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第二章
気持ちの変化
しおりを挟む「ねぇ関村」
「ん?」
「あたし応援するよ。これからも、もっと頑張ってね!」
「は?」
「あたしがファンになってあげるから。大丈夫安心してね!」
「……応援されたの始めて」
「え!?そうなの?」
こんなすごいことなのに誰にも応援されたことないなんて…。
同情する!うっ…なんて切ないの…っ。
「あたしがいるからね!ファイトだよ!ファイトおー!」
「ふっ、バカみてぇ」
「なっ、あたしはあんたのために応援してやってるのに」
「そっか。さんきゅ」
優しく笑ってあたしの頭をぽんっとなでた。
「っ…」
だめだ、あたしこれ苦手。
胸がキューって苦しくなる。
それに…体温が上がって熱い。
「だめ、」
「ん?」
「もう関村あたしに触れるの禁止!」
「は?」
「禁止令!」
「はぁ?」
「だめだめっ。しっかりしなきゃ」
自分の頬を叩いて
立ち止まる関村をおいて歩き出した。
だって…このままじゃあたしおかしくなりそうなんだもん。
関村に触れられる度に体温が高くなって、このまま溶けちゃいそう。
「おいこら。待てよ」
「きゃっ…!」
後ろからぐいっと引き寄せられてコンクリートの壁に押し付けられた。
「な、なななっ!」
ちょっと…人通るって!
「触れんなって、どーゆー意味?」
「だから、そのっ」
慌てるあたしの前髪に、関村の吐息がかかる。
またじわじわと体が熱くなってきた。
なに…これ。
「ほら、言ってみろよ」
「だっ…熱い…」
「あ?聞こえない」
なんなの…っ。
関村の声がやけに色っぽく聞こえてきて
余計にあたしをドキドキさせる。
「そーゆーこと言われると、触りたくなるんだけど」
「や。やめてっ…よ」
肘が折れてもっと近くなる距離。
「嫌なら逃げろよ」
恥かしくて、どうしていいか分からなくて
心臓は爆発寸前なのに、体がいうことを効かない。
もしかして…あたし
関村に触れられることを望んでる?
ー…かぷ。
「ひゃっ…」
ビクッと反応するからだ。
噛まれた耳を今度はぺろっと舐められた。
「やっ…せきむら…」
「やべ…」
すると
「んっ」
唇に柔らかいものが触れた。
え…。
これって…き、キス!?
あたし関村とキスしてるの!?
しかもあたし、ファーストキスをこんなにあっさりと貰われた!?
ぱにっくであばれるあたしのことは御構い無しに、だんだん深くなっていく。
なにもかも初めてなあたしには呼吸の仕方が全くわからない。
「はぁ……ん」
な、ななな。
なにこの変な声!?
「せ…きむ…」
それでも角度を変えてキスをする関村。
やばい…。
意識が…
ちゅ…。
最後に音を立てて離れた唇。
力が抜けたあたしの体は関村の胸の中へ。
なにこれ…。
力が入らないよ…。
そんなあたしの体を関村は受け止めて、ぎゅっと抱きしめた。
「ご…ごめん」
「まだしたい?」
「はぁ?違くて、力が」
「なるほどな」
「ていうか、触らないでって言ったよね」
「そんなこと言うからこーなったんだろ」
「あんたはドSか…」
あれ。
ばっと顔を上げて気がついた。
ここ…人ふつうに通ってるじゃん!!
「ちょっとっ離して!」
「お前から抱きついてきたんだろ」
「人…ひとひとひと!」
「ひも?」
「見てる!」
「目なんてついてねーだろ」
いまいち会話が噛み合っていないあたし達は、お互い首を傾げた。
「ん…もう、とにかく離してっ!」
無理やり腕の中から離れると暖かかった部分がひんやりとして、すこしさみしく感じた。
「もう、ばかばか!ここ歩道じゃん!絶対誰かに見られてたよぉ~」
あんな声誰かに聞かれてたら…!
きゃゃゃゃゃゃゃゃゃや!!
お嫁に行けない!
