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第8部 分かたれる道
3-6地位や立場にあった生活も必要なのかもしれない
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先日の夜。ノーラさんに、アパートを出ていくように言われてから、私は、新しい物件を探していた。スピにも、たくさんの情報が出ていたが、今一つ、ピンと来なかった。それだけ、今の部屋が、大好きだからだ。
ちなみに、あの夜。私は、自分の部屋に戻ってから、ショックと悲しみのあまり、思い切り泣いた。あんなに泣いたのなんて、物凄く久しぶりだ。
この部屋は、滅茶苦茶、狭くて、天井も低いし。最低限の物しか置いておらず、とても殺風景。加えて、水道も来てないので、物凄く不便だ。でも、私がこの世界に来てから、ずっと過ごして来た場所で、たくさんの思い出が詰まっている。
最初は、ただ、寝泊まりするだけの、仮住まいだと思っていた。でも、いざ、出ていくとなると、想像以上に大切な、私の心の拠り所であったことに、いまさらながら気付いたのだ。
それと、もう一つ。このアパートには、ノーラさんがいる。厳しい態度をとりながらも、何だかんだで、いつも面倒を見てくれた。彼女と離れる不安も、かなり大きい。ノーラさんは、こっちの世界での、母親的な存在だったから……。
おそらく、そこらへんも見抜いたうえで、ここを出て行くように、言ったのだと思う。確かに、今まで私は、色々と頼り過ぎだった。ここにいる限り、困った時は、いつでもノーラさんが、助けてくれるのだから。
ただ、新居探しは、非常に難航していた。今まで、家探しなんて、一度もしたことがないし。いくら、この町に詳しいとはいえ、それは、観光名所や、お店などに限ってだ。一般家屋については、ほとんど、知識がない。
そもそも、この町は、物凄く広いし、六つの地区に分かれていた。どこに住むかによっても、かなり環境が変わって来る。どの地区にも、優れた特徴があって、甲乙つけがたい。
でも、色々考えた結果、会社から近くて、なおかつ馴染みのある〈東地区〉で、新居を探すことにした。
最初は、高層アパートの地域に、しようと思ったけど。あそこは、墜落事故を起こしたので、縁起がよくない。あと、上位階級の立場を考えると、アパート住まいという訳にもいかなかった。ただ〈東地区〉は、一個建てとアパートばかりだ。
散々悩んだあげく、この地区に詳しそうな、町内会長さんに、相談することにした。すると、町内会長さんは、喜んで協力してくれることに。それで、この町の物件に詳しい人を、私に紹介してくれたのだった。
私は今、エア・カートの助手席に乗り〈東地区〉の、上空を飛んでいた。運転席には、今日、案内をしてくれる、町内会長の孫の、ユキさんが乗っている。
驚くべきことに、彼女は、大手不動産会社の社員だったのだ。いつも、派手な格好で、写真ばかり撮ってたから、今時のゆるい若者かと思ってた。でも、ビシッとスーツを着た姿は、いかにも、仕事ができるキャリアウーマンに見える。
「今日は、天気がよくて助かったわ。まさに、新居探しに、ピッタリな日ね」
「そうですね。風も気持ちいいですし」
「単に、陽気の快適さだけじゃないのよ。物件は、天気によっても、見え方が違うからね。天気のいい日のほうが、よい部分も、悪い部分も、くっきり見えるから」
「なるほど、確かにそうですね」
いつもの軽いノリとは違い、今日のユキさんは、完全に、お仕事モードだ。流石は、住宅の専門家。家のことについては、滅茶苦茶、詳しい。
「風歌ちゃんは、何かこだわりや、好みはないの? 言ってくれれば、希望にピッタリの物件を、何でも紹介するわよ」
「ありがとうございます。でも、特には、ないんですよね。とりあえず、住めればOKなので。今のアパートも、そんな感じですし」
「しかし、バス・トイレ・キッチンもない屋根裏部屋に、よく三年以上も、住んでいられたわね。物凄く、不便だったでしょ?」
「最初は、ちょっと大変でしたけど。慣れれば、どうにでもなりますよ。私、こじんまりした部屋が、結構、好きですし」
いわゆる『住めば都』というやつだ。
「でも『スカイ・プリンセス』になったんだし。流石に、それはマズイでしょ? ちゃんとした家に、住まないと」
