184 / 363
第5部 厳しさにこめられた優しい想い
3-3意外な一面が見えたお姉様と行く初めての映画デート
しおりを挟む
朝八時。私は、自室の洗面所の鏡の前で、身だしなみを確認していた。髪を綺麗に整え、服も色んな方向から、入念にチェックする。しわもなく、完璧な状態だ。唇もリップを塗って、適度に艶が出ていた。
会社が休みなので、着ているのは私服だった。相手に合わせ、地味目な服装を選んでいる。今日、一緒に出掛けるのは、ツバサお姉様だ。お姉様より目立つのは、流石に失礼なので、大人し目にコーディネートした。
もっとも、ツバサお姉様は、存在自体が目立つので、あまり関係ないかもしれない。それに、細かいことは、一切、気にしない人だった。それでも、先輩後輩や姉妹の礼儀は、しっかり守るべきことだ。
実は先日、ツバサお姉様に『一緒に映画を見に行かない?』と誘われた。あまり干渉をしてこない、ツバサお姉様にしては、珍しいことだった。普段、全く姉妹らしいことはしていないし、映画は嫌いではないので、私はすぐにOKした。
しかし、ツバサお姉様が、映画に誘ってくるとは、意外だった。物凄くアクティブな人なので、そういったものに、興味がないと思っていたからだ。
そういえば、映画を見に行くのは、物凄く久しぶりだった。子供のころ、何度か、母と見に行ったぐらいだ。なので、少しだけ、楽しみだったりする。
洗面所を出ると、ハンドバッグを手して、玄関に向かう。スリッパを脱いで、靴に履き替えると、静かに扉を開け廊下に出た。この時間だと、皆起きているとは思うが、休日の寮はとても静かだ。
時間は、八時五分。映画館の前で、九時に待ち合わせだ。歩いても、十五分ほどで着くので、かなり早めに着くと思う。しかし、私は『三十分前』到着が基本。万が一に備え、時間のゆとりは大切だ。特に、目上の人との、待ち合わせの場合は。
寮を出ると、会社の正門に向かう。門の前に立っていた、警備員の人に挨拶をすると、ゆっくりと外に出て行く。右折して、通りを歩いて行こうとすると、すぐに声を掛けられた。
「やぁ、おはよう、ナギサちゃん。今日も、とってもカワイイね」
ふと横を見ると、そこには、オープンタイプの、赤いエア・カートが停まっていた。声の主は、運転席に座っていた、ナギサお姉様だった。カジュアルなスーツを着て、サングラスをしている。サングラスを外しながら、笑顔を向けて来た。
「ナギサお姉様、おはようございます。なぜ、こんな所に? それに、まだ、かなり時間があると思いますが……」
ナギサお姉様は、時間ピッタリに行動する人だ。忙しいせいもあるが、待ち合わせは、ギリギリの時間に来ることが多い。
「ナギサちゃんなら、これぐらいの時間に来るかなぁー、と思って。待ってたんだ」
「あの、何時ごろに、いらっしゃったのですか?」
「んー、八時ちょっと前かな」
「そんな、わざわざ、待っていただかなくても――。もしくは、連絡をいただければ、すぐに来ましたけど」
今朝も、六時に起きて、いつも通りの行動をしていた。情報をチェックしたり、勉強をしたりと、かなり時間に余裕があった。だから、呼ばれれば、いつでも来ることができた。
「カワイイ妹を、歩かせる訳にはいかないし。せかすのも、悪いからね。それに、待つのは好きだから、気にしないでいいよ」
ツバサお姉様は、さわやかな笑顔で答える。色々と大雑把そうに見えて、変なところで、気の周る人だ。
私が助手席に座ると、スーッと静かに上昇していった。一瞬で高度を上げると、一気に加速していく。一見、荒っぽい運転に見えて、全く揺れを感じなかった。やはり、運転が上手い。相当、魔力コントロールが上手くないと、できない芸当だ。
天気の話など、他愛のない世間話をしていると、あっという間に、目的の映画館に着いてしまった。元々、歩いて来れる距離なので、エア・カートだと一瞬だ。
駐車場に、エア・カートを停めたあと、
「時間があるから、ちょっと寄っていこうか」
ツバサお姉様の提案で、映画館の前にあるカフェに、二人で立ち寄った。
私は、レモンティーを。ツバサお姉様は、コーヒーとホットドッグを頼んだ。ほどなくして、注文の品が運ばれてくると、彼女は、とても美味しそうに食べ始めた。
「朝食は、食べて来なかったんですか?」
「こっちに来てから、食べればいいと思って。それに、朝はちょっと緊張して、食事が喉を通らなくてね」
「緊張するようなことが、何かありましたか?」
「カワイイ妹との、初デートだもん。当然、緊張するでしょ?」
