私異世界で成り上がる!! ~家出娘が異世界で極貧生活しながら虎視眈々と頂点を目指す~

春風一

文字の大きさ
181 / 363
第5部 厳しさにこめられた優しい想い

2-7二人で飛ぶ空にはとても優しい風が吹いていた

しおりを挟む
 朝、私は徒歩で〈ホワイト・ウイング〉に向かっていた。会社には、復帰したものの、まだ、リリーシャさんに『飛行の許可』をもらっていない。なので、ずっと内勤をやっている。

 練習飛行はもちろん、自前のエア・ドルフィンにも乗れないので、移動は全て徒歩だった。今回は、さすがに反省したので、全て指示に従って、大人しく出来ることだけをやっている。

 ちなみに、今日は、水曜で会社がお休みだ。でも、リリーシャさんに呼ばれて、会社に向かっていた。リリーシャさん同伴で『慣らし運転』をするからだ。普段は、忙しいので、わざわざ休みの日に、丸一日、付き合ってくれることになった。

 リリーシャさんと練習飛行なんて、初めてだし。一日中、一緒にいられるなら、私としては、凄くラッキーだ。普段は、予約の合間に、ちょこっと話すぐらいしか、時間が取れないからね。

 あと、先日、届いたばかりの、おニューの機体が、物凄く気になっていた。毎日、掃除で見かける度に、早く乗りたくて、ワクワクしていたからだ。 

 色々考えながら歩いている内に〈ホワイト・ウイング〉の入り口が見えてくる。時間は、八時五十分。九時に待ち合わせなので、ちょうどよい時間だ。 

 うん。早過ぎず、遅すぎずいい感じ。もう、リリーシャさん、来てるかな?

 事故の一件があって以来、早く来すぎたりせず、指定された時間を、守るようにしている。ちゃんと、色々考えて時間を指定している訳だし、変に気を遣わせたくないからね。

 入り口をくぐると、庭の中央に、機体が二つ置いてあった。一つは、新しく来た練習機。もう一つは、白い流線型の美しい機体だった。私が乗っている、小型のエア・ドルフィンよりも一回り大きい、中型の機体だ。

 私が機体をしげしげ観察していると、事務所の中から、リリーシャさんが出て来た。

「おはよう、風歌ちゃん」
「リリーシャさん、おはようございます。今日も一日よろしくお願いいたします!」
 私は、九十度に腰を曲げ、お辞儀をすると、気合を入れて挨拶をする。

「今日は、仕事じゃないのだから。そんなに、畏まらなくても」
「いえ、飛行の指導をしていただくので、仕事と同じです」

 朝の元気なあいさつは、とても大切だ。何より、貴重な時間を、割いてもらっているので、感謝の気持ちを忘れてはいけない。

「それじゃあ、これを付けてね」
「こんな感じですか?」 

 私は、渡された小型の装置を、耳につけた。

『ちゃんと、聞こえているかしら?』 
『はい、バッチリです!』

 これは『リンク・デバイス』と呼ばれるもので、ハンズフリーで話せる、魔力通信の装置だ。

 マイクは付いていないけど、話した時の『思念』を拾って、相手に伝える。『念話魔法』の、応用技術で作られていた。なので、耳に音が聞こえるのではなく、直接、頭の中に、相手の声が聞こえてくる。

 空を飛んでいる時は、風切り音やエンジン音で、会話が聞こえない。でも、これを付けていれば、飛びながらでも、普通に会話をすることができる。

 最初は、違和感があるけど、慣れると快適だ。雑音が入らないので、物凄くクリアに、相手の声が聞こえる。

『まずは、機体に乗り込んで、マナゲージを回してみて』
『はい』

 私は、シートに座ると、言われた通りに、集中して魔力を注ぎ込む。すると、マナゲージが、スーッと上昇して行った。すぐに『グリーンゾーン』一杯まで、溜まっていく。

『では、いったん、手を放して、ゲージを空にして』
『はい』
 手を離すと、ゆっくりゲージが落ちて行く。

 リリーシャさんは、手にしていたマギコンを見ながら、
『魔力供給・反応速度・安定度、どれも問題ないわね』
 柔らかな笑顔で話す。

 私はホッとして、フーッと息を吐き出した。〈飛行教練センター〉で、散々練習して来たとはいえ、久々の飛行なので、ちょっと緊張している。

『これから、並走飛行をするので、指示通りの高度と速度を、維持しながら飛んでね』 
『分かりました』

 リリーシャさんは、静かに白い機体に乗ると、すぐにエンジンを掛けた。流石に起動が速い。行動は、上品でゆったりしてるけど、一切の無駄がないんだよね。

 あの機体は、セミ・マニュアル機なので、アクセルだけで『スタータ―・ボタン』が、付いていないタイプだ。つまり、魔力制御だけで、エンジンを起動している。

 リリーシャさんは浮上後、空中ホバーしながら、
『エンジンを起動後、高度10。そのあとは、速度20・機体間距離3で』
 細かく指示を出して来た。

 私は、集中して魔力を注ぎ込む。魔力ゲージが伸びて、すぐに『グリーンゾーン』一杯まで振り切った。私は、一呼吸してから、ゆっくり『スターター・ボタン』を押す。すると、エンジンが起動し、フワッと浮力が発生した。