「ですよねぇ。ノーラさんにも、同じこと言われました」
「どうせなら、思いっ切り、ゴージャスな家にしてみたら? ただ〈東地区〉には、高級な物件は、あまりないのよね。やっぱり、新しい建物が多い〈南地区〉や〈西地区〉のほうが、いいんじゃない?」
「でも、私はやっぱり〈東地区〉がいいんです。一番、好きな地区ですから。あと、本音を言えば、普通のアパートのほうが、肩が凝らなくて、いいんですけど」
一人暮らしなので、小さなワンルームで十分だ。まぁ、今度は、水道が通っている部屋がいいけど。
「まったく、欲がないわねぇ、風歌ちゃんは。『大きくて豪華な家に住みたい』って、思ったりしないの? 収入だって、結構、あるんでしょ?」
「特には、ないですね。いくら昇進したとはいえ、私は、まだまだ未熟ですし。今は、仕事だけに、集中していたいんです。だから、寝泊まりできれば、本当に、どこでもいいです」
「なるほどねぇ。それで、おじいちゃんが、私を紹介した訳かぁ」
「え――?」
ユキさんは、意味ありげに微笑む。
「おじいちゃんはね、町内会長をやってるから、滅茶苦茶、顔が広いんだよね。それに、私が働いてる会社だって、おじいちゃんが作ったものだし」
「えぇっ?! 町内会長さんって、会社の社長さんだったんですか?」
「今は息子に任せて、会長だけどね。でも、色んな家主さんと知り合いだし、私以上に、物件のことは、詳しいのよ。この業界では、結構な、有名人だから」
「へぇぇー、そうだったんですか……」
町内会長さんって、大人しくて、地味な感じの人なので。そんなに凄い人だとは、思いもしなかった――。
「ちなみに、私は専務ね」
「え……えぇぇぇーー?!」
「あははっ、驚きすぎ。やっぱ、見えないよねぇー」
「あっ――す、すいません」
「いいって、いいって。よく言われるから」
ユキさんは、サバサバしながら、笑顔で答える。
「でも、そんな凄い方に、案内をさせてしまって、いいんですか?」
専務って、社長の次に偉い人だよね……?
「別に、凄くなんかないわよ。まぁ、普段は、経営の仕事をやってるけど。手が空いてる時は、普通に、お客様を案内してるのよ。あと、特別なお客様は、私が担当することになってるの」
「特別――?」
「偉い人とか、知人の場合ね。風歌ちゃんは、その両方だから。『スカイ・プリンセス』みたいな、超VIPの家探しを、そこらの社員に、任せられないでしょ?」
「いやいや、私は、ただの一般人ですから」
昇進はしたものの、私自身は、何一つ変わっていない。そもそも、今回、追い出されることになったのも、私の甘さゆえだ。まだまだ、人間的には、上位階級に、なり切れていないのだ。
「そういう、謙虚で庶民的なところが、風歌ちゃんの魅力よね。おそらく、上位階級の中で、最も一般人に、近い存在じゃないかな」
「でも、周りの人たちは、そうは見てないわよ。私たちにとっては、雲の上の存在なんだから。風歌ちゃん自身の評価と、周りの評価は、全く別物なの。そこら辺のところ、ちゃんと、自覚してる?」
確かに、ユキさんの言う通りだ。私がどう思おうと、周りは、特別な存在としてしか、見てくれない。
「そんな凄い人が、ボロ屋に住んでたら、おかしいでしょ? もちろん、どんな家にも、いいところは有るから。小さくても、古くても、素敵な家はあるけど。それよりも、みんなが思っている、イメージに合わせるのが、大事だと思うわよ」
「風歌ちゃんは、異世界出身だから、よく分からないかも知れないけど。シルフィードの上位階級って、神様みたいな存在なのよ」
ユキさんは、とても真面目な表情で語る。
「えぇっ?! そこまで凄いんですか……?」
「昔の魔女に近いわね。今だって四魔女は、沢山の人に、信仰されているでしょ? シルフィードの上位階級も、信仰対象の一つなのよ。この町の人たちは、特にね」
四魔女は、様々な神として信仰されており、世界中から、大勢の人がお参りに来ていた。ただ、彼女たちは、世界を救った英雄で、別格の存在だと思う。
でも、この町の人たちの態度を見ると、シルフィードの上位階級に対しても、同じように考えているのかもしれない。
上位階級には、社会的に、物凄く偉い立場にある人すら、とても丁寧な対応をしてくるし。単純に、称号だけではなく、神格化して見ているからだろう。