ツバサお姉様は、微笑みながら答える。言葉とは対照的に、緊張している様子など、微塵も見えなかった。
そもそも、彼女が緊張している姿など、今まで、一度も見たことがない。いつだって、クールで余裕のある態度で行動している。どうせまた、私のことを、からかっているのだろう。
「そんな軽口が叩けるなら、全然、平気じゃないですか?」
「いやー、僕は、見た目によらず、意外と繊細だからね」
そう言いながら、ホットドッグの最後の一口を飲み込むと、フゥーッと一息つき、幸せそうな表情を浮かべた。繊細さとは、全く無縁な感じがする。だが、コーヒーカップを手にとり、一口飲むと、いつものクールな表情に戻った。
そういえば、先ほどから、周囲の視線を感じる。テラス席に座っていた、他の客や、通りを歩いている人たち。その視線の先には、ツバサお姉様がいた。そのほとんどが、女性からの視線だった。
彼女は、この町では有名人だ。何より、その容姿が凄く目立つ。クールで線が細くて、でも、どことなく男らしくて。
整った顔立ちと、落ちついた雰囲気は、ぱっと見、女性というより、美男子に見える。周囲の女性たちが振り返るのも、無理はない。
「それにしても、ツバサお姉様が、映画に誘ってくるとは、意外でした」
「そう? 割と好きだよ、映画。まぁ、普段は自室で、飲みながら見てるけど」
「今日は、何の映画を見るんですか?」
私が尋ねると、彼女はマギコンを操作して、空中モニターを表示する。
「これって、ラブロマンスじゃないですか。こういうの、お好きなんですか?」
「ナギサちゃんは、こういう真面目な作品が、好きそうかなぁー、って思って。」
「まぁ、嫌いじゃないですけど。無理に、合わせていただかなくても……」
「今、流行ってるみたいだし。僕も、見たかったからさ」
ツバサお姉様は、笑顔で答えるが、実際はどうなんだろうか? アクションやエンターテイメント作品のほうが、好きそうだけど。
世間話をしながら、しばらく時間を潰し、九時になったところで、映画館に移動する。館内に入り、入場の手続きを済ませると、一階の上映ホールに向かう。
席は最後方にある、予約専用席だった。その部分だけ、絨毯が違い、椅子もとても豪華になっていた。
これは『ロイヤルシート』と呼ばれる席で、通常の席とは違い、前のシートとかなり空間が広くなっている。また、シート自体が、大きなソファーのようになっており、ボタン操作で角度が変えられる、リクライニングになっていた。
さらに、サイドテーブルとボトルクーラーまで付いている。ツバサお姉様が買って来た、ジュースとポップコーンのケースも、私用とお姉様用とで、二つ置いてあった。何から何まで、至れり尽くせりだ。
シートだけでも、かなりの料金だと思う。私は、映画のチケット代を払おうとしたが『いいから、いいから。姉らしいことをさせてよ』と、笑顔でやんわり断られた。結局、それ以上、言うこともできず、素直に好意に甘えることにしたのだった。
隣では、ナギサお姉様が、ポップコーンを、美味しそうに食べていた。私は映画館で、ポップコーンを食べるのは、初めてだった。何か、行儀が悪いような気がするからだ。
でも、せっかく買って来てもらったので、そっと手を伸ばす。一口食べてみるが、甘いキャラメル味で、予想以上に美味しかった。
十分ほどすると、映画館の照明が落ちて、映画が始まる。最初に、CMや新作の予告が流れたあと、いよいよ本編がスタートした。私は背筋を伸ばし、真剣に鑑賞する。
物語の舞台は『第三次水晶戦争』の時代。〈グリュンノア〉が作られた『第四次水晶戦争』よりも、さらに、三十年以上も前の話だ。
主人公は、とある貴族の館で、メイドをやっている、十五歳の少女。両親も、この家の使用人をしており、彼女も小さなころから、使用人として仕えていた。
日々朝から晩まで忙しく働いていたが、彼女には、唯一の楽しみがあった。それは、この家の、長男との交流だ。彼とは子供のころ、庭仕事をしていた時、偶然に出会った。それ以来、話をしたり、時には、お菓子を持って来てくれたりした。
それ以降、何年も二人の交流は続き、人目を盗んでは会話をし、いつしか、二人は、恋に落ちていく。しかし、この時代は、完全な身分制度社会だった。
身分の違う者同士での、交際や結婚はもちろん、普通に会話することすら出来ない。ましてや、貴族の長男と、その使用人なら、なおのことだった。
だが、彼は彼女に『いずれ妻として迎えるから、待っていて欲しい』と告げる。彼女は、無理なことだと思いながらも、彼を信じ、想いを寄せ続けた。
