円環の蛇 破壊と再生の神印(ギフト)

小狐丸

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二十四話 港町パルミナ

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 僕は眼下に広がる光景に息を飲む。
 小高い丘の上から港町パルミナが見え、その先には大海原が広がっていた。

「……これが海か……凄いな」
「うわぁー! 広ーい! 青ーい!」

 ファニールに跨る僕の前に座ったルカも、初めて見る海にはしゃいでいる。
 そこにベルグが馬を寄せて来た。

「シグ殿、港町はいいんじゃが、一度鉱山の近い町か、大きな街に寄ってはくれんか」
「鉱石を買いたいんですね」
「……鉱石だけじゃない。炉を借りるのに、大きな街か、鉱山が近い町じゃないとダメ」

 ベルグが肩から掛けている鞄は、マジックバッグと呼ばれている収納魔法が付与された鞄で、ベルグさんの物で15メートル四方の立方体の収納スペースがあるらしい。
 この手のマジックバッグは、現在では造る事は出来ないそうで、100パーセント遺跡からの発掘品だ。
 ファニールがコソッと教えてくれた話によると、あの手の鞄は、イグニートやそれに近しい古龍が創った物らしい。

『大昔から気紛れに、あの手の鞄を人間にあげてたらしいからな』
「(僕みたいに色々貰った人が居たの?)」
『違うよ。宝探し感覚で探させる為にさ。古龍のお遊びだよ』

 時々、この世界にミソロジー級のアーティファクトが発掘されるのは、龍の気まぐれからの遊びらしい。自分達が創った物を有り難がる人間を見て笑っているらしい。
 因みに、このマジックバッグだけど、僕のウロボロスがもう少しレベルアップすれば造れるようになるかもしれない。


 ベルグの持つマジックバッグの中に、ストックしてあるインゴットの補充がしたいと言う事らしい。

「まだパルミナに着いてもいないのに、気が早すぎだよ」
「むう、そうか、仕方ないのう」
「……お爺、我儘はダメ」

 良い物を造る為に大陸を旅するベルグだから、とにかく槌を振るいたいんだろう。

 ベルグは大陸を旅していただけあり、どこに良い鉱山があるとか、どこに良い素材になる魔物が生息しているとか、鍛治に関する事に関しては誰にも負けない知識があると自負している。
 そのベルグの話では、バルディア王国から南に行くと、蛮族や少数部族が群雄割拠する土地があるらしい。そこに露天掘りできる優良な魔法金属の鉱脈を発見したそうだが、蛮族の襲撃を受けポーラと二人では対応出来ず、諦めてバルディア王国側に避難したそうだ。

「あの狼の獣人三兄弟みたいな、戦闘に特化した奴等は居ないが、蛮族達は馬の扱いが上手い。機動力を活かして追い立てられると逃げるしかなかったのじゃ」
「……蛮族鬱陶しい。アイツら鉱脈なんて見向きもしないクセに、邪魔ばっかりする」

 蛮族の被害は、バルディア王国南の国境付近の村や町も襲われるという。
 蛮族には、地道に畑を耕して生きるという選択肢はないのだろうか。迷惑な部族だ。

「じゃがシグ殿達が居れば、蛮族など蹴散らす事が出来ると思うんじゃが……」
「まあ、考えておくよ。知らない世界を見てまわるのは僕の目標でもあるからね」
「おお! それで十分じゃ!」

 ベルグも何とか納得してくれたみたいだ。

 序でにバルディア王国の南に広がる土地について話を聞く事にした。

 ベルグの話では、このバルディア王国の南に広がる土地は、草原地帯が広がり、良い牧草地になると言う。しかも川が何本か流れているので、開拓すれば良い穀倉地にもなるだろうと。そこに露天掘り出来る鉱床をベルグが発見した。

「あれっ? そんな良い土地をバルディア王国や東のローゼン王国は手を出さないの?」
「蛮族と言っても一つではないんじゃ。複数の蛮族どもが、定住する事なく常に移動しておる。しかも蛮族どもは戦士としては、バルディアやローゼンの騎士よりもずっと強い」
「ああ、それはなかなか手を出せないね」

 確かに、攻めるにしても何処を攻撃するのか定まらなければ攻めようがない。しかも戦士としても強いのなら、機動力を活かした蛮族の戦法に翻弄されて大きな被害を出すだろう。

「シグ様、そろそろ町の近くなので、私達を送還してください」
「おっと、そうだね。じゃあ、アグニ、馭者を代わるよ」

 アグニと馭者を交代してから、スパルトイ三人を送還する。ファニールに誰も乗らないのは不自然なので、セレネさんに乗って貰う。セレネさんはファニールが龍の姿を見ているので、かなり緊張していた。ファニールも少しの間だけだからなとセレネさんに言ったものだから、余計にガチガチになっていた。


「ベルグとポーラの認識証は工業ギルドのなんだな」
「工業ギルドは、国を超えた組織だからな。どの国でも通用するんじゃ」

 僕とルカは税金を払って町に入る。セレネさんとベルグ、ポーラは無税だった。

「ここがパルミナか。結構賑わっているな」
「シグお兄ちゃん! ルカね、ルカね、お魚食べたいの!」

 馭者席に座る僕の膝の上からルカが目をキラキラさせて言ってくる。

「よし、夕食はお魚を食べよう」
「わぁーい!」

 ルカが両手を上げて喜ぶ。

『はぁ、俺は厩舎で一人か』
「ファニールはもっと小さくなれないのか?」
『うーん、訓練次第だと思うけど、今は無理だな。この馬の姿で精一杯だ』

 小さな龍の姿になれば、宿屋の部屋でも大丈夫かと思ったけど、流石に今はまだ無理みたいだ。今の馬の姿も、普通の馬よりも体格の立派な軍馬に見える位だから。

「まあ、2~3日我慢してよ」
『仕方ねえな。ただ食い物は頼むぞ』
「分かってるよ。流石にファニールに飼い葉はないからね」

 ファニールは馬の姿はしているけれど、本質は龍なので、実は食べる必要は無かったりする。竜とは違い、龍は半ば精霊に近く亜神に至れる種なので、基本的に魔素があれば問題ない。だから食べ物は嗜好品になる。

 港町らしい雑踏を抜けて、一件の宿屋を見つけた。馬車を預けれるクラスの宿だから、そこそこの高級宿だ。

「シグ殿、儂らの馬は売却でいいのだな」
「ああ、馬を四頭も維持するのは大変だからね」
「……ん、じゃあ売ってくる」

 ベルグとポーラに、亜人狩りから奪った馬の処分をお願いした。
 僕とセレネさんはルカを連れて宿に先にチェックインする。

 部屋の窓を開けると、独特の匂いが風に乗って来た。これが潮の匂いってやつか。

「シグお兄ちゃん、何か変な匂いがするね」
「これが海の匂いだよ。海の水は塩辛いんだって」
「あのお水が全部塩水なの? 凄いね!」

 僕とルカの着ている服と身体に浄化をかけて、サッパリとしてベッドに寝転ぶと、ルカも真似して僕の横に並んで寝転ぶ。

 ドアをノックする音が聞こえ、セレネさんの声が聞こえた。

「どうぞ、空いてるよ」

 ベッドにルカと寝転びながら返事をすると、セレネさんが入ってきた。

「あら、ルカちゃん疲れたかしら」
「ん? あっ寝ちゃたか」

 セレネさんに言われてルカを見ると、スゥスゥと可愛い寝息をたてていた。

「小さなルカちゃんには、長旅は疲れるわよ。食事の時間になったら起こしに来るから、シグ君も少し休んだら?」
「ありがとうセレネさん。じゃあ、お願いしようかな」
「ええ、お休みなさい」

 僕も目を瞑ると直ぐに眠気が遅い、セレネさんが呼びに来るまで熟睡してしまった。


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