 講習でならった通り、上空も含め、周囲の確認をしっかりと行う。問題がないことを確認すると、ゆっくり上昇を始めた。私は、上昇と下降は、そんなに上手くない。なので、慎重に魔力コントロールを心掛ける。

 やがて、行動計が10メートルを指し、私はアクセルを静かに開いた。と同時に、隣にいたリリーシャさんの機体も、ゆっくりと進み始める。

 今日は、かなり遅めの飛行スピードだ。でも、ゆっくり飛ぶ方が、難しかったりする。私は、高度と速度を確認しながら、リリーシャさんの機体に合わせることに、全神経を集中した。

『機体の調子は、どうかしら?』
『はい、全く問題ありません。上昇も安定していますし、加速も前の機体より、速い気がします』

 機体によって、かなり乗り心地が違う。でも、この機体は、とても操作がしやすく、レスポンスも速い。

『機体重量の、軽さが大きいわね。エンジンも、新しい世代の物だから、パワーが出しやすいと思うわ』
『なるほど、重量が違うんですね。確かに、少し軽くなった気がします』

 以前の機体よりも、明らかに、上昇が楽になった気がする。当然、軽いほうが、上昇スピードは速い。見た目が、スマートになった気がしたけど、実際に軽くなってたんだね。

『速度を30まで上昇。その後、ブレーキをかけて、25まで落としてみて』
『はい』

 私は、アクセルを開いて、ゆっくり加速する。スピードメーターが、30を指したところで、軽くブレーキを入れた。すぐに減速が始まり、スピード25で、ブレーキを離す。

『減速も、問題なさそうね。違和感やタイミングのズレは、ないかしら?』
『全く問題ないです。加速も減速も、すぐに作動しています。ただ、加速が以前よりも、アクセルを大きめに、開く必要がある感じがします』

『加速し過ぎないように、アクセル精度を、落とし過ぎてしまったのかも。あとで、調整しておくわね』
『はい、お願いします』
 
 各機体には、制御プログラムが入っていた。これは、マギコンを繋ぐことで、調整が可能だ。人によって、魔力量が違うため、ある程度、初期設定が必要になる。

 基本設定でも、普通に飛べるけど、特定の人だけが乗る機体は、個人に合わせたほうが操縦しやすい。この調整は、経験や知識が必要なので、全てリリーシャさんに、やってもらっていた。

『それでは、高度15、速度30で〈ドリーム・ブリッジ〉に向かいましょう』
『了解です』

 私は、リリーシャさんと並走したまま〈南地区〉の海岸に向かった。しばらくすると〈南地区〉の海沿いまで出て、とても大きな橋が見えてきた。〈ドリーム・ブリッジ〉に差し掛かると、橋の上空を飛行しながら〈新南区〉に向かった。

 時折り、指示が来たり、機体の調子をきかれる以外は、無言のまま飛んでいく。でも、すぐ隣に、リリーシャさんがいるだけで、とても楽しい。こんなふうに、一緒に飛ぶのは初めてだし。休日に、一緒にお出掛けするのも、初めてだもんね。
 
 それに、飛んでいる姿が、とても美しい。見ているだけで、幸せな気分になる。やっぱり、私の目指すべき人は、リリーシャさんだなぁーって、つくづく思う。

 私たちは〈新南区〉を、海沿いにぐるっと一周したあと〈南地区〉に戻った。結構な距離を飛んだけど、機体は特に問題なし。私の体も魔力も絶好調で、慣らし運転は無事に終了。

 事故の恐怖が少し残ってたけど、リリーシャさんが隣にいたから、安心して飛ぶことができた。流石は『天使の羽』エンジェルフェザーだ。一緒にいる時の、安心感が半端ない。

 ふー、何とか無事に終わった。最初は緊張したけど、途中からは、普通に楽しんでたし。やっぱり、空を飛ぶって、最高の気分だよね。

 慣らし運転のあと、私たちは〈南地区〉にある、レストランにやって来た。初めてのお店だけど、とても綺麗でオシャレだし、お客さんも一杯入っている。あらかじめ、予約をしておいたようで、店員さんに、テラス席に案内された。

 席に着くとすぐに、リリーシャさんは、コース料理を頼む。店員さんとも、顔見知りのようだし、どうやら、よく来ているお店のようだ。

「お疲れ様、風歌ちゃん。これで、問題なく乗れるわね」
「リリーシャさんこそ、大変お疲れ様でした。あの、私あまりお金を、持ってないんですけど……」

 何か高そうなお店なので、そっちの方が気になってしまう。

「大丈夫よ、ご馳走するから」
「でも、慣らし運転に、付き合っていただいた上に、食事まで、ご馳走していただくなんて。ここのところ、色々やって貰ってばかりで、申しわけないです」

 本当に、何から何まで、やってもらっているのに、私は何一つ返せていなかった。優しくして貰えるのは嬉しいけど、お返しが出来るかどうかが不安で、つい焦ってしまう。どんどん、借りが増えていくみたいで――。