そんな中、戦争は世界中に飛び火し、どんどん拡大して行った。ついには、彼の家にも、招兵状が届いたのだ。
彼の家は、貴族と言っても、準男爵と下層の貴族だった。地位の低い貴族の場合、直接、戦地に赴いて、国に忠誠を示さなければならない。
結局、彼は『帰ってきたら結婚しよう』と、彼女に言い残し、戦地に旅立って行った。彼の出兵後、定期的に、彼女の元には、彼から手紙が届いていた。
戦地を移動するたびに、別の場所から。毎回、彼女を愛しているということと、自分は無事だから安心してほしい、という内容で。だが、彼が出兵してから、五ヵ月ほど経ったころ、ピタリと手紙が来なくなった。
彼女は、彼の身を案じ、無事に帰ってくることを祈りながら、日々の仕事にいそしんでいた。だが、それから一ヵ月ほどが過ぎ、一通の手紙が屋敷に届いた。それは、軍から送られて来た『消息不明通知』だった。
戦場で行方不明になった場合に、送られて来る通知。だが、実質的には『戦死』と同じ知らせだった。それを見た彼の両親は、悲嘆にくれた。だが、一番、衝撃を受けたのは、もちろん彼女だった。あとを追って、死のうかとも考えた。
だが、彼女は冷静さを取り戻すと、主に暇をもらい、戦地に赴くのだった。彼女はまだ、諦めておらず、彼が生きていると、信じていたからだ。
彼女は、手紙の送られてきた先を、一つずつ回って行き、彼の情報を訊いて回った。だが、有力な情報は、何一つ得られない。
彼女は、次々と街を移動していく際に、凄惨な現状を目にしていた。町は焼け野原になり、怪我や病気で苦しむ、沢山の人たちを。いつしか彼女は、ボランティア活動をするようになり、たくさんの怪我人たちの、世話をするようになった。
彼女は、病院や仮設の治療施設を、次々に回って行く。その際に、彼がいないか、常に目で追っていた。
ある時、彼女は、敵国の領地に向かって行った。敵味方関係なく、手を差し伸べていたのと、取り残された味方の兵士たちもいると、噂で聞いたからだ。彼女は施設を渡り歩き、負傷者に手を差し伸べて行った。
ある日、彼女は、仮設の治療所になっていた、ある教会を訪れた。献身的に看護をして行くうちに、ある負傷者に目がとまった。左足を失い、全身傷だらけで、頭にも包帯を巻いている。
だが、彼からは、不思議な懐かしさを感じた。その時、ふと気付いたのだ。彼の首に下げてあった、ペンダントに。ペンダントの中には、彼女の写真が入っていた。その人物こそが、ずっと探し求めていた、彼だったのだ。
だが、敵の攻撃魔法を受け、体はボロボロになり、さらに、彼は記憶を完全に失っていた。それでも、諦めかけていた彼女にとっては、例えようもなく嬉しいことだった。その日以来、彼女は教会に通い、甲斐甲斐しく、彼の世話を続けていく。
ある日、彼を車いすに乗せ、見晴らしのよい丘に連れて行った。綺麗に晴れ渡り、とても気持ちのよい、そよ風が吹いている。その時、彼の目からは、涙が零れ落ちた。故郷に似た風景を見て、凍り付いていた心が、ようやく解け始めたのだ。
それと同時に、彼は、彼女のことも思い出した。二人は、ようやくの再開に、涙を流しながら喜んだ。
彼女は、彼に家に帰ろうと勧めるが、彼はそれを頑なに断った。家に戻れば、また彼女とは、主従関係に戻って、距離を置かなければならない。
だから彼は、ある決断をした。故郷を捨て、家を捨て、自分の存在すらを捨て、彼女を選ぶことにしたのだ。
結局、彼の生存は、永遠に伏せられることになった。二人は、小さな家を手に入れ、貧しいながらも、一緒に穏やかな生活を送る。それは、二人にとって、初めて自分たちの意思で得た、自由な時間だった。
だが、二年後、彼は怪我が原因で、命を落とすことに。それを追うようにして、半年後、彼女は流行り病にかかって、この世を去った。
映画の最後には、こう表示された。
『これは、第三次水晶戦争の激動の時代の中、実際にあった話であり、この事実が知られたのは、二人が亡くなって、五十年以上、経ってからである』
静かな音楽と共に、エンドロールが流れ始めた。前のほうの席では、涙を流している人たちも、結構いるようだ。
私は、涙を流したりはしないが、時代感や戦時中の雰囲気がよく表れた、素晴らしい作品だと思う。二時間半の作品だったが、集中して見ていたら、あっという間に終わってしまった。
ふと隣を見ると、ナギサお姉様が、ハンカチで涙を拭いている姿があった。ずいぶんと、感動している様子だ。
えっ?! ナギサお姉様が、涙を?
