異世界立志伝

小狐丸

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レイラさんの専属メイド

 俺達がイリアとコレットのリハビリと言う名のパワーレベリングをして、イリアとコレットの身体能力が上がり、深淵の森外縁部なら単独で魔物を狩れる様になった頃、レイラさんがメイドを一人雇って来た。



「えっ?」

 そのメイドを見て疑問の声をあげたのは俺だけだったみたいだ。

 レイラさんが専属メイドとして雇ったのは、身長が150センチに届かない、小柄な女の子だった。

「カイト君、勘違いしてる様だけど、彼女カイト君よりずっと年上よ」
「えっ!そうなんですか」

 やっぱり驚いているのは俺だけの様だ。

「彼女はドワーフなのよ。妖精種は長命なのよ」

 そう言われて良く見ると、耳が少し尖っている様だ。そうか、この世界のドワーフの女の人はこっちだったか。髭の生えた女の子じゃなくて良かったのか?

 改めて良く見ると、黒髪に濃いブラウンの瞳、背は小さく凹凸のないスレンダーな体型。
 表情に乏しいが美少女なのは間違いない。


「さあ、自己紹介しなさい」

 レイラさんに促され、一歩前に出る少女。

「はい、奥様。皆様、この度レイラ様の専属メイドとして働く事になりました、スーラと申します。どうぞよろしくお願いします」

 深く頭を下げてお辞儀する。

「スーラはこう見えて、私達よりずっと年上だから、料理も家事も完璧なの」

 レイラさんが自慢気に言うけど、ドワーフなら物造りには興味ないのかな。

「スーラさんは料理や家事が得意なんですね」
「スーラは、鍛治や魔導具造りが得意なのです」

 うん?

「……あ、あの、家事ですよね」
「はい、鍛治なのです」

 その場にいる全員が、レイラさんを見る。

「……てへっ、間違っちゃった……」

 可愛くそう言ったレイラさんは涙目だった。
 皆んなはさすがにそれ以上何も言えなかった。

 不幸中の幸いと言うか、スーラさんは一応家事はこなせそうだった。なんでも鍛治工房や魔導具工房を片付けて使い易いよう整頓したり、道具の手入れも日常的にしていたので、掃除や洗濯は得意なのだそうだ。

「ねっ、分かってたの私、スーラが出来る子だって」

 すぐにレイラさんが復活した。
 立ち直りが早い。
 でも俺は肝心な事を聞かなきゃいけない。

「それでスーラさんは料理は出来るの」

 そう!料理だ。現状、俺とアンナさんで料理をしているけど、それを任せられるのかが重要だった。

「カイト君そんなの当たり前じゃないメイドよ」
「はい、奥様。スーラは解体が得意です」

「「「「「………………」」」」」

 俺はその場の沈黙に耐えられなくなって聞いてみる。

「料理するために捌くのかな?」
「魔物の解体です。素材が必要なのです」

 あゝ、結局、料理を作る量が増えただけだ。 

「母上、諦めて王都の屋敷から人を呼べば良いのに」

 クリストフ君が、凄くまともな意見をレイラさんに言ってるけど、レイラさんは知らん顔している。これ全然反省してないな。

「レイラさん、一度王都へ行きましょうか?」
「そ、そうよ!料理人を一人連れてくれば良かったじゃない。どうして思いつかなかったのかしら」

 一度王都へ行ってあげよう。長距離転移が出来れば楽なんだけど、俺はまだ短距離転移しか出来ない。そのうち出来るようになると思うけど。



 結局、レイラさんの手紙を持って、俺が一人で王都へ行った。
 行きは短距離転移を繰り返し、魔力が底をついたらブリッツで疾駆する。そのうち魔力が回復すると、また短距離転移を繰り返す。
 お陰で俺は1000キロ以上ある道程を、たった6時間で王都へ着いた。バスターク辺境伯の屋敷にたどり着いた時には、さすがの俺もヘロヘロだった。

 手紙を渡すと直ぐに対応してくれた。手紙になんて書いてあったのか分からないけど、一人の壮年の料理人が荷物を持って現れた時になって、レイラさんの指示が分かった。

(とんぼ返りしろと、おっしゃるのですね)

 帰りは転移を繰り返すのは無理なので、汎用軍用車両に料理人を乗せ爆走する。

 結局、俺は王都までの往復2,000キロ以上の距離を、一泊二日で駆け抜けるという荒行をする羽目になった。

「お前も大変だな」
「わかります?」

 この度新しく料理人としてノトスに来たトーレさんが、憐れみの目でそう言った。
 この世界の常識から外れたスピードで、爆走する汎用軍用車両に、最初は目を回していたトーレさんだけど、直ぐに仲良くなれた。
 車の中で色々話すうちに、どうして料理人を迎えに王都とノトスを往復する羽目になった事なんかを話した。

 それを受けての最初の言葉だった。


 そして、ノトスの家に帰って来た俺は、ルフトと追っかけっこしているスーラさんを見て固まるのだった。

「……これ、何してるの?」

 ルキナを乗せたルフトが、庭を逃げまわっている。それを洒落にならない真剣な表情でスーラさんが追い掛けている。
 ルキナはキャアキャアと喜んで遊び気分みたいがけど、スーラさんは真剣だ。

「ああ、カイトおかえりなさい」
「あ、あゝ、ただいま」

 エルが出迎えてくれたが、苦笑いしていた。

「スーラがルフトを見ちゃってね。目の色を変えちゃって」

 あゝ、魔導具を造ると言ってたな。

「それでルフトの中身を見たいと言いだして」
「で、追いかけっこしていると」
「カイト君おかえりなさい。トーレを連れて来てくれてありがとうね」

 レイラさんも庭に出て来た。

「レイラさん、専属メイドが庭を走り回っていますよ」
「ほほほっ、スーラはお転婆ね」

 そう言うとレイラさんはリビングに帰って行った。
 はぁ、仕方ない、止めるか。

「スーラさん、スーラさん!」

 ルフトを必死に追いかけるスーラさんを呼び止める。

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、カ、カイト様、おかえりなさいなのです。はぁ、はぁ、!!」

 スーラさんが俺の所に走り寄る。

「カイト様が、あのゴーレムを造ったと聞きました!」

 襟首を掴まれ、ガクガクと揺らされる。

「何なのです!何であのゴーレムはあんなに賢いんですか!」
「あ、あぁ、よく出来てるだろルフトのゴーレム核」
「普通のゴーレムは簡単な命令しか聞かないし、簡単な動作しか出来ないんですよ!何ですか、あのゴーレムは、自分の意思を持ってるなんて!」
「だって、魔物のゴーレムはちゃんと知性があるよね。バカだけど」

「ムムムムッーー!」

 ガバッ!とスーラさんが見事なジャンピング土下座をしている。

「カイト様!弟子にして下さーい!」

 はぁ、どうしよう、これ。
 こら、ルフトやめなさい。スーラさんの頭に前脚乗せないの。

 本当にレイラさん見る目あるよ逆の意味で、専属メイドじゃないのかよ。

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