私と7人の龍たち

桜井 ミケ

文字の大きさ
8 / 14

第7話 鏡の中の少女

しおりを挟む
 
私は、ベッドにボスっと倒れこんだ
 

「………今さらだけど、本当にこの状況何…」


手を天井の方に伸ばしながら、呟く

 
「本を借りて、家で読んでみたらなんか目の前真っ暗になって、お城が燃えてて、男の子たちを助けて、変な三人組に囲まれているところをクラウスさん…に助けられて……やっぱり、これ、夢なんじゃ……」


ほっぺたをつまむと、やはり痛い


「…いつも本の中に入りたいと思ったりしてたけど、本当に入れるとは思ってなかった…。全然実感わかないや。…理解が追い付かない」


そう言うと、ゆっくりと目を閉じる


「きっと…明日起きたら、私の家に戻ってる……はず…」









「んっ…」


目を覚ますと、少し汚れた白い壁が目に入る


意識が覚醒してくると、状況を理解した


「…戻れなかったか」


ベッドから起き上がると、側に服が置いてあることに気づく


「……え。昨日なかったよね、これ。…私が寝てる間に置いてくれたのかな」


…ということは、寝顔見られたのか。着替えをおいてくれたのはありがたいけど、恥ずかしい。


「…まぁ、好意でやってくれたんだろうし、しょうがないよね」



そう呟くと、昨晩確認しておいた、バスルームに入り、顔を洗おうとして、大きな鏡にうつる自分の顔を見た



「えぇええっ!?」



そして、思わず叫んでしまった


鏡にうつっているのは、見慣れた肩までの茶色がかった黒髪、黒目ではなく、金髪碧眼の美しい少女だったのだ


彼女はまるで、この世界に来る前に私が創造した少女のようだった。というか、そのものだ


彼女は多分私がしているであろう、驚いた表情をして私を見つめている


「リナさん、どうしました!?」


「大きな声を出してしまって、すみません。何もないです!」


扉の向こう側からユリエルさんの心配そうな声が聞こえたが、私は慌てて大丈夫だと伝える


「ふぅ…。…それにしても、凄く可愛い…この子」



私は鏡の中の少女に触れようと、手をのばす


そうすると、当然のように鏡の中の少女も手をのばした


…もし、この鏡が目の前に立つ人に連動して動く絵じゃなければ、鏡の中の少女は私だということになってしまう


ぎゅっと目をつむってみたり、むぎゅっとほっぺをつまんだりする動作をするが、少女は自分と全く同じ動作をした


「……この娘、私…か」


単純に嬉しかった。自分が夢にえがいていたお伽噺に出てくるような美少女になれたのだから


顔を洗った後、腰までのびた長い髪を、何かで結ぼうと思ったが、何もないので諦め、とりあえず置いてあった服にどうにか着替えた

服は、昔の映画に出てくる庶民的な、緑色を基調とした可愛らしいものだった


そして脱いだ真っ白いワンピースは、畳んで、ベッドの上に置いた


その後すぐに鏡を見に行くと、可憐な少女には可愛らしい服がとても似合っていて、私は思わず頬を緩ませた




「あ、おはようございます。リナさん。よく眠れましたか。」


部屋を出ると、ユリエルさんが笑顔で挨拶をしてくれた


「おはようございます!はい、おかげさまでぐっすり眠れました。…そうだ、この服、ユリエルさんが部屋に置いてくださったのですか?」


「えぇ。王子があの服は目立つからと言って、朝、リナさんが寝ている間に買いに行ったんです。…そうそう、その服、貴女に似合いそうって王子が選んだんですよ」


「ユリエル、それ言うなって約束したよな?」


いつの間にか後ろに来ていたクラウスさんが、不機嫌そうにユリエルさんを諌める


「あれ?そうでしたっけ?」


「とぼけるな!」


クラウスさんの方を見ると、今日はフードをしていないようで、黒いサラサラした髪が私の目を釘付けにした


うわ、女子より美しい髪してる…あれ、クラウスさんって緋色の目をしてるんだ。


ふとそう思い、ユリエルさんの方を見ると、ユリエルの瞳は緑色だった


昨日は何故か気にならなかったけど、…二人とも現実じゃありえない色をしている


しかも、よく見ると、いやよく見なくても、彼らはとても美しい顔立ちをしていた


「やっぱり、本の中なんだなぁ…」


「あ?なんか言ったか?」

 
私の声が耳に入ったのか、今までユリエルさんと言い争いをしていたクラウスさんが私を怪訝そうに見た


「…服、ありがとうございますって言ったんです」


ニコッと誤魔化し笑いをすると、クラウスさんは「別に。」と決まり悪そうに呟いた


「あ!王子照れてますね!」


「照れてない!バカな事言うな!」


「はいはい」


この半日くらいで分かったこと、それはこの二人がとても仲がいいということだ


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

ちゃんと忠告をしましたよ?

柚木ゆず
ファンタジー
 ある日の、放課後のことでした。王立リザエンドワール学院に籍を置く私フィーナは、生徒会長を務められているジュリアルス侯爵令嬢アゼット様に呼び出されました。 「生徒会の仲間である貴方様に、婚約祝いをお渡したくてこうしておりますの」  アゼット様はそのように仰られていますが、そちらは嘘ですよね? 私は最愛の方に護っていただいているので、貴方様に悪意があると気付けるのですよ。  アゼット様。まだ間に合います。  今なら、引き返せますよ? ※現在体調の影響により、感想欄を一時的に閉じさせていただいております。

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

魅了の対価

しがついつか
ファンタジー
家庭事情により給金の高い職場を求めて転職したリンリーは、縁あってブラウンロード伯爵家の使用人になった。 彼女は伯爵家の第二子アッシュ・ブラウンロードの侍女を任された。 ブラウンロード伯爵家では、なぜか一家のみならず屋敷で働く使用人達のすべてがアッシュのことを嫌悪していた。 アッシュと顔を合わせてすぐにリンリーも「あ、私コイツ嫌いだわ」と感じたのだが、上級使用人を目指す彼女は私情を挟まずに職務に専念することにした。 淡々と世話をしてくれるリンリーに、アッシュは次第に心を開いていった。

どうぞ、おかまいなく

こだま。
恋愛
婚約者が他の女性と付き合っていたのを目撃してしまった。 婚約者が好きだった主人公の話。

処理中です...