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第三章
第10話『選ばれし力、拒まれし存在』
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「アリシア様……!」
控えの間に戻ったアリシアを迎えたのは、蒼ざめた顔のシルヴィアだった。
「魔術協会が騒いでいます。封印の間で、強力な魔力の痕跡が観測されたと……」
アリシアは無言でうなずいた。心の中にはまだ、クロウの言葉が重く残っている。
――君なら分かる日が来る。世界は君を拒む。
「……シルヴィア、私、影の継承者に会ったわ」
「え……!?」
部屋にいたレオンも、驚愕の表情を浮かべる。
「まさか、本当に存在していたのか……」
「彼は“クロウ”と名乗った。私と同じ魔眼を持ち、でもその力を――破壊のために使うつもりだった」
アリシアの声は静かだったが、その中には燃えるような意志が込められていた。
翌日、アリシアたちはフェリクス卿を交えて緊急の対策会議を開いた。
「影の継承者……」
フェリクスは深く腕を組んだまま、しばらく沈黙していた。
「その名、過去の文献にもわずかに記録が残っている。“虚無の子”とも呼ばれ、リアナがその半身を封印したとされる存在だ」
「まさか、それが今になって目覚めるなんて……」
レオンが唸る。
「いや、目覚めたのではない。彼は“目覚めさせられた”のだ。おそらく……ヴァルグか、それに連なる勢力が仕組んだのだろう」
「放っておくわけにはいきません」
アリシアの言葉に、フェリクスはうなずいた。
「いずれにせよ、君は今や王国の希望であると同時に、最大の脅威とも目されている。君の動き一つで、王都は混乱に包まれるだろう。気をつけなさい、アリシア」
その日の夜。
アリシアは久々に一人、王宮の塔の上に登っていた。夜風が髪を揺らし、王都の灯りが遠くにまたたいている。
(私は、世界にとって何なのだろう?)
継承者、転生者、魔眼の覚醒者――そのどれもが、彼女を“特別”にした。だが同時に、それは人々からの恐れを生んだ。
「また、こんな場所にいたのか」
レオンの声に、アリシアは肩をすくめた。
「少し、風に当たりたくて」
「……昔の君なら、こんなふうに自分だけで背負おうとしなかった」
「強くならなきゃって、思ったの」
レオンは彼女の隣に腰を下ろした。
「強さって、孤独に耐えることじゃないよ。誰かに頼る勇気も、同じくらい大切な強さだ」
その言葉に、アリシアの肩からわずかに力が抜けた。
「……ありがとう、レオン」
ふと、空を見上げると、雲間から満月が顔を覗かせていた。その月の光は、まるで二人の未来を照らしているようだった。
だが、その安らぎの夜は長く続かなかった。
翌朝、王宮に急報が届く。
「緊急報告! 北部辺境の城塞都市が襲撃を受けました!」
「敵の規模は……不明! ただ、都市ごと“消えた”との報告が!」
アリシアたちの顔色が変わる。
「まさか……クロウが動き出した?」
「可能性は高い」
フェリクスは即座に地図を広げる。
「奴が動くなら、次の標的は南部の聖堂都市“エルフェリア”。そこには“神託の書”が保管されている。奴はそれを狙っているかもしれない」
「すぐに向かいましょう」
アリシアは即座に立ち上がった。
「レオン、シルヴィア、私たちでエルフェリアを守るわ」
「了解だ」
「もちろんよ、アリシア」
かくして、アリシアたちは新たな旅路へと足を踏み出す。
王都に迫る影。世界を変えようとする“もう一人の継承者”。
運命は、確実に動き始めていた――。
控えの間に戻ったアリシアを迎えたのは、蒼ざめた顔のシルヴィアだった。
「魔術協会が騒いでいます。封印の間で、強力な魔力の痕跡が観測されたと……」
アリシアは無言でうなずいた。心の中にはまだ、クロウの言葉が重く残っている。
――君なら分かる日が来る。世界は君を拒む。
「……シルヴィア、私、影の継承者に会ったわ」
「え……!?」
部屋にいたレオンも、驚愕の表情を浮かべる。
「まさか、本当に存在していたのか……」
「彼は“クロウ”と名乗った。私と同じ魔眼を持ち、でもその力を――破壊のために使うつもりだった」
アリシアの声は静かだったが、その中には燃えるような意志が込められていた。
翌日、アリシアたちはフェリクス卿を交えて緊急の対策会議を開いた。
「影の継承者……」
フェリクスは深く腕を組んだまま、しばらく沈黙していた。
「その名、過去の文献にもわずかに記録が残っている。“虚無の子”とも呼ばれ、リアナがその半身を封印したとされる存在だ」
「まさか、それが今になって目覚めるなんて……」
レオンが唸る。
「いや、目覚めたのではない。彼は“目覚めさせられた”のだ。おそらく……ヴァルグか、それに連なる勢力が仕組んだのだろう」
「放っておくわけにはいきません」
アリシアの言葉に、フェリクスはうなずいた。
「いずれにせよ、君は今や王国の希望であると同時に、最大の脅威とも目されている。君の動き一つで、王都は混乱に包まれるだろう。気をつけなさい、アリシア」
その日の夜。
アリシアは久々に一人、王宮の塔の上に登っていた。夜風が髪を揺らし、王都の灯りが遠くにまたたいている。
(私は、世界にとって何なのだろう?)
継承者、転生者、魔眼の覚醒者――そのどれもが、彼女を“特別”にした。だが同時に、それは人々からの恐れを生んだ。
「また、こんな場所にいたのか」
レオンの声に、アリシアは肩をすくめた。
「少し、風に当たりたくて」
「……昔の君なら、こんなふうに自分だけで背負おうとしなかった」
「強くならなきゃって、思ったの」
レオンは彼女の隣に腰を下ろした。
「強さって、孤独に耐えることじゃないよ。誰かに頼る勇気も、同じくらい大切な強さだ」
その言葉に、アリシアの肩からわずかに力が抜けた。
「……ありがとう、レオン」
ふと、空を見上げると、雲間から満月が顔を覗かせていた。その月の光は、まるで二人の未来を照らしているようだった。
だが、その安らぎの夜は長く続かなかった。
翌朝、王宮に急報が届く。
「緊急報告! 北部辺境の城塞都市が襲撃を受けました!」
「敵の規模は……不明! ただ、都市ごと“消えた”との報告が!」
アリシアたちの顔色が変わる。
「まさか……クロウが動き出した?」
「可能性は高い」
フェリクスは即座に地図を広げる。
「奴が動くなら、次の標的は南部の聖堂都市“エルフェリア”。そこには“神託の書”が保管されている。奴はそれを狙っているかもしれない」
「すぐに向かいましょう」
アリシアは即座に立ち上がった。
「レオン、シルヴィア、私たちでエルフェリアを守るわ」
「了解だ」
「もちろんよ、アリシア」
かくして、アリシアたちは新たな旅路へと足を踏み出す。
王都に迫る影。世界を変えようとする“もう一人の継承者”。
運命は、確実に動き始めていた――。
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