「風歌ちゃんは、何も気にしなくていいのよ。私がしたくて、勝手にやっているだけだから」
 リリーシャさんは、いつも通りの、優しい笑顔を浮かべた。

 きっと、それは本心なんだと思う。初めて出会った時から、ずっとそうだ。何の見返りもなく、ひたすら優しくしてくれる。何でそこまで、人に優しく出来るんだろうか? 私も、そんな人間になりたい……。

 世間話をしている内に、料理が運ばれて来た。どれも、美味しそうな魚料理ばかり。しかも、お刺身なんかまであった。私は、魚が大好きなので、物凄くテンションが上がる。

 先ほどまでの、慣らし運転中は、かなり気が張っていた。でも、緊張が解けた途端、結構、空腹だったことに気が付く。最初は、遠慮してたけど、料理を目の前にすると、自然と手が伸びてしまった。

「うーん、滅茶苦茶おいしいです!」 

 食べた瞬間、口の中に広がる素晴らしい味に、思わず笑顔と歓喜の声がもれる。大げさな反応かも知れないけど、いつもパンばかりだし、本当に美味しいので。

 身がプリプリしていて、新鮮で、超美味しい。見た目も、味付けも、物凄く凝っていた。ただ、残念なことに、私の表現力のなさのせいで『美味しい』以外の言葉が、見つからなかった。

「やっぱり、似ているわね」
「えっ、誰とですか?」

「食べた時の、反応や表情が、風歌ちゃんのお母様にそっくり」
「って、お母さんも、ここに来たんですか?!」

 そういえば、以前うちの母親が、お忍びで来てたんだよね。でも、その時の話は、まだ詳しく聴いていない。

「ちょうど、その席に座っていたのよ。だから、つい姿が被ってしまって」
「えぇ?! お母さんも、この席に?」

 偶然、この席になった――という訳でもなさそうだ。お客さんが、沢山いる人気店のようなので、あらかじめこの席を、予約したのかもしれない。

「お母様とは、仲直りできたの?」 
「いえ、それがまだ……。あれ以来、全然、連絡もしてませんし」

 私に会わずに帰っちゃったし。何か連絡し辛くて――。

「風歌ちゃんは、厳しいから苦手、と言っていたけれど。興味のない人に、厳しくはしないのよ」
「そう……でしょうか?」

 興味って、私に対して? それとも、世間体について? 
  
「大事だからこそ、厳しくするの。私もね」
「えぇ? リリーシャさんは、いつも優しいじゃないですか?」

「こないだ、退院してきた時。私、厳しく接したでしょ?」 
「あぁ――。でも、あれは、厳しいというより、冷たく感じました。だから、私てっきり『見捨てられちゃったのかも?』と思いました」
 
 厳しく怒鳴られるより、冷たくされる方が、はるかにこたえる。

「えっ、そうなの? ごめんなさい、私、怒るのが下手で。見捨てるつもりなんて、全くないのよ」

「いえ、リリーシャさんは、何も悪くないです。全面的に、私が悪いんですから。それに、何があっても、私はリリーシャさんに、ついて行きますから。たとえ見捨てられたって、しがみついて行きますので」

「だから、見捨てたりなんか、しないから」

 二人で顔を見合わせると、くすくすと笑った。

 もう二度と、手を煩わせたり、怒らせたりすることは止めよう。やっぱり、リリーシャさんには、優しい笑顔が一番、似合っているから。 

 お母さんも、私が怒らせるようなことをしなければ、優しく笑ってくれるんだろうか……?


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

次回――
『おニューの機体で飛ぶ空はキラキラと輝いて見えた』

 女の子は誰でもキラキラ輝く宝石なんだから
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
 毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 連載時、HOT 1位ありがとうございました! その他、多数投稿しています。 こちらもよろしくお願いします! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

『辺境伯一家の領地繁栄記』序章:【動物スキル?】を持った辺境伯長男の場合

鈴白理人
ファンタジー
北の辺境で雨漏りと格闘中のアーサーは、貧乏領主の長男にして未来の次期辺境伯。 国民には【スキルツリー】という加護があるけれど、鑑定料は銀貨五枚。そんな贅沢、うちには無理。 でも最近──猫が雨漏りポイントを教えてくれたり、鳥やミミズとも会話が成立してる気がする。 これってもしかして【動物スキル?】 笑って働く貧乏大家族と一緒に、雨漏り屋敷から始まる、のんびりほのぼの領地改革物語!

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

『異世界ごはん、はじめました!』 ~料理研究家は転生先でも胃袋から世界を救う~

チャチャ
ファンタジー
味のない異世界に転生したのは、料理研究家の 私!? 魔法効果つきの“ごはん”で人を癒やし、王子を 虜に、ついには王宮キッチンまで! 心と身体を温める“スキル付き料理が、世界を 変えていく-- 美味しい笑顔があふれる、異世界グルメファン タジー!

酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ

天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。 ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。 そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。 よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。 そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。 こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。

家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜

奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。 パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。 健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

処理中です...