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第14話 地下牢の怪物
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地下牢に入り、サイがいなくなったことを確認してから牢屋の外を見渡す。アーデラというアゼル姫のペットは多分、フェリーチェ伯爵が言っていた『地下牢の怪物』なのだろう
「お前…なんで、ここに?」
考え事をしていると、ふいに後ろから聞き慣れた声が聞こえ、振り返る
「…あれ?クラウスさん!良かったぁ、無事だったんですね!」
「いや、無事だったんですね!じゃないだろ!…何故ここに来た」
「…二人ともこんな時間になっても帰ってこないから私も…」
「…ふざけるな!俺たちはともかく、お前は弱いんだからちゃんと自分の力量をわきまえた行動をしろ!」
「弱い…そうですね…私も結局捕まってしまいましたし…すみません」
確かに私に力はない。だけど、もっと、考えてたら違ういい方法を思い付いたかもしれない
落ち込む私を見て、クラウスさんはハッとした顔になった
「…いい過ぎた」
「いえ。あ!あの、ユリウスさんは?」
「ユリウスは違う牢屋に入っているらしい。だが、この近くじゃない。きっと他の部屋の牢屋だ」
「そうですか…あ、クラウスさん」
「……クラウスでいい。」
「え?」
「敬語も煩わしいから止めろ」
「どうしたんですか?いきなり…」
「前から思ってた。 お前とは王子として出会ったわけじゃない。だから、普通に一人の人として扱っていい」
「え…でも…」
「分かったな?」
「…はい」
「敬語使うな」
「うん」
「よし!」
クラウスはそう言うとなんだか嬉しそうに笑った
「クラウスさん、いや、クラウス」
「なんだ?」
「私、ここに来る前アゼル姫様とお話ししてきたの」
「それで?」
「…この牢屋から出て、この地下のどこかにいる姫様のペットを倒せば、私を信じてくれるって…」
「は?信じる?」
「あ、そうなの。私、約束をしたんです。フェリーチェ伯爵を旅に連れていくけど、全てが、終わったら姫様をお救いするって…」
「それで、それを信じさせるためにここを出てペットを倒さなきゃいけないんだな」
「そうです」
「…分かった」
「でもまず、この牢屋から出られないことが問題ですよね。どうやって出よう?」
先ほどから牢屋の檻を握ったり叩いてみたりしていたクラウスは私を見て言った
「このくらいならいけるな。…下がってろ」
「え?いけるって何が?」
私がそう言うと、クラウスは檻の方に手をかざして手刀の要領で空中を斬る
「よし」
一瞬の間の後、ものすごく強い風が吹き、檻がスパッと切れた
「……え?」
唖然としている私を見て、クラウスは説明してくれる
「これが俺の力。言い伝えの」
言い伝えって…あの勇者の力を受け継いだってやつのことだよね?…そっか。確かに普通の人間じゃこんなこと絶対に不可能だ。
「そうなんですか…」
「ここから出るぞ」
「あ、うん」
牢屋から出て、薄暗い地下を歩いていると
「ぐるるるる…」
どこからか何かの鳴き声らしき音が聞こえてきた
「……どこにいるんでしょう」
「敬語になってるぞ」
「どこにいるんだろう」
「さぁな。音的にさほど遠くはなさそうだった」
「うん…」
「怖いなら隠れててもいいぞ。俺がやるから」
「ううん、私も何か手伝えることがあったらしたい」
「そうか」
話している間にも、不気味な鳴き声は近づいてくる
「がぅぅううう!!」
ついに、鳴き声の正体を見れたのは、敵が私たちを襲ってきた時だった
「わっ!…大きい…」
現れたのは、2階建ての家くらいはあるだろう大きさの頭はライオン、体はウサギという不格好の変な生き物だった
「…これか?ペットって」
「…他にいませんし…多分」
ライオンウサギの攻撃を避け、会話を交わす
「アーデラ?」
「ワンッ!」
一応名前を呼んでみると、小型犬のような鳴き声で返事をした
