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第12話 アゼル姫
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日がすっかりかれてしまっても、クラウスさんとユリウスさんは戻って来なかった
「…やっぱり、何かあったのかな…。」
フェリーチェ伯爵が貸してくれた部屋から、玄関の方を眺めてため息をつく
「いけない。ため息をつくと幸せが逃げていくんだっけ…。…それより、クラウスさんはまぁ、ありえるけど、ユリウスさんまで捕まってしまったのかな」
そう思うと不安と心配で押し潰されそうになる
「……あー、もう!ユリウスさんが捕まっちゃうくらいだから、私が行ったところで何も変わらないと思うけど…!…やってみなきゃ分からないよね。 よし行こう!」
「うわ、びっくりした!」
意を決して部屋の扉を開くと、何故か目的の人が目の前に立っていた
「え…フェリーチェ伯爵?何故、ここに?」
「えっーと、様子を見に、かな?」
「そうですか…。ちょうど良かったです!あの、私も、お姫様のところに行ってきます!」
「え……いや、ダメだよ!僕は君の事を頼むって任されているんだ」
フェリーチェ伯爵は私の髪を一房そっと手にとって、「それに、こんなに美しいレディを危険な目に合わせたくない」と耳元で囁く
「いえ、私は行きます。…今までお世話になりました!感謝しています!」
フェリーチェ伯爵の手をゆっくりと避けて、お辞儀をし、私は玄関に向かおうと彼に背を向けた。
「待って!…どうして君は自ら危険と分かっているところに飛び込もうとするんだ!」
バシッと手を掴まれて、そう聞かれる
「……あの二人、私の恩人なんです。危ない所を助けてもらって…。だから、私、恩返ししたいんです!」
「…でも、きっと、もう」
「私は二人を信じています。 だから、大丈夫です」
「…やっぱり行かせられない。危険すぎる」
「…フェリーチェ伯爵…。だったら、貴方も一緒に行きましょう! 」
「…駄目だよ。僕は…」
「…フェリーチェ伯爵は《駄目》と、今日何度言いました?…やってみなきゃ、何も変わらないんですよ!」
「……!」
「…もし、この国から出たいと思うなら、もう一度お姫様と話し合ってみてください!…少なくとも、この国は私たちの考えを知っていながら拒絶せず、受け入れてくれたんですよ?……失礼します」
フェリーチェ伯爵の手の力が抜けたのを見計らって、私はまた走りだした
お城の前にはやはり警備隊などはいない
勝手に城内に入り、誰か人がいないか探していると、執事の格好をした羊を見つけた
「あの、すみません…」
「はい、何でしょう」
「お姫様に会いたいのですが…」
「アゼル姫様は今、手が離せない用事があるのです」
「私も急ぎの用事があります。…どうにか合う方法はありませんか?」
「…そうですね。 では、直接アゼル姫様の所に行くしかないでしょう」
「…お部屋はどこに?」
「私が案内します」
「え…?いいんですか?」
「えぇ、もちろんです。 お客様のお相手をするのもひつじ…いえ、執事の役割ですから」
「はぁ…」
羊の執事はにこやかにそう言うと、先立ってお姫様の部屋の道案内を始めた
……本当に、大丈夫なのかな、この国。こんなにすぐに知らない人をお姫様のところに案内したりして。
長い廊下を進み、何度も階段を登り、やっとお姫様の部屋の前に辿り着いた
「では、わたくしはこれで」
「あ、ありがとうございました!」
執事が廊下の角を曲がり、見えなくなってから、お姫様の部屋の扉にノックをした
「……どうぞ」
中から可愛いらしい少女の声が聞こえ、その声を合図に扉を開けた
「あら、今度は女の子なのですね」
ピンク色の長い髪の毛を高いツインテールで結い、水色の美しいドレスを来たその娘は、私をじっと見つめ、呟いた
「……姫様、ここに男の人が二人来ませんでした?」
さっそくそう切り出すと、お姫様はニコッと笑い、「えぇ、来ましたわよ」と答える
「その二人は……どこに?」
「別々の地下牢に入っていますわ」
「……なんでそんなこと…」
「仕方がないでしょう。 私のフェリーチェを連れて行こうとするんだもの」
「…フェリーチェ伯爵は私たちの旅に必要なんです!」