私は、信じられない光景に、ただ唖然とするのだった……。
******
映画館を出ると、ちょうどお昼になっていたので、近くにあるレストランに向かった。ここも、あらかじめ、予約を入れていたようだ。実に手回しがよい。
映画館で、真剣に見ていたせいもあって、席に付いたとたん、フーッと息を吐き出した。かなり集中して、少し疲れていたようだ。ようやく、肩の力が抜ける。
「ナギサちゃん、映画はどうだった?」
「はい、素晴らしい作品だと思います。服装や背景のセットも、リアルでしたし」
昔のことは、歴史の学習ファイルでしか見たことがないので、とても勉強になった。やはり、こういうのは、文章だけでは、なかなか伝わって来ないものだ。
「いやー、ラストは感動して、思わず涙が出てしまったよ。流石に、人気の作品だけあるね。ナギサちゃんは、感動したりしなかったの?」
「よかったとは、思いましたが。主人公の行動には、共感できませんでした」
確かに、美しいシーンで、感動する場面だとは思う。でも、別の選択肢も、あったんじゃないだろうか?
「どこら辺が?」
「私だったら、無理やりにでも、彼を家に連れて帰ります。本当に好きなら、彼の将来の幸せまで、考えるべきです」
単に、勢いで行動しているようにしか、見えなかった。戦時中で、大変なご時世だからこそ、しっかり先のことを、見据えるべきだと思う。
「でも、家に帰ったら、貴族の息子と使用人の関係に戻って、もう、近くにはいられないんだよ? あの時代、身分は絶対だからね」
「それでも、連れて帰るべきだったと思います。そうすれば、ちゃんとした医者に見せて、もっと長生き出来たはずですし。家族にも、再会できたでしょうから」
ストーリーとしては、波乱万丈で悪くない。でも、現実的に考えれば、賢い選択とは思えなかった。
「彼との恋を諦めてでも、生かそうとする。ナギサちゃんらしい、優しい考え方だね。でも、自己犠牲精神が伴うし。本当に、それで彼は、幸せになれるのかな?」
「どういうことですか? 生きる以上の幸せなんて、ないと思いますが」
「長く生きれば幸せ、って訳でもないと思うよ。二人は短い間しか、共にいられなかったけど。日々凄く幸せだったと思う。だって、愛する人と共に過ごせたんだから」
「そうなんでしょうか……?」
私には、よく分からない。自分が生きていることすら抹消して、誰にも知られずに生きて行く。そんな日陰の生き方が、幸せなんだろうか? 幸せとは、日の当たる場所にこそ、あるものだと思うけど――。
「まぁ、ナギサちゃんも、恋をすれば、いずれ分かるよ」
「私は、恋なんてしませんよ。仕事一筋ですから」
「どうかな? 恋は、突然やって来るからね」
「仮に恋をしたとしても、冷静に正しい選択をしますよ」
私の答に、ナギサお姉様は、楽しそうに笑う。
私は、恋などに興味はない。自分が進むべき道の、障害になるからだ。仮に好きな人ができても、私は最も合理的な考えで、行動すると思う。なぜなら、私は自分の目標を果たすのが、最優先だからだ。
それとも、恋をすると、人間性そのものが、変わってしまうのだろうか……?
