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第8話 言い伝え
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「そういえば、今って何時くらいなんでしょうか?」
口論をしているユリエルさんにそっと聞くと、
「日も高いですし、多分お昼頃かと」
と返してくれた。
「え…私、そんなに寝てました?」
「まぁ、そうですね…」
「……ごめんなさい」
「いいのですよ、気になさらないで。…それよりも、今日、出発しようと思うのですが、大丈夫ですか?」
「出発?…どこに?」
「あ!昨日話していませんでしたね。失礼しました。…私たちは旅をしているのです」
「旅?」
私が聞きかえすと、ユリエルさんはニッコリと笑って、「えぇ、旅です」と繰り返した
「でも、どうして旅なんて…」
「俺たちの国を取り戻すためだ」
クラウスさんが話しに加わってきた
「…昨日、滅びたって…」
「あぁ、滅びた。だが、国のあった場所を今は、レッドスネイク軍が占拠している。俺たちはそこを取り戻すために旅をしている」
「レッドスネイク軍って?」
「レッドスネイク軍とは、十年ほど前から姿を表し始めた、蛇神信仰の極悪非道な奴らのことです。…彼らは、これまでに三つの大国と十何もの小国を滅ぼしました」
「どうして、そんなこと…?」
「遥か昔、この国には一国を飲み込めるほどの大きな蛇がいたそうです」
「え…」
…わぉ、ファンタジー
「…蛇を恐れた人々は、世界中から七人の、その当時勇者とされていた者を呼び集めて、蛇と闘わせようとしたらしいです。…ですが、勇者といえども人間。彼らはどうしたものかと悩みました。その時、天空から七色の光が差し、それは七人の勇者一人一人にそれぞれ特別な力を与え、見事、彼らは大蛇を封じ込めるのに成功したのです」
「倒せなかったんですか?」
「そうらしいですね。いいところまではいったけど、限界が来て、それぞれが持っていた一番大切な物に、その蛇を封じ込めたそうです。」
「はぁ…」
「まぁ、これは言い伝えですが。しかし…蛇神信者たちはこの言い伝えを信じて、蛇を蘇らせようとしているようです。…そのために、何国も滅ぼし、蛇が封じ込められた宝を集めているのです」
「…そうなんですか。それで、今は、その、母国を目指して冒険しているんですか?」
すごいファンタジー設定だなと苦笑を浮かべながら、聞くと、クラウスさんが冷めた目で、私を見つめた。
「は?たった二人であんな大軍に勝てるわけないだろ。俺たちは仲間を求めて、冒険している」
「仲間?」
「えぇ。先ほどの言い伝えの話に七人の勇者が登場したでしょう。王子は、七人の末裔で、その力を受け継いだものたちを探しているのです」
「へぇ…。それで、見つかったんですか?」
「いいえ。それが…。まだ私たちも旅を始めたばかりでして。」
「…はぁ。…でも、何故、その言い伝えってのを信じる気になったんですか?」
「それは……」
ユリエルさんは、クラウスさんをチラリと見た
「…俺たちに、その力が覚醒したからだ」
「え?」
「だから、旅にでることを決意した。」
「王子は説明が足りませんよ!私たちが出発したのは一ヶ月ほど前なのですが、そのさらに一ヶ月前に覚醒したのです。…言い伝えでは、覚醒すると、身体のどこかに竜のようなアザが現れると言います。そして、アザが現れた通しが近くにいると、アザが疼きます」
「…中二病…ぽい」
「え…?」
「いえ、なんでもないです」
「それで、そのアザが私たちにも現れたわけです。…まぁ、嘘のような話かと思われると思いますが、この世界には魔法の国や、妖精のいる国や、動物と共存する国もあると言われているので、こんな言い伝えも信じられるわけです」
「そんな国がっ…!」
「私は行ったことありませんが、噂ではよく聞きます」
「そうなんですか……旅では、そういう国にも寄るんですか?」
私はワクワク興奮する気持ちをなんとか押さえて質問した
「はい。必要があれば…ですけどね」
「わぁ、楽しみです!!」
「おい、待て。誰がお前を連れていくと言った」
クラウスさんは私を睨み付けた
「え、ケチ…」
「はぁ?」
「そうですよ!王子のケチー!」
「お前ら、ケンカ売ってんのか?」
「はい」
「あ?」
また二人の言い争いが始まってしまった
「あのっ!本当に私、何でもするし、役にたてるように頑張るので、一人にしないでください!養ってください!」
「はぁ?養えってなんだよ!」
「私、無一文なんです。…本当に何でもしますから…」
私が必死に訴えかけるとクラウスさんは「うっ」と言い、後ろに後ずさった
「…分かった。だから、そんな捨てられた子犬みたいな顔するな!」
「本当ですか!」
「あぁ。…俺たちのアザの話まで、このバカがしちまったしな」
「それまさか、私のことですか?」
「お前意外に誰がいんだよ」
「言っておきますけど、私、あなたより勉強できますよ!物覚えもいいし、それに……」
「あー、もう!……そういうことじゃねぇんだよ!」