「私にだって、フェリーチェは必要よ!」
アゼル姫はバンッと机を叩き、立ち上がって私の方に近づいてくる
「どうして…ですか。姫様には、たくさんの人が周りにいるでしょう?」
「えぇ。 確かにそうね。 でも、マトモな人なんてフェリーチェ以外一人もいないわ!…この国の人たちはみんなおかしいのよ!」
「え…?」
「…国民は一人もこの国がおかしいことに文句を言わず、ただのうのうと平和に暮らしている…。変よね。…貴女だって思ったでしょう?…この国、なんか変だって!」
「え…いや…」
「…この国の王は皆、死ぬまで国の外に出られないのよ!…こんなおかしな場所で、フェリーチェまでいなくなったら、気が狂ってしまうわ!」
「…」
「…貴女は外の国からやって来たのでしょう?…そうね、…貴女がここに残って一生私の話し相手になってくれるのなら、フェリーチェを手放してもいいわ」
「…え」
「ついでに、貴女のお仲間も助けてあげる」
「………姫様」
「…私はアゼルよ」
「アゼル姫様、私は彼らに救われた身で、恩があります。だから、彼らの役に立ちたい。でも、まだきっと今じゃない。これからも旅にお供して、色々手助けしたいのです」
「…」
「…だから、今ここに留まるわけにはいきません!…約束します!全ての役割を果たした後、必ずここに戻ってきて、姫様をお救いします!なので、どうか…」
「…そ……ない」
「え?」
自分の気持ちを全てさらけ出すと、姫様はうつむき、何か呟いた
「そんなの嘘よ!出来るわけない!…今まで何人がそんなことを言い、私から逃げたと思っているの?…私が信じる度に、人は裏切るのよ!」
……姫様はかわいそうな人だ。私と同じくらいの年齢に見えるけど、きっとたくさん辛いことがあったんだ。
「姫様、私は約束を守ります。 」
「そんなの信じられないわ。…貴方も牢屋に行ってもらう」
「……どうしたら、信じてくださるんですか?」
そう聞くと姫様は一瞬迷った顔をしたが、また真顔に戻り、冷たく告げた
「そうね…。では、これから地下に貴女を連れていかせるけれど、そこには私のペットのアーデラがいます。牢屋から出て、彼女を倒せたら信じてあげましょう。ただし、彼女を殺したら、貴女も処罰します」
「えっ…」
アゼル姫を見つめると、少し悲しそうな顔をしたように見えたが、すぐに戻り、私はサイのような動物に連れられ、牢屋に向かった
「…やっぱり、何かあったのかな…。」
フェリーチェ伯爵が貸してくれた部屋から、玄関の方を眺めてため息をつく
「いけない。ため息をつくと幸せが逃げていくんだっけ…。…それより、クラウスさんはまぁ、ありえるけど、ユリウスさんまで捕まってしまったのかな」
そう思うと不安と心配で押し潰されそうになる
「……あー、もう!ユリウスさんが捕まっちゃうくらいだから、私が行ったところで何も変わらないと思うけど…!…やってみなきゃ分からないよね。 よし行こう!」
「うわ、びっくりした!」
意を決して部屋の扉を開くと、何故か目的の人が目の前に立っていた
「え…フェリーチェ伯爵?何故、ここに?」
「えっーと、様子を見に、かな?」
「そうですか…。ちょうど良かったです!あの、私も、お姫様のところに行ってきます!」
「え……いや、ダメだよ!僕は君の事を頼むって任されているんだ」
フェリーチェ伯爵は私の髪を一房そっと手にとって、「それに、こんなに美しいレディを危険な目に合わせたくない」と耳元で囁く
「いえ、私は行きます。…今までお世話になりました!感謝しています!」
フェリーチェ伯爵の手をゆっくりと避けて、お辞儀をし、私は玄関に向かおうと彼に背を向けた。
「待って!…どうして君は自ら危険と分かっているところに飛び込もうとするんだ!」
バシッと手を掴まれて、そう聞かれる
「……あの二人、私の恩人なんです。危ない所を助けてもらって…。だから、私、恩返ししたいんです!」
「…でも、きっと、もう」
「私は二人を信じています。 だから、大丈夫です」
「…やっぱり行かせられない。危険すぎる」
「…フェリーチェ伯爵…。だったら、貴方も一緒に行きましょう! 」
「…駄目だよ。僕は…」
「…フェリーチェ伯爵は《駄目》と、今日何度言いました?…やってみなきゃ、何も変わらないんですよ!」
「……!」
