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第二十九話 座学の免除
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王立ロマリア学園の入学式も恙無く終えた。
首席と次席のホクトとサクヤは共にAクラスに配属された。
ロマリア国王ヘルムートの四女フランソワ王女も当然Aクラスだった。
その他にも公爵家の次男や侯爵家の嫡男、伯爵家の子息息女など、Aクラスは貴族率が高い気がする。これにはちゃんとした理由がある。平民と違い貴族家では幼い頃より家庭教師を付けて、剣や教養、魔法を教え込む。平民では剣や教養は何とか学べても、魔法に関しては学ぶのは難しかった。
「エルフは僕達だけみたいだな」
「全学年でも今は私達だけみたいよ」
昨年はエルフが二人居たらしいが、卒業した為に今年度は全学年でエルフはホクトとサクヤのみだった。
この王立ロマリア学園は、貴族の子息息女が多く通う学校だからなのか、圧倒的に人族の割合が多い。王都の種族人口分布からみても、学園内の種族分布は偏っている。
話している二人に、一人の少女が近付いて来た。
「ホクトさんにサクヤさんですね。
私はフランソワ・ロマリアです。これから三年間よろしくね」
近づいて来たのは、長い金色の髪を腰まで伸ばし、抜ける様な白い肌に少しタレ目がちな青い瞳に細く長い手足。
ロマリア王国の王女フランソワだった。
ホクトとサクヤが居なければ首席を争ったであろう彼女は、幼い頃から英才教育を受けた才女だった。
「こちらからご挨拶せず申し訳ありません。
カイン・フォン・ヴァルハイムの三男、ホクト・フォン・ヴァルハイムです。よろしくお願いします」
「エルビス・フォン・アーレンベルクの義娘、サクヤ・アーレンベルクです。以後お見知り置きを」
「ええ、あなた方には色々と指導して頂きたいですからよろしくね」
フランソワはそう言ってニコリと微笑んで自分の席に戻って行った。
王女の周りには取り巻きの貴族の息女が集まっていた。彼女達は時折ホクト達を見てキャアキャアと貴族らしからぬはしゃいだ様子を見せていた。
対照的にホクトを刺す様な目で睨みつけている集団も居た。いや、寧ろ嫉妬や蔑み怒りの視線の方が多い。
これは種族間の差別意識が緩いロマリア王国にあっても、人族以外を亜人と蔑む者が一定数居るからだが、何故か貴族の中に多いという事実があった。
身体能力が高い獣人族に対して獣と蔑み、器用で力があり優れた鍛治師を輩出するドワーフには、その容姿を馬鹿にする。
エルフに対しては、彼等は複雑だった。
自分達よりも優れた容姿、優れた魔法適性、優れた狩人としての身体能力、長く若々しいその寿命。
人族として勝るのは人口の多さくらいか。
エルフの大半は自分の国に引き篭もっている為に、嫉妬する事もあまりないが、身近に存在すると選民意識に凝り固まった者達は理不尽な怒りを覚えるようだった。
彼等はホクトとサクヤに対して謂れのない嫉妬心をいだいているのだ。
やがて授業開始の鐘の音が鳴り、教室のドアが開きホクトとサクヤの知る顔が教室に入って来た。
それはホクト達の魔法実技試験に立ち会ったシェスター・マルトハイム教授だった。
おや、シェスター教授がAクラスの担任なのか?とホクトが見ていると、教壇に立ったシェスター教授が挨拶を始めた。
「シェスター・マルトハイムです。
ご覧の通りエルフで三百五十歳の若造ですが、Aクラスの担任を受け持つ事になりました。
三年間よろしくお願いします」
シェスター教授は三百五十歳なのか。それで若造って、エルフって年齢の感覚がオカシイと思ったホクト。自分もエルフなのを忘れている。