「だからね、そんな神様みたいな人が住む家は、本当に、真剣に選ぶ必要があるの。私に声が掛かったのも、それだけ、責任重大ってことなのよ」
「でも、任せておいて。私、こう見えても、社内一の『ハウス・コーディネーター』だから。家だけじゃなくて、内装やインテリアまで、全部アドバイスできるし。風歌ちゃんの立場に見合った、最高の家を紹介するから」
ユキさんは、自信ありげな笑顔を浮かべた。
「そういうことでしたら、是非、よろしくお願いします」
私みたいな、ど素人が選ぶより、プロにお任せしたほうが、よさそうだ。それに、立場に見合った家なんて、サッパリ分からないし。
ユキさんの案内で、まずは〈南地区〉のマンションを回って行った。どこも、大きな高級マンションで、部屋も滅茶苦茶、広かった。内装も物凄く豪華で、いかにも、セレブな感じが漂っている。
さらに、家具や生活に必要な魔法機器も、最新型が、一通りそろっていた。高級賃貸物件は、最初から、必要な家財道具が、全て揃っているのが普通らしい。
とても大きなベッドに、ふかふかのソファー。大型の保存庫に、オープンキッチン。ガラス張りで、外の景色が一望できる、大型のバスルーム。中には、カウンターバーや、ビリヤード台などが、置いてある部屋もあった。
大きなベランダからの景色も最高で、リクライニング・チェアーなんかも、置いてあったりする。まるで、リゾートホテルにでも、来たような気分で、とても、普通の住居には見えなかった。
そもそも、周囲の環境自体が、まるで〈北地区〉とは違い、お洒落な『セレブタウン』になっている。見に行ったどの部屋も、凄かったけど。やっぱり、私には肩が凝って、合わない気がした。
そのあとは〈西地区〉の、一戸建ての家を見て回った。どの家も、非常に大きく、内装や家具も、かなり豪華だ。ただ、どう見てもファミリー向けで、一人で住むには、大きすぎる。私には、今一つ、しっくり来なかった。
見た家は、どれも素敵だったけど。これじゃあ、住んでも、気が休まらない気がする。そもそも、私は、高級住宅街に住むような、柄じゃないし――。
結局、私の最初の希望通り、最後は〈東地区〉を見て回った。やはり〈東地区〉は、私の感性に合っているようで、ホッとする。生活感があって、庶民的な雰囲気が、いいんだよね。
数軒、回ったあと、ユキさんが『とっておきの物件を紹介するわ』と言って、海沿いに向かって行った。到着したのは、目の前に海が見える、見晴らしのよい、とても大きな庭のある家だった。
「築三十年以上だけど、リフォームしたばかりだし。中は、とても綺麗よ。あと、何と言っても、眺めのよさでは、これ以上の物件はないわ」
「確かに、とても美しい景色ですね。目の前が海だなんて、最高の立地です。それに、風が凄く気持ちいい」
目の前に広がる大きな海から、暖かな海風が、優しく吹いてきている。この風は、街中では、味わえない心地よさだ。
中に入ってみると、リフォームしたてで、壁紙や床が、新築同様に、綺麗になっていた。置かれている家具は、アンティーク物が多く、落ち着いた感じだった。今まで見て回って来た、モダンな内装の部屋とは違い、何か落ちつく。
一階のリビングは、庭の前が大きなガラス張りで、非常に眺めがいい。二階の寝室も、窓から海が一望でき、大きなバルコニーには、イスとテーブルが置いてあった。
しかも、寝室には、天幕付きの、とても大きなベッドが置いてある。まるで、貴族の部屋みたいだ。
「建物の新しさや、内装の豪華さで言えば、他に、もっといい物件があるんだけど。眺めのよさでは、ここが、この町では一番ね。それに、築年数が経ってるから、広さの割りには安いし」
「本当に、これ以上ないぐらい、最高の眺めですね」
私とユキさんは、二階のバルコニーに立って、しばらくの間、海を眺めていた。私の住んでいる、屋根裏部屋の小窓からの景色とは、大違いだ。
これほど、開放感のある素晴らしい景色は、向こうの世界でも、見たことがない。何より、風が気持ちよすぎる。漂ってくる潮の香と、心地よい波の音も最高だ。
「どうやら、気に入ってくれたみたいね」
「はい、とっても素敵です。一目、見た瞬間に、気に入りました」
「最初から『風歌ちゃんは、ここだろうなぁー』って、思ってたんだ」