「…もし、この国から出たいと思うなら、もう一度お姫様と話し合ってみてください!…少なくとも、この国は私たちの考えを知っていながら拒絶せず、受け入れてくれたんですよ?……失礼します」
フェリーチェ伯爵の手の力が抜けたのを見計らって、私はまた走りだした
お城の前にはやはり警備隊などはいない
勝手に城内に入り、誰か人がいないか探していると、執事の格好をした羊を見つけた
「あの、すみません…」
「はい、何でしょう」
「お姫様に会いたいのですが…」
「アゼル姫様は今、手が離せない用事があるのです」
「私も急ぎの用事があります。…どうにか合う方法はありませんか?」
「…そうですね。 では、直接アゼル姫様の所に行くしかないでしょう」
「…お部屋はどこに?」
「私が案内します」
「え…?いいんですか?」
「えぇ、もちろんです。 お客様のお相手をするのもひつじ…いえ、執事の役割ですから」
「はぁ…」
羊の執事はにこやかにそう言うと、先立ってお姫様の部屋の道案内を始めた
……本当に、大丈夫なのかな、この国。こんなにすぐに知らない人をお姫様のところに案内したりして。
長い廊下を進み、何度も階段を登り、やっとお姫様の部屋の前に辿り着いた
「では、わたくしはこれで」
「あ、ありがとうございました!」
執事が廊下の角を曲がり、見えなくなってから、お姫様の部屋の扉にノックをした
「……どうぞ」
中から可愛いらしい少女の声が聞こえ、その声を合図に扉を開けた
「あら、今度は女の子なのですね」
ピンク色の長い髪の毛を高いツインテールで結い、水色の美しいドレスを来たその娘は、私をじっと見つめ、呟いた
「……姫様、ここに男の人が二人来ませんでした?」
さっそくそう切り出すと、お姫様はニコッと笑い、「えぇ、来ましたわよ」と答える
「その二人は……どこに?」
「別々の地下牢に入っていますわ」
「……なんでそんなこと…」
「仕方がないでしょう。 私のフェリーチェを連れて行こうとするんだもの」
「…フェリーチェ伯爵は私たちの旅に必要なんです!」
「私にだって、フェリーチェは必要よ!」
アゼル姫はバンッと机を叩き、立ち上がって私の方に近づいてくる
「どうして…ですか。姫様には、たくさんの人が周りにいるでしょう?」
「えぇ。 確かにそうね。 でも、マトモな人なんてフェリーチェ以外一人もいないわ!…この国の人たちはみんなおかしいのよ!」
「え…?」
「…国民は一人もこの国がおかしいことに文句を言わず、ただのうのうと平和に暮らしている…。変よね。…貴女だって思ったでしょう?…この国、なんか変だって!」
「え…いや…」
「…この国の王は皆、死ぬまで国の外に出られないのよ!…こんなおかしな場所で、フェリーチェまでいなくなったら、気が狂ってしまうわ!」
「…」
「…貴女は外の国からやって来たのでしょう?…そうね、…貴女がここに残って一生私の話し相手になってくれるのなら、フェリーチェを手放してもいいわ」
「…え」
「ついでに、貴女のお仲間も助けてあげる」
「………姫様」
「…私はアゼルよ」
「アゼル姫様、私は彼らに救われた身で、恩があります。だから、彼らの役に立ちたい。でも、まだきっと今じゃない。これからも旅にお供して、色々手助けしたいのです」
「…」
「…だから、今ここに留まるわけにはいきません!…約束します!全ての役割を果たした後、必ずここに戻ってきて、姫様をお救いします!なので、どうか…」
「…そ……ない」
「え?」
自分の気持ちを全てさらけ出すと、姫様はうつむき、何か呟いた
「そんなの嘘よ!出来るわけない!…今まで何人がそんなことを言い、私から逃げたと思っているの?…私が信じる度に、人は裏切るのよ!」
……姫様はかわいそうな人だ。私と同じくらいの年齢に見えるけど、きっとたくさん辛いことがあったんだ。
「姫様、私は約束を守ります。 」
「そんなの信じられないわ。…貴方も牢屋に行ってもらう」
「……どうしたら、信じてくださるんですか?」
そう聞くと姫様は一瞬迷った顔をしたが、また真顔に戻り、冷たく告げた
「そうね…。では、これから地下に貴女を連れていかせるけれど、そこには私のペットのアーデラがいます。牢屋から出て、彼女を倒せたら信じてあげましょう。ただし、彼女を殺したら、貴女も処罰します」
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