「それでは早速、オリエンテーションを始めましょう。
一般教養科、基礎魔法科、武器術科、魔法文字科、魔物生態学科、薬学科、魔導具科の中から選択して下さい。専門教科は最低でも二教科選択して下さい。
あゝ言い忘れてましたが、ホクト君とサクヤさんは一般教養科、基礎魔法科、武器術科は免除になりましたから、今年度はあと専門教科二教科を選択して下さい。フランソワ様も一般教養科は免除です。
では、履修教科が決まったら私まで提出して下さい。因みに魔法文字科と魔導具科はセットで履修した方が良いですよ」
シェスター教授の説明が終わると、皆んなが履修教科を決める為に、配られた資料を元に思案し始める。
中級魔法以上を学ぶのは二学年になってからで、上級魔法は三学年で学べる。
「ホクトはもう決めたの?」
「魔法文字科と魔導具科の二つは決めたけど、その他はどうしようかな……」
ホクトは、魔導具開発の為に学園に来た様なものなので、魔法文字科と魔導具科は最初から決めていた。
「薬学科と魔物生態学科も面白そうよ」
二学年からしか受講出来ない科目もあるので、一学年から受講出来る興味がある科目は取りたいとサクヤは思っていた。
「剣術や弓は自主練習して、受講出来る教科は全て取ろうか」
「それが良いかもね。魔法もシェスター教授に無属性魔法を学べないかしら」
無属性魔法の数は術師の数だけ有ると言われるくらい様々な魔法が存在する。中には個人の固有魔法と呼ばれるモノも多いが、個性的な魔法が多くあり、全てを把握するのは難しい。
サクヤは無属性魔法の研究者であるシェスター教授に教わりたいみたいだ。
「シェスター教授は三百五十歳超えてるらしいから、色んな魔法知ってそうだしね」
結局、ホクトとサクヤは魔法文字科・魔導具科・薬学科・魔物生態学科の四つの専門教科を取る事にした。
その日はその後に、学園内の施設案内と上級生の実習を見学してホクトとサクヤの学園初日は終えた。
首席と次席のホクトとサクヤは共にAクラスに配属された。
ロマリア国王ヘルムートの四女フランソワ王女も当然Aクラスだった。
その他にも公爵家の次男や侯爵家の嫡男、伯爵家の子息息女など、Aクラスは貴族率が高い気がする。これにはちゃんとした理由がある。平民と違い貴族家では幼い頃より家庭教師を付けて、剣や教養、魔法を教え込む。平民では剣や教養は何とか学べても、魔法に関しては学ぶのは難しかった。
「エルフは僕達だけみたいだな」
「全学年でも今は私達だけみたいよ」
昨年はエルフが二人居たらしいが、卒業した為に今年度は全学年でエルフはホクトとサクヤのみだった。
この王立ロマリア学園は、貴族の子息息女が多く通う学校だからなのか、圧倒的に人族の割合が多い。王都の種族人口分布からみても、学園内の種族分布は偏っている。
話している二人に、一人の少女が近付いて来た。
「ホクトさんにサクヤさんですね。
私はフランソワ・ロマリアです。これから三年間よろしくね」
近づいて来たのは、長い金色の髪を腰まで伸ばし、抜ける様な白い肌に少しタレ目がちな青い瞳に細く長い手足。
ロマリア王国の王女フランソワだった。
ホクトとサクヤが居なければ首席を争ったであろう彼女は、幼い頃から英才教育を受けた才女だった。
「こちらからご挨拶せず申し訳ありません。
カイン・フォン・ヴァルハイムの三男、ホクト・フォン・ヴァルハイムです。よろしくお願いします」
「エルビス・フォン・アーレンベルクの義娘、サクヤ・アーレンベルクです。以後お見知り置きを」
「ええ、あなた方には色々と指導して頂きたいですからよろしくね」
フランソワはそう言ってニコリと微笑んで自分の席に戻って行った。