「え…こいつ今返事…」
「…クラウスさ…クラウス、姫様はアーデラを殺さず倒せと言っていました」
「あぁ」
「私が囮になるので、頑張って倒してください」
「バカ言うな。そんな危険なことさせられるかよ」
「じゃあ、危なくなったら助けてください」
「は?おい、待て!」
私はクラウスの返事を聞かずに、すくむ足になんとか力を入れて隠れていた壁の後ろから飛び出した
「アーデラ!」
一つ、確認したいことがあるのだ。お願い!《私の言うことを聞いて!!》
「ワンッ!」
「……おすわり!!」
「ワンッ!」
もし、鳴き声の通り、犬なら…呼んだだけで返事をするくらいだ。きっとお座りくらい…いや。さすがにしないか…
諦め、ライオンウサギの方を見ると、きちんとお座りの態勢をしていた
「え…。いいの?」
そして、じーと私を見てくる。これは経験上、撫でろって言ってるんだと思うけど
そーと腕を伸ばし、頭をさげているライオンウサギのおでこを撫でてみる
「なんだ…うちの犬とそうかわらないんだ…。君がこのまま、寝てくれたら楽なんだけどなぁ…」
「がるるる…」
すると、ライオンウサギは何故か寝始めた
「…」
「…」
「クラウス…」
「お前、何をしたんだ?」
「撫でただけだけど…」
「…」
アゼル姫様のミッションをこんなに簡単にクリアしてしまって良かったのだろうか
そんなことを思っていると、後ろからクラウスではない声が聞こえた
「リナさん、すごいですね。こんな獰猛な動物を一瞬にして手懐けてしまうなんて」
「ユリウスさん!」
「来るの遅い!」
「すみません、王子。すぐに来ようと思っていたのですが、予想より私のところにいた〈ペット〉が可愛いらしくて…」
「お前のところには、変な格好をしたメイドが見張ってただけだろ?」
「…まぁ、そうですね。では行きましょうか」
「どこへ?」
「あの、ライオンウサギが寝ている後ろにある扉、出口ですよね?」
「え?」
「他に見当たりませんし…とりあえず出てみましょう」
「はい」
扉を開けると、長い階段が見えた。
「よし、行くぞ」
私たちはクラウスの掛け声で階段を登り始めた
「お前…なんで、ここに?」
考え事をしていると、ふいに後ろから聞き慣れた声が聞こえ、振り返る
「…あれ?クラウスさん!良かったぁ、無事だったんですね!」
「いや、無事だったんですね!じゃないだろ!…何故ここに来た」
「…二人ともこんな時間になっても帰ってこないから私も…」
「…ふざけるな!俺たちはともかく、お前は弱いんだからちゃんと自分の力量をわきまえた行動をしろ!」
「弱い…そうですね…私も結局捕まってしまいましたし…すみません」
確かに私に力はない。だけど、もっと、考えてたら違ういい方法を思い付いたかもしれない
落ち込む私を見て、クラウスさんはハッとした顔になった
「…いい過ぎた」
「いえ。あ!あの、ユリウスさんは?」
「ユリウスは違う牢屋に入っているらしい。だが、この近くじゃない。きっと他の部屋の牢屋だ」
「そうですか…あ、クラウスさん」
「……クラウスでいい。」
「え?」
「敬語も煩わしいから止めろ」
「どうしたんですか?いきなり…」
「前から思ってた。 お前とは王子として出会ったわけじゃない。だから、普通に一人の人として扱っていい」
「え…でも…」
「分かったな?」
「…はい」
「敬語使うな」
「うん」
「よし!」
クラウスはそう言うとなんだか嬉しそうに笑った
「クラウスさん、いや、クラウス」
「なんだ?」
「私、ここに来る前アゼル姫様とお話ししてきたの」
「それで?」
「…この牢屋から出て、この地下のどこかにいる姫様のペットを倒せば、私を信じてくれるって…」
「は?信じる?」
「あ、そうなの。私、約束をしたんです。フェリーチェ伯爵を旅に連れていくけど、全てが、終わったら姫様をお救いするって…」
「それで、それを信じさせるためにここを出てペットを倒さなきゃいけないんだな」
「そうです」