「そうなんですか?」
「だって、風歌ちゃん、風が大好きでしょ?」
「そうですね。シルフィードになりたかったのも、ありますけど。『世界一の風が吹く町』と聞いたから、この町に来たので」
昔、私が読んだ雑誌に、そんなキャッチコピーが書いてあった。実際、一年中、風が止むことがないし。風も柔らかくて、とても気持ちがいい。それに、向こうの世界とは、明らかに、風質が違う。
「私は、見えないから、よく分からないけど。マナラインの影響で、町の中でも、風の強さが違うのよね。この場所は、マナラインが、特別に強いみたいよ」
「あぁ、そう言われてみれば。ここのマナラインは、色が濃いですね。しかも、何本も集まってるし」
家の周囲には、何本もの、濃い緑色のマナラインが通っていた。その内、数本は、海のほうから、伸びてきている。
「えぇっ?! 風歌ちゃん、見えるの?」
「はい、くっきりと。でも、見えるようになったの、半年ほど前ですけど」
「ちょっと、ちょっと、凄いじゃないのそれ?! 魔女の家系なら、まだしも。異世界人の風歌ちゃんが、何で?」
「私にも、よく分からないんですけど。以前、知り合いの、占い師さんに見て貰ったら、私は『蒼空の女王シルフィード』の加護が、あるらしくて……」
『ノア・グランプリ』の時に、この力が目覚めて以来、ずっと、マナラインが見えている。お蔭で、風の流れが、より正確に分かるようになり、格段に、操縦技術が向上した。
「あははっ、やっぱ、ただ者じゃないわね、風歌ちゃんは。私が、目を付けた通りだったわ。何とも言えない、強い輝きを感じたのは、コレだったのかぁ」
ユキさんは、とても嬉しそうな表情で、私の背中をバシバシと叩く。
「なら、この物件が、ちょうどいいんじゃない? 私が知る限り、この町の中で、一番、風が気持ちいい場所だから」
「確かに、とても素敵ですけど。でも、ここ、大き過ぎませんか? 敷地も建物も、どう考えても、一人暮らし用じゃないですよね? それに、これだけ広いと、結構、お高いのでは――?」
『大きさの割に安い』と言っても。これほど、大きな敷地と建物なら、そうとうな家賃だと思う。中の家財道具も、かなり豪華だし。
「金額面は、任せておいて。私が、オーナーさんに、交渉してあげるから。『スカイ・プリンセス』が住むとなれば、大喜びで、値引きしてくれるわよ」
「あと、広さだって、将来、旦那さんや子供ができれば、ちょうどいい広さでしょ? 庭が広いから、子育てにも、いいと思うわよ」
ユキさんは、サラッと答える。
「えぇっ?! 旦那さんに、子供……?」
「何を驚いてるの? 風歌ちゃんだって、もう、十八なんだから。結婚してても、おかしくない年齢よ。誰か、いい人いないの?」
「そんなの、いませんって! 結婚なんて、考えたことも有りませんよ」
「ふーん。誰か、いい人、紹介しようか?」
「いえ、それは、結構です――」
そういえば、この世界は、十代で結婚するのが、割と普通だった。
「まぁ、その件はさておき、この物件の交渉と手続き、始めちゃっていい? 家との出会いは、一期一会なの。大事なのは、理屈じゃなくて、第一印象よ。人の出会いと、同じようなものね」
「なるほど、そういうものですか……。じゃあ、ここでお願いします」
「オッケー、任せておいて」
そういうと、ユキさんは、マギコンを取り出し、さっそく連絡を始めた。
今日、見た中では、第一印象が、一番よかったし。なんか、凄く落ち着く。でも、それと同時に、ちょっと、寂しさも感じていた。
やっぱり、今住んでいるアパートが、それだけ、大好きなんだと思う。考えてみれば、あの小さな屋根裏部屋も、住んで数日で、大好きになったし。
でも、もうそろそろ、次の一歩を踏み出さないと、いけない時期なのかもしれない。それが分かっていて、ノーラさんは、背中を押してくれたんだと思う。
ここからまた、頑張って行こう。一から、再スタートするつもりで。私のゴールは、まだ、はるか先にあるんだから。
日が傾きかけた海を見ながら、私は、静かに、決意を固めるのだった……。
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次回――
『人生初の新居祝いはサプライズで一杯だった』
人生には適度なサプライズ的サプリメントが必要なんだよ!