恥ずかしくて半べそのあたしを見て関村はふっと笑った。
「大丈夫だろ。つか腹減った」
「え?まだどっか行くの!?」
だってもう9時すぎだよ⁇
外も真っ暗だ。
「もう帰んの?」
「うんっ。明日学校だし、寝ないと」
「小学生かお前は」
「だって朝寝坊したら困るもん」
「目覚ましかければいいだろ。そしたら起きれるじゃん」
「だって聞こえない」
「なら親にでも起こしてもらえば」
あら?
もしかしてこれ帰ってほしくないのかな。
遠回しに帰るなって言ってるよね。
へへっ…可愛いとこあるじゃん。
「ブー太郎だなお前は。やっぱりキーホルダーのぶたに似てるわ」
「ぶ、ぶうたろう!?」
じょ、女子に向かって豚とか言うか!?
しかもほぼ毎日寝坊してるこいつに言われたくないし!
「ふんっ。もう知らない、帰る!」
この流れでいくと、どーせ「待てよ」とか言うんでしょ?
「俺はお前と居たいんだよ」とかいいだしちゃったりして!
なんてのを期待して少し遅めに歩き出すあたし。
「またな」
…ん?
「気をつけて帰れよ」
…あれ?
引き止められると思ってたからおもわず立ち止まり振り返った。
「もう暗いから寄り道だけはすんじゃねーぞ。なんかあったらとりあえず叫べ」
「え…うん」
「歩きながら寝るなよー」
「…なっ、寝ないし!」
なんだろうこの気持ち。
帰りたくない。なぜか寂しい。
足が…動かない。
歩き出そうとしないあたしを見て不思議に思ったのか、こっちに歩いてきた。
「どうした?」
そう言って辺りをキョロキョロ見回し、首を傾げた。
「忘れ物でもしたか」
「違う」
「じゃあなんだよ」
「………」
あんなと離れるのが寂しいだなんて、そんなこと…言えるわけないっ。
「自分の家忘れたか」
「そんなわけないでしょ!ただ…」
「ただ、なに?」
淋しいなんて恥ずかしくて言えない…っ!
何も言えずに俯いていると
突然、大きな手があたしの頭をくしゃっと撫でた。
「お前、かわいいな」
「え…?」
「家どこ?送ってくわ」
「え、いいの?」
「ん。あと、明日放課後あけとけよ。」
それって…。
顔を上げて関村を見ると
「寝坊助」
そういってあたしの心を見透かしたように笑った。
もしかして
関村はわたしが淋しいってことがわかったから明日も誘ってくれたの?
もし、そうだったとしたら
…優しすぎるよ。
特になにかしゃべる間もなく、あっという間に家に着いてしまった。
こんなに近かったっけ、あたしの家。
「また明日な」
するとなにやら小さな紙切れをあたしに渡して、歩き出した関村。
「関村ー!ありがとね!おやすみ!」
あたしの言葉に彼は振り向かず片手をあげた。
今日一日で、いろんな関村を知ることができた。
口は悪いし、あたしをバカにして楽しむそんなやつ。
だけど
なんだかんだ言っても優しくて、危険な時は助けてくれる。
いい奴なんだなぁって。
なにも知らなかった関村のこと、ちょっとだけ知れた気がして嬉しくなった。
きっとこの胸の高鳴りは
関村に対してのあたしの気持ち。
まだわからないけど
もしかしたら、なんて。
携帯番号が書いてあった紙切れを握りしめて、あたしも家の中に入った。
「ただいまー!」
「おかえり。ご飯は?」
「食べる!」
「そかそか。今から作るから待っててね?」
「うん!」
階段を上がりそのまま倒れ込むようにベットに飛び込んだ。
「…ふふ。」
こんな気持ち、いつぶりだろう。
頭から関村のことが離れない。
バックにつけたブタさんを眺めて、ぷにぷにと、触ったりしてあたしの頬はゆるみっぱなしだ。
「…そういえば」
さっきもらった紙をポッケから取り出した。
無くさないように、いまのうちに登録しとこうっと。
「…早く明日にならないかな」
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