とりあえず、私はこの二人に養ってもらえることになった。一先ず安心できる。
口論をしているユリエルさんにそっと聞くと、
「日も高いですし、多分お昼頃かと」
と返してくれた。
「え…私、そんなに寝てました?」
「まぁ、そうですね…」
「……ごめんなさい」
「いいのですよ、気になさらないで。…それよりも、今日、出発しようと思うのですが、大丈夫ですか?」
「出発?…どこに?」
「あ!昨日話していませんでしたね。失礼しました。…私たちは旅をしているのです」
「旅?」
私が聞きかえすと、ユリエルさんはニッコリと笑って、「えぇ、旅です」と繰り返した
「でも、どうして旅なんて…」
「俺たちの国を取り戻すためだ」
クラウスさんが話しに加わってきた
「…昨日、滅びたって…」
「あぁ、滅びた。だが、国のあった場所を今は、レッドスネイク軍が占拠している。俺たちはそこを取り戻すために旅をしている」
「レッドスネイク軍って?」
「レッドスネイク軍とは、十年ほど前から姿を表し始めた、蛇神信仰の極悪非道な奴らのことです。…彼らは、これまでに三つの大国と十何もの小国を滅ぼしました」
「どうして、そんなこと…?」
「遥か昔、この国には一国を飲み込めるほどの大きな蛇がいたそうです」
「え…」
…わぉ、ファンタジー
「…蛇を恐れた人々は、世界中から七人の、その当時勇者とされていた者を呼び集めて、蛇と闘わせようとしたらしいです。…ですが、勇者といえども人間。彼らはどうしたものかと悩みました。その時、天空から七色の光が差し、それは七人の勇者一人一人にそれぞれ特別な力を与え、見事、彼らは大蛇を封じ込めるのに成功したのです」
「倒せなかったんですか?」
「そうらしいですね。いいところまではいったけど、限界が来て、それぞれが持っていた一番大切な物に、その蛇を封じ込めたそうです。」
「はぁ…」
「まぁ、これは言い伝えですが。しかし…蛇神信者たちはこの言い伝えを信じて、蛇を蘇らせようとしているようです。…そのために、何国も滅ぼし、蛇が封じ込められた宝を集めているのです」
「…そうなんですか。それで、今は、その、母国を目指して冒険しているんですか?」
すごいファンタジー設定だなと苦笑を浮かべながら、聞くと、クラウスさんが冷めた目で、私を見つめた。
「は?たった二人であんな大軍に勝てるわけないだろ。俺たちは仲間を求めて、冒険している」
「仲間?」
「えぇ。先ほどの言い伝えの話に七人の勇者が登場したでしょう。王子は、七人の末裔で、その力を受け継いだものたちを探しているのです」
「へぇ…。それで、見つかったんですか?」
「いいえ。それが…。まだ私たちも旅を始めたばかりでして。」
「…はぁ。…でも、何故、その言い伝えってのを信じる気になったんですか?」
「それは……」
ユリエルさんは、クラウスさんをチラリと見た
「…俺たちに、その力が覚醒したからだ」
「え?」
「だから、旅にでることを決意した。」
「王子は説明が足りませんよ!私たちが出発したのは一ヶ月ほど前なのですが、そのさらに一ヶ月前に覚醒したのです。…言い伝えでは、覚醒すると、身体のどこかに竜のようなアザが現れると言います。そして、アザが現れた通しが近くにいると、アザが疼きます」
「…中二病…ぽい」
「え…?」
「いえ、なんでもないです」
「それで、そのアザが私たちにも現れたわけです。…まぁ、嘘のような話かと思われると思いますが、この世界には魔法の国や、妖精のいる国や、動物と共存する国もあると言われているので、こんな言い伝えも信じられるわけです」
「そんな国がっ…!」
「私は行ったことありませんが、噂ではよく聞きます」
「そうなんですか……旅では、そういう国にも寄るんですか?」
私はワクワク興奮する気持ちをなんとか押さえて質問した
「はい。必要があれば…ですけどね」
「わぁ、楽しみです!!」
「おい、待て。誰がお前を連れていくと言った」
クラウスさんは私を睨み付けた
「え、ケチ…」
「はぁ?」
「そうですよ!王子のケチー!」
「お前ら、ケンカ売ってんのか?」
「はい」
「あ?」
また二人の言い争いが始まってしまった
「あのっ!本当に私、何でもするし、役にたてるように頑張るので、一人にしないでください!養ってください!」
「はぁ?養えってなんだよ!」
「私、無一文なんです。…本当に何でもしますから…」
私が必死に訴えかけるとクラウスさんは「うっ」と言い、後ろに後ずさった
「…分かった。だから、そんな捨てられた子犬みたいな顔するな!」
「本当ですか!」
「あぁ。…俺たちのアザの話まで、このバカがしちまったしな」
「それまさか、私のことですか?」
「お前意外に誰がいんだよ」
「言っておきますけど、私、あなたより勉強できますよ!物覚えもいいし、それに……」
「あー、もう!……そういうことじゃねぇんだよ!」
とりあえず、私はこの二人に養ってもらえることになった。一先ず安心できる。
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