円環の蛇 破壊と再生の神印(ギフト)

小狐丸

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二十三話 配下が増えたらしい

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 港町パルミナまであと二日の距離までやって来た。
 今日は近くに町や村がなかったので野営だ。一緒に村や町に入れないアグニ達が居るので、村で空き家や小屋を借りて寝るよりも、野営の方がよっぽど気が楽だ。

 街道を外れて野営しやすい場所を見つけ、魔物や盗賊への警戒はアグニ達が順番に受け持ってくれる。
 スパルトイのアグニ達は、基本的に睡眠を必要としない。だから夜番は基本アグニ達に任せる事になる。

「それで何処まで着いて来る気なのよ」
「まさか仲間にエルフが居るとは」
「……乳オバケ」
「何ですって! このツルペタ!」
「まあまあセレネさん、落ち着いて」

 夕食を終えて改めてドワーフの二人と話をする事にしたんだけど、セレネさんと揉め始めたから慌てて止める。


 自己紹介によれば、男のドワーフの名前はベルグ。年齢は350歳で、大陸中を旅しながら鍛治の腕を磨いているそうだ。少女はポーラはベルグの孫で、彼女は付与魔法が得意な鍛治師兼魔道具職人だと教えてくれた。
 二人は大陸の東の端、山脈で囲まれたヴェルデ王国の出身らしい。


「ヴェルデ王国は国王は人族じゃが、ドワーフの多い国じゃ。故に職人の国とも言える」

 ヴェルデ王国は、山脈を越えて西のティムガット王国やカラル王国と武具の交易で栄えているそうだ。ドワーフが多く、その技術力のお陰で国が成り立っているらしく、国の中枢にもドワーフが多く居るのだとか。

「……でも軍の装備は面白くない」
「そうなんじゃ。ガーランド帝国にしても、帝国と争っているティムガット王国とカラル王国にしても、欲しがるのはソコソコの出来の画一的な物が望まれるんじゃ」
「……あんなの職人の仕事じゃない」

 職人として良い物を造りたい、良い剣を打ちたい。珍しい素材を試したい。そう思ったら我慢が出来なくなって、国を飛び出したらしいのだけど、孫娘まで着いて来てしまったと。
 僕は職人を知らないけど、ベルグさんの気持ちは分からなくもない。でも普通は苦労なく食べていけるなら、妥協して生きる人が多いと思うけどね。

「なぁ坊主、その剣を譲っては貰えんか」
「いや、無理ですね」

 ベルグさんが無茶を言い出した。手元に置いて調べたいんだろうけど、それは無理と言うものだ。だいたい幾らで買おうと言うのだろう。伝説級の剣とイグニートの爪や牙から出来たモノは、大陸一の富豪でも買えないと思う。

「そう言わず、儂を助けると思って」
「いや、心情的にも嫌ですし、物理的にも無理です」

 僕は事細かく説明する。
 僕の装備は、僕の為だけの僕専用の装備だという事を、他の誰も装備どころかメンテナンスすら出来ないと。

「……そんな事が有り得るのか?」
「触ってみます?」

 腰のショートソードを鞘ごと外し、ベルグさんに差し出す。

 バチィ!!

「ギャアァァ!!」

 ベルグさんが、躊躇なく手を出し掴もうとした瞬間、ベルグさんの手が弾かれる。

「へぇ~、僕以外が触ろうとするとこうなるんだ」

 激痛に苦しむベルグさんを見て、普段使いの普通の装備も必要かな。なんて考える。

「グッ、こ、これは神が創りたもうた神剣なのか?」
「いや、創ったのは人ではありませんが、神とも違うと思いますよ。……たぶん」

 何とか復活したベルグさんが、大袈裟な事を言い出したので、一応否定しておく。

「坊、ちゃんと説明しないと納得しないと思うぞ」
「そうですね。私達を見る目が怖いもの」
「某達が、剣や槍を送還しているのを考えれば、尋常ではないと分かるものだがな」

 インドラは、もう全部説明してしまえと言い、ヴァルナもベルグとポーラが自分達の鎧を見る目が怖いと言う。アグニも、自分やインドラが大剣や槍を送還しているのを、見ている筈なのに、それよりも剣や鎧の出来にしか目がいっていないと呆れる。

「はあ、仕方ないか。ベルグさん、僕の装備に関しては、ベースとなった武具はドワーフの匠が造った剣かもしれません。でも今の姿は別物です」

 僕は、ベルグさんとポーラさんに、僕の装備は龍の墓場で墓守りをする古龍イグニートが創った物だと告げた。

「なっ! なんと! 至高龍イグニート様が、この大陸に御座すのか!」
「……鎧騎士の武具は?」
「アグニ達の鎧や武器は、武具であって武具でないんだ」
「こう言う事だ」

 インドラがバイザーを上げて、骸骨の顔を見せた。

「なっ!? スケルトンか!」
「……お爺、スケルトンは喋らない。スケルトンロード?」

 ベルグが驚愕の表情を浮かべて後退り、ポーラがベルグの間違いを訂正するが、スケルトンの上位種と推測したようだ。

「スケルトンやその上位種などと混同してくれるな。イグニートの名が出て、龍の墓場について語られたのだ。考えれば分かりそうなものだが」
「アグニ、それは無理と言うものよ。私達と同種はここ何千年も現れていない筈だもの」
「ここまで言えば分かるか? 俺達は、坊が召喚したスパルトイだ。しかもただのスパルトイじゃねえぞ」

 アグニがスケルトン系の魔物と見られたのが気に食わなかったのか、フンッと鼻を鳴らし、ヴァルナがそれも無理からぬ事と諌める。そしてインドラが胸を張り、自分達がスパルトイだとあかした。


 暫くして落ち着いた二人に、アグニ達の特異性を説明した。

「なんと、龍の牙や爪、骨にとどまらず魔石に加え武具までを使って生み出されたのか」
「まぁ、半分は偶然ですけどね」
「俺達の剣や槍、それと鎧の元になった武具は、龍の墓場を目指し、道半ばで倒れた英雄達の武具だ。何百年、何千年も錆びず朽ちずに遺っていた超一流の武具だ」
「……成る程、国宝級のマジックアーマーなら、高ランクのリビングアーマーにだってなりそう」

 ポーラの意見は正しいかもしれない。龍の墓場に遺っている武具は、元々高い性能の武具が、長い時の間龍の魔力に晒され、何かのキッカケがあれば、リビングアーマーにもなりそうだ。だからスパルトイと成る時に相性が良く、スパルトイを超える存在に成る一助となったのかもしれない。

「まあ僕は鍛治の事は分からないので、龍の素材がどう武具に影響するのか分からないですし、自分で鍛治も出来ませんからね」

 素材となる武具があれば、龍を含む魔物素材を使って、創造出来そうだとは言わない。面倒になりそうだったから。

「うーん、そうなると惜しいのう。流石に儂如きが龍の墓場で、龍の素材を得るなど恐れ多いからな」
「……うん、流石にバチがあたる。それ以前に、龍の墓場まで辿り着けない。でもシグフリート様と一緒に居たら、良い素材が手に入りそうな気がする」
「………………」

 何て勘のいい子なんだ。僕の収納魔法のストックに、龍の素材だけじゃなく、龍の墓場周辺の魔物素材が山ほどあるって事を嗅ぎつけたのか?
 ギクッと動揺するのを感じたのか、ポーラが僕をジッと見ている。

「……お爺、間違いない。シグフリート様は色々持ってそう」
「なに! ポーラがそう言うなら間違いないな。坊主、いや、シグフリート様。儂らを側に置いてくれんか。鍛治師が側に居ると役に立つぞ」
「いや、あのね」

 僕の装備も、アグニ達の装備もメンテナンスフリーだから鍛治師は必要ないからと、そう言って断わろうとした時、思わぬところから助け船が入る。

「シグ様、暫く様子を見てはどうですか? シグ様の周りには、つい最近まで龍か私達スパルトイしか居ませんでした。ルカを保護してから、セレネが同行するようになりましたが、それでも人との付き合いは相変わらず気薄です」
「まぁ、そうだな。坊が心を許すのが龍かアンデッドなんて不健全だからな」
「うむ、某もヴァルナ達の意見に賛成する。外の世界で生きるのなら、人との関わりを排除しては生きていけない故に」

 まさかのスパルトイ三人から助け船が出た事もあり、僕も断れなくなった。

「はぁ~、取り敢えず同行するのは構いませんが、ベルグさん達が望む結果になるか分かりませんよ」
「十分じゃ! シグフリート様の配下として扱ってくれて構わん!」
「……私もきっと役に立つ」

 セレネさんが不満そうな顔をしているけど、スパルトイ三人が勧めた事に逆らうのは止めたみたい。

 こうして僕の意思とは関係なく、クセの強い同行者が二人増えた。


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