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
次回――
『自室で出来る運動不足解消のための深夜トレーニング講座』
運動音痴なんてオレがいっしょに退治してやるよ
会社が休みなので、着ているのは私服だった。相手に合わせ、地味目な服装を選んでいる。今日、一緒に出掛けるのは、ツバサお姉様だ。お姉様より目立つのは、流石に失礼なので、大人し目にコーディネートした。
もっとも、ツバサお姉様は、存在自体が目立つので、あまり関係ないかもしれない。それに、細かいことは、一切、気にしない人だった。それでも、先輩後輩や姉妹の礼儀は、しっかり守るべきことだ。
実は先日、ツバサお姉様に『一緒に映画を見に行かない?』と誘われた。あまり干渉をしてこない、ツバサお姉様にしては、珍しいことだった。普段、全く姉妹らしいことはしていないし、映画は嫌いではないので、私はすぐにOKした。
しかし、ツバサお姉様が、映画に誘ってくるとは、意外だった。物凄くアクティブな人なので、そういったものに、興味がないと思っていたからだ。
そういえば、映画を見に行くのは、物凄く久しぶりだった。子供のころ、何度か、母と見に行ったぐらいだ。なので、少しだけ、楽しみだったりする。
洗面所を出ると、ハンドバッグを手して、玄関に向かう。スリッパを脱いで、靴に履き替えると、静かに扉を開け廊下に出た。この時間だと、皆起きているとは思うが、休日の寮はとても静かだ。
時間は、八時五分。映画館の前で、九時に待ち合わせだ。歩いても、十五分ほどで着くので、かなり早めに着くと思う。しかし、私は『三十分前』到着が基本。万が一に備え、時間のゆとりは大切だ。特に、目上の人との、待ち合わせの場合は。
寮を出ると、会社の正門に向かう。門の前に立っていた、警備員の人に挨拶をすると、ゆっくりと外に出て行く。右折して、通りを歩いて行こうとすると、すぐに声を掛けられた。
「やぁ、おはよう、ナギサちゃん。今日も、とってもカワイイね」
ふと横を見ると、そこには、オープンタイプの、赤いエア・カートが停まっていた。声の主は、運転席に座っていた、ナギサお姉様だった。カジュアルなスーツを着て、サングラスをしている。サングラスを外しながら、笑顔を向けて来た。
「ナギサお姉様、おはようございます。なぜ、こんな所に? それに、まだ、かなり時間があると思いますが……」
ナギサお姉様は、時間ピッタリに行動する人だ。忙しいせいもあるが、待ち合わせは、ギリギリの時間に来ることが多い。
「ナギサちゃんなら、これぐらいの時間に来るかなぁー、と思って。待ってたんだ」
「あの、何時ごろに、いらっしゃったのですか?」
「んー、八時ちょっと前かな」
「そんな、わざわざ、待っていただかなくても――。もしくは、連絡をいただければ、すぐに来ましたけど」
今朝も、六時に起きて、いつも通りの行動をしていた。情報をチェックしたり、勉強をしたりと、かなり時間に余裕があった。だから、呼ばれれば、いつでも来ることができた。
「カワイイ妹を、歩かせる訳にはいかないし。せかすのも、悪いからね。それに、待つのは好きだから、気にしないでいいよ」
ツバサお姉様は、さわやかな笑顔で答える。色々と大雑把そうに見えて、変なところで、気の周る人だ。
私が助手席に座ると、スーッと静かに上昇していった。一瞬で高度を上げると、一気に加速していく。一見、荒っぽい運転に見えて、全く揺れを感じなかった。やはり、運転が上手い。相当、魔力コントロールが上手くないと、できない芸当だ。
天気の話など、他愛のない世間話をしていると、あっという間に、目的の映画館に着いてしまった。元々、歩いて来れる距離なので、エア・カートだと一瞬だ。
駐車場に、エア・カートを停めたあと、
「時間があるから、ちょっと寄っていこうか」
ツバサお姉様の提案で、映画館の前にあるカフェに、二人で立ち寄った。
私は、レモンティーを。ツバサお姉様は、コーヒーとホットドッグを頼んだ。ほどなくして、注文の品が運ばれてくると、彼女は、とても美味しそうに食べ始めた。
「朝食は、食べて来なかったんですか?」
「こっちに来てから、食べればいいと思って。それに、朝はちょっと緊張して、食事が喉を通らなくてね」
「緊張するようなことが、何かありましたか?」
「カワイイ妹との、初デートだもん。当然、緊張するでしょ?」
ツバサお姉様は、微笑みながら答える。言葉とは対照的に、緊張している様子など、微塵も見えなかった。