ちなみに、あの夜。私は、自分の部屋に戻ってから、ショックと悲しみのあまり、思い切り泣いた。あんなに泣いたのなんて、物凄く久しぶりだ。
この部屋は、滅茶苦茶、狭くて、天井も低いし。最低限の物しか置いておらず、とても殺風景。加えて、水道も来てないので、物凄く不便だ。でも、私がこの世界に来てから、ずっと過ごして来た場所で、たくさんの思い出が詰まっている。
最初は、ただ、寝泊まりするだけの、仮住まいだと思っていた。でも、いざ、出ていくとなると、想像以上に大切な、私の心の拠り所であったことに、いまさらながら気付いたのだ。
それと、もう一つ。このアパートには、ノーラさんがいる。厳しい態度をとりながらも、何だかんだで、いつも面倒を見てくれた。彼女と離れる不安も、かなり大きい。ノーラさんは、こっちの世界での、母親的な存在だったから……。
おそらく、そこらへんも見抜いたうえで、ここを出て行くように、言ったのだと思う。確かに、今まで私は、色々と頼り過ぎだった。ここにいる限り、困った時は、いつでもノーラさんが、助けてくれるのだから。
ただ、新居探しは、非常に難航していた。今まで、家探しなんて、一度もしたことがないし。いくら、この町に詳しいとはいえ、それは、観光名所や、お店などに限ってだ。一般家屋については、ほとんど、知識がない。
そもそも、この町は、物凄く広いし、六つの地区に分かれていた。どこに住むかによっても、かなり環境が変わって来る。どの地区にも、優れた特徴があって、甲乙つけがたい。
でも、色々考えた結果、会社から近くて、なおかつ馴染みのある〈東地区〉で、新居を探すことにした。
最初は、高層アパートの地域に、しようと思ったけど。あそこは、墜落事故を起こしたので、縁起がよくない。あと、上位階級の立場を考えると、アパート住まいという訳にもいかなかった。ただ〈東地区〉は、一個建てとアパートばかりだ。
散々悩んだあげく、この地区に詳しそうな、町内会長さんに、相談することにした。すると、町内会長さんは、喜んで協力してくれることに。それで、この町の物件に詳しい人を、私に紹介してくれたのだった。
私は今、エア・カートの助手席に乗り〈東地区〉の、上空を飛んでいた。運転席には、今日、案内をしてくれる、町内会長の孫の、ユキさんが乗っている。
驚くべきことに、彼女は、大手不動産会社の社員だったのだ。いつも、派手な格好で、写真ばかり撮ってたから、今時のゆるい若者かと思ってた。でも、ビシッとスーツを着た姿は、いかにも、仕事ができるキャリアウーマンに見える。
「今日は、天気がよくて助かったわ。まさに、新居探しに、ピッタリな日ね」
「そうですね。風も気持ちいいですし」
「単に、陽気の快適さだけじゃないのよ。物件は、天気によっても、見え方が違うからね。天気のいい日のほうが、よい部分も、悪い部分も、くっきり見えるから」
「なるほど、確かにそうですね」
いつもの軽いノリとは違い、今日のユキさんは、完全に、お仕事モードだ。流石は、住宅の専門家。家のことについては、滅茶苦茶、詳しい。
「風歌ちゃんは、何かこだわりや、好みはないの? 言ってくれれば、希望にピッタリの物件を、何でも紹介するわよ」
「ありがとうございます。でも、特には、ないんですよね。とりあえず、住めればOKなので。今のアパートも、そんな感じですし」
「しかし、バス・トイレ・キッチンもない屋根裏部屋に、よく三年以上も、住んでいられたわね。物凄く、不便だったでしょ?」
「最初は、ちょっと大変でしたけど。慣れれば、どうにでもなりますよ。私、こじんまりした部屋が、結構、好きですし」
いわゆる『住めば都』というやつだ。
「でも『スカイ・プリンセス』になったんだし。流石に、それはマズイでしょ? ちゃんとした家に、住まないと」
「ですよねぇ。ノーラさんにも、同じこと言われました」
「どうせなら、思いっ切り、ゴージャスな家にしてみたら? ただ〈東地区〉には、高級な物件は、あまりないのよね。やっぱり、新しい建物が多い〈南地区〉や〈西地区〉のほうが、いいんじゃない?」
「でも、私はやっぱり〈東地区〉がいいんです。一番、好きな地区ですから。あと、本音を言えば、普通のアパートのほうが、肩が凝らなくて、いいんですけど」
一人暮らしなので、小さなワンルームで十分だ。まぁ、今度は、水道が通っている部屋がいいけど。
「まったく、欲がないわねぇ、風歌ちゃんは。『大きくて豪華な家に住みたい』って、思ったりしないの? 収入だって、結構、あるんでしょ?」
「特には、ないですね。いくら昇進したとはいえ、私は、まだまだ未熟ですし。今は、仕事だけに、集中していたいんです。だから、寝泊まりできれば、本当に、どこでもいいです」
「なるほどねぇ。それで、おじいちゃんが、私を紹介した訳かぁ」
「え――?」
ユキさんは、意味ありげに微笑む。
「おじいちゃんはね、町内会長をやってるから、滅茶苦茶、顔が広いんだよね。それに、私が働いてる会社だって、おじいちゃんが作ったものだし」
「えぇっ?! 町内会長さんって、会社の社長さんだったんですか?」
「今は息子に任せて、会長だけどね。でも、色んな家主さんと知り合いだし、私以上に、物件のことは、詳しいのよ。この業界では、結構な、有名人だから」
「へぇぇー、そうだったんですか……」
町内会長さんって、大人しくて、地味な感じの人なので。そんなに凄い人だとは、思いもしなかった――。
「ちなみに、私は専務ね」
「え……えぇぇぇーー?!」
「あははっ、驚きすぎ。やっぱ、見えないよねぇー」
「あっ――す、すいません」
「いいって、いいって。よく言われるから」
ユキさんは、サバサバしながら、笑顔で答える。
「でも、そんな凄い方に、案内をさせてしまって、いいんですか?」
専務って、社長の次に偉い人だよね……?
「別に、凄くなんかないわよ。まぁ、普段は、経営の仕事をやってるけど。手が空いてる時は、普通に、お客様を案内してるのよ。あと、特別なお客様は、私が担当することになってるの」
「特別――?」
「偉い人とか、知人の場合ね。風歌ちゃんは、その両方だから。『スカイ・プリンセス』みたいな、超VIPの家探しを、そこらの社員に、任せられないでしょ?」
「いやいや、私は、ただの一般人ですから」
昇進はしたものの、私自身は、何一つ変わっていない。そもそも、今回、追い出されることになったのも、私の甘さゆえだ。まだまだ、人間的には、上位階級に、なり切れていないのだ。
「そういう、謙虚で庶民的なところが、風歌ちゃんの魅力よね。おそらく、上位階級の中で、最も一般人に、近い存在じゃないかな」
「でも、周りの人たちは、そうは見てないわよ。私たちにとっては、雲の上の存在なんだから。風歌ちゃん自身の評価と、周りの評価は、全く別物なの。そこら辺のところ、ちゃんと、自覚してる?」
確かに、ユキさんの言う通りだ。私がどう思おうと、周りは、特別な存在としてしか、見てくれない。
「そんな凄い人が、ボロ屋に住んでたら、おかしいでしょ? もちろん、どんな家にも、いいところは有るから。小さくても、古くても、素敵な家はあるけど。それよりも、みんなが思っている、イメージに合わせるのが、大事だと思うわよ」
「風歌ちゃんは、異世界出身だから、よく分からないかも知れないけど。シルフィードの上位階級って、神様みたいな存在なのよ」
ユキさんは、とても真面目な表情で語る。
「えぇっ?! そこまで凄いんですか……?」
「昔の魔女に近いわね。今だって四魔女は、沢山の人に、信仰されているでしょ? シルフィードの上位階級も、信仰対象の一つなのよ。この町の人たちは、特にね」
四魔女は、様々な神として信仰されており、世界中から、大勢の人がお参りに来ていた。ただ、彼女たちは、世界を救った英雄で、別格の存在だと思う。
でも、この町の人たちの態度を見ると、シルフィードの上位階級に対しても、同じように考えているのかもしれない。
上位階級には、社会的に、物凄く偉い立場にある人すら、とても丁寧な対応をしてくるし。単純に、称号だけではなく、神格化して見ているからだろう。
「だからね、そんな神様みたいな人が住む家は、本当に、真剣に選ぶ必要があるの。私に声が掛かったのも、それだけ、責任重大ってことなのよ」
「でも、任せておいて。私、こう見えても、社内一の『ハウス・コーディネーター』だから。家だけじゃなくて、内装やインテリアまで、全部アドバイスできるし。風歌ちゃんの立場に見合った、最高の家を紹介するから」
ユキさんは、自信ありげな笑顔を浮かべた。
「そういうことでしたら、是非、よろしくお願いします」
私みたいな、ど素人が選ぶより、プロにお任せしたほうが、よさそうだ。それに、立場に見合った家なんて、サッパリ分からないし。
ユキさんの案内で、まずは〈南地区〉のマンションを回って行った。どこも、大きな高級マンションで、部屋も滅茶苦茶、広かった。内装も物凄く豪華で、いかにも、セレブな感じが漂っている。
さらに、家具や生活に必要な魔法機器も、最新型が、一通りそろっていた。高級賃貸物件は、最初から、必要な家財道具が、全て揃っているのが普通らしい。
とても大きなベッドに、ふかふかのソファー。大型の保存庫に、オープンキッチン。ガラス張りで、外の景色が一望できる、大型のバスルーム。中には、カウンターバーや、ビリヤード台などが、置いてある部屋もあった。
大きなベランダからの景色も最高で、リクライニング・チェアーなんかも、置いてあったりする。まるで、リゾートホテルにでも、来たような気分で、とても、普通の住居には見えなかった。
そもそも、周囲の環境自体が、まるで〈北地区〉とは違い、お洒落な『セレブタウン』になっている。見に行ったどの部屋も、凄かったけど。やっぱり、私には肩が凝って、合わない気がした。
そのあとは〈西地区〉の、一戸建ての家を見て回った。どの家も、非常に大きく、内装や家具も、かなり豪華だ。ただ、どう見てもファミリー向けで、一人で住むには、大きすぎる。私には、今一つ、しっくり来なかった。
見た家は、どれも素敵だったけど。これじゃあ、住んでも、気が休まらない気がする。そもそも、私は、高級住宅街に住むような、柄じゃないし――。
結局、私の最初の希望通り、最後は〈東地区〉を見て回った。やはり〈東地区〉は、私の感性に合っているようで、ホッとする。生活感があって、庶民的な雰囲気が、いいんだよね。
数軒、回ったあと、ユキさんが『とっておきの物件を紹介するわ』と言って、海沿いに向かって行った。到着したのは、目の前に海が見える、見晴らしのよい、とても大きな庭のある家だった。
「築三十年以上だけど、リフォームしたばかりだし。中は、とても綺麗よ。あと、何と言っても、眺めのよさでは、これ以上の物件はないわ」
「確かに、とても美しい景色ですね。目の前が海だなんて、最高の立地です。それに、風が凄く気持ちいい」
目の前に広がる大きな海から、暖かな海風が、優しく吹いてきている。この風は、街中では、味わえない心地よさだ。
中に入ってみると、リフォームしたてで、壁紙や床が、新築同様に、綺麗になっていた。置かれている家具は、アンティーク物が多く、落ち着いた感じだった。今まで見て回って来た、モダンな内装の部屋とは違い、何か落ちつく。
一階のリビングは、庭の前が大きなガラス張りで、非常に眺めがいい。二階の寝室も、窓から海が一望でき、大きなバルコニーには、イスとテーブルが置いてあった。
しかも、寝室には、天幕付きの、とても大きなベッドが置いてある。まるで、貴族の部屋みたいだ。
「建物の新しさや、内装の豪華さで言えば、他に、もっといい物件があるんだけど。眺めのよさでは、ここが、この町では一番ね。それに、築年数が経ってるから、広さの割りには安いし」
「本当に、これ以上ないぐらい、最高の眺めですね」
私とユキさんは、二階のバルコニーに立って、しばらくの間、海を眺めていた。私の住んでいる、屋根裏部屋の小窓からの景色とは、大違いだ。
これほど、開放感のある素晴らしい景色は、向こうの世界でも、見たことがない。何より、風が気持ちよすぎる。漂ってくる潮の香と、心地よい波の音も最高だ。
「どうやら、気に入ってくれたみたいね」
「はい、とっても素敵です。一目、見た瞬間に、気に入りました」
「最初から『風歌ちゃんは、ここだろうなぁー』って、思ってたんだ」
「そうなんですか?」
「だって、風歌ちゃん、風が大好きでしょ?」
「そうですね。シルフィードになりたかったのも、ありますけど。『世界一の風が吹く町』と聞いたから、この町に来たので」
昔、私が読んだ雑誌に、そんなキャッチコピーが書いてあった。実際、一年中、風が止むことがないし。風も柔らかくて、とても気持ちがいい。それに、向こうの世界とは、明らかに、風質が違う。
「私は、見えないから、よく分からないけど。マナラインの影響で、町の中でも、風の強さが違うのよね。この場所は、マナラインが、特別に強いみたいよ」
「あぁ、そう言われてみれば。ここのマナラインは、色が濃いですね。しかも、何本も集まってるし」
家の周囲には、何本もの、濃い緑色のマナラインが通っていた。その内、数本は、海のほうから、伸びてきている。
「えぇっ?! 風歌ちゃん、見えるの?」
「はい、くっきりと。でも、見えるようになったの、半年ほど前ですけど」
「ちょっと、ちょっと、凄いじゃないのそれ?! 魔女の家系なら、まだしも。異世界人の風歌ちゃんが、何で?」
「私にも、よく分からないんですけど。以前、知り合いの、占い師さんに見て貰ったら、私は『蒼空の女王シルフィード』の加護が、あるらしくて……」
『ノア・グランプリ』の時に、この力が目覚めて以来、ずっと、マナラインが見えている。お蔭で、風の流れが、より正確に分かるようになり、格段に、操縦技術が向上した。
「あははっ、やっぱ、ただ者じゃないわね、風歌ちゃんは。私が、目を付けた通りだったわ。何とも言えない、強い輝きを感じたのは、コレだったのかぁ」
ユキさんは、とても嬉しそうな表情で、私の背中をバシバシと叩く。
「なら、この物件が、ちょうどいいんじゃない? 私が知る限り、この町の中で、一番、風が気持ちいい場所だから」
「確かに、とても素敵ですけど。でも、ここ、大き過ぎませんか? 敷地も建物も、どう考えても、一人暮らし用じゃないですよね? それに、これだけ広いと、結構、お高いのでは――?」
『大きさの割に安い』と言っても。これほど、大きな敷地と建物なら、そうとうな家賃だと思う。中の家財道具も、かなり豪華だし。
「金額面は、任せておいて。私が、オーナーさんに、交渉してあげるから。『スカイ・プリンセス』が住むとなれば、大喜びで、値引きしてくれるわよ」
「あと、広さだって、将来、旦那さんや子供ができれば、ちょうどいい広さでしょ? 庭が広いから、子育てにも、いいと思うわよ」
ユキさんは、サラッと答える。
「えぇっ?! 旦那さんに、子供……?」
「何を驚いてるの? 風歌ちゃんだって、もう、十八なんだから。結婚してても、おかしくない年齢よ。誰か、いい人いないの?」
「そんなの、いませんって! 結婚なんて、考えたことも有りませんよ」
「ふーん。誰か、いい人、紹介しようか?」
「いえ、それは、結構です――」
そういえば、この世界は、十代で結婚するのが、割と普通だった。
「まぁ、その件はさておき、この物件の交渉と手続き、始めちゃっていい? 家との出会いは、一期一会なの。大事なのは、理屈じゃなくて、第一印象よ。人の出会いと、同じようなものね」
「なるほど、そういうものですか……。じゃあ、ここでお願いします」
「オッケー、任せておいて」
そういうと、ユキさんは、マギコンを取り出し、さっそく連絡を始めた。
今日、見た中では、第一印象が、一番よかったし。なんか、凄く落ち着く。でも、それと同時に、ちょっと、寂しさも感じていた。
やっぱり、今住んでいるアパートが、それだけ、大好きなんだと思う。考えてみれば、あの小さな屋根裏部屋も、住んで数日で、大好きになったし。
でも、もうそろそろ、次の一歩を踏み出さないと、いけない時期なのかもしれない。それが分かっていて、ノーラさんは、背中を押してくれたんだと思う。
ここからまた、頑張って行こう。一から、再スタートするつもりで。私のゴールは、まだ、はるか先にあるんだから。
日が傾きかけた海を見ながら、私は、静かに、決意を固めるのだった……。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
次回――
『人生初の新居祝いはサプライズで一杯だった』
人生には適度なサプライズ的サプリメントが必要なんだよ!
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