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ベルトルト公爵家
サーメイヤ王国の王城に近い場所に、広大な敷地の屋敷がある。王城に近い一等地にある事をみても、ただの貴族家ではないというのは、誰の目にも分かった。
ベルトルト公爵家は、三家ある公爵家の一つ、サーメイヤ王家の血を引き王位継承権を持つ。
その豪邸の一室で、年若い青年とその父親らしき壮年の男が楽しげに歓談していた。
父親の名は、ロッドウィル・フォン・ベルトルト。息子の名は、カール・フォン・ベルトルト。
ベルトルト公爵家は、王家の血族であるが、貴族派の盟主だった。王弟モーティスとテンプルトン伯爵の反乱で、国王派と貴族派双方が力を落とし、バスターク辺境伯を中心とする中立派が力を保っていた。
「父上、クレモン王は思った以上に御し易い王でしたね」
「バージェス王の治世では、我等の目は無かったが、今のクレモン王なら我等がベルトルト家が天下を取ることも難しくないであろう」
金髪を後ろに撫で付け、神経質そうなロッドウィルが口角を上げる。
先代バージェス王は、武人の雰囲気を醸し出していたが、ベルトルト家の男は同じ血族とは思えない文官の家系だった。
ロッドウィルは、バージェス王のような武人が嫌いだった。その所為か、バスターク辺境伯やドラーク伯爵のような、武辺者が大きな顔をするのが我慢出来なかった。
戦さしか出来ない野蛮人と…………。
だが、ここの所のサーメイヤ王国を動かしているのは中立派。バスターク辺境伯やドラーク伯爵達だった。特にドラーク伯爵は、戦争だけじゃなく、領地経営でも手腕を発揮した。ドラーク伯爵領は、驚くべき速さで開発が進み、人口増加も急激に進んでいる。
普通なら、移民や流民の流入が止まらず、急激に人口が増加すれば治安が悪くなるものだが、ドラーク伯爵領はそれに当てはまらない。
流入する様々な種族の人間に、仕事と住居を与え、治安維持部隊が街や村を常に巡回する。
バスターク辺境伯領とドラーク伯爵領は交易でも連携して利益をだしている。ゴンドワナ帝国との戦争でも二百年ぶりに領土拡大という戦果をあげた。
貴族派でありながら、王弟とテンプルトン伯爵達と共に立たなかった判断を、ロッドウィルは自分で自分を褒めてやりたいとどれほど思ったか。場合によっては、モーティスやテンプルトン伯爵と同じく破滅していただろう。公爵家とはいえ、大きな軍事力など持ち合わせていないのだから。それだけにバスターク辺境伯領とドラーク伯爵領が、内政でも栄えているのが許せなかった。
「しかし父上、バスターク辺境伯とドラーク伯爵相手では、兵の数を揃えても勝つのは難しいのでは?」
カールの疑問に、ロッドウィルはやれやれと首を横に振る。
「カール、何も正面から戦うのだけが戦いではないぞ。確かに戦さでバスターク辺境伯とドラーク伯爵を下せば、誰もが儂等に逆らえんじゃろう。じゃが、戦さには調略と言う手もある」
「調略ですか?」
ピンとこないカールに、自分の息子ながらできの悪さを嘆くロッドウィル。
「そうだカール。バスターク辺境伯家やドラーク伯爵家の有力者を寝返らせるのじゃ。戦さで身内から裏切られ混乱すれば、いかなバスターク辺境伯軍やドラーク伯爵軍でも持つまい」
「なるほど!さすが父上です!」
早速、バスターク辺境伯領とドラーク伯爵領へ、調略のための間者を送る算段をするロッドウィルとカールだが、彼等は気が付かない……、ドラーク伯爵家での有力者とは、ほとんどがカイトの家族だという事に……。家族以外のランカスやバルデス達にしても、固い絆で結ばれている事に。
それ以前に、フーガ達が間者を領都に入れる訳が無いという事を知らない。
バスターク辺境伯軍とドラーク伯爵軍だけで、サーメイヤ王国の残りの貴族家全部を相手にして、楽に勝てるとは思っていない。
ドラーク伯爵が一人で万の軍勢を蹴散らしたなどと、本気で信じていなかった。彼等の世界は、王都の権力抗争の中だけの小さな世界。実際に戦場に立った事もない二人には、バスターク辺境伯とドラーク伯爵の怖さが分からなかった。