そもそも、彼女が緊張している姿など、今まで、一度も見たことがない。いつだって、クールで余裕のある態度で行動している。どうせまた、私のことを、からかっているのだろう。
「そんな軽口が叩けるなら、全然、平気じゃないですか?」
「いやー、僕は、見た目によらず、意外と繊細だからね」
そう言いながら、ホットドッグの最後の一口を飲み込むと、フゥーッと一息つき、幸せそうな表情を浮かべた。繊細さとは、全く無縁な感じがする。だが、コーヒーカップを手にとり、一口飲むと、いつものクールな表情に戻った。
そういえば、先ほどから、周囲の視線を感じる。テラス席に座っていた、他の客や、通りを歩いている人たち。その視線の先には、ツバサお姉様がいた。そのほとんどが、女性からの視線だった。
彼女は、この町では有名人だ。何より、その容姿が凄く目立つ。クールで線が細くて、でも、どことなく男らしくて。
整った顔立ちと、落ちついた雰囲気は、ぱっと見、女性というより、美男子に見える。周囲の女性たちが振り返るのも、無理はない。
「それにしても、ツバサお姉様が、映画に誘ってくるとは、意外でした」
「そう? 割と好きだよ、映画。まぁ、普段は自室で、飲みながら見てるけど」
「今日は、何の映画を見るんですか?」
私が尋ねると、彼女はマギコンを操作して、空中モニターを表示する。
「これって、ラブロマンスじゃないですか。こういうの、お好きなんですか?」
「ナギサちゃんは、こういう真面目な作品が、好きそうかなぁー、って思って。」
「まぁ、嫌いじゃないですけど。無理に、合わせていただかなくても……」
「今、流行ってるみたいだし。僕も、見たかったからさ」
ツバサお姉様は、笑顔で答えるが、実際はどうなんだろうか? アクションやエンターテイメント作品のほうが、好きそうだけど。
世間話をしながら、しばらく時間を潰し、九時になったところで、映画館に移動する。館内に入り、入場の手続きを済ませると、一階の上映ホールに向かう。
席は最後方にある、予約専用席だった。その部分だけ、絨毯が違い、椅子もとても豪華になっていた。
これは『ロイヤルシート』と呼ばれる席で、通常の席とは違い、前のシートとかなり空間が広くなっている。また、シート自体が、大きなソファーのようになっており、ボタン操作で角度が変えられる、リクライニングになっていた。
さらに、サイドテーブルとボトルクーラーまで付いている。ツバサお姉様が買って来た、ジュースとポップコーンのケースも、私用とお姉様用とで、二つ置いてあった。何から何まで、至れり尽くせりだ。
シートだけでも、かなりの料金だと思う。私は、映画のチケット代を払おうとしたが『いいから、いいから。姉らしいことをさせてよ』と、笑顔でやんわり断られた。結局、それ以上、言うこともできず、素直に好意に甘えることにしたのだった。
隣では、ナギサお姉様が、ポップコーンを、美味しそうに食べていた。私は映画館で、ポップコーンを食べるのは、初めてだった。何か、行儀が悪いような気がするからだ。
でも、せっかく買って来てもらったので、そっと手を伸ばす。一口食べてみるが、甘いキャラメル味で、予想以上に美味しかった。
十分ほどすると、映画館の照明が落ちて、映画が始まる。最初に、CMや新作の予告が流れたあと、いよいよ本編がスタートした。私は背筋を伸ばし、真剣に鑑賞する。
物語の舞台は『第三次水晶戦争』の時代。〈グリュンノア〉が作られた『第四次水晶戦争』よりも、さらに、三十年以上も前の話だ。
主人公は、とある貴族の館で、メイドをやっている、十五歳の少女。両親も、この家の使用人をしており、彼女も小さなころから、使用人として仕えていた。
日々朝から晩まで忙しく働いていたが、彼女には、唯一の楽しみがあった。それは、この家の、長男との交流だ。彼とは子供のころ、庭仕事をしていた時、偶然に出会った。それ以来、話をしたり、時には、お菓子を持って来てくれたりした。
それ以降、何年も二人の交流は続き、人目を盗んでは会話をし、いつしか、二人は、恋に落ちていく。しかし、この時代は、完全な身分制度社会だった。
身分の違う者同士での、交際や結婚はもちろん、普通に会話することすら出来ない。ましてや、貴族の長男と、その使用人なら、なおのことだった。
だが、彼は彼女に『いずれ妻として迎えるから、待っていて欲しい』と告げる。彼女は、無理なことだと思いながらも、彼を信じ、想いを寄せ続けた。