「…分かった」
「でもまず、この牢屋から出られないことが問題ですよね。どうやって出よう?」
先ほどから牢屋の檻を握ったり叩いてみたりしていたクラウスは私を見て言った
「このくらいならいけるな。…下がってろ」
「え?いけるって何が?」
私がそう言うと、クラウスは檻の方に手をかざして手刀の要領で空中を斬る
「よし」
一瞬の間の後、ものすごく強い風が吹き、檻がスパッと切れた
「……え?」
唖然としている私を見て、クラウスは説明してくれる
「これが俺の力。言い伝えの」
言い伝えって…あの勇者の力を受け継いだってやつのことだよね?…そっか。確かに普通の人間じゃこんなこと絶対に不可能だ。
「そうなんですか…」
「ここから出るぞ」
「あ、うん」
牢屋から出て、薄暗い地下を歩いていると
「ぐるるるる…」
どこからか何かの鳴き声らしき音が聞こえてきた
「……どこにいるんでしょう」
「敬語になってるぞ」
「どこにいるんだろう」
「さぁな。音的にさほど遠くはなさそうだった」
「うん…」
「怖いなら隠れててもいいぞ。俺がやるから」
「ううん、私も何か手伝えることがあったらしたい」
「そうか」
話している間にも、不気味な鳴き声は近づいてくる
「がぅぅううう!!」
ついに、鳴き声の正体を見れたのは、敵が私たちを襲ってきた時だった
「わっ!…大きい…」
現れたのは、2階建ての家くらいはあるだろう大きさの頭はライオン、体はウサギという不格好の変な生き物だった
「…これか?ペットって」
「…他にいませんし…多分」
ライオンウサギの攻撃を避け、会話を交わす
「アーデラ?」
「ワンッ!」
一応名前を呼んでみると、小型犬のような鳴き声で返事をした
「え…こいつ今返事…」
「…クラウスさ…クラウス、姫様はアーデラを殺さず倒せと言っていました」
「あぁ」
「私が囮になるので、頑張って倒してください」
「バカ言うな。そんな危険なことさせられるかよ」
「じゃあ、危なくなったら助けてください」
「は?おい、待て!」
私はクラウスの返事を聞かずに、すくむ足になんとか力を入れて隠れていた壁の後ろから飛び出した
「アーデラ!」
一つ、確認したいことがあるのだ。お願い!《私の言うことを聞いて!!》
「ワンッ!」
「……おすわり!!」
「ワンッ!」
もし、鳴き声の通り、犬なら…呼んだだけで返事をするくらいだ。きっとお座りくらい…いや。さすがにしないか…
諦め、ライオンウサギの方を見ると、きちんとお座りの態勢をしていた
「え…。いいの?」
そして、じーと私を見てくる。これは経験上、撫でろって言ってるんだと思うけど
そーと腕を伸ばし、頭をさげているライオンウサギのおでこを撫でてみる
「なんだ…うちの犬とそうかわらないんだ…。君がこのまま、寝てくれたら楽なんだけどなぁ…」
「がるるる…」
すると、ライオンウサギは何故か寝始めた
「…」
「…」
「クラウス…」
「お前、何をしたんだ?」
「撫でただけだけど…」
「…」
アゼル姫様のミッションをこんなに簡単にクリアしてしまって良かったのだろうか
そんなことを思っていると、後ろからクラウスではない声が聞こえた
「リナさん、すごいですね。こんな獰猛な動物を一瞬にして手懐けてしまうなんて」
「ユリウスさん!」
「来るの遅い!」
「すみません、王子。すぐに来ようと思っていたのですが、予想より私のところにいた〈ペット〉が可愛いらしくて…」
「お前のところには、変な格好をしたメイドが見張ってただけだろ?」
「…まぁ、そうですね。では行きましょうか」
「どこへ?」
「あの、ライオンウサギが寝ている後ろにある扉、出口ですよね?」
「え?」
「他に見当たりませんし…とりあえず出てみましょう」
「はい」
扉を開けると、長い階段が見えた。
「よし、行くぞ」
私たちはクラウスの掛け声で階段を登り始めた
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