迷走する若いクレモン王と、愚物の公爵家、サーメイヤ王国は、カイトの知らぬうちに傾き始めていた。
ベルトルト公爵家は、三家ある公爵家の一つ、サーメイヤ王家の血を引き王位継承権を持つ。
その豪邸の一室で、年若い青年とその父親らしき壮年の男が楽しげに歓談していた。
父親の名は、ロッドウィル・フォン・ベルトルト。息子の名は、カール・フォン・ベルトルト。
ベルトルト公爵家は、王家の血族であるが、貴族派の盟主だった。王弟モーティスとテンプルトン伯爵の反乱で、国王派と貴族派双方が力を落とし、バスターク辺境伯を中心とする中立派が力を保っていた。
「父上、クレモン王は思った以上に御し易い王でしたね」
「バージェス王の治世では、我等の目は無かったが、今のクレモン王なら我等がベルトルト家が天下を取ることも難しくないであろう」
金髪を後ろに撫で付け、神経質そうなロッドウィルが口角を上げる。
先代バージェス王は、武人の雰囲気を醸し出していたが、ベルトルト家の男は同じ血族とは思えない文官の家系だった。
ロッドウィルは、バージェス王のような武人が嫌いだった。その所為か、バスターク辺境伯やドラーク伯爵のような、武辺者が大きな顔をするのが我慢出来なかった。
戦さしか出来ない野蛮人と…………。
だが、ここの所のサーメイヤ王国を動かしているのは中立派。バスターク辺境伯やドラーク伯爵達だった。特にドラーク伯爵は、戦争だけじゃなく、領地経営でも手腕を発揮した。ドラーク伯爵領は、驚くべき速さで開発が進み、人口増加も急激に進んでいる。
普通なら、移民や流民の流入が止まらず、急激に人口が増加すれば治安が悪くなるものだが、ドラーク伯爵領はそれに当てはまらない。
流入する様々な種族の人間に、仕事と住居を与え、治安維持部隊が街や村を常に巡回する。
バスターク辺境伯領とドラーク伯爵領は交易でも連携して利益をだしている。ゴンドワナ帝国との戦争でも二百年ぶりに領土拡大という戦果をあげた。
貴族派でありながら、王弟とテンプルトン伯爵達と共に立たなかった判断を、ロッドウィルは自分で自分を褒めてやりたいとどれほど思ったか。場合によっては、モーティスやテンプルトン伯爵と同じく破滅していただろう。公爵家とはいえ、大きな軍事力など持ち合わせていないのだから。それだけにバスターク辺境伯領とドラーク伯爵領が、内政でも栄えているのが許せなかった。
「しかし父上、バスターク辺境伯とドラーク伯爵相手では、兵の数を揃えても勝つのは難しいのでは?」
カールの疑問に、ロッドウィルはやれやれと首を横に振る。
「カール、何も正面から戦うのだけが戦いではないぞ。確かに戦さでバスターク辺境伯とドラーク伯爵を下せば、誰もが儂等に逆らえんじゃろう。じゃが、戦さには調略と言う手もある」
「調略ですか?」
ピンとこないカールに、自分の息子ながらできの悪さを嘆くロッドウィル。
「そうだカール。バスターク辺境伯家やドラーク伯爵家の有力者を寝返らせるのじゃ。戦さで身内から裏切られ混乱すれば、いかなバスターク辺境伯軍やドラーク伯爵軍でも持つまい」
「なるほど!さすが父上です!」
早速、バスターク辺境伯領とドラーク伯爵領へ、調略のための間者を送る算段をするロッドウィルとカールだが、彼等は気が付かない……、ドラーク伯爵家での有力者とは、ほとんどがカイトの家族だという事に……。家族以外のランカスやバルデス達にしても、固い絆で結ばれている事に。
それ以前に、フーガ達が間者を領都に入れる訳が無いという事を知らない。
バスターク辺境伯軍とドラーク伯爵軍だけで、サーメイヤ王国の残りの貴族家全部を相手にして、楽に勝てるとは思っていない。
ドラーク伯爵が一人で万の軍勢を蹴散らしたなどと、本気で信じていなかった。彼等の世界は、王都の権力抗争の中だけの小さな世界。実際に戦場に立った事もない二人には、バスターク辺境伯とドラーク伯爵の怖さが分からなかった。
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