そんな中、戦争は世界中に飛び火し、どんどん拡大して行った。ついには、彼の家にも、招兵状が届いたのだ。
彼の家は、貴族と言っても、準男爵と下層の貴族だった。地位の低い貴族の場合、直接、戦地に赴いて、国に忠誠を示さなければならない。
結局、彼は『帰ってきたら結婚しよう』と、彼女に言い残し、戦地に旅立って行った。彼の出兵後、定期的に、彼女の元には、彼から手紙が届いていた。
戦地を移動するたびに、別の場所から。毎回、彼女を愛しているということと、自分は無事だから安心してほしい、という内容で。だが、彼が出兵してから、五ヵ月ほど経ったころ、ピタリと手紙が来なくなった。
彼女は、彼の身を案じ、無事に帰ってくることを祈りながら、日々の仕事にいそしんでいた。だが、それから一ヵ月ほどが過ぎ、一通の手紙が屋敷に届いた。それは、軍から送られて来た『消息不明通知』だった。
戦場で行方不明になった場合に、送られて来る通知。だが、実質的には『戦死』と同じ知らせだった。それを見た彼の両親は、悲嘆にくれた。だが、一番、衝撃を受けたのは、もちろん彼女だった。あとを追って、死のうかとも考えた。
だが、彼女は冷静さを取り戻すと、主に暇をもらい、戦地に赴くのだった。彼女はまだ、諦めておらず、彼が生きていると、信じていたからだ。
彼女は、手紙の送られてきた先を、一つずつ回って行き、彼の情報を訊いて回った。だが、有力な情報は、何一つ得られない。
彼女は、次々と街を移動していく際に、凄惨な現状を目にしていた。町は焼け野原になり、怪我や病気で苦しむ、沢山の人たちを。いつしか彼女は、ボランティア活動をするようになり、たくさんの怪我人たちの、世話をするようになった。
彼女は、病院や仮設の治療施設を、次々に回って行く。その際に、彼がいないか、常に目で追っていた。
ある時、彼女は、敵国の領地に向かって行った。敵味方関係なく、手を差し伸べていたのと、取り残された味方の兵士たちもいると、噂で聞いたからだ。彼女は施設を渡り歩き、負傷者に手を差し伸べて行った。
ある日、彼女は、仮設の治療所になっていた、ある教会を訪れた。献身的に看護をして行くうちに、ある負傷者に目がとまった。左足を失い、全身傷だらけで、頭にも包帯を巻いている。
だが、彼からは、不思議な懐かしさを感じた。その時、ふと気付いたのだ。彼の首に下げてあった、ペンダントに。ペンダントの中には、彼女の写真が入っていた。その人物こそが、ずっと探し求めていた、彼だったのだ。
だが、敵の攻撃魔法を受け、体はボロボロになり、さらに、彼は記憶を完全に失っていた。それでも、諦めかけていた彼女にとっては、例えようもなく嬉しいことだった。その日以来、彼女は教会に通い、甲斐甲斐しく、彼の世話を続けていく。
ある日、彼を車いすに乗せ、見晴らしのよい丘に連れて行った。綺麗に晴れ渡り、とても気持ちのよい、そよ風が吹いている。その時、彼の目からは、涙が零れ落ちた。故郷に似た風景を見て、凍り付いていた心が、ようやく解け始めたのだ。
それと同時に、彼は、彼女のことも思い出した。二人は、ようやくの再開に、涙を流しながら喜んだ。
彼女は、彼に家に帰ろうと勧めるが、彼はそれを頑なに断った。家に戻れば、また彼女とは、主従関係に戻って、距離を置かなければならない。
だから彼は、ある決断をした。故郷を捨て、家を捨て、自分の存在すらを捨て、彼女を選ぶことにしたのだ。
結局、彼の生存は、永遠に伏せられることになった。二人は、小さな家を手に入れ、貧しいながらも、一緒に穏やかな生活を送る。それは、二人にとって、初めて自分たちの意思で得た、自由な時間だった。
だが、二年後、彼は怪我が原因で、命を落とすことに。それを追うようにして、半年後、彼女は流行り病にかかって、この世を去った。
映画の最後には、こう表示された。
『これは、第三次水晶戦争の激動の時代の中、実際にあった話であり、この事実が知られたのは、二人が亡くなって、五十年以上、経ってからである』
静かな音楽と共に、エンドロールが流れ始めた。前のほうの席では、涙を流している人たちも、結構いるようだ。
私は、涙を流したりはしないが、時代感や戦時中の雰囲気がよく表れた、素晴らしい作品だと思う。二時間半の作品だったが、集中して見ていたら、あっという間に終わってしまった。
ふと隣を見ると、ナギサお姉様が、ハンカチで涙を拭いている姿があった。ずいぶんと、感動している様子だ。
えっ?! ナギサお姉様が、涙を?