王女の周りには取り巻きの貴族の息女が集まっていた。彼女達は時折ホクト達を見てキャアキャアと貴族らしからぬはしゃいだ様子を見せていた。
対照的にホクトを刺す様な目で睨みつけている集団も居た。いや、寧ろ嫉妬や蔑み怒りの視線の方が多い。
これは種族間の差別意識が緩いロマリア王国にあっても、人族以外を亜人と蔑む者が一定数居るからだが、何故か貴族の中に多いという事実があった。
身体能力が高い獣人族に対して獣と蔑み、器用で力があり優れた鍛治師を輩出するドワーフには、その容姿を馬鹿にする。
エルフに対しては、彼等は複雑だった。
自分達よりも優れた容姿、優れた魔法適性、優れた狩人としての身体能力、長く若々しいその寿命。
人族として勝るのは人口の多さくらいか。
エルフの大半は自分の国に引き篭もっている為に、嫉妬する事もあまりないが、身近に存在すると選民意識に凝り固まった者達は理不尽な怒りを覚えるようだった。
彼等はホクトとサクヤに対して謂れのない嫉妬心をいだいているのだ。
やがて授業開始の鐘の音が鳴り、教室のドアが開きホクトとサクヤの知る顔が教室に入って来た。
それはホクト達の魔法実技試験に立ち会ったシェスター・マルトハイム教授だった。
おや、シェスター教授がAクラスの担任なのか?とホクトが見ていると、教壇に立ったシェスター教授が挨拶を始めた。
「シェスター・マルトハイムです。
ご覧の通りエルフで三百五十歳の若造ですが、Aクラスの担任を受け持つ事になりました。
三年間よろしくお願いします」
シェスター教授は三百五十歳なのか。それで若造って、エルフって年齢の感覚がオカシイと思ったホクト。自分もエルフなのを忘れている。
「それでは早速、オリエンテーションを始めましょう。
一般教養科、基礎魔法科、武器術科、魔法文字科、魔物生態学科、薬学科、魔導具科の中から選択して下さい。専門教科は最低でも二教科選択して下さい。
あゝ言い忘れてましたが、ホクト君とサクヤさんは一般教養科、基礎魔法科、武器術科は免除になりましたから、今年度はあと専門教科二教科を選択して下さい。フランソワ様も一般教養科は免除です。
では、履修教科が決まったら私まで提出して下さい。因みに魔法文字科と魔導具科はセットで履修した方が良いですよ」
シェスター教授の説明が終わると、皆んなが履修教科を決める為に、配られた資料を元に思案し始める。
中級魔法以上を学ぶのは二学年になってからで、上級魔法は三学年で学べる。
「ホクトはもう決めたの?」
「魔法文字科と魔導具科の二つは決めたけど、その他はどうしようかな……」
ホクトは、魔導具開発の為に学園に来た様なものなので、魔法文字科と魔導具科は最初から決めていた。
「薬学科と魔物生態学科も面白そうよ」
二学年からしか受講出来ない科目もあるので、一学年から受講出来る興味がある科目は取りたいとサクヤは思っていた。
「剣術や弓は自主練習して、受講出来る教科は全て取ろうか」
「それが良いかもね。魔法もシェスター教授に無属性魔法を学べないかしら」
無属性魔法の数は術師の数だけ有ると言われるくらい様々な魔法が存在する。中には個人の固有魔法と呼ばれるモノも多いが、個性的な魔法が多くあり、全てを把握するのは難しい。
サクヤは無属性魔法の研究者であるシェスター教授に教わりたいみたいだ。
「シェスター教授は三百五十歳超えてるらしいから、色んな魔法知ってそうだしね」
結局、ホクトとサクヤは魔法文字科・魔導具科・薬学科・魔物生態学科の四つの専門教科を取る事にした。
その日はその後に、学園内の施設案内と上級生の実習を見学してホクトとサクヤの学園初日は終えた。
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