉぉぉっ!
どよめく店内。

「Wao! Engagement ringネッ!」
ミッシェルが手を叩いて祝福の意を表す。
圭の顔にニンマリとした笑みが浮かぶ。

「圭、婚約おめでとう」
范が圭のグラスにビールを注ぐ。
「ありがと、范」

注がれたビールを一気に飲み干した圭、少し顔が赤くなっているみたいだ。
そして・・・

「でも、聞いてよぉ~。五郎ってば、全寮制の海保大学で広島から帰って来ないしぃ」
「まぁまぁ、それは仕方ないって事で・・・」
圭の酔いを察知してさり気なく竜馬がフォローしようとする。

「しかも、海に出たら電話もラインもメールも繋がらないんだよ~。こんなのってアリ~?」
隣に居た涼香のグラスを勝手に一気飲みする圭。

「あららぁ。それじゃ、浮気されても分からないんじゃなぁい?」
からかう様な優奈の言葉を聞いた圭・・・

「・・・、ビール」
「へっ!」
対面に居たジュンコに空になったグラスを突き出す圭。

「ほら、優奈。あんたが余計な事言うから・・・」
止めようとした穂波を目の座った圭がじっと見つめる。

「ビールぅっ!」
「はいはい、お待たせぇ~」
気を利かせたミチルとヒカルがノンアルコールビールへとすり替えたが少し遅かったようだ。



顔を真っ赤にした圭が武蔵の隣へと席を移す。

「ねぇ・・・。大友さぁん」
「な・・・、何かな?」
「五郎、いつ帰って来るんですかぁ?」
「ま・・・、まぁ。夏休みとかは帰って来れるから・・・」
「その間、ずっと婚約者をほっとくなんて酷くないですかぁ?」
完全な絡み酒である。

「大友さんみたいに彼女居ないなら関係ないでしょうけどぉ」
武蔵が救いを求めて視線を向けた竜馬と隼人も肩を竦めている。

「ほら、圭ちゃん。飲みすぎだよ」
「圭、しっかりしな」
「西郷さんはそんな人じゃないから、心配いらないよ」
「圭っ!」
「圭ちゃんっ!」
皆が圭の元へと駆け寄り慰めていた。

宴もたけなわ――

【テルマエ学園】の第一期卒業生たちは、それぞれの明日へと向かって走り出したばかりである。



 筆者後書き・・・

 長らくお付き合い頂きまして誠に有り難う御座います。
本編をもって【東京テルマエ学園】の第一期は終了となりますが、これより新たに3つの物語を進めて参ります。

 1つ目は、― 混沌の系譜 ― (テルマエ学園α)
本編の流れを引き継いで参ります。
アキ達の成長や恋愛・ミネルヴァの野望の行く末等、次々と湧き出て来る新しい展開を御期待下さい。

 2つ目は、― アナザー・ストーリー ― (テルマエ学園β)
本編の登場人物達の過去を物語としています。
なぜこの人がこうなったのか、どのような経緯でこの事件が起きたのか。
人にはそれぞれのストーリーがある事を改めて感じられるでしょう。

 3つ目は、― 縁 ―
テルマエ学園に登場した不動院晶を中心に、心霊・怪奇現象を描いて参ります。
更に大きな闇との戦いも・・・

 新三部作は、その各々と第一期【テルマエ学園】がリンクし合って更に奥深い展開へと進んで参ります。
 リンクする話には、それぞれどの物語の何話目にリンクしているのかも書いて参りますので合わせてお楽しみ頂けると幸いです。

 改めまして、これまでの御礼を申し上げます。有難う御座いました。(拝)
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