私は、信じられない光景に、ただ唖然とするのだった……。
******
映画館を出ると、ちょうどお昼になっていたので、近くにあるレストランに向かった。ここも、あらかじめ、予約を入れていたようだ。実に手回しがよい。
映画館で、真剣に見ていたせいもあって、席に付いたとたん、フーッと息を吐き出した。かなり集中して、少し疲れていたようだ。ようやく、肩の力が抜ける。
「ナギサちゃん、映画はどうだった?」
「はい、素晴らしい作品だと思います。服装や背景のセットも、リアルでしたし」
昔のことは、歴史の学習ファイルでしか見たことがないので、とても勉強になった。やはり、こういうのは、文章だけでは、なかなか伝わって来ないものだ。
「いやー、ラストは感動して、思わず涙が出てしまったよ。流石に、人気の作品だけあるね。ナギサちゃんは、感動したりしなかったの?」
「よかったとは、思いましたが。主人公の行動には、共感できませんでした」
確かに、美しいシーンで、感動する場面だとは思う。でも、別の選択肢も、あったんじゃないだろうか?
「どこら辺が?」
「私だったら、無理やりにでも、彼を家に連れて帰ります。本当に好きなら、彼の将来の幸せまで、考えるべきです」
単に、勢いで行動しているようにしか、見えなかった。戦時中で、大変なご時世だからこそ、しっかり先のことを、見据えるべきだと思う。
「でも、家に帰ったら、貴族の息子と使用人の関係に戻って、もう、近くにはいられないんだよ? あの時代、身分は絶対だからね」
「それでも、連れて帰るべきだったと思います。そうすれば、ちゃんとした医者に見せて、もっと長生き出来たはずですし。家族にも、再会できたでしょうから」
ストーリーとしては、波乱万丈で悪くない。でも、現実的に考えれば、賢い選択とは思えなかった。
「彼との恋を諦めてでも、生かそうとする。ナギサちゃんらしい、優しい考え方だね。でも、自己犠牲精神が伴うし。本当に、それで彼は、幸せになれるのかな?」
「どういうことですか? 生きる以上の幸せなんて、ないと思いますが」
「長く生きれば幸せ、って訳でもないと思うよ。二人は短い間しか、共にいられなかったけど。日々凄く幸せだったと思う。だって、愛する人と共に過ごせたんだから」
「そうなんでしょうか……?」
私には、よく分からない。自分が生きていることすら抹消して、誰にも知られずに生きて行く。そんな日陰の生き方が、幸せなんだろうか? 幸せとは、日の当たる場所にこそ、あるものだと思うけど――。
「まぁ、ナギサちゃんも、恋をすれば、いずれ分かるよ」
「私は、恋なんてしませんよ。仕事一筋ですから」
「どうかな? 恋は、突然やって来るからね」
「仮に恋をしたとしても、冷静に正しい選択をしますよ」
私の答に、ナギサお姉様は、楽しそうに笑う。
私は、恋などに興味はない。自分が進むべき道の、障害になるからだ。仮に好きな人ができても、私は最も合理的な考えで、行動すると思う。なぜなら、私は自分の目標を果たすのが、最優先だからだ。
それとも、恋をすると、人間性そのものが、変わってしまうのだろうか……?
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
次回――
『自室で出来る運動不足解消のための深夜トレーニング講座』
運動音痴なんてオレがいっしょに退治してやるよ
0
あなたにおすすめの小説
『辺境伯一家の領地繁栄記』序章:【動物スキル?】を持った辺境伯長男の場合
鈴白理人
ファンタジー
北の辺境で雨漏りと格闘中のアーサーは、貧乏領主の長男にして未来の次期辺境伯。
国民には【スキルツリー】という加護があるけれど、鑑定料は銀貨五枚。そんな贅沢、うちには無理。
でも最近──猫が雨漏りポイントを教えてくれたり、鳥やミミズとも会話が成立してる気がする。
これってもしかして【動物スキル?】
笑って働く貧乏大家族と一緒に、雨漏り屋敷から始まる、のんびりほのぼの領地改革物語!
酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ
天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。
ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。
そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。
よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。
そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。
こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
ファンタジー
毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
連載時、HOT 1位ありがとうございました!
その他、多数投稿しています。
こちらもよろしくお願いします!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います
町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。
家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜
奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。
パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。
健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。
異世界転生したおっさんが普通に生きる
カジキカジキ
ファンタジー
第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位
応援頂きありがとうございました!
異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界
主人公のゴウは異世界転生した元冒険者
引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。
知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる