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第7話 鏡の中の少女
しおりを挟む私は、ベッドにボスっと倒れこんだ
「………今さらだけど、本当にこの状況何…」
手を天井の方に伸ばしながら、呟く
「本を借りて、家で読んでみたらなんか目の前真っ暗になって、お城が燃えてて、男の子たちを助けて、変な三人組に囲まれているところをクラウスさん…に助けられて……やっぱり、これ、夢なんじゃ……」
ほっぺたをつまむと、やはり痛い
「…いつも本の中に入りたいと思ったりしてたけど、本当に入れるとは思ってなかった…。全然実感わかないや。…理解が追い付かない」
そう言うと、ゆっくりと目を閉じる
「きっと…明日起きたら、私の家に戻ってる……はず…」
「んっ…」
目を覚ますと、少し汚れた白い壁が目に入る
意識が覚醒してくると、状況を理解した
「…戻れなかったか」
ベッドから起き上がると、側に服が置いてあることに気づく
「……え。昨日なかったよね、これ。…私が寝てる間に置いてくれたのかな」
…ということは、寝顔見られたのか。着替えをおいてくれたのはありがたいけど、恥ずかしい。
「…まぁ、好意でやってくれたんだろうし、しょうがないよね」
そう呟くと、昨晩確認しておいた、バスルームに入り、顔を洗おうとして、大きな鏡にうつる自分の顔を見た
「えぇええっ!?」
そして、思わず叫んでしまった
鏡にうつっているのは、見慣れた肩までの茶色がかった黒髪、黒目ではなく、金髪碧眼の美しい少女だったのだ
彼女はまるで、この世界に来る前に私が創造した少女のようだった。というか、そのものだ
彼女は多分私がしているであろう、驚いた表情をして私を見つめている
「リナさん、どうしました!?」
「大きな声を出してしまって、すみません。何もないです!」
扉の向こう側からユリエルさんの心配そうな声が聞こえたが、私は慌てて大丈夫だと伝える
「ふぅ…。…それにしても、凄く可愛い…この子」
私は鏡の中の少女に触れようと、手をのばす
そうすると、当然のように鏡の中の少女も手をのばした
…もし、この鏡が目の前に立つ人に連動して動く絵じゃなければ、鏡の中の少女は私だということになってしまう
ぎゅっと目をつむってみたり、むぎゅっとほっぺをつまんだりする動作をするが、少女は自分と全く同じ動作をした
「……この娘、私…か」
単純に嬉しかった。自分が夢にえがいていたお伽噺に出てくるような美少女になれたのだから
顔を洗った後、腰までのびた長い髪を、何かで結ぼうと思ったが、何もないので諦め、とりあえず置いてあった服にどうにか着替えた
服は、昔の映画に出てくる庶民的な、緑色を基調とした可愛らしいものだった
そして脱いだ真っ白いワンピースは、畳んで、ベッドの上に置いた
その後すぐに鏡を見に行くと、可憐な少女には可愛らしい服がとても似合っていて、私は思わず頬を緩ませた
「あ、おはようございます。リナさん。よく眠れましたか。」
部屋を出ると、ユリエルさんが笑顔で挨拶をしてくれた
「おはようございます!はい、おかげさまでぐっすり眠れました。…そうだ、この服、ユリエルさんが部屋に置いてくださったのですか?」
「えぇ。王子があの服は目立つからと言って、朝、リナさんが寝ている間に買いに行ったんです。…そうそう、その服、貴女に似合いそうって王子が選んだんですよ」
「ユリエル、それ言うなって約束したよな?」
いつの間にか後ろに来ていたクラウスさんが、不機嫌そうにユリエルさんを諌める
「あれ?そうでしたっけ?」
「とぼけるな!」
クラウスさんの方を見ると、今日はフードをしていないようで、黒いサラサラした髪が私の目を釘付けにした
うわ、女子より美しい髪してる…あれ、クラウスさんって緋色の目をしてるんだ。
ふとそう思い、ユリエルさんの方を見ると、ユリエルの瞳は緑色だった
昨日は何故か気にならなかったけど、…二人とも現実じゃありえない色をしている
しかも、よく見ると、いやよく見なくても、彼らはとても美しい顔立ちをしていた
「やっぱり、本の中なんだなぁ…」
「あ?なんか言ったか?」
私の声が耳に入ったのか、今までユリエルさんと言い争いをしていたクラウスさんが私を怪訝そうに見た
「…服、ありがとうございますって言ったんです」
ニコッと誤魔化し笑いをすると、クラウスさんは「別に。」と決まり悪そうに呟いた
「あ!王子照れてますね!」
「照れてない!バカな事言うな!」
「はいはい」
この半日くらいで分かったこと、それはこの二人がとても仲がいいということだ
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